Turning Point of Performer Vol.8 | 柳沢進太郎(go!go!vanillas)

TURNING POINT OF PERFORMER

自分や仲間だけで演奏している“プレイヤー”から、オーディエンスを相手にして演奏する“パフォーマー”。同じ演奏だが、何かが違うはずだ。日本のロックシーンを熱くしているパフォーマーたちは、どうやって“プレイヤー”から“パフォーマー”へとステップアップし、また、パフォーマーであることにどんな魅力を感じているのか。TURNING POINT OF PERFORMERと題したシリーズ8回目は、go!go!vanillasの柳沢進太郎(Gt)が登場。

バンドはやってきたことが全部喜びになる。そんな素晴らしいキラキラしたものってない
 

― まずは楽器を始めたきっかけから教えてください。

柳沢進太郎(以下:柳沢)  かなり仲の良かった幼なじみが、代々ドラムをやっている家系で、例に漏れずそいつも小6でドラムを始めたんですよ。小学生の僕は、歌は好きだったんですけど、楽器に興味がなくて、楽器をやりたいとそんなに思っていなかったんです。だけど、幼なじみが楽器を手にしているのがカッコ良くて、それに負けたくないと思っちゃって。しかも「中学に入ったらバンドをやりたいからギターやってよ」と言ってくれて、中1でギターを買ったんです。そいつとはのちにバンドも組みました。

― 最初はどんな風にギターを弾いていたんですか?

柳沢  けっこう頑張って、中1でギターを買って、コピーを始める前からオリジナル曲を作り始めました。ロック的な反骨精神ですかね。とは言え、最初はコードも弾けないし何にもわからない。でも音楽は大好きだったので、これは音として成り立っているのか成り立っていないのかはわかるので、成り立っている音だけで曲を作っていました。

― 中1でオリジナル曲の制作はなかなかの好スタートですね。

柳沢  でもその後、一度ギターを挫折したんです。全然弾けないので(笑)。さっき言った“この響きはいい”というのも枯渇してくるんですよ。もうこれ以上出せる音がないって。しかも当時はバスケ部のキャプテンを務めていたので、いろんなことを並行してできなくて、1年くらいギターを休んで再びギターに戻った時に、ちょうどイギリスでアークティック・モンキーズがデビューしたんです。そのファーストアルバム(「Whatever People Say I Am, That’s What I’m Not」)が衝撃で。だって、演奏は上手いわけじゃないのにめちゃカッコいいわけですよ。それを発見して“これなら俺にもできそう。このニュアンスだったらいける!”とコピーバンドを組みました。それが中3の時ですね。

― 中3の時にバンドを始めて、高校に行ってからはバンド漬け?

柳沢  それが、高校でもバスケを続けていたんですけど、高2の時に、さっき話した幼なじみとテレビ番組のバンド賞レースに応募したんです。そしたらどんどん勝ち進んで東北代表にまでなれて、渋谷AXでライヴをしたんです。実は中学生ぐらいから密かに“音楽で食っていきたい”とは思っていたんですけど、AXでのライヴがきっかけで“音楽で食っていこう!”に変わったんです。

― 渋谷AXに辿り着く前はどんなところでライヴを?

柳沢  地元の小さいライヴハウスでオリジナル曲を演奏していたんですけど、自分たちのお客さんは10人くらいいればいいほうだったんです。ところが、渋谷AXでのライヴ後は多くの人が集まってくれるようになりました。もちろんそれは僕らの力だけではなく、番組の力で集まってくれたお客さんだと思うのですが、渋谷AXでのライヴを経て自分の中でビジョンが明確になったんです。“これならいけるかも”みたいな。浅はかかもしれないけど、自分を信じられるきっかけになりましたね。

― なるほど。ちなみに渋谷AXでのライヴはいかがでしたか?

柳沢  2,000人近くのお客さんが入っていて、めっちゃ緊張しました。しかも、テレビカメラも回っていて放送されました。そのテレビ放送のおかげで、さっきも言った通りライヴの集客が増えて、定期的に来てくれるお客さんも増えました。それと、番組で音源を売るという企画があったんですよ。ありがたいことに、そこにも反響は現れました。そのバンドが解散してからも母親から連絡が来て、“またお金入ってるよ”って。それで夢を見れたというのもデカイですね。自分が作った音楽がお金になって、それでバンドの移動費や食費をなんとか賄えていたので、“これは凄いことだな”って。苦しい時もあるんですけど、普通に楽しかったというか、要は“楽しい”のほうが勝っていたんですよ。今までバンドをやるためにたくさんバイトをしましたが、仕事って“ツライ”が勝つことのほうが多いと思うんです。それがバンドの場合、やってきたことが全部喜びになる。そんな素晴らしいキラキラしたものってないなって思いました。でも、それを続けるためには努力をしなきゃというのがずっと頭にありましたね。

