Cover Artist | Suchmos -前編-
絶対に手加減しないというか出し切ろうという雰囲気がバンドにあった
ストリート出身でロックやブラックミュージックをベースとした音楽性にもかかわらず、テレビCMや「NHK紅白歌合戦」出場など、お茶の間レベルまでその存在が浸透しているSuchmos。そのベーシストであるHSUとギタリストのTAIKINGにインタビューを敢行。前編ではそれぞれの楽器ヒストリーと、9月8日(日)に開催される横浜スタジアムでのワンマンライヴ「”Suchmos THE LIVE” YOKOHAMA STADIUM」について聞いた。
Kenさんに憧れていたから
― 2人は子供の頃からの友達なんですよね? 子供の頃からの仲間とバンドをやっているのって、嬉しいような恥ずかしいような?
HSU もういいかな、みたいな(笑)。
TAIKING アハハハハ!
― (笑)。小学校が同じでどうやってつるむようになったんですか?
HSU ドラムが始まりなんです。小学校の用務員さんにドラムを教えてもらっていたんです。20分とか30分の昼休憩に…昼休憩だよね?
TAIKING うん。そこで知り合って、しかもどうやら母親同士の職場が一緒だって。中学校はHSUはバスケ部で、僕はドラムを続けたくて吹奏楽部にいたんですけど、文化祭でHSUがギターを弾いてて、俺もギターを弾いていたのかな?
HSU そうそう。俺が中3でTAIKINGは中2だね。後夜祭でお互いのバンドで出て、お互い意識しだして。それで高校になってから一緒にバンドをやり始めたんだよね。
― HSUさんは何でバスケから音楽に?
HSU 小学校でドラムをやる前から、クラシックギターをやっていたんです。そのあとにギターはやめたんですけど、後夜祭で復活した勢いでまた音楽が始まったんですよね、多分(笑)。
― 後夜祭では何を演奏したんですか?
HSU ロードオブメジャーをやっていました。あとはディープ・パープル「Smoke on the Water」のカヴァーをしたり。当時はギターだったけど、気がついたらベースの魅力に吸い込まれていましたね。
― ベースにスイッチした瞬間を覚えていますか?
HSU ある時、ベースラインを耳で追っていたのに自分で気がついたんですよね。あ、俺ベースが弾きたいのかなって思い始めて。それでベースを買ってもらって、高1の軽音楽部に入る時にはもうベーシストとして演奏していました。
― 憧れていたベーシストは?
HSU 最初はL’Arc〜en〜Cielのtetsuさん(現:tetsuya)が好きでしたね。
TAIKING tetsuモデル持ってなかった?
HSU 持ってた。高1の時。かなりtetsuさんが好きだったなぁ。
― Suchmosのルーツであるブラックミュージックの話が全然出てこないんですけど(笑)。
HSU 親の影響でブラックミュージックもずっと聴いていたんですよね。tetsuさんが好きだった頃も、ずっとジャミロクワイを聴いていたし、親父がスティーリー・ダンが好きで、ずっとスティーリー・ダンが車の中で流れていたんですよ。ちなみに、ベースを買って初めて弾いたのが、シェリル・リンの「Got To Be Real」。あのベースの“ペローン”ってやつを弾きたくて。それまではギターでベースラインを弾いていたんですよ。ベースを買ってもらってベースで弾いたら“あ、やっぱりベースだ”って。だからブラックミュージックは通ってはいるんですけど、tetsuさんが好きだったのはベースラインがよく動いていたからですね。当時、テクニックを磨く意味で弾いて正解だったと思っています。
― TAIKINGさんのギターヒストリーは?
TAIKING 僕は小学校でドラムを始めて、ドラムを続けたくて中学校で吹奏楽部に入ったんですけど、部活の先輩に“お前もギター弾いてみろよ”って言われて、“じゃあ練習します!”って感じでギターを始めました。挫折を繰り返しながらも続けて、HSUがエレキギターを弾いた後夜祭の時に、僕もTHE BLUE HEARTSさんの「リンダリンダ」をギターで弾いて歌っていましたね。それからどんどんギターを弾くようになり、ドラムからギターを弾くようになっていきました。
― ギターを始めた頃の憧れのギタリストは?
TAIKING ラルクのKenさん(笑)。
HSU マジで? Kenさんに憧れていた時期があったの?
TAIKING あったよ。だって俺がStratocasterを持ったのはKenさんに憧れていたからだからね。
HSU そう言えば、Kenさんってアジサイ柄のストラトを弾いてたもんなぁ。俺、ベースだけど憧れてたんだよね。
HSU 懐かしいな。
と思っていました
― もしかしたら、2人とも違う路線に進んでいた可能性も?
TAIKING そっちのほうが有名になっていたかも(笑)?
― でも、Suchmosも成功しているバンドだと思いますが。
HSU それが正直わからないんですよ。お金も別に欲しくないし。本当に正直、わからない状態なんですよ。3月にリリースしたアルバム『THE ANYMAL』を作ったら、あまりにも脳みそを使い過ぎて、メンバー全員かなりディープなところに行っちゃったんですよね。
― もともとSuchmosをやろうと思った目的は何だったんですか?
