Players’ After School | ハマ・オカモト -前編-

Players After School

この秋、文化祭を控える高校生バンドを応援するため、綾小路 翔(氣志團)、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)、Charの3人のアーティストがサプライズで高校の軽音楽部を訪れ、特別講義を行うというスペシャルな企画「PLAYERS’AFTER SCHOOL」が行われた。2人目は、OKAMOTO’Sのハマ・オカモト。前編では、特別講義の模様をレポートする。


ハマさんが訪れたのは、東京ドームのそばにある私立東洋高等学校。この日は、軽音楽部の活動日ではないが、部員たちは文化祭に向けての特別講義を受けるために放課後の部室に集合。ただし、部員たちはハマさんが来ることはまったく知らせていない。

特別講義のオープニングは、顧問である住吉先生が部員たちを前に「学園際でのライヴでいいパフォーマンスをするため、お手本の映像をみんなで観ましょう」と話し、OKAMOTO’Sのライヴビデオを観るところからスタート。ビデオを観終わると、住吉先生が「実は…今日、OKAMOTO’Sのハマ・オカモトさんが特別講義に来てくれています!」と告げ、サプライズでハマ・オカモトさんが登場。部員たちからは「ワァー」と驚きと感動の声が上がり、部室内は興奮に包まれた。

興奮の中、ハマ先生の特別講義がスタート。高校生バンドの憧れバンドのひとつであるOKAMOTO’Sのメンバーが目の前にいるということで、嬉しくて泣いている部員もいるほどで、みんな興奮と緊張でいつもとは違う様子だが、ハマ先生はとてもフランクに生徒に「この中でベース弾いている人は?」などと問いかけながら講義を進めていく。

しかも、ハマ先生の話が面白い。「野球少年だったんだけど、高校で部活に入る時、部活紹介で野球部が恐ろしいくらい滑っていて(笑)。それで帰宅部を選択しました。ただ、仲のいい友達が楽器を始めて、楽器をやらないと話についていけなくて…というまったく感動的ではない始まりです」「バンドを組む時、他の楽器が埋まっていたので消去法でベースを始めました」とベースやバンドを始めたきっかけも、等身大でユニークなので部員たちは笑いながら聞いている。

それだけではなく、初めてカヴァーしたというザ・ビートルズ「デイ・トリッパー」では、用意しておいたオリジナル音源を聴かせてあげたり、自らベースフレーズを弾いて解説を加えていく。また、学生の頃に「奏法を習得するのに苦労した」と語った部分では、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーを挙げ、「当時はネット動画がまだ普及してなかったから、アルバムや音楽誌に載っているベースを弾いてる写真を見て、演奏方法を想像しながら独自に習得した」と話した後に、ファンキーなスラップ奏法を披露。面白いだけでなく、実践的な講義に部員たちは楽しみながらも真剣に耳を傾けている。

ハマ先生のミュージックヒストリートークの後は、部員たちからのQ&Aタイムへ。熱心な部員たちからの質問は実践的なものも多く、例えば「一日にどれくらい練習しているのですか?」といったもの。

ハマ先生は「あまり練習はしないです」とサラリと言ったあと、とても大事な話を部員たちに言い聞かせていた。

「先に言っておくと、楽器は一生上手くならないと思っています。できないことがあって、練習して克服してもまた次の壁がやってくる。その壁は永遠に続いていきます。ゴールはないです。でも、”これが壁だ”ってわかるようになるから」

ちなみに、ハマ先生にとっての最初の壁はスラップ奏法と小さな手。部員たちと手の大きさを比べていたが、女子部員と変わらない小さな手で、最初は演奏に苦労したそうだ。部員たちからすれば雲の上の存在であるハマ先生も、苦手なことやダメなことがあったことを知り、みんなホッとするやら、“頑張らなくちゃ”という表情を見せていた。

Q&Aタイムで講義前半が終了。「起立 気をつけ 礼」という懐かしい挨拶が済むとハマ先生は一度退室。講義後半には部員たちによる演奏があるため、部員たちは演奏の準備に取り掛かる。ハマ先生を前に演奏するとわかり、準備にも気合いが入っている。

