Cover Artist | Cornelius -前編-

「Mellow Waves」から波紋みたいに派生して広がってできたアルバム

Corneliusインタビュー

前アルバム「Mellow Waves」から派生し、波紋(=Ripple)のように広がって生まれたのが今回の「Ripple Waves」。アナログ盤や配信限定の曲をはじめ、ライヴバージョン、リミックス、新曲も加わった編集盤的な内容だが、オリジナルアルバムとはまた違う個性あふれる楽曲たちが収録されている。「Mellow Waves」制作時から今回のアルバムに至る過程を小山田圭吾に聞いた。

夢の奥へ向かって、朦朧とした記憶の断片が再生されていく感じ
 

―  17年に11年ぶりのオリジナルアルバム「Mellow Waves」がリリースされましたが、今回の「Ripple Waves」は番外編というか変則的な内容ですね。いつ頃からこの話がまとまり始めたんですか?

小山田圭吾(以下:小山田) アメリカのレーベルからSpotifyでリミックスを作りたいと言われて、人選を頼まれたんですよ。それと、「Mellow Waves」のあとに作った作品がいくつかあったので、それらをまとめて編集盤的なものを作ろうということになりました。だから「Mellow Waves」以降の作品と、シングルのB面に入っていた曲、それにリミックス(リワークス)を収録しています。

―  裏「Mellow Waves」というか、続編的な感じですね。

小山田 そんな感じです。「Ripple Waves」というタイトルで、波紋みたいに「Mellow Waves」から派生して広がってできたアルバムというイメージですね。

―  ただ、バラバラに作られた作品ばかりなので、まとめるのが難しくなかったですか?

小山田 今回は自分が作った曲と、自分の曲をリワークしてもらったものとは別物なので、そこは曲順でバチッと区切ったんです。アナログでこのアルバムがリリースされる時も、A面とB面に分かれるようになっています。自分が最後まで作った作品と、自分の作品を他人が解釈して作った作品、というふうに分けて。

―  しかも、同じ曲でもライヴバージョンがあったりと、それも難しいですね。

小山田 そうなんです。曲順で何とか構成して作った感じです。

―  シングルのカップリングに入っていた曲は初CD化ですね。

小山田 そうですね、アナログでしかなくて、配信もしていなかったんですけど、これを機に配信もすることになって。

―  線引きはあるんですか? アナログのみとか配信のみといった分け方は。

小山田 自分なりに考えてそうしているんですけど、作品に合ったメディアがあるなと思っていて、自分が好きなメディアを考えて決めています。例えば「Audio Architecture」は展覧会「音のアーキテクチャ展」用に作ったんですけど、それは7インチでしか聴けなかったんです。あと、ノベルティとして発表していた「Audio Check Music」は、テクニクスのターンテーブルを購入した人にプレゼントされた、オーディオチェックをするために作ったレコードで。

―  スピーカーの調整用の?

小山田 そうそう、だから当然アナログ盤で出していたりとか。Spotify SinglesはSpotifyのみで発表していたり。NPR(米ラジオ局)の「Tiny Desk Concerts」のライヴ「In a Dream」はYouTubeだけで発表していたり。そういうものをパッケージングして、わかりやすい形にしたんです。

―  それらを一度に聴こうと思ったら、たくさんのメディアが必要なわけで。

小山田 それをまとめて聴ける状態にしたっていうことですね。

―  iTunes限定の「Inside a Dream」も収録されていますが。

小山田 あれはシングルのB面にも入っているんですけど、配信はiTunesだけです。

―  小山田さんの子供の頃の声が入っていて驚きました。

小山田 それに、おじいちゃんの声が結構フィーチャーされていて。おじいちゃんはNHKのアナウンサーだったですよ。昔の番組のカセットテープが残っていて、そこからサンプルしました。

―  それはご自身の記憶と曲調が結びついたからでしょうか?

小山田 そうですね、夢の奥へ向かって、朦朧とした記憶の断片が再生されていく感じなんですけど。

―  それはまさしく「Mellow Waves」のテーマに近いですね。

小山田 うん、そうですね。

―  そもそも、「Mellow Waves」はタイトル通りメロウな曲調が多かったですけど、それは何か意図があったんですか、精神的なものとか?

