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B x B | ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)× 新井和輝(King Gnu)-前編-

壁を面白く乗り越えて行けたのは、音楽の巡り合わせのおかげだった

日本を代表するベーシスト同士による対談企画「BxB」。ブラックミュージックをルーツに感じさせる2人のベーシスト。それでいてハマ・オカモトはPrecision Bassを、新井和輝はJazz Bassと、同じフェンダーでも異なるタイプのベースを愛用し、それが自身を象徴するモデルとなっている。対談の前編では、それぞれのルーツや初心者時代について語ってもらった。

挫折はやればやるほど出てきて、今は本当に解放されたい(笑)(ハマ・オカモト)

― 2人はどういう音楽を聴いて楽器を始めましたか?

ハマ・オカモト(以下:ハマ) 中学校1年生の時は帰宅部だったんですけど、中学校でできた友達がそのタイミングで軽音楽部に入って、だんだん会話についていけなくなって、話している意味がわからなくなってきたんです。中2になる頃に、このままだと本当に会話ができなくなると思って、空いている楽器ないの?って聞いたんです。先に始めた奴はギターとドラムだったので、空いているパートで、ヴォーカルは思春期だから嫌だし、ピアノも発想になくて、もうベースじゃんって。だから、何かを見て衝撃を受けてのスタートというわけではないんです。ただ、幸いなことに邦楽をコピーするのはダメな部活で。洋楽志向の先輩がいて、ザ・ビートルズとかクリーム、レッド・ツェッペリンをコピーするような部活だったので、ベースがつまらなくない音楽であり、練習をある程度しないと弾けないフレーズがある音楽ばかりだったんですね。だから、60年代中期~70年代前半のブリティッシュロックが最初のルーツですね。

― 最初からベースにのめり込みましたか?

ハマ でかいし重いしつまらねえな、ギターだったら弾き語りもできるけどベースは何もできない、だまされた様な気持ちで全然面白くなかったんですけど(笑)、最初からビートルズとかやることになったので面白かったんですよ。8分で弾くだけじゃなく、フレーズがある。クリームもずっとリフだったりする。そこでやりがいを見つけられたのが本当に幸いで。

― 新井さんは?

新井和輝(以下:新井) 僕もハマくんと同じです。中学校2年生の時に、バンドの余っていた楽器のパートがベースだった。本当にそう。僕の中学校は軽音楽部がなかったんですけど、周りでアコギが流行っていて、バンドをやろうっていう奴がいて。さすがに家でドラムは叩けないから、ベースをやることになったんです。ASIAN KUNG-FU GENERATIONさんやRADWIMPSさんのコピーをやろうとか。RADは特徴的で動くベースラインだったので、それにやりがいを感じていましたね。

― 弾くようになって挫折はなかったですか?

新井 始めた頃は全然なくて、今のほうがあると思います(笑)。最初にスラップを音源で聴いた時が衝撃的で。RADの「遠恋」の2サビ終わりにギターとベースの掛け合いがあって、ベースのスラップから始まるんですけど、“これは何だ?”って。そこで一気にのめり込んだんじゃないかな。

ハマ 僕と似ていると思ったのは、スラップってひとつの壁で、あそこが新しい段階だった感じがする。僕にとってはレッド・ホット・チリ・ペッパーズの「ハイヤー・グラウンド」。当時、YouTubeはありましたけど盛んではなかったので、どう弾いているのかわからないんですよ。写真を見ても何でこうやってるんだろう、どうやったらこういう音が出るんだろうって。挫折よりも、スラップをやるかやらないかがターニングポイントで、ギターでFコードが押さえられない感じですね。上手くいかない人は嫌になっちゃうんでしょうけど、幸運なことにコツをつかむのが早くて。僕も挫折はやればやるほど出てきて、今は本当に解放されたい(笑)。でも、挫折は乗り越えられている気がしますね。スラップとか、ロックからファンクとか、そういった壁を面白く乗り越えて行けたのは、音楽の巡り合わせのおかげだったので。新しいものが入ってこないと、逆につまらなくなっていた気はします。

Precision Bassのほうが音が前にドン!と出てくる(新井和輝)

― 当時、使われていたベースは?

ハマ 中2の頃はフェンダーのJazz Bass。そこから、高2の終わり頃に年上の人のバンドを手伝うことになるんですけど、その時に長岡亮介さんと知り合って、“絶対にPrecision Bassが似合うよ”と言われたんですよ。“そうですかね”って、鵜呑みというかわかっていなかった(笑)。その頃はPrecision Bassってパンクスが下げてて、ピック弾きする楽器だと思い込んでいたんです。でも、Pファンク、ニューオリンズファンクに興味を持つ様になって、古い映像とか写真を見ると、高い位置でPrecision Bassを弾いていて、だんだんそれが新鮮に思えてきたんです。亮介さんのアドバイスと合っていて、確かに今やろうとしている音楽はPrecision Bassだなって。それで高2の終わり頃にPrecision Bassに変えました。そこから主にPrecision Bassを弾いていて、“プレベの人”みたいになっていて光栄ですけど。きっかけなんてそんなものです。

― 新井さんは?

