ピックアップのポールピースって何?なんでそれが重要なの?
フェンダーのカスタマーサービスには、「どうしてStratocasterのピックアップには段差のある棒が取り付けられているの?」といった質問が多く寄せられます。その答えは”弦ごとに異なった出力バランスを整える為”です。
それってどういうこと?
簡単に言えば特定の弦の出力が大きくならないように、他の弦とのバランスをとっているんです。弦の太さも、張力も違うので、その出力を極力揃える必要があります。スタッガードポールピース(段差のあるポールピース)は、一部のStratocasterに採用されているような、調節可能なポールピースを持たないギターにとって、とても重要であり、個々の出力のバランスを取るのに役立っています。
スタッガードポールピースのデザインで最も重要だったのは、指板のラジアス(半径)でした。弦の高さは指板のラジアスに対応して変化しているので、各弦とピックアップとの高さは異なっています。指板の半径は緩やかに凸になっていますので、指板の真ん中に位置する3弦と4弦は、端に位置する他の弦よりも、ピックアップからの距離が遠くなっています。そこで、その距離を合わせ、音量のバランスをとるために、3弦と4弦のポールピースを上げることは理にかなっていると言えるでしょう。
歴史的には、スタッガードポールピースは、1974年に段差のないストレートポールピースに置き換えられるまで、約20年間ほとんどのStratocasterに採用されていました。Telecasterは、1960年代からスタッガードポールピースを採用しています。
また、1954年にStratocasterが発表された時、ライトゲージや、ラウンドワウンド弦(断面が丸いワイヤーが巻かれている弦)は存在しませんでした。また、当時のStratocasterは、6、5、4、3弦までがフラットワウンドと呼ばれる、断面が平面なワイヤーが巻かれている弦でした。巻き弦の3弦は出力が弱かったので、3弦のポールピースを上げることで対応しました。
その後ライトゲージが普及し、3弦も巻き弦ではなくなった頃から、そこまで極端なポールピースの調整は必要が無くなりました。また、より明るい響きが特徴のラウンドワウンド弦の登場も高さの調整に変化をもたらしました。
1950年代から、指板のラジアスも変化し、当時の段差は今では一般的ではなくなり、現在では、ヴィンテージスタッガードや、ハイブリッドスタッガード、カスタムスタッガードなど多くの種類が存在しています。
ピックアップ自体の高さは、ドライバーで簡単に調整が可能です。しかし、うまく行わないとトーンに影響がでることがあります。ピックアップを高く設定し、弦の近くにすると出力は高くなりますが、他にも2つのことが起こります。
一つ目は、高音と低音のバランスが変化します。これは、周波数帯域によって、低音と高音の出力バランスが均一ではないためです。場合によっては、低域が強調されすぎて聴こえるかも知れません。また、弦を近づけると、マグネットが弦を引き寄せる力が大きくなり、弦の振動が少し早く減退するためサスティンが短くなることもあります。
その点、スタッガードポールピースが優れているのは、ピックアップの高ささえうまく設定すれば、弦毎の出力とトーンバランスは、スタッガードの段差によって最適化されていることです。