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B x B | ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)× 新井和輝(King Gnu)-後編-

バンド全体を操作できる瞬間。常にそういう状態にいるのがプレイヤーとしての目標

日本を代表するベーシスト同士による対談企画「BxB」。Precision Bassを愛用するOKAMOTO’Sのハマ・オカモトと、5弦Jazz Bassを駆使するKing Gnuの新井和輝によるベーシスト対談。後編は、キャリアを重ねるにつれてより深まっていく、ベースと自分自身との関わりについて。そして、理想のベーシスト像について語ってもらった。

ベーシストは繊細な、ちゃんと物事を考えている人が多い気がする(ハマ・オカモト)

― ベースを弾いてきて良かったことと言うと何でしょう。

ハマ・オカモト(以下:ハマ) 10年ぐらい続けてきたことで、長所というか得意なことになったと思うんですよ。そういう意味で、人に認められるところまで持っていけたのは、やってて良かったなと。これがなかったら何もないので。人に憧れられる、参考にされる対象になれたのかなと。新井君で言うRADWIMPSの武田祐介さん、僕で言うと亀田誠治さんとか。顔も知らない誰かにとって、自分がそういう存在になっているのはすごいことだと思うから。

あと、よくベースの人はセクシーだとか、ベースはエロいとか、子宮に響く、とか言われるけど、そのご意見に関してはどうリアクションしていいのかわからないよね(笑)。

新井和輝(以下:新井) 会釈しかできない(笑)。そもそも、表に出る楽器じゃないし、ベースの音を聴き取れない人もいたりするし。その特性自体が、フェティシズムにリンクしているのかなって思いますけどね。

ハマ そう言われる傾向にあるパートだとしても、実際その人がそうかというとまた違うんです。だから困る。すぐ変態だとか言われる(笑)。

新井 でも、楽器と人柄って似ているなっていうのはあって。そういう意味では、ベーシストはいい奴が多いと思っているんですけど(笑)。

ハマ それは言っておこう。気を遣うというか、繊細な、ちゃんと物事を考えている人が多い気がする。

― バンドの中でフラットな見方ができる人が多いんでしょうね。ベースを弾く時に心がけていること、意識していることは何でしょうか。

新井 俺は何も考えない、無心です。何も考えないでできている時が一番いい状態ですね。それはジャズ的な考え方ですけど。

ウッドベースの先生に、“この時はこうだから”って教わっても、“それを本番では全部忘れてやりなさい”って言われるんです。コードがこうだからこういうフレーズだというのはやめて、その瞬間だけで音楽をやりなさい、それがジャズだからって。そういう教えを僕は受けてきているので、その瞬間に思ったことをシームレスに弾く練習はするけれど、そのための練習はしない。そういうことを心がけています。

ハマ なるほどね。僕が意識しているのは、”楽しい”っていうことかな。“楽しい”っていうのは伝わるので、楽しんでやれるように練習するし準備もしますけど、そこはちょっと通じるかもしれない。完璧に弾こうとはあまり思わないし、特に自分のバンドは何をやってもいいと思っていて。ライヴに来る人って、1音1音間違えないで弾くことにお金を払って観に来ているわけじゃないと思うので、自分なりに楽しんでやろうと。あとは、一緒に演奏しているメンバーをいかに見ているかが重要。一度、終始譜面を見ながら演奏するというライヴを経験したんですが、ステージを終えて、覚えている景色が譜面台しかない(笑)。それって本当に寂しいなと思って。体に入っていればいるほど、他のメンバーを見たり、メンバーの演奏を聴いたりする余裕が出るので、無心というのはわかりますね。

新井 音楽を考えているようで考えていない状態、極限までフラットな状態でやるというのが僕は好きですね。

Jazz Bass7色だとしたら、Precision Bassは墨のように単色で濃淡で描くカッコいい絵(新井和輝)

― 今後、こんなミュージシャンになりたい、目指したいという理想像はありますか?

