音羽-otoha- | Fender Experience 2025

ジャンルや世代を超えた注目アーティストによるライヴ、名器たちとの出会い、音楽と触れ合うワークショップ。音楽、クリエイティビティ、そして人とのつながりが交錯する体験型イベント〈FENDER EXPERIENCE 2025〉が、10月11日(土)〜13日(月・祝)の3日間にわたり原宿・表参道エリアの3会場にて開催された。ここでは、Fender Flagship Tokyoで行われた音羽-otoha-によるスペシャルライヴステージの模様をお届けする。


その一音に今を生きる──音羽-otoha-、フェンダーとともに奏でる信念

スタートを告げるSEが鳴り響くと、観客の間から沸き起こった手拍子。フェンダーの次世代アーティスト支援プログラム「Fender Next 2025」にも選ばれた音羽-otoha-が登場した。

「近すぎてどこを見たらいいのかわからない。あえて目を逸らしてしまう距離(笑)。いつも“目を見て歌います”って言ってるのに。今日は3ピースでやります。普段は4人とか5人でやることが多いので、全員緊張しています」

そう挨拶したあと、ライヴをスタートさせた。最初に届けられたのは「no man’s world」。歌いながら奏でたAmerican Ultra Telecasterのパワーに負けないくらいの手拍子が加わり、早くも圧倒的な盛り上がりに至っていた。続いて「電光石火」。ミュートの刻みは温かく、単音リフは粒立ちの良い音色が躍動。ソロの時は、ディストーションサウンドが燃え上がるかのよう。手にしたギターを自由自在に操りながら歌う姿が雄々しかった。

その後、2024 Collection Made in Japan Hybrid II Stratocaster HSSに持ち替えて「このギターを弾いているキャンペーン動画を撮っていただきました。せっかくなので、このギターに似合う曲をやります」と言ってから届けられた「MAD HONEY」は、骨太でパンチの利いたサウンドが放たれた。「ジミ・ヘンドリックス先生、ちょっとだけ曲をお借りします」と、途中で名曲「Voodoo Child」のフレーズを引用。荒々しいファズ、艶めかしいワウサウンドを駆使したギターソロを経て、ベースソロとドラムソロも展開。ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスへのリスペクトを交えたグルーヴィな演奏だった。

「残り2曲です」と言ったあと、観客の間から「えええー!」という声が上がったのを喜び、American Ultra Telecasterを再び手にした音羽-otoha-。低音域から中音域にかけての響きが心地良いコードストロークを経て、1音1音がきらめくアルペジオに突入。

「フラッシュバッカー」は、結束バンドへの提供曲のセルフカヴァー。ベースとドラムが合流して構築されたアンサンブルが、哀愁を帯びた歌メロを美しく浮き彫りにした。ディストーションサウンドが狂おしい叫びのようだったギターソロを全身で受け止めていた観客。Telecasterの音色が、歌声を熱く染めていた。そして、ラストを飾ったのは「大生解」。クリーントーンの瑞々しさで彩りながら歌い、間奏では歪んだ音色を轟かせる。豊かな表情を浮かべるTelecasterが、音羽-otoha-のかけがえのない相棒となっているのを感じた。

5曲が届けられたライヴのあとはトークセッション。ギターがないと落ち着かないらしく、「何の意味もないけど持ちますね」と言い、Telecasterを手にした音羽-otoha-は音楽に目覚めたきっかけを語った。

「気づいたら親戚のおじさんにピアノを習うようになって、最初はバイエルをやっていたんですけど、途中で面白くなくなって、隠れるようになってしまい(笑)。先生が“好きな曲を持っておいで”と言ってくれて、そういう曲をやるようになりました。4歳くらいから久石譲さんが好きで、『風の谷のナウシカ』とかが大好きで、“これ弾きたい!”と。それで音楽って楽しいと思うようになりました」

そんな体験を皮切りに、音楽や楽器にどんどんのめり込んでいったのだという。

「ピアノのあとにフルートを習ったんですけど、酸欠になってやめました(笑)。次に習ったのはドラムです。イトーヨーカドーで吹奏楽団が演奏しているのを見て、母に頭を下げて習わせてもらいました。その次がギターでしたね。母が昔ギターをやっていたので、家にギターがありました。先に兄がアコースティックギターを始めて、“こいつ、かっけえなあ”と思ったんです。ギターは主に母に習いました。リビングで私がギターを弾いていたら、母が料理をしながら“そこのビブラートは違う”と言ってきたりして」

