Color Your Style | 山本耕史
多くの話題作に出演している俳優の山本耕史がギタリストとしてプロ級の腕前を持っていることをご存じの方は多いことだろう。その彼が今回試奏するのは、フェンダーのアコースティックギター、Californiaシリーズ。フェンダーのエレクトリックギターのノウハウを基に作られたアコースティックギターを、山本はどう感じたのか、そのインプレッションとともに彼のギター歴も聞いた。
Palomino Vintageなら家族の一員になれそうですね
──山本さんがギターを弾き始めたきっかけは、10歳の時に出演したミュージカル『レ・ミゼラブル』の楽屋でギターを弾いていた野口五郎さんから“弾いてみる?”と勧められたことだったそうですね。
山本耕史(以下:山本) そうですね。そしたら、翌日だったかな。エレキギターと小さいアンプを持ってきてくれて。当時、すごくかわいがってもらっていたんですよ。それから弾き始めたんですけど、その頃はまだYouTubeなんてなかったし、教本も何を買っていいかわからなかったから、中学1年の終わりぐらいにBOØWYを知るまでの3年間はドレミファソラシドを延々弾き続けていました(笑)。
──その後、BOØWYを知ったことをきっかけに本格的に弾き始めたと。
山本 そうです。友達に聴かせてもらって、すげえカッコいいじゃんってところから布袋寅泰さんのギターにハマって、タブ譜を買ってきて弾いたら、いきなりけっこう弾けたんですよ。たぶん、ドレミファソラシドをずっと弾いていたから基礎ができていたのか、最初に弾いたのは「BABY ACTION」だったかな。その他にもいろいろな曲がわりと弾けたから最初から楽しくて、基礎ってやっぱり大事なんだって思いました。それから同級生とBOØWYのコピーバンドを組んだんです。
──当時はどんな練習をしていたんですか?
山本 3年生にギターの弾ける先輩がいて、その人からミュートとかハンマリングとかプリングとか教えてもらいながら、毎日毎日弾いて、中3の時には文化祭でライヴできるぐらいにはなったんですよ。
──そのライヴというのは…。
山本 もちろん、全曲BOØWYのコピーです(笑)。
──その後、BOØWY以外にもいろいろなアーティストを聴くようになったと思うのですが。
山本 そうですね。いろいろ聴いたけど、やっぱりギタリストが多かったです。エリック・クラプトン、ヴァン・ヘイレン、マイケル・シェンカー、ゲイリー・ムーア、スティーヴィー・レイ・ヴォーン。最終的に自分が好きになったのはブルーステイストのロックでした。レニー・クラヴィッツもけっこう好きですね。MR. BIGとか、日本だったら聖飢魔Ⅱとかも聴いたけど、布袋さんからの流れなのか、僕はリズムを刻むタイプのギタリストが好きだったみたいです。
──最近もいろいろ聴きますか?
山本 たくさん聴くわけじゃないけど、ちょっと前にロイヤル・ブラッドはめっちゃカッコいいと思いました。ああいう重たいサウンドも好きです。でも、ロイヤル・ブラッドってギターがいないんですよね(笑)。
──そうですね。ベースでギターサウンドを鳴らしているんですよね。ところで、本日はアコースティックギターを試奏していただきましたが、山本さんがアコースティックギターを弾き始めたのはいつだったんですか?
山本 20歳とか21歳だったから、もうずっとあとですよ。19歳の時に『霧の子午線』という映画で玉置浩二さんとご一緒させていただいたんですけど、メイク中もアコギを弾きながらずっと歌っていて。それで玉置さんのCDを聴くようになって、玉置さんみたいに弾けたらカッコいいと思ってアコギを買ったんです。
──本日はCaliforniaシリーズのPalomino Vintageを弾いていただきましたが、いかがでしたか?
山本 アコギなのに、こんなに鳴るんだってまずは思いました。バーンって弾いたとき、それに応えてくれる感じが良かったんですよ。すごく弾きやすいし、ちゃんと鳴っているし、出したい音にきっちり応えてくれる感触がありました。これ、もちろん新品ですよね?
──新品です。
山本 そうか、新品でもこれだけ鳴るのか。
──Californiaシリーズは、それこそカリフォルニアのプールサイドとか、ビーチとかで気軽に弾いてほしいというコンセプトで作られているので頑丈に作られているというか、ロックアーティストがライヴで思いっきりかき鳴らしても全然イケるギターなんです。
山本 僕にぴったりですね。僕はスプレーをシューってやって、キレイに手入れをしてみたいなのが苦手なんですよ。そもそもエレキから入っているからかもしれないけど、弾いたら弾きっぱなしというか、そのまま置きっぱなしにして、湿度も気にしないタイプなんです。ビーチに持っていけるのはいいですね。1950年代製のアコギも持っているんですけど、さすがにそれは持っていけない。でも、これだったらキャンプとかもね。僕の父が山に住んでいるから、そこでバーベキューをやりながら弾いたりするんですけど、やっぱりヴィンテージギターは持っていけないじゃないですか。だから1万円前後のアコギを持っていって楽しくは弾いているんだけど、やっぱりちょっと物足りない。でも、このPalomino Vintageぐらいだとちょうどいいかもしれない。ちょうどいいっていうのは、高級すぎるとメンテナンスも大変だし、子供も触ったりするから何かあったらどうしようって心配もあるしってことなんですけど、これなら家族の一員になれそうですね。ボディの色も色褪せていったり、どこかにぶつけて傷ができたりしてもそれが味になっていく気がします。
フェンダーと言えば僕の中では一番のメーカー
──山本さんはいろいろなメーカーのギターを弾いていらっしゃいますが、フェンダーギターにはどんな印象がありますか?