TURNING POINT OF PERFORMER

TURNING POINT OF PERFORMER

高校時代のライブ写真

 

― それにしても、高校生で音源が売れていたのはすごいですね。

柳沢  高校の軽音楽部でバンドをやっている人は多いと思うのですが、是非オリジナル曲にも挑戦して欲しいと思います。そうすれば、自分たちがコピーしてきた曲の何がカッコいいのか、もっと気付けるんじゃないかと思うんです。“こういう曲を僕も作りたい。じゃあどうやってできているんだろう”って分析するために僕はコピーバンドをしていた。コピーはオリジナルを作るためのステップだったんです。そして、そのオリジナル曲を評価してもらえたから、“音楽向いてるかも”って自信も徐々に湧いてきて。それで思い切って高2でバスケ部を辞めたんです。その翌年もバンドの大会に出て決勝まで勝ち進むことができて、大きいところでライヴをさせてもらう機会がありました。そんな感じで、あっという間に高校生活が終わってしまいましたね。

― 高校卒業はバンドを続けるかどうかのひとつの岐路ですよね。

柳沢  僕は大学へ進学するつもりで、大学受験のために塾に通っていたんですけど、その塾の先生が受験の土壇場になって“お前は音楽をやりなさい”って。正直戸惑ったんですけど、音楽で食べていこうと決めて、両親に“大学に行くのをやめて音楽で食べていくために音楽の勉強をしたいです”と言ったら“いいよ”って言ってくれて。そんな両親と先生のおかげで音楽に没頭できました。結局、音楽専門学校に行ったんですけど卒業する時にバンドメンバーが就職してバンドもできなくなっちゃって、その後はレコーディングスタジオに就職しました。でも、そのスタジオがなくなってしまって解雇されちゃうんです。でもそれって、“バンドをやれ”ってことかなと思ったんですよ。

― 音楽エリートかと思いきや、なかなか波乱万丈な音楽人生を歩んできたんですね。

柳沢  なので、バンドをやり続けるには挫折が大事だなと思っていて。僕自身、リストラも経験しているし仕事も失っている。それってすごく恐怖が生まれるんです。どうやって生きていこうとか、両親にここまで育ててもらってどう恩返しすればいいんだろうって考えるけど、俺には音楽しかないと思えたぐらい音楽に希望を見出していたし、自分にも音楽の才能があるはずと信じてきた。挫折するたびに“やるしかない”って向き合えていました。

― ええ。

柳沢  落ちて這い上がって落ちて這い上がっての繰り返しでした。そういうのは人となりと音に出ると思っているので、やっぱり挫折はいっぱいするべきだと思う。でも、挫折するためには決意が必要だと思うんですよね。決意と覚悟がないと挫折できない。挫折を怖がってはいけない。挫折こそが一番の栄養だと思う。実は僕、原動力が“怒り”なんですよ。ピースに変えるぐらいの力を音楽は持っていると思うから、ネガティヴなことを音楽でオセロのようにピースにひっくり返していけたらいいなと思います。

― あらためてギターの魅力って何だと思いますか?

柳沢  ギターの持っているパワーは、本当にピースだと思うんです。体調悪い時でもギターは弾けるし、ギターを持ったら元気が出る。自分のバイタリティを活性化させてくれるんです。言わば曲作りもエネルギーの放出なわけで、俺のエネルギーを人に伝えるための触媒がギターです。それはライヴをしていると実感できます。ライヴで“やべえ! 今超気持ちいい!”って思ったら、お客さんも笑顔でコブシを上げているし、笑っているし、泣いているヤツもいる。だから、パワーの伝達器としての能力が、楽器は他の何よりも高いと思うんです。そして、マジでピースだと思うんです。それをどんどん突き詰めて、皆が銃ではなくギターを持つ世界になったらいいんじゃないかと思います。

 


AMERICAN PERFORMER TELECASTER®

TURNING POINT OF PERFORMER

カリフォルニア州のコロナ工場で製造されるAmerican Performer Telecasterは、USA製フェンダーならではのオーセンティックなトーンとフィーリング、そしてパフォーマンスにインスピレーションを与え新たな次元へと導くモダンスペックを随所にフィーチャーしています。

 

PROFILE


go!go!vanillas
牧 達弥(vo/g)、長谷川プリティ敬祐(ba)、ジェットセイヤ(dr)、柳沢 進太郎(g)の4人からなる新世代ロックンロール・バンド。 さまざまなジャンルを呑み込んだオリジナリティ豊かな楽曲で聴く人を魅了し、ライヴでは強烈なグルーヴを生み出す。 2014年、1stアルバム「Magic Number」でメジャーデビュー。 音楽ルーツへのリスペクトにとどまらず、常に変化・革新をし続けている。
› Website:https://gogovanillas.com/

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