Cover Artist | flumpool -後編-
ニューアルバム「Real」全曲でフェンダーのギターが鳴っています
2017年12月、人気絶頂の最中、山村隆太(Vo)の歌唱時機能性発声障害により活動休止を発表したflumpool。2019年1月には地元・大阪でゲリラライヴを行い、活動再開を発表。活動休止中に己と向き合い、“バンドの成長を4人で喜び合えることにバンドの良さを感じる”と話す山村隆太の表情は、とても晴れやかだ。そんな彼らが、5月20日にニューアルバム「Real」をリリース。前編では、活動休止からの復活、ニューアルバム「Real」に込めた思いを語ってもらったが、後編では、ギターを始めたきっかけ、Fenderギターとの出会い、音楽を通じてのポジティヴな願いを語ってもらった。
― もともとお2人は幼馴染なんですよね?
阪井一生(以下:阪井) ドラムの(小倉)誠司以外は幼稚園から一緒なので、ほぼずっと一緒にいます。親より顔を見ていますから(笑)。
山村隆太(以下:山村) ホンマに(笑)。
― それぞれギターはどうやって始めたんですか?
阪井 中学やな?
山村 そうそう、中1か中2。
阪井 男子ならギターは一回は通るじゃないですか。しかも当時はビジュアル系も流行っていたし。
山村 GLAY、L’Arc~en~Ciel!
阪井 みんなギターを買おうぜ!から始まって、いろんな曲をコピーして。僕ら今もそうですけど、THE YELLOW MONKEYがずっと好きで、そういう曲をみんなでコピーしていましたね。
山村 中学校の文化祭に“出ようぜ!”ということになって、放課後にみんなで集まって練習していました。
阪井 そうそう、中2の時ね。
山村 ドラムセットを持ってる金持ちの友達の家に行ったり(笑)。
阪井 そいつハイハットしか叩けなかったけど。
山村 ハハハハ!
― 中学2年の文化祭がライヴデビュー?
山村 実際に俺は出ていないですよ。俺は応援していた側なので。
― そうなんですか!?
阪井 途中までは参加していたんですよ。でも譜面上、ギターパートが1人要らなかったんです。
山村 同じフレーズで良かったやん(笑)!
阪井 僕とヴォーカルもギターを弾けたけど、そのヴォーカルがギターが上手くて。隆太は3番手のギタリストだったんですけど、ギターが2パートしかなかったので最終的に応援側に回ったんです(笑)。
山村 “ええよ”って言うてたけど、めっちゃムカついてたからね。
阪井 ハハハハ(笑)。
― 仲睦まじいなぁ。
阪井 ライヴはそれっきりやったんですけど、その後も遊びでギターはずっとやっていて。
山村 でも、バンドの流れはあったよね? 高校に入って”バンドやろうぜ”って感じだったんですよ。黒夢とオジー・オズボーンとHi-STANDARDと(笑)。
阪井 やったやった! ゴイステ(GOING STEADY)も流行っていたなぁ。
山村 Mr.Childrenも! それぞれが好きなバンドの曲をやったよなぁ。
― で、ある時に路上でライヴをやろうぜと?
阪井 そうですね。それこそ、大好きなコブクロがデビュー前に僕たちの地元にほど近い天王寺をすごく賑わせていたりしたんです。路上ブームが再び来ていたので、それにあやかって俺らもやろうやって。で、2人で1回だけやったな。
― お客さんの反応は?
阪井 反応も何も、歌うまで何時間かけたかっていうくらい緊張していたんですよ(笑)。用意はしているものの“アカン、どうする?”って。
山村 ずっとモジモジしてて。
阪井 当然、立ち止まる人はほぼゼロでしたね。
山村 プリッツみたいなお菓子もらわんかった?
阪井 もらったもらった! “何か食べ”と大阪のおばちゃんがお菓子をくれたんです(笑)。
― それが初めてのギャラ?
山村 初ギャラはプリッツでした。「プリッツ」って曲書けそう(笑)。
阪井 めちゃくちゃいい歌になりそう。
― お2人ともギターの何に惹かれたんですか?
