Cover Artist | 斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN )-前編-
僕らの熱い部分を音に封じ込めることが出来たらいいなと思った
今年、メジャーデビュー10年を迎えるUNISON SQUARE GARDEN(以下:USG)。3ピースながら楽曲も演奏もずば抜けて素晴らしく、人気、実力共に備わった、今最も勢いのあるバンドの一つだ。そのUSGフロントマン、ヴォーカル&ギターの斎藤宏介を徹底解剖。まずはギタリストとしての斎藤宏介に迫り、ギターを始めたきっかけからギタープレイの哲学まで聞いた。
いまだにすごく大事にしています
― 斎藤さんはアメリカ・ニューヨーク生まれなんですね。
斎藤宏介(以下:斎藤) はい。4歳までいました。その後、日本に帰って、そこからまたロンドンに行って次がシンガポール。中学校の入学で日本にまた帰ってきて、それからはずっと日本です。
― そんな環境の中、ギターを始めたきっかけは?
斎藤 3つ上の兄がいるんですが、兄がある日ガットギターを買ってきたんです。でもすぐに弾かなくなったので、それをこっそりちょっとずつ自分のものにしていったのが最初です。それが小6くらいの時ですね。でもすぐにエレキを弾きたいと思ってしまったんです。その時はシンガポールにいたんですけど、父が一時帰国した時に、VHSに日本の音楽番組を録画して持ってきてくれて。そこに映っていたJ-POPバンドでエレキを弾きながら歌っている人に憧れて、帰国してすぐにエレキギターとアンプを買いました。
― なるほど。最初の頃、どんな練習をしていましたか?
斎藤 兄のガットギターを弾き出した頃は、スピッツの「チェリー」をものすごく聴いていた時期だったので、何となく“この音かな?”と音を探りながら曲と一緒に弾いてました。その前にピアノを習っていたので、耳コピみたいなものができたんだとは思いますが、まぁ酷いものでした(笑)。ちゃんと練習を始めたのは高校に入ってからですね。
― 何かきっかけがあったんですか?
斎藤 高校に入ってバンドを組んだからです。4人編成のバンドで、そのうちの3人が今のUSGのメンバーです。僕はギターだけを担当していて、ヴォーカルが別にいました。つまり、純然たるギタリストだったのでちゃんと練習をしましたね。
― 3ピースバンドのギター&ヴォーカルにおいて、斎藤さんは群を抜いてギターを弾いてますよね。特に昨今の若手バンドはギターソロがない場合が多いですが、USGはギターソロもしっかりありますし。
斎藤 確かに単音のギターソロは、最近あまり弾かないバンドが多いですね。あってもオクターブ(奏法)とかコードでのソロですもんね。
― 歌いながらのギターソロは誰の影響なんですか?
斎藤 syrup16gの影響かもしれません。あとはGRAPEVINEが好きだったので、2人分のギターを自分1人で弾こうとしたこともあります。
― ソロを弾く時に心がけていることはありますか?
斎藤 ボーカリストでもあるので、ソロは歌の休憩時間でもあるわけです。だから極力冷静に“熱く見える風”というか、熱い自分と冷静な自分の2人がいる感覚でソロを弾かないと、その後の歌がバタバタってなってしまうので。
― USGは2018年でメジャーデビュー10年。デビュー以来順調にキャリアを積んでいると思いますが、ギタリストとしての挫折はありましたか?
斎藤 基本的に自分のギターは最高だとは思っているんですけど、No.1ではないとずっと思っています。そういう意味では挫折はしっぱなしかもしれないです(笑)。常に誰かに対して“あの人、俺より上手いな”って思っているので。
― でも自分にしか出せない音があって、そこに対する自信はすごくある?
斎藤 あります。音を構築していくのが好きで、特に音源だとそれが顕著に出ます。ギターを何本も何本も重ねて作っていくのが好きなんですけど、その音作りはけっこういいところまでいってるんじゃないかなと思っています。
― 音源を聴くと納得です。ところで、ギターは毎日弾いてますか?
斎藤 はい。リビングに2人掛けのソファーがあるんですけど、その1人分はギターが占拠しています(笑)。
― 寂しい話ですね(笑)。
斎藤 ははは(笑)。テレビを観ていて気になるメロディーが流れると、ギターですぐに弾いてみるんです。不謹慎かもしれませんが、例えばニュース速報の音でも“どういうふうになっているんだろう?”ってギターで弾いてみて、“ディミニッシュだから何か不安な音なんだな”とか、そういう発見がけっこうあるんです。あと、CMソングもキャッチーなものが多く日々発見があります。
― 練習も日々しているんですか?