小山田 いえ、他にもたくさん曲があったんですけど、METAFIVEとかオノ・ヨーコさん(PLASTIC ONO BAND)とか他のプロジェクトに提供しちゃって、残った曲がああいう感じなんです。

―  そちらに提供していなかったら、もっと多彩な曲が入っていた可能性もあったわけですね?

小山田 あるかもしれないですけど、自分ではやらないほうがいいなという判断のもとに他のプロジェクトに提供しているというのがあるので。何となくしっくりする感じがああいう感じだったんです。

―  自分のソロ用に取っておこうという感じではなかった?

小山田 そうですね、その時やっているプロジェクトにはまりそうだったら、こっちのほうがいいかなって持っていくというのはあります。

―  もし、METAFIVE等のリリースの順番が逆だったら、コーネリアス用にアッパーな曲があったかもしれない?

小山田 そうだったかもしれませんが、自分で仕上げる気力があまりなかったというか(笑)。自分でやるより、METAでやったほうが面白いなって。

―  それはメンバーの顔触れによるということですか?

小山田 それもありますね。あと、METAFIVEやヨーコさん以外にも違う仕事、CMとかでオーダーが来たりすると、ちょっとアッパーな曲をそっちに持っていたりとかもあるので。

―  でも、だからといってコーネリアス用にアッパーな曲をさらに書こうとは思わなくて、残った曲で仕上げようと。

小山田 うん、残った曲がしっくりきたんですよ。

―  しっくりきたというのは、それらの曲がその時に主張したかった気分に合っていたんでしょうね。

小山田 作っている時は全体のことはまだわからなくて、何となくその日の気分で曲を作っているんです。それらが集まった時に、全体のムードとかトーンがわかってきて。それが見えた時に意識的にそっちに引っ張っていくと思うんです。

―  それがああいったメロウで、ちょっとダウナーな心地良さだったんですね。

小山田 そうですね。

―  その気持ちは今でも持続されているんですか?

小山田 もう、歳もとってきたから、ガンガンやるのは疲れるんです(笑)。でも、まったりしすぎると、たまにそういうのも聴きたくなりますけどね(笑)。

―  枯れてしまうには早いですよ(笑)。

小山田 どうなんだろう(笑)。でも70歳とか80歳ぐらいになると、逆にうるさいと感じなくなるんでしょうね。この間、マイブラ(マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン)を観に行って、メッチャうるさかったけど、ケヴィン・シールズとか50代ですよね。みんな耳とか平気なのかな。しかも、イヤモニしていて、モニターが4つもあって。何だかわからないでしょう(笑)。ハイワット2台、マーシャル2台と他にもアンプの壁があって、それがちょっとずつケヴィンの方向を向いている。でもマイブラの轟音は激しいけれど、逆に静けさを感じる。ああいうのはいいと思うな。マッチョな感じがしないじゃないですか。マッチョなバンドは年齢との戦いが大変ですよ。でも、面白かった。耳栓つけたりはずしながら聴いてたけど、終わったら耳がキーンとしてた(笑)。


レジナルドの曲はプリンスとかスライが 脱臼したみたいな、リズムの作り方が独特
 

―  アルバムの話に戻りますが、新曲が1曲ありますね。この曲「Sonorama 1」だけ異色作というか。

小山田 そうですね、ツアーがあるのでライヴ用に新曲が欲しいなと思って。「Mellow Waves」は歌ものが多かったので、全然違う感じがやりたいなと思って、ライヴ用に作った感じです。何となくイメージから入って作りました。演奏とパフォーマンス全体のイメージ。だから、音楽だけ聴くとちょっとわからないかもしれないです。

―  後半に収録されているリワークスですが、細野晴臣さん、坂本龍一さん以外は面識のある人たちですか?

小山田 細野さん、坂本さん以外は面識のない人たちばかりです。そのあとで会った人は何人かいましたけど。向こうのレーベルからリミックスを作りたいので、リミキサーの名前を誰か挙げてって言われて、何人か候補を挙げたんですけど、やってくれたのがこの人たちです。

