
Cover Artist | 羊文学 -前編-
ギターと言えばTelecaster。そういうイメージが僕の中でずっとあります
12月6日にニューアルバム『12 hugs (like butterflies)』を発表し、2024年4月には横浜アリーナでの単独公演〈羊文学 LIVE 2024 “III”〉の開催も決定。ロックシーンの旗手として旋風を巻き起こしているオルタナティヴロックバンド、羊文学が二度目となるFenderNewsのCover Artistに登場。インタビュー前編では、3人の出会いやフェンダーの魅力に迫りながら、9月に発売されたVintera IIシリーズと10月に発売されたHighwayシリーズのインプレッションについて聞いた。

音楽でやっていこうと覚悟はしていました
──三人が出会ったきっかけを教えてください。
塩塚モエカ(以下:塩塚) 2011年、最初は私と他に何名かメンバーがいたのですが、高校を卒業して進学したり就職する中で一人ずつ抜けていっって。それで他のバンドでドラムを叩いているフクダを見て誘ったら入ってくれて。その次の年にSNSでメンバー募集をしたら、ゆりかちゃんが応募して入ってくれました。
──応募した同機は何だったんですか?
河西ゆりか(以下:河西) 部活しかしていなかったので、まずはバンドがやりたいなって思ったのと、羊文学はメンバー募集の三年前くらいに一度だけ見たことがあったんです。印象的でずっと覚えていたので、SNSをフォローしていたら募集の投稿が流れてきて、あまり深く考えずに応募メールを送りました(笑)。
──フクダさんは声を掛けられた時はいかがでしたか?
フクダヒロア(以下:フクダ) その頃はサポートでいろいろなバンドでライヴに出ていましたが、まずはバンド名に惹かれました。あとは音楽性と楽器ですね。ヴォーカルはドライでダークで陰鬱な感じですが、ウィスパーヴォイスで唯一無二。サウンドアプローチはオルタナティヴロックが根底にありつつ、シューゲイザー、ポストロック、インディーロック、変拍子など、羊文学は僕が通ってきたいろいろなジャンルを持ち合わせていたのですごく魅力的でした。3ピースバンドだったのも惹かれましたね。
──皆さん、もともとプロ志向だったんですか?
塩塚 幼稚園の時に音楽で生計を立てていこうと決めていたので(笑)。最初はアイドルをやりたくて、その次はシンガーソングライターで、とにかく歌を歌いたかったんです。バンドではないのかなと思っていたけど、中学・高校になるとバンドの音楽を聴き始めて。誘われて入ったバンドをずっとやるとは思っていなかったけど、ミュージシャンになりたいなと思っていました。
河西 私はプロになるとは考えていなかったけど(笑)、“やるならやる”という感じでした。音楽で10代のうちにデビューできたら、やり続ければいいかなと。
──動いてから考えるタイプ?
河西 はい(笑)。本当にそうですね。
──幼稚園の時から考えている人と、動いてから考える人。フクダさんは?
フクダ 学生時代から文学、映画、音楽の他、さまざまなサブカルチャーから影響を受けてきたので、ミュージシャンになりたいと思っていました。父親がバンドでドラムをやっていたので家にドラムセットがあって、本格的にやろうと。ずっと音楽でやっていこうと覚悟はしていました。

フクダ:Highway Series Dreadnought | 河西:Vintera II 60s Precision Bass
このVintera II 70s Jaguarも育てていきたいですね
──フェンダーとの出会いをお聞かせください。
塩塚 yuiさんが好きで、スコアブックを買った時にフェンダーのギターが載っていて、yuiさんが使っているのはフェンダーなんだと認識しました。その時、実物はまだ見たことがなかったのですが、中学校の同級生の女の子がTelecasterを持っていて、休み時間に弾かせてもらったのがフェンダーとの出会いです。
──フクダさんはドラマーですが、テレキャスを持っているんですよね?
フクダ 僕はドラムセットにしてもストレートで平衡のセッティングであったり、見た時の佇まいじゃないけど視覚的な要素に惹かれるんです。そういう意味でもフェンダーのビジュアルに惹かれますね。あとは、僕の好きなポストロックやシューゲイザーとの相性がいい。好きなシューゲイザーバンドを見ていると、皆さんフェンダーの黒いテレキャスを使っていたり、弾いている姿とかタイトなスキニーパンツにも合うし、すごく憧れがありました。ギターと言えばフェンダーのテレキャス。そういうイメージが僕の中でずっとあります。
河西 バンドをやる前はギターをやっていましたが、サンバーストのJazzmasterの見た目が好きでそれをずっと弾いていました。それがフェンダーとの出会いです。
──今日もご自身のJazz Bassを持ってきてくださいましたが、フェンダーというブランドに対するイメージは?
