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King Gnu Stadium Live Tour 2023 CLOSING CEREMONY
King Gnuが大阪・ヤンマースタジアム長居と横浜・日産スタジアムでそれぞれ2公演ずつ計4公演を開催した、King Gnu史上最大規模の〈King Gnu Stadium Live Tour 2023 CLOSING CEREMONY〉が6月4日(日)、日産スタジアムでツアーファイナルを迎えた。サウンド、ビジュアルともに圧倒的な個性を誇る彼らが、同時にスタジアムにシンガロングの声を響きわたらせ、アンセミックな空間を作ることができる、ある意味国民的バンドだということを改めて証明してみせたツアーファイナルの模様をレポートする。
スタジアムでもそのハイパワーを存分に発揮したDaiki Tsuneta Swinger、そしてDeluxe Jazz Bass V Kazuki Arai Edition
大きな旗をなびかせ、アリーナを練り歩く40人ほどの旗手の存在とステージの聖火台で燃える炎が式典ムードを演出する中、ストリングスとホーンズを従えたバンドが「開会式」からなだれこんだ「飛行艇」でいきなり観客にシンガロングの声を上げさせると、常田大希(Gt,Vo)は空間を切り裂くようなトーンでギターソロをダイナミックに放った。彼が手にしているのは、個性的なシェイプが際立つフェンダーのDaiki Tsuneta Swingerだ。
そこから間髪入れずにつなげた常田と井口理(Vo,Kb)がラップと歌を掛け合う「Tokyo Rendez-Vous」でも、常田は艶やかな音色でギターソロをエモーショナルに奏でる。そのDaiki Tsuneta Swingerについて、常田は以前「小ぶりだけどハイパワーでチューニングの安定感と歪みのノリが抜群なギターに仕上がっている」と語っていた。その言葉通り、Daiki Tsuneta Swingerはスタジアムでもそのハイパワーを存分に発揮した。暴れ回るという表現が相応しい歪みの轟音の迫力もさることながら、むしろ轟音の中から高音が伸びるように聴こえるところにこそ、このギターのポテンシャルがあるのでは、と思わずにいられなかった。
「飛行艇」「Tokyo Rendez-Vous」の2曲で早くも大観衆の気持ちをガチッと掴んだところで、井口は開口一番、「みんな元気? (アリーナとスタンドを見渡しながら)元気だね! とにかく来てくれてありがとう!」と声を上げる。実は、このタイミングでMCをする予定ではなかったしい。それでも「来てくれてありがとう!」と言ったのは、言わずにはいられなかったからだ。今回のスタジアムツアーの動機を考えれば、それも頷ける。ツアータイトルになっている3rdアルバム『CEREMONY』のリリース後、コロナ禍の影響によるさまざまな制限の下、ライヴを重ねながらKing Gnuのメンバーたちは本当に『CEREMONY』を昇華できたのだろうかと感じていたという。そこでKing Gnu史上最大規模のツアーを、観客収容率上限100%、声出しも可能という形で開催しようということになったのだが、台風の影響で開催が危ぶまれたことを考え合わせれば、この日、無事にツアーファイナルを迎えることができたメンバーたちの感動は察するに余りある。
「6〜7年前、下北沢や渋谷のライヴハウスに出ていた時は誰も聴いていないようなところで演奏していたけど、それがどうよ!? (今日は)7万人が聴いてくれていますね。そんな皆さんに提案なんですけど、この先の人生、何度も思い出せるような日にしませんか? 今日はよろしくお願いします!」
井口が7万人に語りかけた、そんな思いを渾身の演奏に込めながら、2時間半に及ぶ熱演の中、King Gnuの4人が披露したのは『CEREMONY』の全曲を中心に新旧の代表曲を織り混ぜた全26曲だ。
この日、新井和輝(Ba)がシンベを演奏する時以外に弾いていたのは、フェンダーのDeluxe Jazz Bass® V Kazuki Arai Editionだ。アンサンブルを支えるように基本、重心の低い太い音色を鳴らしながら、指弾きで鳴らした「Teenager Forever」のソリッドな音色をはじめ、ここぞというところで耳に残るフレーズを加え、新井はバンドの演奏にアクセントを付けることも忘れない。
