Cover Artist | Suchmos -後編-
最初からフェンダーのStratocasterに憧れていました
ストリート出身でロックやブラックミュージックをベースとした音楽性にもかかわらず、テレビCMや「NHK紅白歌合戦」出場など、お茶の間レベルまでその存在が浸透しているSuchmos。そのベーシストであるHSUとギタリストのTAIKINGにインタビューを敢行。後編ではフェンダーとの出会い、使用楽器について聞いた
そこに魅力を感じるんです
― フェンダーとの出会いを教えてもらえますか?
TAIKING 最初に持ったエレキはフェンダーのものじゃなかったんですけど、いわゆる“ストラトタイプ”と言われるものだったんです。その時はメーカーも全然わからなくて、憧れていたL’Arc〜en〜CielのKenさんと同じ形のギターを買うのが精一杯で。高校に入った頃、やっとフェンダーというギターメーカーがあることを知り、それからフェンダーのギターが欲しいなぁと思うようになりました。そういう意味では、最初からフェンダーのStratocasterに憧れていましたね。
― フェンダーのギターは何本お持ちですか?
TAIKING 4本ですね。全部ストラトですが、日本製が3本とヴィンテージ(64年製)が1本です。
― ヴィンテージ以外の3本はどんな時に使っているんですか?
TAIKING 家で弾いたり、海外に持っていく時のサブとして使っています。あとは、改造してスイッチを付けたり実験用に1本は使ってますね。
― ずばり、ストラトの魅力は?
TAIKING ストラトからギターに入って、やっと最近わかるようになってきたのが、ストラトを弾ける人って意外と少ないんですよ。例えば、他社のハードな音が出るギターって割と様になる気がするんですよ。でも、個人的な感想で言うと、フェンダーのストラトを持ってちゃんと唸らせられる人って少ないなと思っていて。そこに魅力を感じるんです。素で勝負できるみたいな。俺も弾きこなせてはいないけど、弾ける人と弾けない人がいるのがストラトの魅力な気がします。
― 取材が始まる直前も、現行のストラトを熱心に弾き比べていましたよね?
TAIKING はい。新しいシリーズのMADE IN JAPAN 2019 LIMITED COLLECTIONを何本か弾かせていただきましたけど、すごくいいですね。弾き込んでいけば絶対に良くなるだろうし、今のままでも本当にいいし普通に欲しいです(笑)。
― アメリカ製と日本製の新作を弾いていたようですが、どう違いましたか?
TAIKING 弾き比べると、ジャパンはジャパンの音がするし、USAはUSAの音がするんですよ。アメリカ製はジャパンよりも荒いというか、無骨というか。日本製は繊細でちょっと細いかなと思うけど、そのほうが扱いやすいと思います。両方に良さがありますよね。
― YONCEさん(Vo)もギターを弾きますよね?
TAIKING そうですね。最近はDJのKCEEも弾いています。そう言えばKCEEもフェンダーですね。Jazzmasterを使っています。なので、ライヴでは曲によっては3本だったり2本になったりするので大変ですよね(笑)。
― 音のバランスはどうしているんですか?
TAIKING 3本の時と2本の時と1本の時で、ステージ上で鳴らす音、1人ひとりの鳴らす音量が変わってくるんですよね。俺はずっとギターを持っているので、だからこそ差がわかるんですけど。3本だとこれぐらいの音量感、これぐらいの手数でいいなとか思うし。
― ギターを3本にするか2本にするかはどう決めるのですか?
HSU KCEEがギターを弾いている曲は、そもそも曲を作った時にKCEEがギターを弾いていたんですよね。だから“弾いて”と言ったわけではなくて、本人が弾いていたからそのままという感じですよね。
― でも、上物が増えてくると整理するのが大変ですね。
TAIKING 大変です(笑)。
― 逆に言うと、そうじゃなきゃ鳴らない音があるわけですよね?
TAIKING & HSU それはある!
TAIKING ギターが3本だと、それこそアルバム『THE ANYMAL』を作った時は余計に大変だったんですけど、今になってそれも楽しめるようになってきたかな。やっぱりギターが3本ないと出せない音、世界観があり、良さがあるわけで。もちろん大変だけど(笑)。
気持ち良さに対して責任を持つ
― HSUさんのフェンダーとの出会いは?
HSU 俺は大学(洗足学園音楽大学・ジャズ科)に入って初めてフェンダーを持ちました。それまでもJazz Bassタイプは持っていたんですけど、フェンダーのものではなかったので。大学の時に手にしのたが、フェンダーカスタムショップ製のJazz Bassでしたね。それが初めてのフェンダーだったと思います。
― なぜそれを買ったのですか?
HSU 弾いて“これだ!”みたいな。持っていた他社のジャズベタイプと、マスタービルダーのJazz Bassは全然違って、弾いた瞬間に“あ!”ってなったんですね。
TAIKING マスタービルダーのモデルって“あっ!”ってなるよね。俺もヴィンテージのStratocasterを買ってさ、マスタービルダーのモデルと比較して“マスタービルダーやば”って思ったもん。マジでいいよね。
― 今はフェンダーのベースは何本お持ちですか?