阪井 当時は、ギターを弾いていたらカッコいいと思っていたので。オトンもちょっと弾いていたので家にアコギがあって、オトンにフレーズを教えてもらっていました。
山村 一生の家に遊びに行ったら、ずっとギターを弾いていたイメージがあるけどね。
阪井 俺に限らず周りの連れもみんな弾いていたよ。『GIGS』とか『バンドやろうぜ!』を見て曲のコピーをしていたよ。
― 当時、憧れていたギタリストは誰ですか?
阪井 僕はイエモンが好きでギターを始めたので、EMMAさん(菊地英昭)に憧れていましたね。
山村 僕は一生が弾いているのを見て、ギターをやりたいと思った節がありますね。
阪井 それなら尊敬している人は俺やろ?
山村 それはちゃう(笑)。コイツいつも言うんですよ、”山村隆太が最も影響を受けたアーティストは阪井一生だ”って。
― 今はお2人ともフェンダーのギターを使っていますが、フェンダーとの出会いは?
阪井 僕らは路上ライヴでアコースティックギター出身ですが、それからバンドスタイルに変えたんです。当時からエレキは持っていたけど、使い物にならんようなギターだったんです。本格的にライヴハウスでもライヴをするようになって、“これは買わななぁ”ってことで初めて買ったのがフェンダーのTelecaster Thinlineでした。デビューしてからちょっとの間まで、ずっとそのシンラインを使っていましたね。
― シンラインを選んだ理由は?
阪井 当時、ライヴハウスで一緒だった先輩が持っていたんですよ。ボディに穴(fホール)が空いているのがカッコいいなって(笑)。その先輩が弾く音も良かったから。先輩のバンドはミスチルのような楽曲を作っていたんですけど、ギターもいい存在感を出していて。それに憧れて真似して買いました。
― 今はTelecasterとJazzmasterを弾いていますよね?
阪井 Stratocasterも弾いています。
― どういう使い分けを?
阪井 シンラインのあとに買ったのが今でも使ってるFENDER CUSTOM SHOPのTelecasterなんですけど、万能なので当時は何にでも使っていました。もうちょっとパンチが欲しいと思って今のJazzmasterを購入して、ちょっとパワーのある楽曲用に使い始めました。ストラトは最近買ったんですよね。それまでストラトは1本も持っていなかったけど、ストラトっぽい音を使いたいと思ってようやく買いました。
― ニューアルバム「Real」でもストラトを弾いていますか?
阪井 ストラトだけでなく、JazzmasterもTelecasterも全部使っています。ニューアルバム全曲でフェンダーのギターが鳴っています。
― ストラトはどうですか?
阪井 めちゃくちゃ好きですね。もはや、メインギターになりかけています。ずっとJazzmasterがメインやったんですけど、最近はストラトのほうが好き。ストラトも万能なので。
― 山村さんのフェンダーとの出会いは?
山村 僕も一生と同じ時期にフェンダーを使い出しました。インディーズ時代で、サンバーストのストラトでしたね。
― なぜストラトを?
山村 見た目かな。
阪井 当時は音のこととかよくわからんかったしね。何となくカッコいい音を作れたらいいやん、くらいの感じでしたから。
山村 そうね。その時は見た目で買った気がするなぁ。
阪井 あと、俺がテレキャスやったから、かぶらない問題もあったかもしれん。
― 山村さんは今はテレキャスですよね。
山村 そうですね。でも、テレキャスを弾くようになったのはメジャーデビューしてからですね。僕の場合、基本的にミュートかバッキングがメインなのでテレキャスのほうが合うかなと。テレキャスのほうが出したい音に近いですね。ストラトは上手い人が使っているイメージです。
阪井 どんなイメージやねん(笑)。
山村 ストラトは技巧派のイメージやねん。俺の場合、クリーンの音がちょっと不安な時期が昔にあったので。ゴリゴリ歪ませていきたいと(笑)。
阪井 誤魔化したい?
山村 うん。誤魔化したかった(笑)。
― お2人にとってギターはどんな存在ですか?
阪井 野球でいうグローブみたいなんかな?
