Interview | ハマ・オカモトがシグネイチャーモデルに込めた想い -前編-
2015年10月に発表されて以来、“シグネイチャーモデル”という枠を超えて幅広い層から支持を得ているベースが存在する。それがハマ・オカモト(OKAMOTO’S)の理想を具現化したモデル、HAMA_OKAMOTO PRECISION BASS® “#4″だ。果たして本モデルはどのようにして誕生したのか、その物語をお届けする。
ハマ・オカモトがフェンダーとエンドースメント契約を結んだのは2013年に遡るが、このプロジェクトが立ち上がった際、ハマ・オカモトの中には確固たる信念があったという。
「もし自分のシグネイチャーモデルを世に出すことになった際、極上の一本を作るのではなく、まずはユーザーにとって手に入れやすいものであってほしいという思いが一番にありました。というのも、僕自身、今でも楽器を買う側の人間ですし、2015年当時はまだ20代前半。もちろん専門誌や現場からは評価いただいているものの、実際、OKAMOTO’Sのことを好きでいてくれるファンの方々は、僕らと同世代かその前後の年齢層が多い。そういう意味でも、例えば高校生がアルバイトでお金を貯めて買えるような価格でリリースしたいと思っていました。
今、世に出ている、錚々たるミュージシャンたちのシグネイチャーモデルは高価な楽器が多いじゃないですか。もちろん作りもしっかりしているし、それぞれに本人のこだわりが詰まっているわけですから、それに異を唱えたいわけではないんです。ただ、だからこそ僕のシグネイチャーモデルでは価格を抑えることが絶対だったというか。その思いをフェンダーのスタッフに伝えてみると、まさかの“可能です”という返事をいただきました。そこからこの企画はスタートしました」
このHAMA_OKAMOTO PRECISION BASS® “#4″からは、4つの特徴が見て取れる。まず、プレイアビリティの根幹に関わる部分において、Jazz Bassのネックシェイプを取り入れた点が挙げられる。
「僕がメインで使用している68年製のPrecision Bassは、Bネックという少しナット幅が細いタイプなんです。価格を抑えつつ、現実的に僕の意向をどこまで落とし込めるかというせめぎ合いの中で、ネックに関しては大胆にJazz Bassのものを流用しよう、という結論に至りました」
さらに、ボディ材にバスウッドをチョイスした点も特徴と言えるだろう。60年代当時の塗装の工程を再現することが難しい現代において、バスウッドにサンバースト塗装を施すことで、むしろハマ・オカモトのメイン機に発色が近くなるというメリットを生み出した。
「アルダー材に塗装したものよりも、色味が少し明るいですよね。“バスウッド材は低価格帯の楽器に使用されるもの”という印象を持つ方が多いと思いますが、試作段階で実際に僕が弾いてみた時、サウンド面でもまったく遜色がありませんでした。この木材の選択についてはフェンダーからの提案だったのですが、そもそも“フェンダーが作る”というクオリティを信頼しているので、“この材じゃないといけない”など、そういった執着は必要ないと思っていました」
あとは66〜68年前後に取り入れられた、通称“パドルペグ”と呼ばれる楕円型のペグを搭載した点や、ハマ・オカモトのメイン機と同じくブリッジカバーを備えている点も、ルックスのアクセントとなっている。
「パドルペグが好きだということは、事あるごとに言い続けていたことなので、大きなこだわりがありました。実は、現行ではこのシェイプのペグは生産されていなかったのですが、結果的にフェンダーオリジナルで製作してもらえることになりました。それが達成できたことは大きいですね。ブリッジカバーは、その人のプレイスタイルに合えば最初から取り付けてもらえればいいですし、とにかく出荷時に付属しているようにしてほしいという希望がありました」
この4点を盛り込んだ本機は、スティーヴィー・レイ・ヴォーンの愛機”#1″のネーミングに倣って”#4(ナンバーフォー)”と名付けられた。後編では、このHAMA_OKAMOTO PRECISION BASS® “#4″の進化について、ハマ・オカモトに語ってもらおう。
› 後編に続く
HAMA_OKAMOTO PRECISION BASS® “#4”
「ありそうでなかった弾き易いプレシジョンベース」をテーマに、ハマ・オカモトが提案する「HAMA_OKAMOTO PRECISION BASS® “#4″」は、PRECISION BASS®でありながら、JAZZ BASS®のスリムなネックシェイプを採用。新カラーのOlympic Whiteの登場と同時に、「RED TORTOISESHELL」のピックガードの採用や、製造工程の見直しなので、よりクオリティの高いモデルに仕上がっている。
メーカー希望小売価格: 104,500 円(税抜)
PROFILE
ハマ・オカモト(OKAMOTOʼS)
中学校からの同級生で結成された4人組ロックバンドOKAMOTO’Sのベーシスト。2010年日本人男子として最年少でアメリカの音楽フェス「SxSW2010」に出演。アメリカ七都市を廻るツアーや豪州・アジアツアーなど、海外でも活躍。これまでシングル8作品、アルバム7作品を発表。2017年8月2日には約1年半ぶりとなるオリジナルフルアルバム「NO MORE MUSIC」をリリース。また、2017年10月には、東京・中野サンプラザにてキャリア初のホールワンマンを開催し、瞬く間に即完。10月30日より年またぎで全国23か所を回るツアー「OKAMOTO’S TOUR 2017-2018 NO MORE MUSIC」を敢行、大盛況のうちに終了した。フェンダーミュージカルインスツルメンツコーポレーションの日本人ベーシスト初となるエンドーサーでもある。
› Website:http://www.okamotos.net/