―  見事にバラバラな人選ですね。

小山田 なるべくバラバラにしたいなと思っていて。国も世代もジャンルも人種も全部バラバラな感じがいいなと思って選んだんですけどね。

―  みなさん個性的ですけど、特にReginald Omas Mamode Ⅳのリミックスは面白いですね。

小山田 あの人、面白いですよね。ブリクストンに住んでいるハーフなのかな。この間、ブリクストンでやっているField Day Festivalに出たんですけど、近所に住んでいるからって観に来てくれたんです。ブリクストンって、黒人が多く住んでいるジャマイカ街があって。泊まったホテルがジャマイカ街の裏で、散歩したんですけど、本当にジャマイカを再現していた。ダブとレゲエだけのレコード屋さんがあって、その横でドレッドを編んでいる人がいたり、ダブのミックスCDを道で売っていたり、街を走っている車も大音量でダブをかけてる。イギリスの音楽ってレゲエの影響がものすごく強いじゃないですか。イギリスは何度も行ってるけど、ブリクストンは行ったことなくて。行くと、ああこういう感じなんだって、完全に根付いているというか。レジナルドの曲は何かプリンスとかスライが脱臼したみたいな、リズムの作り方が独特ですよね。自分でも歌ったりラップしたり、トラックも作ってる若い人。不思議な感じなんだよね。

―  そして、坂本龍一さんのリミックスもすごいですね。

小山田 完全に「async」の世界だよね。

―  引き込まれますね。彼方に行ってしまいそうなリミックスで。あれが最後にきてアルバムが引き締まった感じです。

小山田 最後しか置くところがないですね(笑)。かなり持っていかれる曲なので。

―  今回はコンピレーション的な内容ですけれど、同じ曲でも違う表情、違う聴こえ方をするアルバムに仕上がったと思います。

小山田 そうですね。完全なオリジナルアルバムではないんですけど、わりと面白い作品なんじゃないかな。

―  そして、10月からツアーですね。前回とは違う感じになりそうですか?

小山田 前回のツアーはライヴハウスだったんですけど、今回はホールなので、ライヴハウスではできなかった演出ができる。映像を使用するので、そういう環境で観たほうがよりよくわかるというか。ライヴハウスはそんなに天井が高くないし、立って観ているので全体が見えないですから、座って全体を観るっていう見方がいいんじゃないかなという気もしてて。演奏面でも、海外ツアーもやっていたのでだいぶ演奏はピシッとしてきていますね。あとは、前回やらなかった曲、できなかった曲、新曲もやったりとか、いくつか新しいことがあると思います。今回のツアーで「Mellow Waves」の完成形を見せられるんじゃないかなと思います。

―  毎回、構築されたライヴですよね。緻密な音源を最少人数で、しかも人力だけで再現するのがすごいと思いますけど。

小山田 それはね、なるべく頑張ろうって思ってます。やっぱりステージ上でちゃんと音を出している人がいないと、冷めますよね。誰がこの音出してるの?って(笑)。そこは頑張ってやったほうが面白いなって思う。ただ、普通に演奏するだけでも難しいんですけど、コーラスとか歌いながらやるのが一番難しくて。そこは大変だなと思うけれど、みんな頑張ってくれて。何とかやってます(笑)。

―  頑張っている感をそこまで見せないですけど。

小山田 頑張ってないように見せて、頑張ってるんです(笑)。涼しい顔してやるのがいいんです。

› 後編に続く


Cornelius

Stratocaster
ライヴ用のサブのAmerican Professional Stratocasterをサスティナー付きに改造。Eボウを使って弾いていたロングトーンのフレーズがラクに出せるようになったことで、今後はシタールっぽい音を出したり、ドローン(持続音)を取り入れた楽曲で使用する可能性も。

PROFILE


Cornelius
69年、東京都生まれ。89年、フリッパーズギターのメンバーとしてデビュー。バンド解散後、93年にCornelius(コーネリアス)として活動開始。自身の活動以外にも、国内外多数のアーティストとのコラボレーションやリミックス、プロデュースなど幅広く活動中。
› Website:http://www.cornelius-sound.com/

New Album
Ripple Waves
¥2,400(tax in)
ワーナーミュージック・ジャパン
2018/09/19 Release

TOUR SCHEDULE
「Cornelius Mellow Waves Tour 2018」
10/3(水)福岡国際会議場 メインホール
10/5(金)大阪オリックス劇場
10/8(月・祝)東京国際フォーラム ホールA
10/13(土)富山 南砺市福野文化創造センター 円形劇場ヘリオス
10/19(金)岡山市立市民文化ホール
10/21(日)愛知 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
10/24(水)札幌市教育文化会館 大ホール
10/27(土)宮城電力ホール
11/7(水)タイ バンコクVoice Space
11/9(金)台湾 台北Legacy
11/11(日)香港Clockenflap

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