SILENT SIREN LIVE TOUR 2024 「I’m Home」

2024年1月にリリースされた楽曲「Sus4」、そして続くミニアルバム『YOUTHFUL』においてバンドの復活を高らかに表明したSILENT SIRENが、今作を伴うツアー〈SILENT SIREN LIVE TOUR 2024「I’m Home」〉を開始した。このツアーでは、各地で「ただいま」というメンバーの問いかけに「おかえり」という観客の声が響くという、唯一無二の光景が見られた。今回は、すぅ(Vo,Gt)、山内あいな(Ba)、黒坂優香子(Key)に加え、サポートに番田渚奈子(Dr)を加えた布陣で開催されたZepp DiverCity公演の模様をお伝えしたい。

コード感が明瞭なAmerican Deluxe Telecaster Thinline、そして幅広い奏法に対応するAmerican Standard Jazz Bassが紡ぐ、SILENT SIRENの終わらないストーリー

見事にソールドアウトとなった今回の公演であるが、会場に入ると、彼女たちの登場を待ちわびるサイファミ(ファンの呼称)でものすごい熱気だ。会場が暗転しオープニングムービーが流れる。3人をモチーフにしたアニメーションはとても温かく、数々の困難を乗り越えて“家族=サイファミ”が待つ家に戻るというストーリーがライヴに対する期待感をかき立てる。そして口火を切ったのは、すぅが放つギターのコード、そしてそれに応えるあいにゃんのベースによるオブリガード…復活までの葛藤と喜びを高らかに鳴らす「Sus4」である。


すぅのギターサウンドは、歪みを若干深めにかけたふくよかな低音と、よく伸びる高域が印象的だ。ゲイン量が多めにも関わらずコード感が明瞭なのは、愛機であるAmerican Deluxe Telecaster Thinlineが持つ個性によるもの。あいにゃんはグリーンのマッチングヘッドとボディのインディアン柄が特徴で、“ネイティ”と名付けられたAmerican Standard Jazz Bassをこのあとのほとんどの曲で使用。このモデルはあいにゃんのシグネイチャーモデル、SILENT SIREN Jazz Bassの原型となった個体で、オクターヴ奏法からメロディアスなフレージング、さらにスラップまで、さまざまなプレイをしっかりと受け止める、あいにゃんの相棒である。

2曲目「milk boy」においても、American Deluxe Telecaster Thinlineならではの軽快なコード感と量感によってカッティングのリフに躍動感を与えている印象だ。さらに、イントロのギターのカッティングから始まる「フジヤマディスコ」では、あいにゃんによる歪みを足して高域が強調されたベースサウンドによるスラップが炸裂。このアレンジやバンドアンサンブルこそが、サイサイの真骨頂とも言えるだろう。


「衝動」ではすぅがClassic Player Jazzmaster Specialに持ち替えるが、ドライブ感溢れるギターサウンドによってシリアスな世界観を演出、緊張感の増す中で「八月の夜」につながる展開が見事だ。さらに続く「女子校戦争」は性急なリズムが印象的だが、イントロのギターフレーズではディレイを深めにかけ、華やかにリードトーンを弾き切る。矢継ぎ早に始まったのは「ALC.Monster」。オートチューンをかけたあいにゃんの歌声、そしてヘヴィな曲調で観客をグイグイと自分たちの世界観に引きずりこんだ。ここまで一気に駆け抜けたサイサイのライヴであるが、一転、彼女たちが楽器を置いてトークが展開されるお楽しみトークコーナー“サイサイコーナー”が始まると、メンバーによる全身全霊の“あっち向いてホイ”が展開される微笑ましい光景が繰り広げられた。

すぅが再びAmerican Deluxe Telecaster Thinlineを抱え、「最愛の君へ」の冒頭を飾るコードを鳴らした瞬間、会場の空気が変わった。3人がヴォーカルを取るこの曲では丁寧に演奏を紡ぎ、そしてそのまま「stella☆」のイントロが流れる。この曲はメンバーにとっても思い入れが強く、イントロのギターとベースの交互の掛け合いをはじめ、それぞれのメンバーが噛みしめるようにプレイした。

続く「FAMILIA」は活動休止直前にリリースされた楽曲であるが、タイトな4つ打ちのリズムに対して、オクターブ、スラップ、そして流れるようなフレーズなど、表情豊かにベースが動くことで有機的なうねりが生まれる。この曲に限らずだが、ドラムとアイコンタクトを取っているのも印象的であった。


「揺揺」であいにゃんは1963年製のPrecision Bassに持ち替える。ゴロゴロしたミドルが特徴のPrecision Bassならではの音色を活かしながら、オクターヴ上にいくスライドを駆使する。ハイポジションにおいても音が細くならず、しっかりグルーヴを生み出す点もPrecision Bassならではの特色と言えるだろう。American Deluxe Telecaster Thinlineを抱えたすぅは、スタッカートを効かせたコード弾きで歯切れの良いノリを作り出す。

軽快かつ切なさを表現する「Starmine」からは、今回のライヴが後半に向かっているという雰囲気を示唆する。さらにモッシュピットを起きそうな2ビートが“サイサイ版メロディックコア”とも言える「HERO」においても、Classic Player Jazzmaster Specialによる極太のリードや、American Standard Jazz Bassによるスラップが炸裂していた。

そして「DanceMusiQ」や「恋のエスパー」など後半戦は怒涛の展開となり、「ぐるぐるワンダーランド」でフロアが一体となり本編は終了した。アンコールの「チェリボム」では、すぅは自身のシグネイチャーモデルであるSILENT SIREN Telecasterを抱えて登場、ホワイトのカラーリングがとても映えるだけでなく、抜けの良いサウンドで会場を包み込んだ。

今回の公演は、まさにSILENT SIRENの現在地を示す全身全霊のライヴであったが、印象的だったのはギターやベース、そしてキーボード、すべてがバランス良く耳に入ってきたこと。3人編成となった彼女たちであるが、音作りからパフォーマンスまで、最高のものを魅せるという強い決意を感じた好演であった。


【SET LIST】
1. Sus4
2. milk boy
3. フジヤマディスコ
4. 衝動
5. 八月の夜
6. 女子校戦争
7. ALC. Monster
8. 最愛の君へ
9. stella☆
10. FAMILIA
11. 揺揺
12. Starmine
13. HERO
14. オンリーワン
15. DanceMusiQ
16. 恋のエスパー
17. ぐるぐるワンダーランド

ENCORE
1. KAKUMEI
2. チェリボム


SILENT SIREN:https://silent-siren.com/

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