斎藤 日々はしないですね。練習は嫌いです(笑)。ライヴ前は練習しますね。
― では、これからギターを始める人がUSGの曲を演奏するとしたら、どの曲がオススメですか?
斎藤 先に言っておくと、USGの曲は全曲難しいです。
― わかります。音数も多いですし。
斎藤 なので、好きな曲を弾いてくださいっていうのが一番に言えることです。でもその中でも、ちょっと古い曲なのですが「MR.アンディ」を演奏してみるといいかもしれません。特にインディーズ時代のアルバム「流星前夜」に入っている3ピースバージョンは面白いと思います。オクターブのリフが入っているんですけど、3ピースでやる時は単音よりもオクターブリフのほうがちゃんと音を埋めてくれるから使い勝手がいいんです。あと、テンションコードと呼ばれるものがあるんですが、「MR.アンディ」で使われているテンションコードはギターならではの魅力を感じてもらえると思います。
― なるほど。
斎藤 不思議なもので、“ジミヘン・コード”と呼ばれる♯9(シャープナインス)もピアノで弾くと全然ジミヘンじゃなくなっちゃうんですよ。ギターならではのディスコードというのがあるんです。本当は半音ズレてる音は使っちゃいけないっていう音楽のルールがあるんですけど…例えばドだったらド♯を一緒に鳴らしちゃいけないんですけど、ギターだとそれが成立するんですよね。それはギターならではの面白さです。
― では、ギターを弾く時に大事にしていることは?
斎藤 最初にC、G、Eマイナーのコードを覚えて、ジャーン!ってコードを一発鳴らしただけで音楽に浸れたんです。そうやってコードをバーンと一発鳴らした時の“ワー!カッコいい!”っていう感じはいまだにすごく大事にしていますね。それと…。
― それと?
斎藤 最近気をつけているのは、“耳を育てる”ということです。僕はさっきも言ったように邦楽がルーツなので、ザ・ビートルズから始まるロックの“幹”をかいつまんでしか知らないんです。だから例えばラジオやテレビや友達の紹介から“こういう人がいるよ”ってロックの幹となる人を教わったら、それをできるだけ聴くようにしています。で、その曲やバンドの成り立ちを調べつつ、いいなと思うフレーズがあったらそれをコピーしています。そうやって耳を育てているんです。最近はナイル・ロジャースのモノマネにハマっていて(笑)、あのギターは不思議ですよ。ただのカッティングなのに圧倒的に人と違うんですからね。
― ダフト・パンク「ゲット・ラッキー」でのナイル・ロジャースのカッティングですか?
斎藤 そうです! ダフト・パンクって打ち込みなので絶対的にスクエアな音なわけです。で、スクエアなものに対してナイル・ロジャースのカッティングは揺れているので下手に聴こえるはずなのですが、えも言われぬグルーヴになるのが不思議です。ギターって本当に奥が深いです。
― “日々是発見”というのがギターの魅力だと思うのですが、これからギターを始めようと思っている人に何かメッセージをお願いします。
斎藤 練習だけではなく、ライヴは絶対したほうがいいと思います。部活でもいいですし、ライヴハウスでも数万円払ってチケットを友達に売るっていうことをすれば、ステージに立てるので。場所はどこでもいいですけど、人前でライヴをするべきだと思います。そうするとギターを弾くことの楽しさ、深さが実感できると思うので。
› 後編に続く
Fender Custom Shop (左)
TIME MACHINE SERIES 1963 TELECASTER NOS
使用曲:「フライデイノベルス」「Micro Paradiso!」 etc.
Fender Custom Shop
Michael Landau Signature 1963 RELIC STRATOCASTER (中)
使用曲:「夢が覚めたら(at that river)」 guitar solo
Fender Custom Shop
2012 Closet Classic STRATOCASTER PRO (右)
使用曲:「harmonized finale」「ラディアルナイトチェイサー」 etc.
UNISON SQUARE GARDEN
斎藤宏介(Vo,Gt)、田淵智也(Ba)、鈴木貴雄(Dr)からなる3ピースロックバンド。透明感に溢れながらも個性的なトゲを持つ斎藤宏介のヴォーカルと、エッジが効いたコンビネーション抜群のバンドアンサンブルが共鳴、共存するROCK / POPの新世界。キャッチーなメロディーラインとアンバランスな3人の個性が織りなす鮮烈なライヴパフォーマンスで、右肩上がりにセールスと動員を延ばし続けている。テレビアニメ「TIGER & BUNNY」オープニングテーマ等、活躍の場を広げている。現在、全国ツアー『UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2018「MODE MOOD MODE」』を開催中。
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