
LUNA SEA LUNATIC TOKYO 2025-黒服限定GIG-
2024年5月にスタートし、全国各地で“EPISODE”を重ねてきたLUNA SEA史上最大規模となる〈LUNA SEA 35th ANNIVERSARY TOUR ERA TO ERA〉が2月23日(日)、東京ドームで開催された〈LUNATIC TOKYO 2025-黒服限定GIG-〉をもってついにグランドファイナルを迎えた。FenderNewsでは4時間に及んだライヴの見どころを、メンバーたちが使うフェンダーギターおよびベースの音色とともにレポートする。
LUNA SEAというバンドが持つ本質を今一度明らかにした全19曲
「覚悟の夜。その光を掴む」。このライヴのテーマとも言えるメッセージとともに荘厳なSEが流れる中、アリーナの真ん中に作られたセンターステージに意表を突くようにせり出してきたメンバー5人がゆっくりと、その時間も楽しむようにメインステージに歩いていき、真矢(Dr)を囲むように円陣を組む。そして今一度、お互いの覚悟を確かめ合うように気持ちを一つにしてから演奏し始めたのは、ファンの間で“最強の1曲目”と謳われる「LOVELESS」だ。


INORAN(Gt, Cho)が12弦のアコースティックギターでリバービーに奏でるアルペジオが、SUGIZO(Gt, Violin, Cho)の特徴的なフレットレスギターと絶妙に絡み合いながら作り上げる世界観を、まるで射抜くようにJ(Ba, Cho)のベースが鳴る。彼が手にしているのは、前日のGLAYとの対バンライヴ〈The Millennium Eve 2025〉でお披露目したFender Custom Shop製のKing’s Red Sparkle PJ Bassだ。リバースヘッドを含め、J Signature Pression Bassを踏襲しながら、その名の通り華やかな赤色のボディがまず目を引くが、低音域をしっかりと出しながら、ソリッドに鳴る出音のインパクトもかなりのもの。

2曲目の「G.」では、INORANがFender Custom Shop製のシグネイチャーモデル、INORAN Jazzmaster Desert Sandを披露。SUGIZOがエッジーにかき鳴らすリフにINORANがハムバッカーならではのハイゲインなサウンドで奏でるフリーキーなフレーズを絡みつかせ、フェンダーのトラッドを現代風に洗練させたルックスを持つ新しいシグネイチャーモデルの威力をアピールする。
ちなみに、58年製のJazzmasterのプロトタイプを基に、この最新シグネイチャーモデルを開発するにあたってINORANは3年という長い時間をかけたという。そこからも彼が並々ならぬ熱意を持って開発に臨んだことがうかがえるが、中でも特にこだわったのがピックアップだったそうだ。先日、公開されたFenderNewsのインタビューでも“マッドサイエンティスト”の異名を持つピックアップ職人、カーティス・ノヴァクにオリジナルのピックアップを開発してもらったことに加え、納得いくまで3回作り直してもらったという開発秘話を語っていたが、INORAN Jazzmaster Desert Sandから放たれるパワフルなサウンドは、これからLUNA SEAの新たな武器になっていきそうだ。

「東京ドーム! お前らに会いたかったぜ。ツアーファイナルに覚悟を持って、この場所を選びました。東京ドーム行けるか!?」
RYUICHI(Vo)が声を上げ、バンドは真矢のトライバルなドラムが躍動する「Déjàvu」から「DESIRE」とアップテンポのロックナンバーをつなげ、観客のシンガンロングとともにライヴの流れを加速させていく。「真っ黒の東京ドーム、壮観だよ」とSUGIZOも感嘆していたが、“黒服限定GIG”ということで黒一色の客席が5人の渾身の演奏に応えるように揺れる光景は圧倒的ですらある。
畳みかけるようなメロディが印象的な「JESUS」では、Jの赤いKing’s Red Sparkle PJ Bassがブースト気味に鳴りながら、それでもコード感がしっかりと聴こえるところにJのテクニックとともに新しいPJベースのポテンシャルを感じたりも。ちなみにJはPJベースともう1本、後述するボディの色も含め同じルックスを持つKing’s Red Sparkle Pression Bassを今回の東京ドーム公演から使いたかったのだそうだ。これまでの彼のシグネイチャーモデルのカラーとは印象が全然違う赤色のボディは、冒頭に引用した“覚悟の夜”にかけるJの情熱を象徴しているのかもしれないと想像が膨らむ。
「俺たちにしか作れないドームならではのグランドファイナルを、ともに作りましょう!」(RYUICHI)
たたみかけるように一気に攻めた序盤の流れを一変させたのが耽美的な「gravity」だった。INORANが曲の世界観を作るようにINORAN JAZZMASTER #2 LTDでトレブリーに奏でた儚げなアルペジオが観客の胸に染みていくのがわかる。そこからゴシックロマンな美学が窺える「RA-SE-N」、狂気を孕んだ「VIRGIN MARY」をRYUICHIの絶唱とともに立て続けに披露して、LUNA SEAならではと言える濃密な世界観に観客を釘付けにしていった。
演奏のみならず、メンバーのMCや観客との交歓も楽しみながら、4時間に及んだこの日、5人が演奏したのはアンコール、ダブルアンコールも含め全19曲。新旧の代表曲の数々はファンの期待に誠実に応えると同時にLUNA SEAというバンドが持つ本質を今一度明らかにするものだったようにも思う。
後半戦は、真矢のドラムソロと、真矢からバトンを渡されたJのベースソロからスタート。赤いKing’s Red Sparkle Pression Bassをピッキングしながら、その力強さが音色をナチュラルに歪ませる。ブラッシングしても音の粒立ちは抜群だ。「35年分の思いを込めて盛り上がっていこうぜ! 行けるか!?」と声を上げたJの“1-2-3-4!!”というカウントに応え、真矢のドラムの連打からなだれ込んだのは、パンキッシュなロックナンバー「IN FUTURE」。

