Interview | Ken -前編-
「ライヴ、録音、練習。ずっとGalaxy Redを使ってます。」
Kenが2010年に製作し、それ以降メインギターとして使用し続けているシグネイチャーストラトキャスター「Galaxy Red」が、日本製で生産・発売されることが決定した。オリジナルモデル開発当初から、より手に取りやすい価格帯でのリリースを望んでいたKen。フェンダーミュージック設立以来の試行錯誤を経て登場した本モデルは、彼にとってまさに「納得の逸品」といえるものである。
― そもそも、どのような経緯で「Galaxy Red」を作ろうと思ったのでしょうか。
Ken 自分はフェンダーのストラトキャスターが大好きで、以前からよく買っていたのですが、いつだったかグレッグ フェスラー(マスタービルダー)さんの作ったモデルを弾く機会があって。「ハカランダ(ブラジリアン ローズウッド)」仕様のストラトキャスターだったのですが、「あ、なんかすごく自分に合っているな」と思ったんです。それからグレッグさんに興味を持つようになりました。ただ、ギターを買うときの悩みどころとして、色やデザインは気に入っても、自分の思っていたサウンドじゃなかったり、逆にサウンドは良くても、心から気に入った色やデザインじゃなかったりして。
― 「サウンドもルックスもバッチリ」というギターに、なかなか出会えなかったんですね。
Ken そうなんです。そういうことが何度かあったので、自分のカスタムモデルが作られそうだという話があった時に、グレッグ フェスラーさんに製作してもらって、ルックスも納得いくものにしようと。
― グレッグ フェスラーの作るギターは、具体的にどういうところが気に入っているのですか?
Ken 強くピッキングした時と、弱くピッキングした時の、音色の変化が作れるところです。逆に言えば、弱く弾いてもモコモコにならず、カリッと弾きたい時に手元のコントロールが付いてくる。ギタリストとしてキャリアを重ねていく中、自分としては強い表現ばかりではなく、弱い方の表現の幅も徐々に広げていきたいと思っていたんですけど、そこをしっかり押さえているギターとなると、やはりグレッグ モデルが最適だった。「ああ、こういう音が欲しかったんだ!」と。
― 実際に「Galaxy Red」を製作するにあたり、ネックの素材や形状はどうしましたか?
Ken まず、素材は「メイプル」のワンピースにしてもらいました。「メイプル」は、自分のタッチの強弱に対して敏感に反応してくれるところが気に入っています。ちなみにヘッドはラージヘッドです。スモールヘッドに比べて安定感があり、ガッと弾いたときに重みでちゃんと受け止めてくれる感じがある。何より、ルックスがいい(笑)。
― ピックアップや電装パーツは?
Ken ピックアップは国産のアルニコです。「キルテットメイプル」のストラトキャスターに搭載されたピックアップの組み合わせが好きなので、そのイメージに近づけました。電装パーツはUS産のアセンブリを採用しています。ポットもそうですね。そこは最初から決めていました。配線材もUSで、芯材を布でコーティングし、さらに蝋で固めています。ぱっと見で全然違うんですよ。もちろん曲がりにくいですし。
― ピックアップセレクターは5点切り替えだそうですね。
Ken ええ。ライヴの時はほとんどフロントを使っていて、センターで止めることはあまりないんですよ。チョイスは多い方がいいので、3点ではなく5点切り替えにしました。それと、ピックアップはリアにもトーンが効くようにしてあります。トーンをバイパスにしている音も好きなんですけどね、フロントとリアの切り替えの差が激しくて。ただライヴでの使い勝手としては、リアにもトーンをかましておいたほうがいいだろうということになりました。
― 他に、パーツのこだわりどころは?
Ken ペグに関しては、ライヴで弦が切れた時に素早く変えられるのと、弦を巻く回数が少なくてチューニングが安定しているのとで、SPERZELのロックペグを採用しました。また、ピッキングした時やチョーキングしたときの、各弦のテンション感が均一になるようテンションピン(ストリングガイド)の高さも細かく調整しています。何種類か作ってもらい、さらに自分でも削って調整しています(笑)。
― すごい(笑)。すべてのパーツにちゃんと理由があって、Kenさんのこだわりが詰まっているのですね。
Ken はい。なので、非常に気に入っていますね。ライヴでも当然使いますし、レコーディングでもずっと使っていて。終われば自宅に持ち帰り、練習するときもずっと「Galaxy Red」。すでにフレットは、2回くらい打ち替えています。
― 4月8日(土)、9日(日)に東京ドームで開催される、『L’Arc-en-Ciel 25th L’Anniversary LIVE』でも、また生の「Galaxy Red」サウンドを堪能できますね。
Ken ものすごく大きな音で、この「Galaxy Red」の音を聴けるので、「こんな音なんだ!」というふうに感じてもらえたらいいですね。ここまで大音量で聴ける機会ってなかなかないと思う。それを浴びて、興味を持ってもらえたら嬉しいです。
› 後編に続く
Ken Stratocaster® Galaxy Red
Galaxy Red最大の特徴とも言えるボディフィニッシュ、特注のピンクアノダイズド・ピックガード、ブラックパーツによるルックスを完全再現。さらに9.5インチラディアスのメイプル指板や、オリジナルのネックシェイプ、ヴィンテージフレット、SPERZELのロックペグなど、Ken自身の実機と同じスペックで演奏性を再現。カスタムワウンドのピックアップやUSメイドのサーキットパーツなど、見えない箇所にもこだわりが行き届いたモデルに仕上がっています。Kenが監修した証として、ヘッド裏にシグネイチャーサイン入り。
Ken
L’Arc-en-Cielのギタリストとして、1994年にメジャーデビュー。その後、数々の記録を打ちたてた。2012年には、アジア、アメリカ、ヨーロッパ、日本で45万人を動員するワールドツアーも成功させた。2002年からはSONS OF ALL PUSSYSとしても活動し、2006年からはソロとしての活動も開始。1stシングル「Speed」はオリコン初登場4位を記録。叙情性とハードさを併せ持ったロックなステージで全国ツアーも行った。最近では、自ら声をかけて集めたバンドらによるライヴイベント「PARTY ZOO」の企画や、MUCCやBAROQUEなど他バンドの楽曲プロデュースも行い、多才な能力で音楽と向き合い、活躍の場を広げている。