
Signature Model Interview | Char -後編-
形はムスタングだけど、良い意味でムスタングとは違う。本当に進化してる
2025年7月4日、Charは古希(70歳)を記念して日本武道館で、“Char Nippon Budokan Live 2025 – Purple Phase Jam”を開催した。その日に、70歳にちなんで70本のみの限定発売となったのが、“Char Mustang Pink Paisley”。Charは、カスタムショップ製Char Signature Mustang “FreeSpirits”のペイズリー柄にカスタマイズされた個体を愛用していたが、今回発売となるのは日本製シグネイチャーモデル“Char Mustang”のペイズリー版だ。後編では、このモデルの優れた点や魅力などについて語ってもらった。
※Char Mustang Pink Paisleyは大変好評のため予定本数の販売を終了いたしました。(2025.7.7時点)
ペイズリー柄のムスタングは、フェンダーにも要望がすごく多かったらしい
──それでは、7月4日に発売になった“Char Mustang Pink Paisley”のお話を伺います。2012年に“FreeSpirits”が出たあとに、カスタムショップがCharさんにペイズリー柄の“FreeSpirits”を1本作ってくれたのがきっかけですよね。
Char “FreeSpirits”のボディがなぜか一つ余ってるけど、どうしましょうか?って言うから、好きにして、って(笑)。そしたらペイズリー柄になった。
──ペイズリーはCharさんからのリクエストではなかったんですか?
Char 冗談で言ったかもしれないけど(笑)。絶対やんないと思ったから。ペイズリーっていうとテレキャスのイメージだよね。1960年代後半のサイケデリック時代に流行りだした柄だよね。もともとインドの柄じゃないの? それをスコットランド人が取り入れたんだよね。Psychedelix(Charが1992年に結成した日英混合メンバーによるバンド)の時に、ベースのジャズ・ロッホリーがスコットランド人だから、そう言って威張ってたよ。そんなこと言ったって、もとはインドだろ、みたいな(笑)。
※ペイズリー柄はインドのカシミール地方が起源で、19世紀にスコットランドのペイズリー市でこの柄を織り込んだ毛織物が量産されるようになり、この名が付いた。
──ペイズリーの由来はそういうことだったんですね。
Char 1960年代に、やたらとそういうプリントのシャツとかカーテンとかが出てきて、流行ったんだよな。フェンダーだって、ペイズリーの壁紙をテレキャスに使ったわけだから。
──カスタムショップ製のペイズリー柄のムスタングは、少し他のと違うとおっしゃっていましたよね?
Char オリジナルのムスタングって、ボリュームを上げていった時に、ピークになると急に音が硬くなるんだよ。カスタムショップ製のペイズリーには、それが無いんだ。普通は、いい感じで上がっていって、9まではいいんだけど、10で急にカリッとなっちゃう。だから、微妙に9で弾いたりしてた。10で硬くならないようにアンプをセッティングしちゃうと、今度は7~8ぐらいが甘くなっちゃうから。不思議なんだけど。作りが適当なんじゃない(笑)? “FreeSpirits”もオリジナルほどにはカリカリにならなかったんだけど、ペイズリーのはまったくそういうことがなくて、そのまま10まできれいに上がるんだよ。それと、ピックアップがちょっとハムバッカーみたいな感じというか。もちろんハムバッカーとは違うんだけど、普通のムスタングとは全然違う感じでさ。一度、中を開けて調べてもらいたいね(笑)。
──今回の“Char Mustang Pink Paisley”は、もちろん古希記念モデルということですよね?
Char さあ(笑)? まあでも、ペイズリー柄のもあっていいんじゃないかって。フェンダーさんにも要望がすごく多かったらしいしね。こればっかりは、なかなか模造できないからかな(笑)。ペイズリーって、テレキャスにしかないのももったいないじゃん、っていうのもあってね。かと言って、ストラトに似合うかっていうと、あんまり似合わない気がするしさ(笑)。
──このペイズリー柄は、カスタムショップのものと比べて、まったく違いが分からないぐらいですね。
Char 全然分からない。日本のフェンダーさんのほうで、カスタムショップのペイズリーとまったく同じ柄と色味にしてくれたらしいよ。

1本目じゃなくていいから、2本目はこれにしてください(笑)
──ペイズリー柄以外はすでに出ている“Char Mustang”と同じ仕様ですが、おさらいを兼ねて、その優れた点をご紹介いただきたいと思います。まずはトレモロユニットが、ストラトと同じようにシンクロナイズドトレモロユニットになっていますね。
Char これのおかげで、通常のムスタングと比べて、まず音が狂わないよね。あと、これにしたことによって、ストラト寄りの音になってる。音というか、テンション感だろうな。トレモロの不安定感が全体に伝わるのがムスタングなんだけど(笑)、こいつはそれがない。それと、1弦から6弦までのバランスがいいというか。要は、下(低音弦)が鳴る。通常のムスタングの6弦なんか、ビヨーンって…残念ながら(笑)。
──長年ムスタングを使われてきたCharさんとしては、そういう部分に逆に違和感があったりはしないのでしょうか?
