
Signature Model Interview | 塩塚モエカ(羊文学) -後編-
“自分の音楽ってこうだよね”とか、そういうものをもう捨てちゃえばいい
2021年に次世代を担うギタリストを支援するフェンダーのアーティスト育成プログラム「Fender Next」に選出された羊文学。その後、塩塚モエカは2023年に“フェンダーアーティスト”のパートナーシップを発表している。このような布石もあり、いまや羊文学はアリーナ公演も成功させる一方で、海外にも頻繁に足を運ぶ人気バンドに成長し、塩塚モエカはそのオルタナロックサウンドの要と言える美しい轟音を奏で、ギタリストを志す若者の憧れの存在の一人となった。その彼女が待望のシグネイチャーモデル、Moeka Shiotsuka Jaguar moniを発売。インタビューの後編では、ギターと一緒に発売されるストラップとピックの話や、10月8日にリリースした最新アルバム『D o n’ t L a u g h I t O f f』を含むバンドの今後についても聞かせてもらった。
最初のギターと一緒の感覚で、自分も成長してもらえたらすごく嬉しい
──今回発売するシグネイチャーモデルをどんな人に弾いてほしいですか?
塩塚モエカ(以下:塩塚) 初めてギターを買った時、全然ギターのことがわからなくて、楽器屋さんに勧めてもらったのがAmerican Vintage ʼ65 Jaguarだったんです。同じように初めてギターを買うけど、どれにしようか悩んでいて、体が小柄な方にすごく合うと思います。これからギターをやってみたいという人に出会ってもらえると、長く使ってもらえるような気がします。音は私が使い込んできた感じに作ってもらいましたけど、使い込んでもらったらそこからまた変わると思うので、最初のギターと一緒の感覚で自分も成長してもらえたらすごく嬉しいです。もちろん羊文学のファンの方とか、私たちの曲をカヴァーしたい方にもぴったりだと思うし、そうじゃなくてもこの色(Aged Sonic Blue)のJaguarってすごくかわいいから、見た目でかわいいなって思った方にも手に取ってほしいです。
──このギターの名前の“moni”はどこから?
塩塚 私の大学生の時のあだ名なんです。モエカってカタカナで書いたら、字が汚くてモニカですかって言われちゃって。それ以来、大学生の時はみんなからモニって言われてたんです。
──ご自分の分身みたいな感じもあるんですか?
塩塚 確かにそうですね。
──ネックプレートに入っている塩塚さんの手書きサインは、ファンの方は嬉しいと思います。
塩塚 裏にこっそりと(笑)。いっぱい書いた中から一番いいサインを、レーザーでキレイに印刷していただきました。
──ストラップとピックもシグネイチャーモデルと一緒にオリジナルで作られたんですよね。両方ともペグと同じ蝶々の絵が描かれているんですよね。
塩塚 そうです。ちょっと線を太くしてもらいました。でも、ピックは他にもいろいろな柄があるんです。サインが書かれていたり、バンドのキャラクターのひつじちゃんが描かれていたりして。
──それが12枚、ケースに入っていると。
塩塚 ケースもかわいくないですか? オレンジ色でお店ですごく目立つと思います。
──そしてストラップはオレンジと黒の2色です。
塩塚 オレンジはステッチが白で、黒はステッチがオレンジなんですけど、あまり見たことがない組み合わせで、このギターにもすごく合うと思います。ちょっとパンキッシュなイメージも意識していて、この蝶々の印刷の滲んだ感じは、たまたまこういうふうに出てきたんですよ。でも、それがパンクの人が革ジャンに修正ペンとかポスターカラーで描く感じに見えてかわいかったので、直さずにこのままでいきたいと言いました。すごく気に入ってます。
──ストラップにも塩塚さんの自筆サインが入っているんですね。
塩塚 でも印刷されているのは裏なので、私のファンじゃない方もかわいいと思ってもらえたら、ぜひ使っていただきたいです。

毎日ギターに触ってあげて一緒に上達していきましょう
──今後の活動についても聞かせてください。日本武道館2daysを含む〈Hitsujibungaku Asia Tour 2025 “いま、ここ (Right now, right here.)”〉、最新アルバム『D o n’ t L a u g h I t O f f』のリリースを経て、2025年は羊文学にとってさらなる飛躍の年になるのではないでしょうか?
