special-interview-king-gnu-a

Special Interview | 常田大希、新井和輝(King Gnu)-前編-

本人と同じモデルを使っているほうが夢がある。そこは大事にしました

プレイヤーとしてのアイデンティティを形成するもののひとつと言っても過言ではないほど、ライヴ/レコーディング/MVなどさまざまなシーンでフェンダーを愛用しているKing Gnuの常田大希と新井和輝。そんな二人が、自身の理想を追求して作り上げたギターとベースがシグネイチャーモデルとして登場。日本製Swingerをベースに、大幅なカスタマイズを施した常田大希のシグネイチャーギター「Daiki Tsuneta Swinger」。そして、2021年に日本製にて復刻され大きな反響を得た「Made In Japan Deluxe Jazz Bass V」を元に、本人の理想を注ぎ込みアップグレードを施した新井和輝のシグネイチャーベース「Deluxe Jazz Bass® V, Kazuki Arai Edition」について、たっぷりと話を聞いた。

シンプルに良くて、僕が使いたいモデルを作ろうと思った

― まずは、お二人のフェンダーに対するイメージから教えてください。

常田大希(以下:常田) 俺は、フェンダーって言ったらカート・コバーン(ニルヴァーナ)かな。フェンダーカッケーな!って思いました。ウッドストック(・フェスティバル)で言えばジミ・ヘンドリックスも使ってたけど、もっとリアルな感じでいくとカート。カートは変形のフェンダーギターをたくさん使っていたので、そこから直接的な影響をかなり受けました。レッチリのジョン・フルシアンテもStratocasterですし、好きなギタリストはフェンダーが多かったですね。

新井和輝(以下:新井) 僕は最初、マーカス・ミラーだったんじゃないかな。それと、ジャコパス(ジャコ・パストリアス)。他社のベースを使っていた時期もあったのですが、結局はみんなフェンダーを使っているよなって。日本のミュージシャンもそうだし。それは何でだろう?とぼんやり思っていたんです。言葉では説明できないけれど、最近は“フェンダーを使うよな”と肌でわかってきたような気がします。フェンダーを使わないミュージシャンもいると思いますが、大体は持っていますよね。表向きは使っていなくても、レコーディングでフェンダーを使うミュージシャンも多いと思うんですよ。特にベースはそうだと思いますね。

― シグネイチャーモデルについて。まずは常田さんのDaiki Tsuneta Swingerから。

常田 すでにけっこう弾いているんですよ。よくアーミングをするのですが、チューニングが狂いにくくてすごく最高ですね。

― 激しくアーミングしても狂わないですか?

常田 まぁ激しくプレイすれば多少は狂います(笑)。だけど、普通よりも断然マシです。アーミングって捨て身のテクニックなので、今までのギターだとアーミングしたあとの曲はヒドイですね。メンバーにすごく見られます(笑)。

新井 “ん?”ってなるね。

常田 止めないですけど。

― (笑)。歌いにくくないのですか?

常田 たぶん歌いにくいと思いますけど、Daiki Tsuneta Swingerは音が格段に狂いにくいです。ビザールギターのような良さもあるけれど、機能面でとても進化していると思います。専用のシンクロナイズドトレモロとロック式チューナーを採用しているので、ライヴでも即戦力で使えると思います。

― 他にこだわった点は?

常田 いいところ全部盛りですね。チューニングの部分で言うと、ストラトのシンクロナイズドトレモロを載せてロック式チューナーをつけて、ピックアップはソープバータイプ。太いクリーンが出て…ギターへのこだわりが全部入っていますね。

― 初のシグネイチャーモデルですが、作るにあたっての想いは?

常田 アーティストモデルって、純粋にギターを弾きたい人からしたら使いにくい場合もあるので、できるだけシンプルにしたいと思いました。これをベースに改造してもいいと思うし。

― では、ビギナーの人にもオススメ?

常田 そうですね。これでギターを始めて探求してもいいでしょうし、そういう意味でギターを始めるきっかけになればいいなと思っています。

― 新井さんのDeluxe Jazz Bass® V, Kazuki Arai Editionのこだわりは?

新井 僕がメインで使っているAmerican Deluxeの形をそのまま使っています。2020年に、フェンダーでMade In Japan Deluxe Jazz Bass Vを監修させてもらったんです。そういう経緯があるので、楽器を始める“窓口”になるような楽器というよりは、シンプルに良くて僕が使いたいモデルを作ろうと思いました。それこそ、ハマ・オカモト君とかが窓口になるようなラインナップを出しているので、それと被っても意味がないでしょうし。American Deluxeの復刻をモデルに、“ここをこうしたら良いよね”っていうのが全部叶った感じですね。見た目は割と似ているのですが、American Deluxeとは10箇所くらい変わっているんですよ。あと、今回はAmerican Ultra シリーズの基盤を入れられたのが大きいかなと思います。復刻のほうはAmerican Eliteシリーズの基盤が入っているので。