「アリーナ! スタンド! みんな飛ばしていくぞ!」とRYUICHIが観客を鼓舞しながら、バンドが立て続けに演奏したのがシンガロング必至のロックナンバー「BELIEVE」と「ROSIER」。バンドがエンディングに向け、ラストスパートをかけたのは明らかだった。INORANはその2曲で再びINORAN Jazzmaster Desert Sandをプレイ。「ROSIER」では高音域を攻めながらバンドサウンドのエッジを際立たせたが、「BELIEVE」はクリーントーンに揺れを加え、ハイゲインサウンドだけにとどまらない新しいシグネイチャーモデルのポテンシャルをアピールしてみせる。前掲のインタビューで「早くこのギターで新しい音楽を作りたいですね」と語っていたINORANが、これからこのギターを使ってどれだけの音色を奏でていくのかが楽しみだ。
そこから、ダークな世界観を持つミドルテンポの「HURT」を挟むところがLUNA SEAならではなのだろう。真っ赤なライティングが炎の中で演奏しているようなイメージを演出しながら、観客の気持ちに鮮烈なインパクトを落とし込む。グルーヴで聴かせる演奏もさることながら、この曲の人気はやはりINORANが奏でる耳にこびりついて離れないギターリフによるところが大きい。そのリフをINORANはFender Kurt Cobain Jaguarでヘヴィに鳴らしてみせたのだった。そして──。
「最後にファイナルに相応しい黒服GIGを象徴するこの曲を!」
RYUICHIのタイトルコールにドーム中が湧いた本編最後の曲は、インディーズ時代からのレパートリーながら正式音源化されていない「NIGHTMARE」。あまりにも濃密な漆黒の世界観が観客を釘付けにする。歪みが混じるソリッドな音色でヒプノティックなリフを奏でるJが手にしているのは、白いボディと黒いピックガードの組み合わせがモダンな印象を与えるフェンダーのAmerican Ultra Pression Bassだった。
アンコールの1曲目に5人揃ってセンターステージで演奏したバラード「LOVE SONG」でSUGIZOがプレイしたAmerican Acoustasonic Storatocasterについてもレポートしておかなければ。アコースティックギターとエレクトリックギターのハイブリッドと言われることが多いこのギターならではの、若干トレブリーな音色でバッキングのコードストロークを奏でていたSUGIZOが見事なスイッチングでエレクトリックトーンに変え、伸びやかな音色で迫力に満ちたソロを放った瞬間はハイライトだった。Acoustasonicを操るSUGIZOのテクニックによるところも大きいのだと思うが、アコースティックトーンからエレクトリックトーンにスイッチした時の立ち上がりの速さと、他のエレクトリックギターと比べても何ら遜色ない出音というAcoustasonicのポテンシャルを最大限に引き出した最高のプレイだと言っても過言ではないだろう。

メンバー全員がLUNA SEAの未来を語って、“覚悟”の意味を明らかにしながら、さらに2曲、ポップな魅力がハジける「TONIGHT」と「WISH」を観客のシンガロングとともに披露。「WISH」ではツアーの大団円を祝うように銀テープが放たれた。
そして、鳴りやまない拍手の中、メンバー全員が白い衣装に着替え、オンステージしたダブルアンコール。
「41本のツアーをやって思ったことがあった。俺たちはこのバンドを、この旅を止めちゃいけない。覚悟を持って、LUNA SEAは止まりません」とダメ押しするように宣言したRYUICHの次の言葉が観客を狂喜させた。
「今年は5人で新曲を作ろうかな!」
熱狂の中、“覚悟の夜”を締めくくったのは、ダークロマンチックなバラード「FOREVER & EVER」。ステージの5人は息が詰まるほど濃密な演奏とともに《旅立とう 光の中へ》という彼らの“覚悟”に相応しい言葉を観客に届けたのだった。






【SET LIST】
1. LOVELESS
2. G.
3. Déjàvu
4. DESIRE
5. JESUS
6. gravity
7. RA-SE-N
8. VIRGIN MARY
9. IN FUTURE
10. I for You
11. FAKE
12. BELIEVE
13. ROSIER
14. HURT
15. NIGHTMARE
ENCORE 1
1. LOVE SONG
2. TONIGHT
3. WISH
ENCORE 2
1. FOREVER & EVER
LUNA SEA:https://www.lunasea.jp/