The Rock Freaks Vol.4 | ホリエアツシ

ROCK FREAKS VOL.4

アーティストとフェンダーによるケミストリーを写真で切り取るエキシビジョンシリーズ「THE ROCK FREAKS」。第4回目は、ストレイテナーのホリエアツシが登場。結成20周年を迎えたストレイテナー。そのフロントマンで、ほぼすべての曲の作詞・作曲を手掛けるのがホリエアツシだ。ヴォーカリスト目線で語ってくれたホリエならではのギター論。さらに20周年を迎え、さらなる進化を遂げようとしているストレイテナーとギターの関係を語ってくれた。


僕の好きな音はみんな“フェンダーの音”なんです

今年結成20周年を迎えたストレイテナーのフロントマン、ホリエアツシ。そのストレイテナーは、今やフェスではヘッドライナーでの出演が相次ぐ日本のトップバンドの一角を担っている。実際、ゴールデンウィークに東北で開催された大規模なフェスでも、ストレイテナーはヘッドライナーを務めたばかりではなく、ゲストに布袋寅泰を迎えてBOØWYの代表曲「B・BLUE」「Dreamin’」を演奏し会場を沸かせてみせた。さらにent名義のソロ活動のほか、若手シンガーソングライターmajikoへの楽曲提供など、ジャンルレス、エイジレスに活躍している。

ストレイテナーのライヴでは、ほとんどの楽曲でギターを弾きながらリードヴォーカルを務めるホリエだが、最初に始めた楽器は鍵盤だったという。「もともとは幼稚園の時にオルガンを習っていたんです。その後、中1の時に音楽にハマったんですけど、それがGRASS VALLEYやTM NETWORKというキーボードがいるバンドだったので鍵盤に惹かれて、ピアノを習い始めると同時にシンセを買ってもらって曲を作り出したんです」とホリエは音楽にのめり込みだした頃の話をしてくれた。ちなみに、この頃から自らの曲をテープに録り、すでに仲間に配っていたという。「周囲に宣言こそしていなかったですが、プロになろうと心では思ってましたね」と、プロミュージシャンになることは中学生からの夢だった。

そんなホリエがギターを手にするようになったのは、高校に入ってストレイテナーの前身バンド・レオナルドを組んでから。バンド内でも当初はキーボードを弾いていたが、ホリエは自分はあくまでもヴォーカリストであり、曲を作る人間という認識だった。そんな時にホリエは洋楽と出会う。時は90年代後半。Green Dayを筆頭に、当時の洋楽はギターサウンドが主軸でキーボードがいるバンドは稀有。ホリエもギターで曲を作り、ギターを持って歌いたいと思った。最初は友人から借りたギターで、やがて自分のギターを買い、ギターで曲を作り始めた。鍵盤からギターへ。その魅力をホリエはこのように語る。「鍵盤に比べて、ギターのほうがニュアンスや感情を表現できたんですよね。例えばギターの場合、どこを押さえてるかわからなくてもいい感じの音が出るんです。それは鍵盤にはない感じでした」。大学時代にホリエとドラムのナカヤマシンペイでストレイテナーを結成し、それから20年が経つわけだが、ホリエがギターに最初に抱いた感覚は今も変わらないようだ。

ROCK FREAKS VOL.4

Photo by Maciej Kucia (AVGVST)

「僕の場合、歌うことがまず前提としてあったわけです。それで、ギターを弾いて歌いたくてギターを始めた。だから今でも、ライヴで歌によってギタープレイが随分と変化するんですよね。例えば、もっと歌を聴かせたいと思うと、ギターを弾くべき箇所でも弾かないことがあったり、逆に静かに弾くべきところで激しくブラッシングしたり。そんなことって他の楽器だと許されないですよね(笑)。あと、ギターを持っているとリズムもキープできて何だか落ち着くんですよ。なので、ギターって楽器というよりも身体の一部のような感じなんです」と、ヴォーカリストらしいギター論を聞かせてくれた。

そんなホリエが、ライヴでもレコーディングでも愛用しているのがフェンダーのストラトキャスター。ストラトを使うようになった理由を、ホリエはいくつか挙げてくれた。

「08年にギターのOJが加入して、ストレイテナーは4人体制になったんです。OJがフェンダーのJazzmasterを使っていて、OJが弾くファンキーなリフとの相性を考えたときにハムバッカーではなく、シングルコイルのストラトだなって。それと、僕は特に好きなギタリストがいるわけではないんですけど、僕の好きな音はみんな“フェンダーの音”なんです。クーラ・シェイカーのクリスピアン・ミルズもストラトだし、レディオヘッドもブラーもテレキャスを使ってて、フェンダーの音が身体に馴染んでいて好きな音だったので」

そして、ストラトを使う感想を次のように語ってくれた。「誰もが“ストラトはいいな”と思うまさに同じところに魅了されています。僕は単音弾きはしなくてコードを弾くんですけど、一番クリアに音が出るのがフェンダーのストラトです。ピッキングの強弱もしっかり出るし、音のバランスもいい。ここ最近のストレイテナーの曲って、カラッと抜け感のある曲が多いので、ストラトの使用率が高くなっていますね」

現在、ホリエがメインで使用しているStratocasterはいわゆるヴィンテージギターだが、ホリエはヴィンテージギターにこだわっているわけではない。ホリエは「古い、新しいは全然気にしていないです。大切なのは自分にしっくりくるかどうかです」とキッパリと言い切る。事実、今回のFuture Dance TOURからは American Originalシリーズが導入されている。

その哲学が今のストレイテナー、今のホリエの音とマッチしている。どういうことか? デビューした頃のホリエは、ひどくひねくれていたそうだ。“好きなもの以外は嫌い”という頑な態度が全開で、人を近づけない感じだったという。曲もポップなものはダメだと思っており、ポップな曲ができると風刺や毒を何とかそこに盛り込んでいた。ホリエが「みんなが知っているバンドから音楽を聴き出したんですけど、どんどん聴く音楽がマニアックになっていくんですよ。そのピークが30歳ぐらいで、かなりこじらせていましたね」と笑う。だが今は違う。ポップで洗練されたものを作りたいという。

「別に急にシフトチェンジしたわけじゃなく、僕らの音楽が届く範囲が徐々に広がって伸びている感じです。今まで自分は見えているところにしか届いてなかったけど、ボールが地面に落ちてからも転がってどこかに届いていく…そういう音や曲を作りたいんです。なぜなら、“好きなものが増えることは何の損にもならない”ことがわかったからです。それまでは、いいなぁと思っても無理して好きにならないようにしていた部分がありました。でも、そんなのもったいないじゃないですか? 大切なのは自分にしっくりくるかどうか。好きものが増えても何の損もないし、どんどん楽しくなっていくので」

この日もAmerican Original ‘60s Stratocasterを手にしたホリエ。弾きながら「これ、いいなぁ」と何度も口にしていた。新しいフェンダーギターで、さらに多くの人に届く、洗練されたポップな曲を奏でてくれる予感がする。


ストレイテナー
98年、ストレイテナー始動。渋谷、下北沢、新宿、八王子などでライブ活動を行う。メンバーは、ホリエアツシ(Vo,Gt,Pf)、ナカヤマシンペイ(Dr)、日向秀和(Ba)、大山純(Gt)。18年2月にはバンド初となるマニアックセットリストワンマンライブ「STRAIGHTENER MANIA」を新木場STUDIO COASTにて開催。通算10枚目のフルアルバム「Future Soundtrack」を5月23日にリリース。6月から「Future Dance TOUR」を開催。
› ストレイテナー Official Site:http://www.straightener.net

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