ハマ ベースを弾いていない時が一番カッコいい人がいいです。ベースを持っているだけでカッコいい人っていると思うんです。ベースと体がシンクロしているような、そういう次元の人って素敵だと思いますね。白玉(全音符)だけでも構わない、説得力が乗るから、みたいな。それはベースを続けることでしか得られないので、頑張って続けようと思います。

新井 僕はバスケがすごく好きで。サッカーもそうですけど、シューターの前にアシストをする人って必ずいるじゃないですか。シュートの一歩手前のお膳立てをする人。そういう人になりたいんです。

ハマ それは楽器とシンクロするね。

新井 バスケで言うと“ポイントガード”という役目なんです。自分がゲームを組み立てて、最終的にノーマークの人を見つけてパスを出して、その人にシュートさせて、入ったらOK。音楽をやっていて、たまにそういう瞬間があるんです。バンド全体を操作できる瞬間。司令塔になれている、パスを出せている、回せている、完全に音楽の渦の中心に入っている時があったりして。その状態が気持ちいいし、常にそういう状態にいるのが僕のプレイヤーとしての目標ですね。

ハマ カッコいい。どうしよう俺、持ってるだけでいいとか言っちゃった(笑)。いい話だね。でも確かに、そういうところがある楽器だよね。

新井 そこでしれっとノールックパスとか出したら、それだけでシュートよりも沸くことがあるんです。“今のパス、ヤバい!”って。いいパスを出せれば俺は決めなくていいよ、ということなんです。それでいてチームは勝利に向かっている。それが理想ですね。

ハマ もう、新井君はそこにいるよ。俺は訂正しませんけど(笑)。

新井 ハマ君はその域に行っていると思います。いるだけでいいというか。チームで言ったら監督ですよ。いるだけでチームがまとまり、現場をより良くする。ある種、同じですよ。

ハマ 話をまとめてもらって助かった(笑)。

― お二人が思うJazz Bassの特徴、魅力について教えてください。

新井 Precision Bassと比較するとわかりやすいですけど、絵を描くパレットがあるとして、そこで保持している色の傾向が違うということですね。Jazz Bassが7色持っているとしたら、Precision Bassは墨のように単色で濃淡で描くカッコいい絵。いい絵というのは両方にあって、“どっちがいい”という話ではないじゃないですか。油絵と水墨画、どちらかが優れているわけではないですよね。たまたまモノクロっぽい絵だから、Precision Bassのほうが男らしいという表現になっているわけで。そもそも、絶対的にPrecision Bassの曲だねとか、Jazz Bassの曲だねっていう基準があるのは、もともと求められている色彩感が関わっているんじゃないかな。

ハマ 初心者にJazz Bassの比率が高いのは、そういうことだと思うよね。だって、いきなりモノクロしかないっていうのはハードルが高すぎる。

新井 それに、今聴いているゴスペルのベーシストとか、憧れている人たちがフェンダーの5弦Jazz Bassを使っている率があまりにも高いというのも、僕がJazz Bassを使う理由のひとつですね。

― フェンダーのAmerican Professional IIシリーズを使ってみての感想はいかがですか?

新井 個人的にこのJazz Bassのフレットの処理、高さと細さがツボですね。現代的な要素もバランスがいいし。単純に、新しい物が作りたければこの形状から逸脱した方向でいくらでも新しい物が作れるのに、それは絶対にやらない。そのスタンスも感じますね。しかも、鳴りもヴィンテージの匂いがするんですよ。ヴィンテージではないですけど、少しそういう匂いをさせているのはすごいなと思いました。

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ハマ・オカモト

1991年東京生まれ。ロックバンドOKAMOTO’Sのメンバー。
2021年には5カ月連続でシングルを配信リリース。
6月30日にKT Zepp Yokohamaにてワンマン公演「Young Japanese in Yokohama」を開催。ベーシストとして様々なミュージシャンのサポートも行い、2013年に日本人ベーシスト初の米国フェンダー社とエンドースメント契約を結ぶ。ラジオやテレビ・雑誌など各方面でレギュラー番組を担当し、あらゆるフィールドで活躍する。2020年5月には自身のムック本「2009-2019“ハマ・オカモト”とはなんだったのか?」を発売した。
› Website : http://www.okamotos.net/


新井和輝

King Gnuのベーシスト。1992年生まれ、東京都出身。中学生時代、友人たちとのバンド結成をきっかけにベースを始める。高校時代、先輩に連れられて観たジャズセッションのライヴでジャズに目覚め、ブラックミュージックに深く傾倒。日野“JINO”賢二、河上修に師事し、ピノ・パラディーノ、ミシェル・ンデゲオチェロ、マーカス・ミラー、レイ・ブラウンなどから影響を受ける。大学時代にセッションで出会った勢喜遊を通じ、常田大希(Gt,Vo)、井口理(Vo,Kb)と前身バンド“Srv.Vinci”として活動を開始。 2017年4月、バンド名を“King Gnu”に改名。 2019年、2ndアルバム『Sympa』でメジャーデビュー。2020年1月リリースのアルバム『CEREMONY』は、オリコン週間アルバムランキング及びデジタルアルバムランキングの2部門で初登場1位を獲得。
› Website:https://kinggnu.jp

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