Interview | 鈴木茂

40年間さまざまな試行錯誤を繰り返してきたこのギターに対する愛着や思い入れは変わっていない

Fender Custom Shop

©Masashi Kuwamoto

 

ギタリスト、鈴木茂のシグネイチャーモデルSHIGERU SUZUKI ‘62 STRATOCASTER®JOURNEYMAN RELIC®が、このたび発売されることとなった。本モデルは、鈴木が自身の1stソロアルバム「BAND WAGON」をレコーディングする直前、ロサンゼルスの楽器店で購入し、長年愛用し続けてきたフィエスタレッドのStratocasterを再現したもの。開発にあたってこだわったポイントなど、愛機にまつわる思い出とともに語ってもらった。



― 今回、鈴木さんがフェンダーのシグネイチャーモデルを開発するにあたって、特にこだわった点、注意したポイントはどこでしょうか。

鈴木茂(以下:鈴木) 本質的な部分は音色ですが、弾き手としては持った時の感触も大切なんですよ。1年半ほど前、今回のシグネイチャーモデルの元となっている、僕が長年使っているフィエスタレッドのStratocasterをマスタービルダーにお渡しして。ネックを外し、各パーツの重さからネックの太さ、ピックアップの抵抗値など細部にわたって計測してもらったんです。それから1年くらい経って、試作品が2台送られてきたのですが、そのうちの1台を今日は持ってきました。重さはかなり忠実ですね。ネックは仕上がりが若干太かったので削ってもらいました。実は、元のフィエスタレッドは、購入したときにはかなり太いネックでしたが、何年も悩み続けた結果“これだとライヴで使いづらい”となり、やむなく削ったんですね。今回のシグネイチャーモデルも、その削った状態を再現しています。そこもこだわりのポイントですね。かなり弾きやすいと思います。

― 音色はいかがでしょうか。

鈴木 かなり試行錯誤しました。ピックアップの巻き数を多くして試したんですよ。元の抵抗値が12キロohmくらい。巻けば巻くほど音色は太くて甘くなるし、どちらかと言えば僕も太い音のほうが好きなのですが、レギュラーのStratocasterは抵抗値が5.5キロohmくらい。要するに倍以上の巻き数なんです。それだとやはりストラトっぽくない音というか。これだと違うかなと思い、最終的に巻き数をもう少し減らしました。6.3キロohmくらいだったかな。あと、コンデンサーがフェンダー現行モデルの場合はセラミック製の円型なのですが、それをスプラグ社のコンデンサー、通称“バンブルビー”にしています。昔はギブソンのレスポールに使われていたものですが、セラミックのほうがフェンダーらしいカラッとした音色で、バンブルビーはもう少ししっとりとした音色。なので、ピックアップの抵抗値と、コンデンサーのバランスを鑑みて、抵抗値を少し落としてシャープにした代わりに耐圧の大きいバンブルビーを採用することにしました。

― オリジナルであるフィエスタレッドにまつわる思い出もお聞かせいただけますか?

鈴木 はっぴいえんどの時にはすでにTelecasterを使用していたので、次はストラトが欲しいなと。「BAND WAGON」のレコーディングの前年にロサンゼルスへ行って、ごくごく普通の民家の居間にギターが飾ってあるようなギターショップに入った時に、壁に掛かっていたのがあのフィエスタレッドのストラトだったんです。まず色のインパクトがすごくて弾いてみたら、弾き心地も良かったので迷わず決めました。そこからもう何十年も使用することになったんですよね。なので、僕の音楽そのものと言ってもいい存在です。

― そこからいろいろ手を加えるようになったのは、どんな経緯だったのですか?

鈴木 僕はコンプレッサーをかけたギターの音が好きで、当時はMXR DYNA COMPをずっとつなげていたのですが、演奏するたびにセットするのが面倒くさくて。アームもほとんど使っていなかったので、ボディの裏側のバネを取ってしまって、アームブロックとボディの間に木を挟み、固定させて。そのスペースにDYNA COMPの基板と電池を入れ、ボリュームポットを Switch付きのポットに替え、コンプレッサーの On/Off 切り替えが出来るようにしていた時期がありました。今はコンプレッサーの機種を選びたいので、もう外しちゃいましたけどね。

シングルコイルでノイズが多かったため、トライガードという薄い布のようなシートを使い、ノイズを遮断して音のスピードをさらに速くして。やってみたら、確かにシャキッとするんですよ、ヴィンテージなので若干甘いサウンドだったのが、高音が甦っていい音になるし。ボディの裏側にもノイズ軽減のための板を入れたりしています。

とにかく、この40年くらいの間にさまざまな試行錯誤を繰り返してきました。不思議と、このギターに対する愛着や思い入れみたいなものは、ずっと変わっていないんですよ。むしろ、改良を重ねたぶんだけ余計にかわいいです。去年、すごい台風が来たでしょう? あの時に一時避難をしたんですけど、その時はフィエスタレッドのストラトを持って避難所に行きました(笑)。

― そんな、思い入れたっぷりのフィエスタレッドを再現したシグネイチャーモデルですが、今後どんな場面で使っていきたいですか?

