Cover Artist | King Gnu -前編-
(Photograph by Maciej Kucia / Hair Make by TAKAI)
19年1月にメジャーデビューアルバム「Sympa」をリリースしたKing Gnu。実験的かつアヴァンギャルドなサウンドプロダクションと、J-POPばりの訴求力を持つメロディによって、コアな音楽ファンからお茶の間までファンベースを着実に広げ続けている。そんなKing Gnuから、ヴォーカル&ギターの常田大希とベースの新井和輝が表紙&巻頭インタビューに登場。音楽に目覚めたきっかけから楽器へのこだわり、現在レコーディング中だというニューアルバムの内容や、発表されたばかりのアリーナツアーに向けての意気込みまで、ざっくばらんに話してくれた。
― そもそも、お2人はどんなきっかけで音楽に目覚めたのですか?
新井和輝(以下:新井) 僕は中学生の頃、アコギをやっている友人たちに“バンドやろうよ”って誘われて。メンバーにベーシストがいなかったから、自分がやることになったんです。なので、最初からベーシストでしたね。
常田大希(以下:常田) 親が楽器をやっていて、押し入れの中にナチュラルボディの渋いエレキベースとかエレキギターがしまってあって。それを引っ張り出して、友人を誘ってバンドを始めたのがきっかけでしたね。俺も中学生の頃は、ウッドストックとかに出ていたようなサイケデリックロック…ジミ・ヘンドリックスやボブ・ディランが大好きで。レッド・ツェッペリンのスコアを買って練習したりとか。もちろん、運指トレーニングなんかもしていたし、今よりもギターは上手かった気がするな(笑)。中高生の頃はほんと音楽漬けじゃなかった?。
新井 そうだね。『地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ』とか買って練習しまくってた(笑)。ベースでスリーフィンガーとかフォーフィンガーをやっていたんだけど、高校で軽音部に入ったら“それ要るか?”と先輩に言われまくって(笑)
常田 あははは! それツラいな。
新井 でも、先輩の中には軽音部と吹奏楽部をかけ持ちしてた人がいて、その先輩から“そういうの弾きたいならジャズのライヴを観に行こうよ”と誘われたのがジャズとの最初の出会いだった。その流れで師匠の日野賢二さんとも出会ったんです。当時はブラックミュージック…ジャズやビッグバンド、ゴスペルあたりにかなり傾倒していましたね。ベーシストで影響を受けたのは、王道だとマーカス・ミラーやピノ・パラディーノ。他にもミシェル・ンデゲオチェロや、新しい人だとデリック・ホッジがすごく好きです。
― もともとKing Gnuは、どんなコンセプトで始まったバンドなのですか?
常田 ブラックミュージックのリズムをベースに、まったく違う要素の上モノを乗せていくという発想は結成当初からありました。それで今のメンバーが段々と加入していった感じですね。で、今に至ると。だいぶ端折りましたが(笑)
― 2017年に1stアルバム「Tokyo Rendez-Vous」をリリースし、今年1月にはメジャーデビュー作となる2ndアルバム「Sympa」をリリースしました。振り返ってみて、この2枚はどんなアルバムでしたか?
常田 “他のグループとは違うことをやろう”という気持ちは、ひょっとしたら1stの頃のほうが明確にあったかもしれないですね。今はもうちょっと力が抜けてきたというか。バンドアンサンブルやサウンドプロダクションはそんなに変わっていないですが、楽曲自体はよりポップになったしそれを意識していましたね。
― ベースのアプローチは変わってきましたか?
新井 そのへんは、セッションミュージシャン時代とそんなに変わっていないです。曲に対して最善のアプローチを探りつつ、そこに自分のエゴを、バランスを考えながら足していく感じというか。
常田 基本的には弾き過ぎてるよね(笑)
新井 そう(笑)ベースとしての最低限の役割は担いつつ、“遊べるところは遊ぼう”というスタンスでやっていますね。
― では、King Gnuの活動で特に大切にしていることは?