新井 立川の楽器店でアンプも全部ついている2万円のセットを買って。そこから高校に入るタイミングで入学祝いをもらい、5弦のネイザン・イーストモデル、RADの武田さんが使っていたモデルを全財産はたいて買っちゃったんです。高校の軽音部の3年間は、そのベースを弾いていました。その3年間のうちに、今の師匠の日野“JINO”賢二さんに会うタイミングがあって。JINOさんはJazz Bassタイプを使っていて、そういう音楽を聴いていくうちに、こういう形のベースがいいなと自分の中で腑に落ちたタイミングがあって、今のメインで使っているフェンダーのAmerican Deluxe Jazz Bassにしました。フェンダーの楽器はそれが初めてで、今でも使い続けています。

― Precision Bassの特徴、魅力というと?

ハマ Jazz Bassを持っていて、Precision Bassに変えた最初の印象は、Jazz Bassを弾いていた時の右手、左手が全然通用しない。音の出方が違う、発音のさせ方が違うというか。ちゃんと弾かないとしょうもない音しか出ない。Jazz Bassって、開放弦を鳴らしただけで説得力のある帯域が鳴ると思うんですけど、Precision Bassってスタジオで鳴らした時に、“これ合ってるか?”って思たんです、音出てるか?大丈夫か?って。ちゃんと弾いてあげないといけない、みたいなのは魅力なんじゃないかな。

新井 ピックアップがひとつのぶん、アンプで鳴らした時の音圧感がいいですよね。Jazz Bassは広すぎて沈むけど、帯域が狭いPrecision Bassのほうが音が前にドン!と出てくる。その気持ち良さがいいですね。

― American Professional IIのPrecision Bassについて、どのような感想を持ちましたか?

ハマ リアリティを追求した時代が4年くらい前まであって、すごくネックが太かったんですよ。それは当時の楽器を再現しているという意味では合格点でしたけど、オタク的なところを突き詰めていた時代だった。今回のシリーズは、スタンダードなモデルとして始まったんでしょうけど、当時に固執していなくて弾きやすいです。ネックも握りやすい。それはすごく素晴らしいことだし、柔軟性を感じますね。しかも、あれだけいっぱいカラーを出しているのに、また新しい色を作ろうとしている。もういいじゃんって(笑)。でも、歴史を重んじることと、今をちゃんと見るという目線がイーブンになってきているので、それはすごいなと思います。

› 後編に続く(近日公開予定)


American Professional II Precision Bass®

American Professional II Precision Bass® 定番の’63 P Bassシェイプネックは、丁寧にエッジがロールオフされ、至高の演奏体験を約束する”Super-Natural”サテン仕上げが施されています。また新たに設計されたネックヒールを採用し、快適なフィーリングとハイポジションへの容易なアクセスを実現しました。新しいV-Mod II Precision Bass Split-Coilピックアップは、これまで以上に繊細なトーンを奏で、Precision Bassならではの圧巻のローエンドを提供します。

American Professional II Jazz Bass®

American Professional II Jazz Bass® 人気のSlim Cシェイプネックは、丁寧にエッジがロールオフされ、至高の演奏体験を約束する”Super-Natural”サテン仕上げが施されています。また新たに設計されたネックヒールを採用し、快適なフィーリングとハイポジションへの容易なアクセスを実現しました。新しいV-Mod II Jazz Bass Single-Coilピックアップは、これまで以上に繊細なトーンを奏で、Jazz Bassならではのパンチとクラリティを提供します。

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ハマ・オカモト

1991年東京生まれ。ロックバンドOKAMOTO’Sのメンバー。
2021年には5カ月連続でシングルを配信リリース。
6月30日にKT Zepp Yokohamaにてワンマン公演「Young Japanese in Yokohama」を開催。ベーシストとして様々なミュージシャンのサポートも行い、2013年に日本人ベーシスト初の米国フェンダー社とエンドースメント契約を結ぶ。ラジオやテレビ・雑誌など各方面でレギュラー番組を担当し、あらゆるフィールドで活躍する。2020年5月には自身のムック本「2009-2019“ハマ・オカモト”とはなんだったのか?」を発売した。
› Website : http://www.okamotos.net/


新井和輝

King Gnuのベーシスト。1992年生まれ、東京都出身。中学生時代、友人たちとのバンド結成をきっかけにベースを始める。高校時代、先輩に連れられて観たジャズセッションのライヴでジャズに目覚め、ブラックミュージックに深く傾倒。日野“JINO”賢二、河上修に師事し、ピノ・パラディーノ、ミシェル・ンデゲオチェロ、マーカス・ミラー、レイ・ブラウンなどから影響を受ける。大学時代にセッションで出会った勢喜遊を通じ、常田大希(Gt,Vo)、井口理(Vo,Kb)と前身バンド“Srv.Vinci”として活動を開始。 2017年4月、バンド名を“King Gnu”に改名。 2019年、2ndアルバム『Sympa』でメジャーデビュー。2020年1月リリースのアルバム『CEREMONY』は、オリコン週間アルバムランキング及びデジタルアルバムランキングの2部門で初登場1位を獲得。
› Website:https://kinggnu.jp

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