鈴木 今話したように、オリジナルのフィエスタレッドはとても大切にしているギターなので、地方にはなかなか持って行けないんですよね。そういう場合には、今回のシグネイチャーモデルは大活躍してくれると思います。レコーディングでも、元のフィエスタレッドと、今回のシグネイチャーモデルを使い分けていこうかなと思っています。

― どのような方に弾いていただきたいですか?

鈴木 このシグネイチャーモデルは、僕が使ってきたフィエスタレッドのストラトにできるだけ特徴が似るように作ったものなので、皆さんがイメージされるストラトの音色よりもしっとりした重い音だと思います。もともとベンチャーズでもストラトはリズムギターとして使われていた楽器なので。それをジミ・ヘンドリックスがマーシャルのアンプと組み合わせて使うようになり、ストラトへの認識が変わった。そんなわけで、もともとは軽い音のストラトを、僕なりに太く甘い音にしているんですね。ストラトらしさという点でいうと、ちょっと違うかもしれないけど、改良を重ねていく中で“これ以上変えてしまうとフェンダーらしくないな”と思うギリギリのところで抑えています。そういう意味で、シャキッとした音にしたければ、エフェクターやアンプをうまく組み合わせてほしい。そこは手にしてくださった方たちのアイディアを楽しみに待ちたいですね。

― 鈴木さんに憧れてギターを始めた人、ギターを始めようと思っている人への上達までのアドバイスと、メッセージをぜひともお願いします。

鈴木 僕はギターを弾く前にラジオとかを作っていたので、ある程度ですが電気的な知識もあって。それも使ってまとめ上げた今回のシグネイチャーモデルです。もちろん、作ってくださったのはカスタムショップですが、マスタービルダーの方にはできるだけ僕の思いを伝えています。ぜひ、楽しんでいただけたらと思います。それと今回、レリック加工はそんなにしなかったんです。僕のオリジナルのフィエスタレッドはかなりボロボロで、それをそのまま再現するよりは、手に入れてくださった方が長年使い込んでくださるうちに、自分なりの傷になっていったほうがいいなと。あえてつける必要はないかなと思ったんです。それぞれ、ご自身なりのギターにしていってくださったら嬉しいですね。

僕のギター上達法は、好きなギタリストを見つけてギターの音色とテクニックを参考にし、同じ様に弾けるようになった後で自分なりのものに変えていく、というやり方です。皆さんに合った方法は別にあるかもしれませんので色んな方法を試してみてください。

昨日は弾けなかったのに今日は弾けるようになった、これが何より自身を刺激して更に追求する意欲が湧きます。このシグネイチャーモデルで上達されることを願っています。


Fender Custom Shop

SHIGERU SUZUKI ’62 STRATOCASTER® JOURNEYMAN RELIC®

価格:600,000 円(税抜)
デラックスハードケース、ストラップ、正規製品認定書が付属
※ 販売方法や、入荷時期などにつきましては、全国のFENDER CUSTOM SHOP取り扱い店までお問い合わせください。


Fender Custom Shop

鈴⽊茂Fender Custom Shop
51年、東京都⽣まれ。68年にスカイを結成しプロデビュー。69年、細野晴⾂に誘われ、松本隆、⼤滝詠⼀とヴァレンタイン・ブルーを結成。翌年、バンド名を”はっぴいえんど”と改名し、アルバム「はっぴいえんど」でデビュー。アルバム「⾵街ろまん」「HAPPYEND」を残し、72年末に解散。74年、単⾝L.A.に渡りソロアルバム「BAND WAGON」を完成させる。帰国後ティン・パン・アレーのメンバーとして数多くのセッション活動を重ね、ソロとしても7 枚のアルバムを発表 するかたわら、スタジオワーク、ライヴサポート、アレンジャー、プロデューサーとしても活躍。2000年、ティン・パン・アレーのメンバーだった細野、林⽴夫とともにTin Pan を結成し、アルバム「Tin Pan」をリリース。19年に活動50 周年を迎え、現在も伝説的ギタリストとして幅広い世代からリスペクトされている。
› Website:http://suzuki-shigeru.jp


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