 American UltraやAmerican Eliteを買った人で、American Deluxeの形でこの音を出せたらいいのにと思っている人は、すごくピンポイントだけどいると思うんです。そういう気持ちで作ったら、プロでやっている人たちがフェンダーのショウルームでこのDeluxe Jazz Bass® V, Kazuki Arai Editionを弾いてくれて、”めちゃくちゃ良かったから買いたい”というメッセージも何件かもらったので。そういう人たちに響いてくれたのは、作った甲斐があったなと思います。

― 本当にプロからの評判が高いです。

新井 シグネイチャーモデルがあっても、実は本人が使っているモデルはその10倍の値段のもの…ということがわりとあるじゃないですか。それが俺的にはしっくりこなくて。本人と同じモデルを使っているほうが、夢があっていいよなと思っていて。そこは大事にしましたね。その点は大希も一緒だと思います。そのぶん高くなってしまったのですが、5弦ベースでアクティヴだと仕方ないよねっていう感じです。

― ある種のリアルですよね。

新井 そうです。だから、“これを買ってくれたらあの音が出るよ”って言えます。廉価版じゃないよと。そういう部分も今回のコンセプトです。


special-interview-king-gnu-b

イマドキのサウンドにすごくマッチする

― お互いのシグネイチャーモデルをどう思いますか? まずは新井さんから見たDaiki Tsuneta Swingerから。

新井 かなり対照的なこだわり方だと思うんですけど、お互いギタリストだったらわかる、ベーシストだったら分かる、そんなこだわり方をしていると思います。僕も当初は変わった形や色を提案したのですが、そもそもベーシストの大部分の特性としてスタンダードな形(シェイプ)に収まるんですよ。出音も、形が違うとやっぱりあの太さは出ない。だから、結局はプレベかジャズベなんですよね。ギターほど選択肢は多くないはずなんです。大希は大希でギタリストの特性というか、その性分で良いところ取りはしているし、そういう部分が色濃く出たんじゃないかなと個人的には思っています。

― ちなみに、新井さんはギターを弾いたりしないんですか?

新井 ちょっと弾きます。家に2本あります。

― Daiki Tsuneta Swingerはどうですか?

新井 買おうと思っていますけどね。

常田 買わなくていい(笑)。

新井 なら買わないかもしれない(笑)。

― (笑)。常田さんから見て、新井さんのDeluxe Jazz Bass® V, Kazuki Arai Editionはいかがですか?

常田 和輝が言ったことがすべてです。音を聴く感じ、ハイファイな良さがある楽器だと思います。だからイマドキのサウンドにすごくマッチするんじゃないかな。

― どんな人にどのように使ってもらいたいですか?

新井 さっきも言った通り、狭いこだわり方をしているので、それをわかってもらえる人に評価をしていただければ嬉しいです。ただ、純粋な取り回しは5弦ベースとしても良いので、5弦ベースを触ってみたい人の窓口にもなり得ると思います。アマチュアからプロまで、いろいろな人に弾いてみてほしいですね。

常田 気軽にギターを始める人が増えたら良いなと思います。和輝が言った通りですね。

― 価格は税別15万円にこだわったんですよね?

常田 15という数字が好きなんです。誕生日が15日なので。キリが悪い数字だとちょっと気持ち悪いんです。ただそれだけ(笑)。要はできるだけ安くしたいっていう話です。あと、女性にとってもサイズ感がいいので、女性がバンドをやってくれるといいですよね。

新井 いいね! もしDaiki Tsuneta Swingerを使っていたらちょっとグッとくるもん。

常田 それも含めて、ギターを始める人が増えたらいいなという願いを込めています。

後編に続く


special-interview-king-gnu-e

日本製Swingerをベースに大幅なカスタマイズを施した”Daiki Tsuneta Swinger”。24インチスケールとバスウッドの軽量なボディーの組み合わせによる快適な演奏性と、メタルカバーのソープバータイプピックアップによる太く腰のあるサウンドは、完成以来ほぼ全てのレコーディングとステージで使用されるほど本人の信頼を得てきました。さらに専用のシンンクロナイズドトレモロと、激しいアーミングにも安定したチューニングを保つロック式チューナーを搭載することで、より自由な表現を可能にしています。

special-interview-king-gnu-f

2020年に日本製にて復刻され、大きな反響を得たMade In Japan Deluxe Jazz Bass Vを元に、新井和輝の理想が注ぎ込まれ、更なるアップグレードを施したシグネチャーモデル”Deluxe Jazz Bass® V Kazuki Arai Edition“。サウンドに徹底的にこだわったこのモデルは、アクティブ回路をメインに使用しながらもパッシブのナチュラルな響きを追求し、ローステッドメイプルネックに厳選されたローズ指板を採用。薄く吹かれたニトロセルロースラッカーが高級感と共にこだわり抜いた木材の鳴りを最大限に引き出しています。


King Gnu
東京藝術大学出身で、独自の活動を展開するクリエイターの常田大希が2015年にSrv.Vinciという名前で活動を開始。その後、メンバーチェンジを経て、常田大希(Gt,Vo)、勢喜遊(Dr,Sampler)、新井和輝(Ba)、井口理(Vo,Kb)の4名体制で始動。2017年4月、バンド名を“King Gnu”に改名。2019年、2ndアルバム『Sympa』でメジャーデビュー。
https://kinggnu.jp

Related posts