山本 一番最初に買ったフェンダーギターは、1974年製のサンバーストのStratocasterだったんですよ。ロサンゼルスで買いました。やっぱりエレキから入っているから、フェンダーと言えば僕の中ではもう一番のメーカーですよ。ただ、ギターを買いたいと思った時には手が届かなかったから、20歳を過ぎてからけっこうドキドキしながらストラトを頑張って買ったんです。実は僕が最初に出した『IMAGINE』ってCDのジャケットに映っているのは、そのギターなんですよ。ただ正直、今日弾かせてもらうまでアコギのイメージはなかったですね。
──じゃあ今回、Palomino Vintageを弾いてフェンダーに対するイメージが新たになったところもあるわけですね。
山本 最初にPalomino Vintageと(同じCaliforniaシリーズの)Malibu Vintageの2本を弾かせてもらってPalomino Vintageに決めたんですけど、同じアコギでもキャラクターがこんなに違うんだって思いました。Malibu Vintageはもうちょっとソフトに弾きたくなっちゃう感じがしたんですよ。これだけキャラが違うと、他のアコギもいろいろ弾いてみたくなりますね。
──これからアコギを始めたいと思っている人にアドバイスをいただけないでしょうか?
山本 Palomino Vintageは超オススメですよ。初心者だからって安いギターを買うよりも、ちょっといいギターを買ったほうが後々いいと思います。もしかしたら、途中でやめちゃうかもしれないけど、そう言えばギターがあったなってまた弾き始めた時に、いいギターだったら“めっちゃいいじゃん”ってなると思うんですよ。だからって、あんまり高いのを買っちゃうとプレッシャーになるし、逆に安いのを買うと物足りなくなってすぐに次のを買いたくなっちゃう。そういうことを考えると、Palomino Vintageは価格という意味でも、これからアコギを始めたい人たちに一番フィットしているんじゃないですか。僕らみたいに、ずっと弾いてきた人たちが気軽にどこかに持っていきたい時にもぴったりだし、弾いていけば弾いていくほどライヴで弾いてみちゃおうかなと思うし、すごくオールマイティな感じがしますね。
──なるほど。アコギとの付き合い方についてもアドバイスをいただけないでしょうか?
山本 その人の性格にもよりますけど、僕はアコギに親近感があるんですよ。弾けば弾くほど会話できるようになるというか、仲良くなれると思うんですよね。すごく大切な友達を作っていくイメージがあると言ったらいいのかな。だから、大切にしてあげるのもいいし、時には厳しく接するじゃないけど、バーンって弾いてあげるのもいいし、いろんな付き合い方がむしろエレキよりもできますよね。エレキはもうちょっとテクニカルというか、メカニカルなところに気を遣わなきゃいけないし、アンプがないと弾けないけど、アコギはどこにでも持っていける。僕、友だちと集まった時によく即興で曲を作るんですけど、アコギだとすぐに作品になるから、弾けば弾くほどベストフレンドみたいになって付き合っていけるんじゃないかって思います。
──実体験に基づいた貴重なアドバイスをありがとうございます。最後に、直近のお仕事について聞かせてください。
山本 『はたらく細胞』という映画が12月13日に公開になります。キラーT細胞を演じているのですが、新型コロナウイルスを殺傷する能力をキラーT細胞が持っているという研究発表があった直後に映画の情報が公開されて、山本耕史が助けてくれるらしいぞって、なぜか僕が称賛されるという不思議な現象が起きたのは面白かったですね(笑)。
California Series Palomino Vintage(Sienna Sunburst)
山本耕史
1976年、東京都出身。1987年に東宝ミュージカル『レ・ミゼラブル』で舞台デビューし、1993年のドラマ『ひとつ屋根の下』でブレイク。その後、大河ドラマ『新選組!』『平清盛』、ドラマ『華麗なる一族』『Mother』『薄桜記』『きのう何食べた?』、映画『それでもボクはやってない』『彼岸島』といった幅広い作品に出演。ミュージカルやCMにも多数出演。近年の参加作品にドラマ『不適切にもほどがある!』『地面師たち』、映画『キングダム 運命の炎』『もしも徳川家康が総理大臣になったら』などがある。
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