HSU 最初はバイトを辞めたいからとかありましたよ。
TAIKING そうだね。
HSU 目的…うーん、それが難しいですよね。
― それこそ“お金を稼ぎたい”と言う人もいるだろうし、“音楽シーンを変えたい”と言う人もいるでしょうし。
HSU 音楽シーンを変えてやりたいとは思っていました。
TAIKING 音楽をやる目的って年を重ねるごとに変わっていくじゃないですか。20代そこそこのヤツはアルバイトを辞めて、プロのミュージシャン、アーティスト、バンドになりたいって思う。それが叶っちまったら“叶ったけど”っていう話になるわけで。それがどんどん塗り替えられていく感じだと思うんですけど、音楽シーンを変えたいとは本当に思っていたよね。『THE BAY』を出して、道場破りみたいな時があったしね。
HSU うん。ただ、結成から数えたらかなりの曲数をリリースしていて。
TAIKING 気付いたらさ、かなり出していたんだよね。一旦いいよね(笑)?
HSU 一旦いい(笑)。
― 出し切ったと?
HSU 今のところは出し切って何も出ない状態ですね。もうスッカラカン。ジャムっても何も出ないし、ジャムるって言っても何かよくわからないし。とにかく、『THE ANYMAL』を出してから何かが変わっちゃった(笑)。
TAIKING たぶん、メンバー皆そうだと思うよ。
HSU 『THE ANYMAL』のツアーが終わった後に、OK(Dr)も“これでこのアルバムから解放されるね”みたいなことを言っていたよね。だから、自分たちで作ったアルバムなんだけど、自分たちの手に負えないものになったというか。今も新しい曲を作ろうとしたり、各々が曲を作っていると思うんですけど、それがバンドにつながるのかも見えない感じ。長く続けているバンドは絶対に通る道なんだと思うんですけど…。もうちょい先に『THE ANYMAL』だったら良かったんじゃないかなって思います。
TAIKING そうそう、それは思った。ちょっと早かったかなと思う(笑)。
― 決定的な傑作を早く出し過ぎてしまったと?
HSU でも、このアルバムに辿り着いちゃったんだからしょうがない。
TAIKING 3rdアルバムだから気合いは入れていましたね。3rdというものにすごく重きを置いていたので。絶対に手加減しないというか、出し切ろうという雰囲気がバンド全体にあったので。その結果だとは思うんですけど、蓋を開けてみたらね、もうちょい後でも良かったなと。
HSU 何か大反省会になってるけど(笑)。
― (笑)。そんな中、9月8日に横浜スタジアムでのワンマンを迎えると。
HSU 面白いですよね(笑)。そんな『THE ANYMAL』というアルバムを出して、その直後にアリーナツアーがあって、9月にハマスタがあるわけでしょ? 何かのキッカケが『THE ANYMAL』だと思いますし、何か絶妙なタイミングでのハマスタですよね。
― 横浜スタジアムでのライヴで、バンドあるいはメンバー各自は何か答えを見つけるのでしょうか。
TAIKING 見つけるかもしれないけど、やってみないとわからないので。ゲネが始まって、どうしよう、ああしようと言っている段階なのでまだわからないです。
― ライヴの内容は『THE ANYMAL』中心ではなく“BEST of Suchmos”的なものになりそう?
HSU そうですね。全体的には今までの統括的な感じですね。
― いわゆるJ-POPではないSuchmosが、横浜スタジアムでライヴをやれるのはやはりすごいことだなと思います。
TAIKING そうですね。もともとバンドの目標も、“デカいとこでやってやるべー”って感じで、“ならば地元の一番デカいハコのハマスタでやってやろうぜー”ぐらいのノリだったんです。でも、ハマスタのステージに実際に6人で立てるってすごいことだなって思います。
HSU それが本当に実現するなんてね。
― 最初はネタ的に言っていたくらいのノリだったんですね。
HSU そうそう。ネタ的に言っていたのに、それが実現しちゃうんだって感じなんです。
TAIKING でも最近、そこに気持ちが徐々に追いついてきている感じがしています。後付けみたいになっちゃうのかもしれないけど、いろいろとやってきた中で培ってきたものをすべてお披露目できる場にしたいなと今は思っています。それと、ファン皆さんやこれまでサポートしてくれた方々への感謝の気持ちを伝えるようなステージにできたらいいなという感じです。
― Suchmosを始める時、“音楽シーンを変えたかった”とおっしゃっていましたが、このバンドがハマスタに立つということは、音楽シーンが変わった証しだと思います。
TAIKING これは言い過ぎなのかもしれないですけど、俺ら以降の人がいるなっていう風には何となく感じていますね。
HSU 変えてやる、変えてやったとかそういうことではなくて、今はとにかくハマスタでライヴをして、俺らのことを見つけてくれた人たちに直接ありがとうって伝えて、ハマスタが終わったら何かが始まるといいなぁという感じです。今までは、何かをこなしたら次に何かがあることがルーティンとしてあったんだけど、そのルーティンが今はちょっとないんです。ハマスタが終わった後、明確な予定はないんですよね。それを見つけにいきたいなぁ。だから、ハマスタがそのキッカケになればいいんだけどね。
TAIKING うん、そうなるといいよね。そういう意味でもハマスタが楽しみです。
› 後編に続く
■ TAIKING:American Original ’60s Stratocaster®(左)
■ HSU:American Elite Jazz Bass® V(右)
PROFILE
Suchmos
2013年1月結成。ROCK、JAZZ、HIP HOPなどブラックミュージックにインスパイアされたSuchmos。 YONCE(Vo)、HSU(B)、OK(Dr)、TAIKING(G)、KCEE(DJ)、TAIHEI(Key)の 6 人が、2013 年に神奈川県で結成。2015 年に 1st アルバム『THE BAY』、2017 年に 2nd アルバム『THE KIDS』、2019年に『THE ANYMAL』を発表。 9 月 8 日(日)には横浜スタジアムにて“Suchmos THE LIVE”を開催。
› Website:https://www.suchmos.com