河西 フェンダーは繊細な感じがします。やろうと思えばいろいろな音作りができるし、すべてがキレイ。多彩な曲にフィットするので、最初に買うならフェンダーを紹介したいです。
──さて、今回は9月に発売されたVintera IIシリーズと10月に発売されたHighwayシリーズを試奏していただきます。Vintera IIシリーズは各楽器が作られた年代のスペックを踏襲していて、例えば河西さんに持ってもらったVintera II 60s Precision Bassは60年代のプレべを、塩塚さんに持ってもらったVintera II 70s Jaguarは70年代のジャガーをリイシューしています。Highwayシリーズは新しいアコースティックギターです。ボディも薄くて弾きやすく、軽くて持ちやすい。ネックもエレキに近い形状なので、エレキのフィーリングで弾けるんです。
塩塚 Highwayシリーズはボディの形状が2種類あるんですね?
──はい。大きいボディがDreadnoughtで、小さいボディがParlorです。
塩塚 Parlorは見た目もかわいいし弾きやすそうです。(Parlorを試奏)すごく弾きやすい! ネック幅もアコギとは違って弾きやすいし、弦高も高くないので、女性でも弾きやすいと思います。音もキレイです。
──フクダさんはアコギもお持ちだと聞いています。
フクダ フェンダーのオールマホガニーを持っています。Highwayシリーズはオルタナフォークとかを彷彿させるビジュアルですね。カッコいいです。
──Jaguarユーザーである塩塚さんにはVintera II 70s Jaguarについての印象を聞きたいです。そもそも、どうしてJaguarだったのですか?
塩塚 私はJazzmasterがいいなと思っていたのですが、楽器屋のお兄さんが“こんなのもあるよ”と言ってJaguarを出してくれたんです。音や見た目などこだわりはあるのですが、かわいいのが好きなのと、あのジャキン!という音を聴いた瞬間に“これだ!”と思ってすぐに決めました。
──撮影で持っていたご自身のJaguarはカスタムショップ製ですね。
塩塚 そうなんです。最初にJaguarを買った時も本当はカスタムショップ製がいいなと思っていたんですけど、学生には高すぎて買えなくて。ずっと欲しかったので、最近ついに買わせていただきました。Fender Flagship Tokyoにお邪魔して全モデルを弾かせてもらったら、同じJaguarなのに音の細かさやアタックの速さが全然違いました。私はけっこうリバーブを多用するのですが、リバーブや空間系エフェクターの乗りがすごくキレイです。このVintera II 70s Jaguarも見た目がかわいい。指板のブロックインレイもかわいいし、バインディングが黒なのも珍しいです。
──これは70年代のスペックを踏襲しているのですが、ヴィンテージに対する思いはありますか?
塩塚 私はかわいくていい音が出ればいいと思っていて。ヴィンテージは持っていないけど、持っているモデルが60年代のリイシューなので、70年代はどういう音なのかすごく気になります。使い込んでいくと音も変わりますから、このVintera II 70s Jaguarも育てていきたいですね。
──河西さんはVintera II 60s Precision Bassの印象は?
河西 渋い色が好きなのですが、これも真っ白じゃなくてクリーム色っぽいですね(Olympic White)。ヴィンテージのパキっとしていないところが好きです。昔、ヴィンテージに憧れすぎて、ドライヤーでボディを熱々に温めて冷却スプレーを吹きかけてヒビ割れを入れたこともありました(笑)。
──フェザークラックですね。
河西 使い込まれた感じが好きなんです。
──Vintera II 60s Precision Bassを弾いてみていかがですか?
河西 ストレートな感じが自分に合っていてすごく好きです。弾き倒すくらいの気持ちで弾けるというか、無骨なのが好きなんです。見た目はヴィンテージライクだけど音もそういう感じなんですか?
──音は現代風にアレンジしていてパンチのある音を出せます。
河西 現代風だったら歪みを入れて弾くのがいいですね。
塩塚 見た目がかわいい。
河西 色が絶妙ですね。
>> 後編に続く(近日公開)
羊文学
塩塚モエカ(Vo,Gt)、河西ゆりか(Ba)、フクダヒロア(Dr)からなるオルタナティヴロックバンド。2020年8月19日にF.C.L.S.(ソニー・ミュージックレーベルズ)よりメジャーデビュー。2023年、2nd Full Album『our hope』が第15回CDショップ大賞2023 大賞<青>を受賞。ライブではFUJI ROCK FESTIVAL’23に出演し、日中のGREEN STAGE出演アーティストとしては異例の動員数を記録した。2023年12月6日には、TVアニメ『呪術廻戦』「渋谷事変」EDテーマ「more than words」や、NTTドコモ「iPhone14/青春割」CMソング「永遠のブルー」を含む全12曲収録のNew Album『12 hugs (like butterflies)』を発表。2024年4月には、キャリア史上最大規模となる初の横浜アリーナ単独公演〈羊文学 LIVE 2024 “III”〉の開催も決定。
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