山村 ああ、なるほどね!それはうまいね、僕が言ったことにしよう(笑)。
― では阪井さんにとってギターとは?(笑)
阪井 あれ? 俺がグローブって言ったはずなのに…。次に隆太がいいこと言ったら俺が言ったことにしてもらうわ(笑)。
― (笑)。
阪井 めちゃくちゃ難しいですけど、ボケツッコミみたいなものですね。
山村 ボケツッコミ(笑)!?
阪井 僕がボケで、ギターがツッコミ。それでひとつのコンビになっているので。ボケが1人だとやっぱりツライですから。ツッコミがいて成り立つものなので(笑)。
― アルバムリリース後の予定は?
阪井 ニューアルバム「Real」を引っさげて7月から全国ツアーが始まります。
山村 今こそ音楽が必要な時かなと思うんです。ただ状況が状況なだけに、どこまでできるのかわからないですけど、こういう世の中だからこそ音楽が必要だと思っていて。最大限努力して、知恵を絞って、全国ツアーをやりたいです。今回の「Real」が自分たちとしても再スタートのアルバムなので、世の中的にも乗り越えていこうぜって、後押しができたらいいなと思います。音楽って元気や励まし、勇気を与えてくれるものです。そして、そういうものを人から人に移していくものだと思うんです。こんな時期だからこそ、ポジティヴなものを移し合えたらいいよねって思っています。
― flumpoolの復活を待っているファンの方もたくさんいると思うし、今の20代のミュージシャンに強い影響を与えているflumpoolの復活は、本当にグッドニュースだと思います。
山村 当時とそんなに変わらない自分がいるというか、むしろ、当時よりも元気な自分がいますね。身体的にくたびれているところはあるけど、精神的には“ここからやったる!”という気持ちが当時よりも強い気がする。“歳取ったなぁ”じゃなく、意外と青春やなって。俺ら初心やな(笑)。今でもギターがあるだけでワクワクするというか。少年心の夢が蘇るんですよね。それってつまり、上京した頃と変わっていないことを思い出させてくれる。それがギターなのかなと思います。
阪井 今の俺が発言したことにしてほしいわぁ。お前はグローブの話で、今のフレーズは俺が言ったことにしよう(笑)。
山村 素敵な撮影までしてもらって“ギターとはグローブです”って(笑)。まぁ…バンドって楽しいです。
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flumpool 愛用機材
山村(左):CLASSIC SERIES ’60S TELECASTER OLYMPIC WHITE
阪井(右):2017 LIMITED 1957 STRATOCASTER HEAVY RELIC LAKE PLACID BLUE OVER PINK PAISLEY
PROFILE
flumpool
2007年1月、山村隆太(Vo)・阪井一生(Gt)・尼川元気(Ba)の3人でのアコギユニットを経て、知人の紹介で出会った小倉誠司(Dr)が加入し、flumpoolを結成。2008年10月1日リリースのデビューDOWNLOADシングル『花になれ』がau「LISMO!」CMソングに抜擢され、10日間で100万DLを突破するなど大きな話題となり、デビュータイミングにその名を全国に響き渡らせる。2009年からは3年連続で紅白歌合戦出場を果たし、名実ともに輝かしい活動を続ける中、2017年山村隆太が「歌唱時機能性発声障害」であることが判明し、治療に専念するため、12月5日より活動休止。
以降休止期間を経て、2019年1月、バンド結成日である1月13日に、大阪・天王寺公園にてゲリラライブを実施、活動再開を発表。2020年1月8日にはテレビ東京系アニメ「あひるの空」オープニングテーマ『ネバーマインド』、1月9日には日本テレビ系水曜ドラマ「知らなくていいコト」の主題歌『素晴らしき嘘』配信リリース。4月2日にはTOKYO MXでスタートするテレビアニメ「かくしごと」オープニングテーマ『ちいさな日々』を放送開始当日にニューアルバムから先行配信。そして、4年ぶり待望のニューアルバム「Real」は5月20日リリース。そのアルバムを引っ提げて7月から12月まで29都道府県36公演を回る全国ツアー[flumpool 10th tour 2020]を開催する。
› Website:https://www.flumpool.jp