The Professional Vol.3 | 長岡亮介
10月14日、全世界で発表された最新シリーズ“AMERICAN PROFESSIONAL II”。V-Mod IIピックアップ、新たなカラーバリエーション、象徴的なDeep Cシェイプネックなど、あらゆる面が刷新された本シリーズのローンチに合わせて、プロアーティストのアイデンティティやマインドを切り取るコンテンツ“The Professional”を展開。第3回目のアーティストは、自身のバンド“ペトロールズ”ではヴォーカル&ギターを務め、セッション&サポートギタリストとしても異質の輝きを放つ長岡亮介が登場。
― ギターを始めたきっかけは、音楽好きなお父様の影響ですよね?
長岡亮介(以下:長岡) それもありますけど、直接のきっかけは中学生の時に選択授業でギターを選んでしまい、ギターを弾かなくてはいけなくなってしまったからです。だから、誰かに憧れて弾き始めた、とかではないんです。
― うっかり始めてしまったと(笑)。
長岡 そうですね(笑)。家にも父が弾いていたギターがあったし、他にやりたいこともないと思って。
― プロへの道で言うと、わりと早い時期からお父様のバンドを手伝っていたのですよね?
長岡 そうですね。父は趣味でカントリーをやっていて、そのバンドを手伝っていたところ、ひとつ年上の近いカントリー歌手が新たに若いメンバーでカントリーのバンドを組みたいということで、俺のことを見に来てくれて。大学に入るタイミングでその人のバンドに加入して、それからはバイトのような感じでいくつかのバンドでカントリーをやっていました。多い時は月の半分くらいは現場でしたね。
― 明確にプロになろうと思ったのは?
長岡 大学を卒業する頃、椎名純平さんのバックバンドをやっていて、彼がメジャーデビューするタイミングだったんです。忙しかったしギャラももらえるし、このまま就職しないでいけるなと思って。だからなし崩し的な感じです。意外と父親が激怒したんですよね。
― そんな危険な道を歩むなと?
長岡 そうです(苦笑)。父は音楽が好きだったから、プロというものが大変なのもわかっていたんですよね。
― それから20年ほど経つわけですが、プロミュージシャンに必要な素養は何だと思いますか?
長岡 現場に行ったら最善を尽くすことじゃないですか。当たって砕けてみるのが大事だと思います。勿論徒労に終わることもありますけど。
― 長岡さんの場合は、ご自身のバンド“ペトロールズ”としての活動とセッションやサポートがありますが、サポートの場合、きっちりと準備をしてから臨むのですか?
長岡 最初からガッチリやっておかないといけない場合もあるし、現場に入ってから一緒に作り上げていく場合があるから現場によるかな。でも、やれることはやります。
― 現場によって求められるものも違いますし。
長岡 そうですね。でもまぁ、“お好きにどうぞ”という現場のほうが今は多いかもしれないですね。
― そのほうが肌に合っている?
長岡 そうですね。決まっているということは、正解があるわけじゃないですか。そうしたら不正解もある。それはミスってことでしょ? 正解がないとミスもなくて、全部正解なので(笑)。それは“逃げ”だなとは自分でも思いますけど、面白いことが起きたりもするので、それも大事だと思います。
― 自身のバンド、ペトロールズでプレイヤーとしてこだわっていることは?
長岡 演奏するだけで精一杯ですね。歌も歌っているし、ギターも弾いてエフェクターも踏んでいるのでけっこう大変です。曲も繊細な部分があるし、一生懸命やっています。もちろん楽しんでいますが、“きっちりやろう”という感じですかね。
― 自分のバンドとサポート、どちらに重心を?
長岡 どちらも面白いですから、どちらも好きなんです。ただ自分のバンドの時は、ギターを弾くというよりは、自分の好きな音楽を作って演奏してみたいという気持ちでやっています。
― 今でもギターは毎日弾いていますか?
長岡 ほとんど弾かないです。練習しなきゃダメだと思うんですけど、全然練習しないんですよ(笑)。現場があればそのための練習はするけど。あとは、曲を作る時にギターを持つ感じです。
― 練習は好きではない?