常田 大衆に訴えかける音楽を作るということを、King Gnuの活動では特に意識していますね。文化祭で全校生徒の心をつかむじゃないけど(笑)周りにいる仲間たちはめちゃめちゃ音楽に詳しいし、耳の肥えた人ばかりなんだけど、そこでウケて満足しているだけじゃ意味がないバンドというか。
― 「Sympa」を作っていた頃は、Mr.Childrenやサザンオールスターズ、宇多田ヒカルといったメインストリームの音楽を研究しまくったと聞きました。
常田 邦楽はめちゃくちゃ研究しましたね。理がそっち系のシンガーというか、例えば「Sympa」でいうと「The hole」や「Prayer X」みたいな曲がしっくりくるんですよ。そうやって俺の声と理の声を使い分けるというか、自分たちの特性みたいなものを客観的に見極める力が1stアルバムの「Tokyo Rendez-Vous」よりもついてきたと思いますね。
― そういうJ-POP的な要素と、アヴァンギャルドの要素をKing Gnuのようなバランスで組み合わせているバンドって、今までメインストリームにはあまりいなかったように思います。
常田 そこは自分たちでもかなり探りながらやっているつもりですね。おっしゃるように、サウンドプロダクションは普通のJ-POPのバンドとは違うものになっていると思います。
― メインストリームで活躍している一方で、Tempalayや君島大空、高井息吹といったインディーシーンで活躍するアーティストとの交流も積極的に行っていますが、メジャーとインディーの架け橋的な役目を担っている自覚はありますか?
常田 テレビなどでKing Gnuを知って、そこから俺たちのアナザープロジェクトや、交流のあるシーンのアーティストたちが作る作品にも触れてもらえたら、ものすごく嬉しいですね。しかも、それによってシーン全体が底上げされたら何よりです。実際に僕らの音楽をきっかけに、関連作品も聴くようになったという人たちの声も最近はよく聞くし、これからもそこは信じてやっていきたいと思っています。俺ら自身も、ブレずに音楽を作っていくことがより重要になってくるんじゃないかな。
― 現在(インタビュー時。10月下旬)は新作に向けてのレコーディング中だそうですが、どんな内容になりそうですか?
常田 今は半分よりちょっと進んだくらいですね。まだ全体を客観的に見るほどの余裕はないんだけど、どんな感じになるんだろう。
新井 まあ、売れるとは思いますね(笑)
常田 そうだね。いい曲揃いではある。King Gnuの場合は、骨子となるメロディを大切にしていて。それを中心に据えながら、メンバーそれぞれが自分たちのパートでやりたいことを試していくという感じなんです。ただ、ポップなことをやっているだけだと仕方ないので、そこをどうアレンジしていくか。今からその地獄の作業に入っていくところですね(笑)
新井 あと、今回のレコーディングから新しいシンセベースを導入したので、それでまたできることも広がりました。
― 楽しみです。アリーナツアーも発表されましたが、それに向けての意気込みもお聞かせください。
常田 アリーナか…でかいね(笑)
新井 でかいよね。まあ、フェスでは同じくらい大きなステージに出たことはあるけど、やっぱりベースは特に会場によって音の違いが如実に出るし、フレーズも多少変わってくると思うんですよね。これまでも音源とライヴでまったく違うアプローチをしてきたんですけど、それがどう変わっていくかはその場になってみないと自分でもわからない。より遠くへ届けるためにはフレーズもシンプルになっていくだろうから、そこは個人的な挑戦でもありますね。
常田 演出も、これまでは割とユルくやってきたんだけど(笑)、そろそろちゃんと考えないとですね。会場の規模が大きいだけに、ステージの見せ方はより重要になってくるし。ステージから遠いお客さんにも楽しんでもらえるような演出を今から考えたいと思います。
› 後編に続く
PROFILE
King Gnu
東京藝術大学出身で、独自の活動を展開するクリエイターの常田大希が2015年にSrv.Vinciという名前で活動を開始。その後、メンバーチェンジを経て、常田大希(Gt,Vo)、勢喜遊(Dr,Sampler)、新井和輝(Ba)、井口理(Vo,Kb)の4名体制で始動。2017年4月、バンド名を“King Gnu”に改名。2019年、2ndアルバム「Sympa」でメジャーデビュー。
RELEASE INFORMATION
NEW ALBUM「CEREMONY」
2020.01.15 ON SALE
Blu-ray Disc付き初回生産限定盤 4500円+税 BVCL 1046 / 1047
通常盤 2900円+税 BVCL 1048
初のアリーナ公演を含む全国ツアー決定!!
詳細は下記のホームページで › Website:https://kinggnu.jp