バラードの「雨燦々」で歪ませたギターサウンドから抜けるようにビブラートしながら鳴らした短いパッセージや、ラテンっぽいリズムも持つアップテンポのポップソング「小さな惑星」で小気味良くハジけさせたスラップは、ベースプレイの聴きどころであると同時に音の抜けが抜群なDeluxe Jazz Bass® V Kazuki Arai Editionのポテンシャルも物語っていたのだと思う。その意味では、アーバンな魅力もあるポップソングの「傘」で印象づけたリズムを刻む一音が響かせる重低音の迫力も忘れられない。フェンダースタッフがサウンドチェック時に本人の実機を確認したところ、プリアンプのミドルのつまみがセンターの位置よりほんの少し足された位置にセットされていた。本人曰くスタジアムでの音抜けを考慮した結果とのこと。ペダルやアンプを選ばず、ライヴハウスからスタジアムまで会場の環境に合わせて手元で最善なトーンを追求できるのも本モデルの魅力だ。
「突っ走りましたね、前半」と井口が言いながら、スタジアムだからってかしこまることはないだろうと言わんばかりに4人のざっくばらんなトークを挟んでからの中盤は、常田がピアノを弾きながら「ユーモア」「Don’t Stop the Clocks」「カメレオン」「三文小説」と彼らの大きな魅力でもあるバラードをたっぷりと披露。坂本龍一に哀悼の意を表するように、常田がピアノで奏でた「メリー・クリスマス ミスターローレンス」のフレーズを交えながらつなげた「三文小説」のドラマチックな演奏に観客が大きな拍手を送る。
インタールード的な「幕間」から勢喜遊(Dr, Sampler)のパワフルなドラムとともになだれこんだ後半戦は、ファンキーな「どろん」「Overflow」、観客も一緒に歌ったメランコリックな「Prayer X」、“ジャンプ!ジャンプ!”とトラメガで煽る常田に応え、観客が飛び跳ねたラップロックの「Slumberland」、エモーショナルな「Stardom」、井口と常田のツインヴォーカルが冴えわたるアップテンポのファンクロック「一途」と畳み掛けるようにつなげ、クライマックスに向けて一気に盛り上げる…と思いきや、そこからフィードバックを巧みに操るフリーキーなギターも聴きどころだった「逆夢」、常田が曲の前半、ピアノで弾き語りした「壇上」と今一度、バラードをじっくりと聴かせると、本編最後は7万人の大観衆が灯した明かりが作り出す神秘的ともスペクタクルとも言える光景の中、ノスタルジックな曲調とエキセントリックなアレンジが絶妙に溶け合う「サマーレイン・ダイバー」を披露した。
アンセミックなロックで盛り上げず、リフレインを重ねながら、徐々に演奏の熱を高め、ある意味厳かなムードの中、本編を終えるという選曲は、バンドのスケールをアピールするという意味でも“CLOSING CEREMONY”と題したスタジアム公演を締め括るという意味でも相応しかったと思う。
また、だからこそ「7万人の心の歌を聴きたいじゃないですか。聴かせてもらえますか!?」という井口のリクエストに応え、観客が歌った「McDonald Romance」や花火を打ち上げながら、観客を飛び跳ねさせたKing Gnu流のレイブナンバー「Flash!!!」の歓喜に満ちた祝祭ムードは、これ以上ないというほどに高まったのではないかと思う。それはライヴの終演と同時に『CEREMONY』がリリースから約3年半かけて、昇華された瞬間だった。
ところで、「白日」と「Flash!!!」を含むアンコールの4曲で、新井は見慣れない新しいフェンダー製のブロンドのベースを弾いていた。ここでは「Flash!!!」で鳴らした芯の太さがしっかりと聴き取れる、ソリッドな音色が印象に残ったことだけを記しておきたい。
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【SET LIST】
0. 開会式
1. 飛行艇
2. Tokyo Rendez-Vous
3. Teenager Forever
4. BOY
5. 雨燦々
6. 小さな惑星
7. 傘
8. ユーモア
9. Don’t Stop the Clocks
10. カメレオン
11. 三文小説
12. 泡
13. 幕間
14. どろん
15. Overflow
16. Prayer X
17. Slumberland
18. Stardom
19. 一途
20. 逆夢
21. 壇上
22. サマーレイン・ダイバー
ENCORE
1. 閉会式
2. 白日
3. McDonald Romance
4. Flash!!!
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