
緑黄色社会 Channel Us 2025 at 東京体育館
ポップな楽曲はもちろん、メンバーそれぞれの個性が際立つバンドアンサンブルも魅力の4人組バンド、緑黄色社会が7月4日(金)と5日(土)、東京体育館で〈Channel Us 2025 at 東京体育館〉と題したアリーナ2days公演を開催した。その1日目の模様を、メンバーたちが新たに導入したギター/ベースに注目しながらレポートする。
リョクシャカのモダンなバンドサウンドに馴染むAmerican Acoustasonic Telecaster
9,000人の手拍子と歓声に迎えられ、「Party!!」のダンサブルなポップサウンドでアリーナを揺らすようにライヴは始まった。そこからリョクシャカこと緑黄色社会はサポートドラマー・比田井修、そして曲によっては4人編成のコーラス隊も迎えながら、ボーナスステージ(=アンコール)も含め、全20曲(内1曲メドレー)を披露した。
2月にリリースした5thアルバム『Channel U』を携えて、3月8日から6月22日まで計29公演を行った〈Channel U tour 2025〉。その総決算とも言える東京体育館2days公演は、両日ともにソールドアウトとなった。それに加え、未就学児から70代までというアリーナを埋めた観客の幅広い年齢層が、国民的人気バンドというリョクシャカの現在地を今一度印象づけながら、「29公演を経て、ひと回り、ふた回り成長した状態の今です!」と長屋晴子(Vo, Gt)が宣言した通り、圧倒的なバンドとしての姿を見せつけたのだった。

Photo by 西槇太一
2時間半に及んだライヴの見どころは幾つもあるが、ことバンドアンサンブルにおいては1曲目の「Party!!」で早速、American Ultra II Telecasterを使ってシャープエッジな音色でコードのカッティングを際立たせた小林壱誓(Gt)と、穴見真吾(Ba)がそれぞれに新導入モデルで奏でた音色に着目したい。
小林のAmerican Ultra II TelecasterはAvalancheと名付けられたオフホワイトのボディにシルバーのアノダイズドピックガードが映えるルックスが、これまで赤や青など原色のギターを愛用していた小林にしてはとても新鮮だった。そのAmerican Ultra II Telecasterは歪ませた音色でチョーキングした時の音の伸びも心地いい。

Photo by AZUSA TAKADA
そこから「sabotage」「これからのこと、それからのこと」とアップテンポの曲をつなげ、アリーナを揺らしていたバンドはさらにギアを上げるようにpeppe(Key)によるエキセントリックなピアノソロをはじめ、アグレッシヴなバンドアンサンブルも聴きどころだった「馬鹿の一つ覚え」、リョクシャカのレパートリーの中でもひと際ハードでタフなファンクナンバー「Monkey Dance」をたたみかける。その2曲で穴見がプレイしていたのが、ちょっと深みのある青いボディがムーディに映える新導入のAmerican Ultra II Jazz Bassだった。やや深みがかったボディの青色(Noble Blue)は、楽器のカラーバリエーションも楽しんでいるようにも思える穴見ならでは。

Photo by 西槇太一

Photo by 西槇太一
この日、穴見は全20曲中7曲でそのAmerican Ultra II Jazz Bassをプレイした。長屋の歌の裏でグリッサンドも交え、印象的なフレーズを弾いた「馬鹿の一つ覚え」をはじめ、低音を響かせるというよりは、音の抜けを意識してソリッドに鳴らす使い方が多かったように思うが、「Monkey Dance」ではスラップで鳴らしたレンジの広い音に、こんなふうにも鳴らせるのかとちょっとびっくりさせられた。
この7月4日がバンドの誕生日=結成日であることを記念して、LEDに映し出した歴代のアーティスト写真とともに「Bitter」から「ナイスアイディア!」までそれぞれの年代を代表する8曲をメドレーで一気に聴かせると、過去を懐かしむにはまだ早いと言わんばかりに続けてこの日配信リリースしたばかりの新曲「illusion」も初披露した。リョクシャカ流のドゥーワップナンバー。小林がAmerican Ultra II Telecasterで弾いたカッティング、ソロともに歪みの乗りがいい。特にカッティングは歯切れの良さというか、スタッカートのニュアンスがぐっと前に出るところもこのギターのポテンシャルの一つだろう。
荘厳な世界観に観客を誘い、釘付けにした「オーロラを探しに」から一転、“みんなの声を聴かせて!”と長屋が呼びかけ、観客のシンガロングとともに一体感を作り上げたアンセミックな「あのころ見た光」は、穴見のAmerican Ultra II Jazz Bassの抜けのいい音色で刻む8ビートがアップテンポのグルーヴの要になっていたと思う。
続く「サマータイムシンデレラ」は、切なさが滲むポップソングだ。この曲をはじめ、長屋はこの日、計3曲で黒いボディがシックに映えるAmerican Acoustasonic Telecasterを使っていたが、バッキングのコードストロークを弾きながら、エレキよりも柔らかい、それでいて同期もふんだんに使うリョクシャカのモダンなバンドサウンドに馴染む音色を求めていたように感じられた。
観客のシンガロングとともに、さらに大きな一体感を作り上げた「Mela!」で終わらず、本編最後にバンドアンサブルが白熱するエレクトロなダンスロックナンバー「PLAYER 1」を持ってきたところにリョクシャカのバンドとしての矜持を感じた。
小林が手にしていたのはAmerican Ultra II Telecaster。サステインをカットして、ドライな音色でコードをかき鳴らした、そのアタックのインパクトがぐっと前に出る。そんなところも聴きどころだった。American Ultra II Telecasterを手にしたことで、小林のプレイはさらに以前にも増してアグレッシヴになった印象だ。
「13年前の今日、初めてライヴハウスで演奏しました。漠然とした自信はあったけど、こんな景色は想像していませんでした。どこを取っても意味のある13年間だったと思います。いろいろなものが変わったと思うけど、案外変わっていないことのほうが多い気がします。メンバーの関係性、友達と遊ぶように音楽を作っていること、みんなの目の前で演奏する時間が愛おしいこと。変わらないものを大事にしながら、メンバーと、目の前のみんなともっと数字を重ねていきたい。もっと大きな景色を見せるからね!」(長屋)
ボーナスステージ(=アンコール)の最後を飾ったのは、さらなる高みを目指すバンドの決意と共に、観客の未来に寄り添うように演奏したリョクシャカの青春賛歌「恥ずかしいか青春は」だった。
“もっと大きな景色を見せるからね!”。その言葉通り、9月30日から〈Ryokuoushoku Shakai ASIA TOUR 2025〉を開催することが決定している。〈Channel Us 2025 at 東京体育館〉と題したこの2daysライヴは、ツアーの総決算であると同時に新たな飛躍のステップになったようだ。リョクシャカのさらなる飛躍に期待しながら、4人がこれからどんな新しい音色を奏でてくれるのか楽しみにしている。

Photo by 西槇太一
【SET LIST】
1. Party!!
2. sabotage
3. これからのこと、それからのこと
4. 馬鹿の一つ覚え
5. Monkey Dance
6. マジックアワー
7. 僕らはいきものだから
8. 始まりの歌
9. メドレー
Bitter
リトルシンガー
幸せ
夏を生きる
たとえたとえ
陽はまた昇るから
ピンクブルー
ナイスアイディア!
10. illusion
11.オーロラを探しに
12. あのころ見た光
13. サマータイムシンデレラ
14. 花になって
15. Mela!
16. キャラクター
17. PLAYER 1
BONUS STAGE
1. コーヒーとましゅまろ
2. Shout Baby
3. 恥ずかしいか青春は