SESSIONS in TOKYO | Blu DeTiger

革新的なスタイルが評価され、『フォーブス』誌が毎年発表している「30 Under 30」(「世界を変える30歳未満」30人)の音楽リストの表紙に抜擢されたブルー・デタイガーを招いた公開イベント〈Fender Flagship Tokyo Special Event with Blu DeTiger〉が2024年12月21日、Fender Flagship Tokyoで開催された。ベーシストとしてのみならず、シンガー、ソングライター、プロデューサー、そしてDJとしても活躍する音楽活動が次世代のポップミュージックを担う存在として、大いに将来を嘱望されているブルー・デタイガー。2024年9月には女性ベーシストとして、フェンダー初のシグネイチャーモデルLimited Player Plus x Blu DeTiger Jazz Bassを発表するという快挙も成し遂げている。その開発秘話も含むトークに加え、ライヴパフォーマンス、そしてLimited Player Plus x Blu DeTiger Jazz Bassの購入者を対象としたミート&グリートも行われたイベントの模様をレポートする。


このベースを手に取った人が、自分はスターだと感じられるものにしたかった

初めてのオーストラリアツアーの帰り道、自身のシグネイチャーモデルLimited Player Plus x Blu DeTiger Jazz Bassのプロモーションも兼ね、日本に立ち寄ったブルー・デタイガーにとって、今回の来日はとても実り多きものになった。ライヴパフォーマンスも含め、日本のファンと直接触れ合えたことに加え、渋谷でショッピングやナイトクラビングを楽しんだり、箱根で温泉に入ったり、富士山を眺めたりとプライベートな時間を満喫するスケジュールの余裕もあったのだそうだ。


「来日は3回目だけど、みんなの前で演奏するのは今回が初めて。これが唯一のショウ。今日しかないから、みんな楽しんでいってね! えっ、Fender Flagshipって世界でここにしかないの!? ホントに? 素晴らしい!」

サウンドチェック時のシビアな顔つきから一転、笑顔で挨拶したブルーがMCに促され、まず語ったのはベースとの出会いだ。

「ドラムを叩いていた兄のレックスの影響で7歳の時にベースを始めたんだけど、なぜベースだったのかというと、周りはギターを弾いている子ばかりで、ベースはほとんどいなかったから。しかも、女の子のベーシストってそれだけでユニークでしょ? ぶっとい低音を体に浴びた時、気持ちいいと思ってすぐにハマった。ベースの低音はいまだに私をやる気にさせてくれるわ」

現在、彼女がメインに使っているJazz Bassを手にしたのは10代半ば。

「ファンクやジャズを演奏するようになって、それにふさわしい音を出せるベースを探している中でJazz Bassを弾いた時、これだって思った。スラップ奏法も含め、Jazz Bassがファンキーな音の追求を可能にしてくれたと思っている。フェンダーのイメージ? そうね、アイコニックでクラシック、ギターあるいはベースと聞いて多くの人が思い浮かべるのがこの形じゃないかしら。そのフェンダーから自分のシグネイチャーモデルを出せるなんて、これ以上の歓びはない。光栄の一言に尽きるわ」

そのLimited Player Plus x Blu DeTiger Jazz Bassの開発には、他のどのベースとも被らないユニークなベースというコンセプトのもと、およそ3年という時間をかけたのだそうだ。

「とにかく見た目がイケてるベースを作りたいと思ったんだけど、皆さんどう?」と、ブルーが誇らしげにまばゆい光を放ちながら照明に映えるLimited Player Plus x Blu DeTiger Jazz Bassを見せながら観客に問いかけると、大きな拍手が沸く。

「私だけのブルーを出したかった。ラメの大きさも含め、いくつも試したわ。このベースを手に取った人が、自分はスターだと感じられるものにしたかった」

もちろん彼女がこだわったのは、ルックスだけではない。プロでもビギナーでも誰が弾いても弾きこなせるというコンセプトのもと、プレイアビリティも追求したという。厚さの薄い1966 “C”シェイプネックを採用したことに加え、ボディにチェンバー加工を施したことで、フェンダーベースの中で最軽量を実現できた。