Char 慣れるのに少し時間はかかったね。アームが出てきてる場所が違うということもあるし。かと言って、それはストラトとも全然違うからね。
──ボリュームノブとトーンノブの位置も通常とは違いますね。
Char この位置を決めるのは大変だったな。アームの位置も通常のムスタングとは違うわけだから、アームを使いながらボリュームも使う前提で、どの位置が最適かっていうのを決めるのが一番苦労したよ。
──ピックアップセレクターも、位置と仕様が変わって(スライド式からトグル式に)、ムスタングの弱点が克服されていますね。
Char なんで最初からそうしなかったんだろうと思うよ(笑)。使いづらいどころか、俺はスイッチングして弾いたことなんてまずないからね。片方をオフにして片方だけオンにするとか、そんなことやってたら音が出なくなる不安があるから(両方のスイッチが真ん中の位置では音が出ない)。だから、穴にゴムのパイプを挟んで、スイッチが動かないようにしてたよ。ライブで音が出なくなって焦ったことがあるからさ。「なんだよ、このスイッチのせいかよ!」って(笑)。
──“Char Mustang”は、まさに進化したムスタングとなっているわけですが、今回はその上にペイズリー柄というのが新たな特長ですね。
Char 若い女性にもおすすめだよね。孫に買ってあげようかな(笑)。
──確かに、幅広い層の方が使えるモデルになっていますよね。ムスタングの小ささとか、取り回しの良さもありますし。
Char そうだね。アームなんか、使いたくない人は使わなくてもいいんだしさ。この小ささというのは、子どもというよりも、我々日本人の平均的な体形にも持て余さないサイズだよね。一回、布袋(寅泰)に持たせた時は、「やめて!」って感じだったけど。ウクレレ持ってるみたいで、全然似合わなかった(笑)。
──(笑)。最後に“Char Mustang Pink Paisley”の魅力をまとめてお伝えしていただけますか?
Char 形はムスタングだけど、良い意味でムスタングとは違う。弾きやすさとか、バランスの良さとか、性能も含めて。オリジナルのムスタングをどう調整してもこうはならないからね。本当に進化してると思うね。今回は色もペイズリーだし。“蒸すタング”じゃなくて、“焼きタング”ぐらいになってる(笑)。まあ、エレキ買うなら、1本目じゃなくていいから、2本目はこれにしてください(笑)。
>> 前編はこちら
Char
1955年6月16日東京生まれ。本名・竹中尚人 (たけなか ひさと)。ZICCA REDORDS 主宰。8歳でギターをはじめ、10代からバックギタリストのキャリアを重ねる。1976年『Navy Blue』でデビュー以降、『Smoky』『気絶するほど悩ましい』『闘牛士』等を発表。Johnny, Louis & Char 結成翌年、1979年に日比谷大野外音楽堂にてフリーコンサート「Free Spirit」を行う。1988年 江戸屋設立以降、ソロと並行して、Psychedelix、BAHO での活動を行う。2009年にはWEB通販主体レーベル「ZICCA RECORDS」を設立し、TRADROCK シリーズを発表。2015年5月、還暦アニヴァーサリーアルバム『ROCK 十』を発表。2016年、ギターマガジン誌による、プロギタリストを中心とした音楽関係者へのアンケート投票「ニッポンの偉大なギタリスト100」にて1位に選ばれる。2018年、Fender Custom Shop にて日本人初のプロファイルドモデルを発表、オリジナル楽器ブランドZICCA AX にて、様々なオリジナル楽器アイテムを展開中。2020年、ギターマガジン誌投票「ニッポンの偉大なギター名盤」にて、1stアルバム「Char」が一位に選ばれる。2021年9月、16年ぶりのオリジナルアルバム「Fret to Fret」を発表。12月にはデビュー45周年武道館公演を開催。2022年4月、同公演の映像作品を発売。2023年7月、最新アルバム『SOLILOQUY』を発売。2024年11月25日より自身の69(ROCK)イヤーを記念した全国ツアー”69 SPIRITS” Tour 2024を全国8箇所で開催。2025年2月11日(火・祝)に有明アリーナでCharがホストとなり、ジェフ・ベック・バンドのメンバーに加え、布袋寅泰さんと松本孝弘さんも参加される一夜限りのコンサート、「A Tribute to Jeff Beck by Char with HOTEI and Tak Matsumoto featuring The Jeff Beck Band -Rhonda Smith, Anika Nilles, Jimmy Hall & Gary Husband-」を開催。2025年7月4日には、Charの古希 (70 歳) を記念して日本武道館ライブ「Char Nippon Budokan Live 2025 – Purple Phase Jam」を開催。
https://www.zicca.net/