HSU 3本ですね。62年製のプレベとAmerican Eliteシリーズの5弦ベースが2本あります。1本はオリンピックホワイトでもう1本はブルー。その2本は指板材が違って、ひとつはローズウッドでもうひとつはエボニーです。ブルーのほうは海外用のサブとして使っています。
― そもそも、ジャズベとプレベの使い分けは?
HSU ジャズベ=5弦のJazz Bassっていうイメージなんですね。だから5弦を使う時がジャズベで、4弦を弾く時はプレベっていうイメージです。
― つまり音域の違い?
HSU そうですね。それと、スラップする時はジャズベのイメージですね。あくまでも感覚的な話なんですけど。
― 音大まで行ったHSUさんですが、今でも家でベースを弾きますか?
HSU あまり弾かないですね。やっぱりベースって人と合せて弾くのが一番楽しいので。1人で低い音を鳴らしててもなって(笑)。 1人で弾く時もありましたけど、当時は何であんなに練習していたんだろう?と今となっては思います。常にベースを持って、常にベースを弾いている時期もあったんですね。極端というか波があるので。だからたぶんそういう周期が自分にはあるんだなって。無駄にもがかないで、この波をやり過ごそうとしている自分がいますね。今は音楽が仕事になっているので、その時に来られるとけっこう困るんですけどね(笑)。
― 音楽じゃなきゃ与えられない感動があるのも事実ですよね。
HSU うん、そうですね。昔は曲を作った時にワー!ってなったし、『THE ANYMAL』を作った時も“ワー!出来た!”っていうのがあって。そのブワー!ってくるものを、やっぱりどこかで求めているんですよね。音楽による昂揚感を求めているんです。
TAIKING うん。
HSU あと、もっとライヴハウスでやりたいなと思っていたりしますね。密な状態でライヴをしたいなっていうのが最近感じていることです。
TAIKING それは全員共通しているよね。アリーナツアー中に一度、クレイジーケンバンドさんとZepp Tokyoでライヴをしたんですよ。久しぶりのライヴハウスで、終わった後に皆で“楽しかったね”って言ってたもんね。
HSU ライヴハウスはライヴハウスで、アリーナはやっぱりアリーナなんですよね。やっぱりライヴハウスでライヴをしたいなって気持ちでいますよね。まぁ、9月8日にハマスタが控えていますけど(笑)。
TAIKING ライヴハウスと一番かけ離れてるハマスタ(笑)。だから無い物ねだりなんですよね。それこそ小さいライヴハウスでお客さんが2〜3人の時は、“ハマスタでやりてーな”って言ってたわけだし。
― つまり、バンドとして想定できるひと通りの景色を見てしまったということですよね。
TAIKING うん。バンドにとってどこが気持ちいいかっていうのはやっぱりあるんですよ。別に大きい箱が嫌だと言っているわけじゃなくて、今、自分たちが体感したい気持ちいいポイントは、大きい会場よりももっと密になれる箱で熱意を感じることなのかな。
― ひと通りの景色が見られたので、あとは気持ちいいところをその時に選べばいいわけですからね。
TAIKING そう思います。その時その時で選べばいいんだよなって。
HSU 間違いない。結局、ずっとライヴハウスでやっていたら今度はホールでやりたいって言い出すんですよ。TAIKINGが言った通り“無い物ねだり”なので。だから行ったり来たり、人生そんな感じかな。
― 最後の質問ですが、今はSuchmosに憧れて楽器やバンドを始めるキッズもたくさんいると思います。そんなキッズにメッセージを贈るとしたら?
HSU ネットに惑わされるなよ、とは思いますね。自分が体感した経験、体感した気持ち良さに対して責任を持つわけじゃないけど、それを信じてほしい。何かの意見とかじゃなくて、楽器を弾いたら楽器を弾いた時の感触だったり、ライヴを観たらライヴを観た時の感触とか。メシが旨かったとか、そういうのも全部、体感、体験することだと思います。ネットだといろんな情報が錯綜しているじゃないですか。それに踊らされないで、自分の体感した時の気持ちをちゃんと大切にしてほしいな。それで音楽をやっていれば、音楽もピュアなものになると思う。
› 前編はこちら
■ TAIKING:American Original ’60s Stratocaster®(左)
■ HSU:American Elite Jazz Bass® V(右)
PROFILE
Suchmos
2013年1月結成。ROCK、JAZZ、HIP HOPなどブラックミュージックにインスパイアされたSuchmos。
YONCE(Vo)、HSU(B)、OK(Dr)、TAIKING(G)、KCEE(DJ)、TAIHEI(Key)の 6 人が、2013 年に神奈川県で結成。2015 年に 1st アルバム『THE BAY』、2017 年に 2nd アルバム『THE KIDS』、2019年に『THE ANYMAL』を発表。
9 月 8 日(日)には横浜スタジアムにて“Suchmos THE LIVE”を開催。
› Website:https://www.suchmos.com