塩塚 鍛えられますね。アルバムも本当に久しぶりに出せて。
──ほぼ2年ぶりです。
塩塚 いろいろな作品の主題歌も収録されるという、これまでのアルバムとは違う作り方だったんですけど、ちゃんと自分たちの作品だって納得がいく形にまとめることもできました。ツアーで鍛えられ、年末も恒例のクリスマスライヴ〈まほうがつかえる2025〉が東京と大阪であるし、来年もまたツアーがきっとあると思うので、もっともっとたくましくなっていくのかなと思います。
──この1〜2年、バンドの規模は大きくなってきたと思うのですが、ご自身としてはまだまだ修行中という気持ちなんですか?
塩塚 まだまだわからないことばかりです。海外に行っても毎回違うことばかりですけど、日本でも新しいフェスに出たり、共演する方もはじめましての方が多かったり、テレビに出演しても慣れないことがたくさんあるので、鍛えられていくという感じですね。
──新しいアルバムではどんな挑戦がありましたか?
塩塚 “自分の音楽ってこうだよね”とか“うちのバンドってこうじゃなきゃ”とか、そういうものをもう捨てちゃえばいいかなという気持ち。そこに囚われても仕方がない気持ちのほうが、自分の印象としては強いんです。なので、ギター、ベース、ドラムと歌とコーラスだけで組み上げないといけないっていうのを1回やめたりしました。それは、タイアップの曲があったことで広がったのもあるんです。
──最後にビギナーにメッセージをいただけますか?
塩塚 私もまだまだビギナーの域ですけど、ちょっとずつ弾き続けていると、自分が上手くなっていることに気づく瞬間が時々あるんですよ。本当に根詰めて練習すると、確かに上手くなるかもしれないですけど、ちょっとずつでも楽しんで続けていったほうが、長い趣味になると思うんですよ。だから、毎日ちょっとずつでもギターに触ってあげて一緒に上達していきましょう。


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塩塚モエカ
羊文学のギター&ヴォーカル。全楽曲の作詞・作曲を務める。並行して行っているソロでの音楽活動は、映画やドラマの劇伴制作、CM歌唱など多岐にわたる。また、そのアイコニックなキャラクターからファッション・カルチャーシーンからも注目を集め、モデルや文章執筆なども行っている。羊文学としては、2023年、メジャー2ndフルアルバム『our hope』が第15回CDショップ大賞2023 大賞<青>を受賞。TVアニメ『呪術廻戦』「渋谷事変」エンディングテーマ「more than words」が国内ストリーミング1億再生を突破し、日本レコード協会プラチナ認定作品に選定されるなど大ヒットを記録。2025年、新曲「声」がフジテレビ系月9ドラマの主題歌に抜擢。5月に日本最大規模の国際音楽賞MUSIC AWARDS JAPANにて、最優秀国内オルタナティブアーティスト賞と「more than words」が最優秀国内オルタナティブ楽曲賞の2部門で最優秀賞を受賞した。
ライブ活動においては、2024年4月に開催した、キャリア史上最大規模の横浜アリーナ単独公演〈羊文学 LIVE 2024 “III”〉のチケットは発売開始直後3分で即完。2025年4月に初のUSツアー〈Hitsujibungaku US West Coast Tour 2025〉を完走。9月より日本武道館2daysと大阪城ホールを含む過去最大規模のツアー〈Hitsujibungaku Asia Tour 2025 “いま、ここ (Right now, right here.)”〉を開催。アジアツアーは全11公演がSOLD OUTした2024年に続き、2度目の開催となる。初のUSツアー「Hitsujibungaku US West Coast Tour 2025」を4月に完走。9月より日本武道館2daysと大阪城ホールを含む過去最大規模のアジアツアー「Hitsujibungaku Asia Tour 2025 “いま、ここ(Right now, right here.)”」を開催。
また、10月からは欧州6か国7都市を回る初のヨーロッパツアー「Hitsujibungaku Europe Tour 2025」も開催し、国内外問わず、グローバルな舞台へと活躍の場を広げている。
https://www.hitsujibungaku.info/

