Stratocaster 70th Anniversary Special Event with Shigeru Kishida × Katsushiro Sato

くるりの岸田繁(Vo,Gt)とBREIMENのサトウカツシロ(Gt)が、去る6月9日に行われた〈Stratocaster 70th Anniversary Special Event with Shigeru Kishida×Katsushiro Sato〉に登場。今年70周年を迎えたStratocasterを祝う、公開取材イベントの模様をレポートする。

ストラトはギターの王様みたいなもんですよね。ギターのど真ん中

今年70周年を迎えたStratocasterをセレブレートするイベントが、アメリカだけでなく日本でも開催。その第四弾〈Stratocaster 70th Anniversary Special Event with Shigeru Kishida × Katsushiro Sato〉が開催された。

これまでの二回はザ・ストラトプレイヤー同士による対談だったが、今回は違う。岸田はTelecasterがメインだし、サトウもJazzmasterがメインだ。そんな異色の対談だけでも注目なのだが、70周年記念コレクションモデルを使用してのライヴもあるということで、幸運にも抽選に当たったオーディエンスで埋まったFender Flagship Tokyoの地下1階は、開演前から熱気に溢れていた。


定刻の19時。岸田とサトウが登場すると会場から大きな声援と拍手が湧き上がった。ヤンチャな雰囲気のサトウと、のんびりとした京都弁の岸田のマッチングが絶妙で、最初の挨拶から会場は早くも温かい空気に包まれていく。

二人の出会いは、昨年のイベントで一緒になったことがきっかけだったそうだ。もともとサトウはくるりの大ファンで、BREIMENのライヴを見た岸田がサトウのギタープレイにやられたらしい。BREIMENのステージを袖で見ていた岸田は、ライヴが終わったあとにサトウに声をかけギタープレイを称賛。その日のくるりのライヴMCでもサトウのギターについて語ったばかりか、イベント後にSNSでもプレイを激賞。彼のプレイの魅力を、岸田はこう語る。


岸田「ステージ袖でカツシロ君のプレイを見ていて、天才やと。BREIMENの音楽ってポップやけど、すごく難しいんですよ。僕、レベル的に入られへんもん。演奏技術が必要やから(笑)。そのBREIMENの音楽を絵にしたようなギターをカツシロ君が弾いておって。カツシロ君をずっと撮っておいたらBREIMENのMVになるくらい」

サトウが「メンバーも気付かないところまで気付いてくれて本当に嬉しいです」と応えると、岸田が「うち来る?」と返しオーディエンスから大きな笑いが起きた。

さて、冒頭に書いたように二人のメインギターはストラトではないが、二人ともストラトも弾く。二人にとってストラトはどんなギターなのだろうか? そんなMCの質問からストラト対談が始まった。


サトウ「まずはパーツが多いですよね。ピックアップも三つあるし、ピックアップセレクターも、年代によるけど基本的には5ウェイになっている。アームもついているしボディ裏にバネ(トレモロスプリング)が入っている。すごくカスタムのし甲斐があるギターだし、それらをイジるだけで新しい音を作れる」とストラトの特徴を教えてくれると、岸田は「でもやっぱり、ストラトはストラトの音がしますよね」とストラトの音に着目する。岸田はTelecasterのイメージだが、こんな風にストラトに対する想いも聞かせてくれた。


岸田「今持っているこのストラトはよく使っているやつで、これを先に使こうてたんですけど、テレキャスを買ったら“もうテレキャスがいい”ってなって。それ以来、ずっとTelecasterを使っていたらテレキャスの人みたいになりましたけど、いつまで経っても憧れがあって。“やっぱギターはストラトでしょ”みたいな感覚はあるんですよ。ストラトはギターの王様みたいなもんですよね。ギターのど真ん中」

その憧れはどこから?とMCが聞くと「デヴィッド・ギルモア(ピンク・フロイド)のキーッて音、あれストラトでしか出えへん感じがするから、それが好きで憧れていたのはありますね」と少年のような笑みを浮かべながら答えた。


それぞれが持参したストラトの音を出しながら特徴を解説。サトウのストラトは、American Vintage II 1957 Stratocasterの改造モデル。ボディのカラー、ピックアップ、ブリッジ、さらにボディ裏のヒールカット加工と改造しまくっている。そして、ストラトで一番のお気に入りの音ということでピックアップをセンターにして音を出す。その一発の音で会場がどよめく。岸田も「ストラトの音だし、カツシロ君の音は完成してるね」とその音に引き込まれた様子だ。

