Cover Artist | クリープハイプ -前編-

出来上がった曲をお客さんの前で演奏するのがゴールだと思っています

CreepHyp

唯一無二の歌と楽曲で、日本のロックシーンを牽引するバンド“クリープハイプ”から、小川幸慈(Gt)と長谷川カオナシ(Ba)がCover Artistに登場。インタビュー前編は、コロナ禍の外出自粛期間中の様子と、6月5日に配信にされた新曲「およそさん」などについて話を聞いた。

4人でスタジオに入り 空気中に音を出すのは、すごく楽しいことだと思った
 

― コロナ禍の外出自粛期間中は何をされていましたか?

小川幸慈(以下:小川) 2月からツアーが始まっていたのですが、2月後半からライヴが延期になって。当初はどうなるのか状況が見えなかったので、いつでもツアーが再開できるような気持ちの張り方をしていたのですが…どんどん延期になって、途中で緊張の糸が切れちゃいましたね。

長谷川カオナシ(以下:カオナシ) 時間があるからとにかく楽器を弾かなきゃと思って、最初の1カ月間は練習をしていました。しかも地味な練習を、今だからこそと思って。Cubase(音楽ソフト)で音階を打ち込んで、それと同じフレーズを弾いてました。ただしこれ、ヴァイオリンなんですけど(笑)。

― (笑)。

カオナシ 外出自粛期間もだいぶ長くなり、私もちょっと中だるみになってきて。そんな時尾崎さんがコロナ前にスタジオで作りかけていた曲を見直そうという話を出してくれたので、メンバー間でデータのやり取りをしながら曲のアレンジを進めていきました。

― 小川さんは練習的なことは?

小川 ちょっとベースを練習したり。あと、ずっと独学でギターを弾いてきて、五線譜や音符が読めないので、この機会に挑戦しました。何となく理解できるところまではいきましたね(笑)。ただ言葉と一緒で、ポンと出せないというか。英単語のような感じで、これは時間がかかるなと。でも何かをしていないと、本当に何してるんだろう?という感じで。バンド活動を始めてから、こんなにライヴをしていない期間はなかったので、そんな風に音楽に関することに没頭しているうちに、やる気が出てきましたね。

― 改めてライヴに対して思うことはありますか?

小川 まず単純に、お客さんの前でまたライヴをやりたいと思いました。これまではコンスタントにイベントやツアーがあって、その状況に感謝を忘れていたなとも思います。音楽活動の優先順位として、ステージに立ちたい、ライヴがしたいという欲求が高かったんだと改めて実感しました。いつできるかわからないですけど、早くライヴをやりたいですね。

― レコーディングよりも早くステージに立ちたいと?

小川 制作もすごく楽しいんですけど、その先に出来上がった曲をお客さんの前で演奏するのがゴールだと思っています。

― カオナシさんは?

カオナシ もともと僕自身、家でベースを弾く時も基本的にヘッドホンだし、アンプで大きい音を出して“イェーイ”というタイプじゃないんですよ。ただ、6月になって久々にリハーサルに入りましたけど、4人でスタジオに入り、空気中に音を出すのはすごく楽しいことだなと改めて思いました。ライヴは、さらに大きく音を出してくれるじゃないですか。人間が大声を出しても届かないようなデシベルの音量が出て、会場によっては肉眼で見えるかわからないぐらい小さいところまでお客さんが見てくれる。外出自粛期間中に配信ライヴを見たりしましたけど、そういうところがやっぱり違うなと思ってしまいました。生の音やライヴハウスへの憧れが再燃しましたね。


こんな使い方もありかなと、コミカルにエフェクターを使っています
 

― ライヴの再開を願うばかりですが、クリープハイプとしては6月5日にNHK Eテレ『あはれ!名作くん』シーズン5の主題歌「およそさん」を配信開始しましたが、レコーディングはいつ頃に?

小川 コロナ前ですね。

― そもそもクリープハイプのレコーディングはどういう感じなのですか?

小川 基本的にはメンバー全員一斉のドンです。それで、ドラムのテイクがいいものを決めて、それから各々気になるところがあれば直していく感じですね。

― 「およそさん」は短い曲ですが、テレビに合わせて短い尺に?

カオナシ そうですね。でも、短い曲をライヴのセットリストに入れたかったので、ちょうど良かったんです。

― 短い曲ですが、ベースはかなり複雑なことをやっている気がします。

カオナシ 実はそんなに複雑なことはやっていないんです。1拍目はコードにいて、指で届く範囲で動いているので。 高校生、大学生の方がコピーしても面白いと思います。ベースラインを考えるのは最後なんです。ギター、ドラム、メロディが出てきてからベースを乗せるので、そんなに無理なことにはならないですね。

― ギタープレイで注目してほしい点は?

小川 短い曲ですが、ずっとフレーズを弾いているんです。アルペジオだったり単音だったりするんですけど、聴いていてバリエーションもあるし楽しいと思っています。アニメの主題歌ということだったので、楽しさを表現できたらいいなと。尾崎からも“もっと派手に”と言われたこともあって、音数を増やしたほうがいいかなぁということでかなり弾いています。あと最近、オートワウなどのエフェクターをコミカルに使うのにハマっていて(笑)。オシャレに行くんじゃなくて、子どもがテレビをパッとつけた時に耳に飛び込んでくるように、ちょっとこんな使い方もありかなと、コミカルにエフェクターを使っています。

― クリープハイプの場合、尾崎さんの声と歌が唯一無なので、特にうわ物は気を遣うのでは?

小川 尾崎も弾いてほしいと思うタイプなんですよね。ずっとそういうスタイルで来て、近頃はまた別のアプローチもしていたりするんですけど…。尾崎は声が立つので、ある程度平行線で走るようなギターでも尾崎は負けないんですよ。だから、割と攻めたアプローチもできるんです。

― カオナシさん的に、ベーシストとして特に意識しているところは?

カオナシ 黙っていても、ギターと歌の2人でどんどん注目されて点数を取っていく楽曲だと思うんですね。だから、ベースは土台であればいいんです。ただ、どうしても歌にもギターにもブレスするタイミングがあるので、そういうところでちょっと間を持たせてあげれば充分なんです、このバンドは。だからすごくいいバンドですよね、ベーシストにとって(笑)。


› 後編に続く

 
CreepHyp

クリープハイプ 愛用機材

小川(左):AMERICAN ACOUSTASONIC™ TELECASTER®
カオナシ(右):PINO PALLADINO SIGNATURE PRECISION BASS®

PROFILE


クリープハイプ
2001年、結成。2009年に現メンバーで活動を開始。メンバーは尾崎世界観(Vo,Gt)、長谷川カオナシ(Ba)、小川幸慈(Gt)、小泉拓(Dr)。2012年4月、1stアルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』でメジャーデビュー。2014年、2018年には日本武道館公演を開催。2019年11月に現メンバーでの活動10周年を迎える。尾崎は『祐介』『苦汁100%』『苦汁200%』の刊行など執筆活動でも注目を集める。

› Website:https://www.creephyp.com/

Related posts