長岡 練習ってことをあまりしたことがなくて。曲を聴いてコピーするだけだったので。今までそれできているから、スケール練習や運指の練習をやっていないんです。それなのにこういう場所に呼ばれて、ちょっと気恥ずかしいです(笑)。
― (笑)。それこそ、長岡さんに憧れているギタリストはたくさんいるのに。
長岡 ギタープレイ的なことはあまり語れないんですよ、マジで(笑)。ただコピーをしていただけ。譜面もちゃんと読めないですから。
― いわゆる現場叩き上げですね。
長岡 そうです。それがヘンな癖になっているんでしょうね。自由に演奏すると、カントリースタイルが滲み出てしまいます。だから“すぐに俺のギターだとわかる”と言われます。それが良いのかどうかわからないですけど。それで許してくれる人たちがいるというか(笑)。自分が好きなギタリスト達も個性的で一聴してすぐわかるような人が多いので、そう言われるのは嬉しいことだなと思います。何でも演奏できて、何にでもフィットできる人には憧れますが、そういうのはそういう方たちに任せておいて。負け惜しみですけど(笑)。
― ところで、フェンダーとの出会いは?
長岡 僕が中学校2年生の時に、Stratocasterを購入したのが最初です。
― なぜストラトを?
長岡 父が選んだんです。その次に買ったのがTelecasterですね。高校3年生の終わりぐらい。69年製の古いTelecasterでした。すごく安かったんですが、よく鳴っていて“おー、これがTelecasterか”と。刷り込みが入ったかもしれません。思い返すと、最初の2本は確かにフェンダーなんですよね。
― そのあともフェンダーのギターを弾いていますが、改めてフェンダーというギターメーカーはどのように映っていますか?
長岡 フェンダーの製品は、発売当時は異質だったと思うんですよ。嗜好品というよりも、もう少しプロダクト寄りな印象で。合理性を求めた理詰めのような印象で、それまでに無かった存在だったと思うんです。それが定着したけど、未だにプロダクトメーカーとして進化し続けているでしょ。楽器をやる人って、いろいろなタイプがいるから難しいと思うんです。懐古主義の人もいるし。そういうのも踏まえつつ、進化させていることがすごいなと思いますね。
― オーセンティックなものと進化していくもの、どちらに惹かれますか?
長岡 以前は古いものが好きだったけれど、最近はあまり興味がなくなってきちゃって。もうピカピカでいいなって。
― 何かそう思うきっかけがあったのですか?
長岡 今の人って、みんなそうだなと思うんです。好きな音楽を聴いていても、新しいものって無駄がないんです。ヴィンテージの音がいいというよりも、“この曲にこの音が必要だから”みたいな選び方をしていて、そのほうがカッコいいなと。
― 今回弾いてもらったAMERICAN PROFESSIONAL IIもそんなギターだと思います。
長岡 そうですね。まずギターを持った瞬間に思ったのが、ネックにしても特に癖がないんです。これは、今使う人たちのことを考えているのだと思います。でも、そのように標準化しながら個性があるのはいいですよね。いちいち考えて作られていますよね、このAMERICAN PROFESSIONAL IIは。
― 弾きやすいですか?
長岡 弾きやすい。最初に手に入れた69年製のTelecasterに比べれば、断然弾きやすいです。いきなりタメ語でいけるみたいな(笑)。
― それって実は良いことですよね?
長岡 そうだと思います。ギターには、クセのあるものを弾きこなす楽しみもあるとは思うんです。他のヤツには弾きこなせないやつを俺は上手く鳴らせるんだぜ、というような。でも、フェンダーにはそういうマニアックなラインがあるから、そこでやればいいでしょうし。
― 今後、AMERICAN PROFESSIONAL IIをどのように使っていきたいですか?
長岡 ひとまず現場に持って行ってみようかなと思います。すぐに使えると思いますね。
― やはり現場主義なんですね。
長岡 そうですね。やっぱり現場でやらないと全然わからないですから。一人で弾いていて“コレめっちゃいいな”と思っても、現場で他の楽器が鳴っていると全然聴こえてこないこともありますからね。
― 最後に、プロミュージシャンを目指している人にメッセージを。
長岡 結局、現場を一生懸命やるしかないですよ。全力を尽くすことだと思います。音楽を作る時も、楽器を演奏する時も。
AMERICAN PROFESSIONAL II TELECASTER®
世界で最もプレイされているエレクトリックギター&ベースの新シリーズ”AMERICAN PROFESSIONAL II”が登場。V-Mod IIピックアップ、新しいカラーバリエーション、そして、アイコニックな”Deep C”シェイプのネック。American Professional II Telecaster®の手に馴染む感覚とサウンドの多様性は、手に取り、耳にした瞬間、すぐにお分かりいただけることでしょう。プロの楽器の新たなスタンダードとなるような幅広い改良が、American Professional IIシリーズには詰め込まれています。
PROFILE
長岡亮介
1978年生まれ 神出鬼没の音楽家。ギタリストとしての活動の他に楽曲提供、プロデュースなど活動は多岐にわたる。「ペトロールズ」の歌とギター担当。
› Website:http://www.petrolz.jp