一方の岸田は、くるりの佐藤征史(Ba)の父親から借りパクしたというストラト。おそらく90年代のものだそうで、くるりの初の公的なライヴで使用した思い出のギターだ。そのストラトを、彼が好きだというハーフトーンでぽろりぽろりと弾く。岸田の音もサトウの音も、ストラトだけが出せる音であると同時に、それぞれの個性をしっかり映し出しているのも、やはりストラトの魅力だと感心してしまう。

会場にギターの音が鳴り響くと、やっぱり二人の演奏が聴きたくなる。出会いから交流を重ねる二人だが、一緒に演奏するのは今日が初めて。持参したストラトの音を出し合いながら、自然と二人の初セッションがスタートするとオーディエンスから大きな拍手が起きる。


まずはブルースっぽいフィーリングからアッパーでスリリングな即興セッションを7分ほどぶちかました二人。オーディエンスも最高の笑顔だ。そして、ここで二人はギターを持ち替える。Stratocasterの70周年記念コレクションモデルだ。

サトウが70th Anniversary Player Stratocasterを、岸田が70th Anniversary Vintera II Antigua Stratocasterを持って再びセッションがスタート。今度はメロウな曲調で、まるで二人がギターで対話をするように7分ほどのセッションを披露してくれた。オーディエンスからの拍手が鳴りやまず、演奏が終わった二人もずっと笑顔の至極の時間だ。MCが70周年記念コレクションモデルのインプレッションを二人に聞く。


「トロけるような音も出せると思ったし、倍音もキレイなので歌いたくなるっていうかね」と岸田が言うと、何とサトウがくるりの「ばらの花」のイントロを弾き出した。びっくりした岸田だが、オーディエンスの大きな拍手も後押しし、サトウの演奏で岸田が「ばらの花」を歌うという嬉しいハプニングが。音楽、ギターにはこういう瞬間や奇跡があるからたまらないと誰もが思った瞬間だった。

サトウは70th Anniversary Player Stratocasterのインプレッションを「見た目が非常に華やかですね。とってもカワイイです。僕は黒いものとキラキラしたものが好きなので、どちらも持ち合わせているから最高です。スペックで言うと従来のPlayer Stratocasterとは違うピックアップが載っていて、American Vintage IIシリーズに載っているPure Vintage(’59 Single-Coil Strat)ピックアップが載っているのも特筆すべきポイントかなと。プレイアビリティもすごく良いです」と称賛してくれた。

ここでMCから最後の質問が投げられる。ビギナーへのメッセージだ。最初に答えたのはサトウ。「物事を続ける上で一番大事なのは、好きでいることと楽しむことだと思うんです。好きで楽しんでやっていたら、今日の僕みたいにこんなに素敵なことが起きるんです。ずっと聴いていたくるりの岸田さんと二人でイベントをやれるなんて、当時の僕は思ってもいなかったので、ぜひ楽しんで続けていただければなって思います。何よりも、まずはギターを手に取って始めてみてください。その時のギターがフェンダーだったら最高っすね」と笑顔でメッセージをくれた。

最後は岸田。「練習が好きじゃないんですけど、そんな私が最近よくやっている練習がメロディを弾くこと。まずは聴いたことのある曲のメロディを、ちょっと鳴らしてみるのがいいんじゃないですかね。メロディにはリズム、コードといろんな要素が入っているので、歌を歌ったらその曲をつかめる感じと同じように、ギターでメロディを弾いてみるといいんじゃないかなと思います。で、フェンダーのギターっていうのは、タッチがすごく素直に出るギターだと思うんですよね。もちろん、他のギターは他のギターで魅力はあるんですけど、フェンダーのギターは手に馴染むというか、弾いたら弾いただけの答えが返ってくる。いろんな音がわずかなタッチの差で出るので、機材的なカスタマイズも然り、あるいは指とかタッチで音をカスタマイズしていく感覚が持てると思うので、ぜひストラトとかを弾いてみたらいいんじゃないですかね」と締めてくれた。

素敵なトークとセッションへ大きな拍手が起き、二人は満面の笑顔で退場しイベントは終了となった。

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