そして、いきものがかりの「ブルーバード」のリードギターに惹かれてエレキギターを弾くようになり、憧れるようになったのがフェンダーだった。

「自分の好きなギタリスト、ジミ・ヘンドリックスとかが弾いていましたからね。フェンダーって書かれたピックのネックレスを着けていました(笑)。中2くらいから弾いてみたを始めて、さすがにそれまで使っていたギターだと音がペラペラだと感じて、兄からギターを毎回借りるのも悔しくて、高1でバンドを組んだタイミングで初めて自分でギターを買いました」

先ほど披露した「MAD HONEY」で「Voodoo Child」を引用したのは、作曲の際のインスピレーションの源だったからという説明も添えられた。

「中学生くらいの頃に聴いていたアーティスト、ギタリストの影響は今でも根強く残っています。オリアンティ・パナガリスさんというマイケル・ジャクソンの映画『THIS IS IT』でも弾いている女性ギタリストがめちゃくちゃ好きで。ギターをバチバチに弾きながら歌って、曲も自分で作っているんです。『Voodoo Child』も彼女がサマソニか何かでカヴァーしていました。だから、ジミヘンのオリジナルとオリアンティのカヴァーのミックスくらいの感じで今日は弾かせてもらいました」

そう語ったあと、初心者の頃のことを振り返った。

「私は“練習をしてきた”という認識が全然なくて。基礎練習が大嫌いなのは4歳くらいから変わっていなくて(笑)、“弾いてみた”を始めたのが大きかったですね。カヴァー動画を上げると、コメントしてくれる人がいて。他の人たちに負けたくない気持ちもあったし、弾く曲が好きだから本人になるべく近づこうとして、だんだん近づいていくのが楽しかったんですよね。負けん気と理想に近づきたい気持ちが自分にとって大きかったので…大事なのはパッションです!」

経験に裏打ちされた言葉は、ギター初心者への説得力のあるアドバイスになっていた。

今回のイベントで使用したギターについてのトークも、ファンにとって興味深い話の連続だったはず。American Ultra Telecasterに関しては「私の部屋って真っ白なんですけど、これが店頭に並んでいるのを見た時に部屋に合うなと思ったんです。弾いてみると素直なんですけど、ちょっとやんちゃさもあったりして。私はギター&ヴォーカルなので、チャキチャキした音と太い音の両方がほしいんです。その両方を叶えてくれるギターです」と紹介。

2024 Collection Made in Japan Hybrid II Stratocaster HSSについては、「色がとってもキレイです。こっちのギターのほうが強くなった気分になります。野性味が強いというか。ジミヘンも使っていたストラトというのもあるし。ノリノリで弾けるギターです」と語った。

イベント終盤には、観客からの質問コーナーも。

「影響を受けてバンドを始めたんですけど、緊張してお客さんを見られないんです。音羽-otoha-さんはどういうことを考えながらステージに立っているか知りたいです」という質問に対しては、「お客さんが1人だったとしても“ちゃんと目を見て伝えられる機会は今しかない”と思ってやっています。それが最初で最後になる可能性もあるので、ミスったり緊張していても、お客さんの目を見ることによってそれを思い出せるというか。それがあるから私は目を見てステージに立っているのかなと、今、話をしながら気づきました」と回答。

そして、2026年2月21日にKT Zepp Yokohamaで〈音羽-otoha- Special one man live 2026「出発前夜」〉を開催すると告げたあと、「近々、何かをやります」と匂わせた。これに関しては、10月15日に突然配信された「イルシオン」のことだったのだと思う。2019年に活動を休止したFERN PLANETの曲を今、こうしてカヴァーしたのは、ファンにとって感慨深いサプライズだったはず。最後にギター初心者、これから始めようと思っている人へのメッセージが届けられた。

「真面目なことはたくさん話したので、“ギターは顔で弾け!”です(笑)。良い顔をして弾けば良い音が出るので」

音羽-otoha-のライヴの魅力、ギターへの情熱、親しみやすい人柄に触れられたイベントであった。

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