準備が完了し、「ハマ先生!!!」の呼び声で再びハマ先生が登場。ハマ先生を前に、軽音楽部を代表して2年生バンド「MY ROOM」が演奏を披露。5人編成のガールズバンドで演奏のクオリティはとても高い。

だが、演奏の中盤でアクシデントが発生。ヴォーカルが歌詞を忘れてしまい、ほんの数秒だが楽器の演奏だけが教室に響いた。それでも素晴らしい演奏で、感想を求められたハマ先生は「演奏、上手いなぁ。僕が高校の時のレベルなんて酷いものだったので、自分が恥ずかしい」と演奏を褒めた。そして、ヴォーカルについて触れた。

「歌詞飛んじゃったの? でもあれがリアルだし、あの瞬間がこの演奏のクライマックスだと思う。歌詞が飛んだ瞬間、キーボードと目を合わせたじゃない。ああいう瞬間が一番バンドっぽいと思うんです。他のメンバーは”あっ、間違えた!”って顔をしていたり、”私には関係ない”という顔をしていたり。それがバンドのあるべき姿ですし、バンドじゃないと見られない光景。ああバンドだなって感じさせてくれた。ヘンな意味じゃなくて…ありがとう」

ハマ先生の言葉で部員たちも気がついたようだ。”ダメだと思っている部分は、武器にもなる”と。

バンドや演奏において忘れてはいけない大切なことも教えてくれたような気がした。上手く演奏することに夢中になっているが、本当は自由になりたくて、溢れる感情を音にしてくて演奏をしているはずだ。自分のリアルを出すこと。その大切さをハマ先生の言葉と部員たちの演奏が教えてくれた。

演奏に続き、ハマ先生がバンドの中に入って実践的なクリニックを開始。夢のような時間だ。しかもその後に、ハマ先生からフェンダーのPlayer Series Precision Bassが軽音楽部に贈呈されたのだ。狂喜の声を上げる部員たち。ハマ先生は「好きに使ってください」とPrecision Bassを部長の宮崎さんに手渡した。

そして、今日の講義の総括をするハマ先生。

「みんが真剣にバンドをやっているのが伝わってきました。OKAMOTO’Sの音楽が直接関係しているわけではないかもしれないけど、自分たちがやってきたことがみんなの世代につながっていることを感じられて、とても嬉しかったです。お礼を言わせてください。ありがとう」

部員たちから大きな拍手が起きた。

「バンドって、生きていく上で大切なことをたくさん教えてくれるよ。プロになるかならないかは別にして、みんなとても意味のあることをやっているから、信じて楽しんでやってください!」とこの日の特別講義を締めた。

最後にPlayer Series Precision Bassを中心に記念撮影。さらにハマ先生の希望で、ハマ先生のSNS用にプレベと部員たちの写真を自身の携帯で撮影。その景色は、先生と生徒ではなく、音楽仲間との楽しい時間。たった2時間の講義だったが、最後はみんなが音楽仲間となって特別講義は終了した。

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ハマ・オカモト(OKAMOTOʼS)
中学校からの同級生で結成された4人組ロックバンドOKAMOTO’Sのベーシスト。2010年日本人男子として最年少でアメリカの音楽フェス「SxSW2010」に出演。アメリカ七都市を廻るツアーや豪州・アジアツアーなど、海外でも活躍。これまでシングル8作品、アルバム7作品を発表。2017年8月2日には約1年半ぶりとなるオリジナルフルアルバム「NO MORE MUSIC」をリリース。また、2017年10月には、東京・中野サンプラザにてキャリア初のホールワンマンを開催し、瞬く間に即完。10月30日より年またぎで全国23か所を回るツアー「OKAMOTO’S TOUR 2017-2018 NO MORE MUSIC」を敢行、大盛況のうちに終了した。フェンダーミュージカルインスツルメンツコーポレーションの日本人ベーシスト初となるエンドーサーでもある。
› Website: http://www.okamotos.net/

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