「これなら背中や腰がバキバキならずに、いつまでもベースソロを弾いていられるわ」と笑ったブルーは、実際に音を鳴らしながらLimited Player Plus x Blu DeTiger Jazz Bassの特徴の一つであるベース用ハムバッカーに加え、3バンドEQとアクティヴ/パッシヴの切り替えが可能なプリアンプを搭載したサウンド面のこだわりについても語る。詳細はスペックを参照していただきたいが、ヌケのいいパンチのある音とトレブルからミッド、そしてベースまでという自在な音作りを実現させたこだわりから、誰もがリード楽器としてのベースの可能性を追求している彼女のベース哲学を感じたことだろう。


イベント後半は兄のレックスとサポートギタリストを迎え、演奏を披露しながら、百聞は一見に如かずと言わんばかりにLimited Player Plus x Blu DeTiger Jazz Bassのポテンシャルを見せつける。

1曲目の「Blutooth」は、跳ねるフレーズにオブリを加えたベースリフが印象的なムーディなディスコナンバー。ベースの音作りはやや抑え気味ながら、スラップで奏でたソロの音の粒立ちが際立つのはLimited Player Plus x Blu DeTiger Jazz Bassだからこそ。シーケンスでシンセプラックも鳴らしたファンキーな「Expensive Money」では、スラップとグルーヴィなフレージングを組み合わせ、歯切れのいい高音と、うねるような低音をシームレスに使い分けてみせる。

続く「heat jam」はタイトル通り3人でジャムセッションを繰り広げながら、ブルーがベースギターという概念から解き放たれた自由度の高いプレイを次々に閃かせ、リード楽器としての可能性を存分に見せつけると、それまで手拍子で応えていた観客が歓声を上げた。


観客の盛り上がりに「歓迎ありがとう!」と応えたブルーは、最後にもう1曲、メランコリックな歌声の魅力も印象づけるポップナンバー「Vintage」を披露。スラップを交え、タイトにリズムを刻んでいたベースプレイは曲が進むにつれてメロディアスなフレーズを奏でながら、「heat jam」と同様、どんどんベースの概念を逸脱していく。そして曲の終盤、ギタリストと掛け合ったソロではダメ押しするようにフレーズ、音色ともにリード楽器としてのベースのポテンシャルと、それに応えるLimited Player Plus x Blu DeTiger Jazz Bassのスペックの高さを、観客の拍手喝采の中、存分に見せつけたのだった。

「また戻ってくるわ!」という一言に、ブルーは再来日と本格的な来日公演への意欲を込めたが、この日、ライヴを見た誰もがもう一度見たい、もっと見たいと思ったことは、まず間違いないだろう。

最後に、ベースのビギナーに対するブルーからのメッセージを記してレポートを締めくくろう。

「練習し続けてください。挫折してもあきらめずに、弾けるようになった時の気持ちを思い出して、弾けるようになるまで続けてください」


Blu DeTiger
ニューヨーク市出身。7歳でベースを手に取り、さまざまなバンドでの活動のほか17歳からはDJ中にベースをパフォーマンスするセットでフロアを沸かせるなど、ロウアー・マンハッタンの音楽シーンで存在感を示す。またパンデミック期にはベースのカバー動画がTikTokで注目集め、現在ではフォロワー数が140万人を超えている。2023年にはフォーブス誌が選ぶ“世界を変える30歳未満30人”を表彰する『Forbes 30 Under 30』ミュージック・リストのカバー・アーティストを飾った。自身のソロ名義では2024年3月、デビュー・アルバム『All I Ever Want Is Everything』を発表。サブリナ・カーペンターやジャングルのオープニング・アクトを務めたほか、米国やヨーロッパでのヘッドライン・ツアーを成功させる。また、ブリーチャーズ(『Saturday Night Live』で共演)、オリヴィア・ロドリゴ、ドミニク・ファイク、キャロライン・ポラチェック、クローメオなどとベーシストとして共演するなど、ベース・シーン注目の存在として幅広い活動を展開している。

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