Cover Artist | SE SO NEON -後編-

”フェンダーに似合う指を持った人になってやる”という思いが常にある

先日ヴォーカルギターのソユンがBTSのRMとのコラボ曲を発表するなど、韓国で今最も熱いロックバンド、SE SO NEONがついにCover Artistに登場。インタビュー後編では、フェンダーに対するイメージや日本と韓国のロックシーンについて、さらに今後の活動について伺った。

ソロアルバムを制作しながらもセソニョンに当てはめられることをたくさん経験し学べた

──お二人のフェンダーに対するイメージを教えてください。

パク・ヒョンジン/Park Hyunjin(Ba/以下:ヒョンジン) 子どものころ、「楽園商店街(※)」という日本で言うと御茶ノ水とかデジマートみたいなところがあって、先生が”フェンダーがいい”と教えてくれたので、何もわからないまま”フェンダーください”と言ったら、”フェンダーは高くて買えないよ”と。

一同 (笑)。

ヒョンジン もちろん他にもいいブランドがたくさんありますけど、当時はベースを買うなら無条件でフェンダーでしたね。

──ソユンさんはどうでしょう。

ファン・ソユン/Hwang Soyoon(Vo,Gt/以下:ソユン) 前編で中学に通うのをやめて音楽学校に通っていたと話しましたが、その時私だけフェンダーじゃなく、他ブランドの赤いギターだったんです。ある日、ギターを弾く子が集まってアンサンブルをする日があったんですけど、みんなフェンダーを持っているのに私だけ違かったのでからかわれたんです。そこで、”あんたたちの指はフェンダーなのか? 私は他のギターを使ってても、指はフェンダーになる”って誓いました。

──かっこいい!

ソユン その後、フェンダーのギターも買いはしたんですけど、”この楽器に似合う指を持った人になってやる”という思いが私には常にあります。

──名言ですね。では続けて楽器初心者へ向けたアドバイスやメッセージをお願いします。

ソユン 音楽、特に楽器は、誰かと呼吸を合わせるためにやるものですよね。なので、楽器で音楽をやりながら、人とコミュニケーションする機会がたくさんあったらいいなと思いますし、その経験がどれほど驚くべきことなのかを感じていただけたらと思います。

──韓国人のメタル系バンドマンから聞いた話なんですが、韓国ではロック、パンク、メタルといったバンドが活躍できる機会がとても限られているそうですね。それは本当ですか?

ヒョンジン そうですね。

──どういう状況なのでしょうか。

ソユン かつてはアンダーグラウンドシーンにはクラブがかなりたくさんあったんですけど、ここ数年で3分の2程度が店を閉めました。コロナの影響が大きかったですけど、需要も減ったんです。なので、今はロックバンドが成長し続けるのが難しい状況だと思います。韓国の音楽産業もそうですし、そもそもロック自体が韓国では非主流なんです。

──そんな中で人気を獲得してるセソニョンというのはすごく珍しいパターンということですね。

ソユン そうかも知れないですね。

──ソユンさんは先日リリースしたばかりのソロアルバムでBTSのRMさんと共演されていますね。今ご自身がおっしゃったみたいにメインストリームではない音楽を鳴らしている人たちにとってK-POPはどういう存在なんですか?

ソユン うーん……“産業の中でつくり出された芸術”。もちろん私たちもその産業の中にいますが、そこのルールに従って動いてはいません。だから、今回のコラボレーション自体が、お互いの領域の裾野を広げる意味になったのではと思います。

──そういう意味でもすごく画期的なコラボレーションなんですね。ソユンさんとしてはどんなソロアルバムになったと思いますか。

ソユン バンドではないのでより実験的だけれども、バンドのフォーマットやプロセスに則ってつくったつもりです。なので、ソロアルバムを制作しながらもセソニョンに当てはめられることをたくさん経験し学べたと思います。

人にどう聞こえるかはあまり気にしていないし、やりたいことを全部やる

──日本のロックバンドに対する印象ってありますか?

ソユン 日本はロックの歴史がとても深いですよね。J-POPと同じくらいJ-ROCKが有名で、その点においてはとてもうらやましくもあるし、良い環境だなと思います。それと日本のロックシーンにはアイコニックな人がいると思うので、私たちも日本で活動を続けながら、新しいキャラクターとして位置づきたいと思っています。

スタッフ ロックについてよく知らないというのが逆にセソニョンの長所だと思うんです。二人とも特にロックが一番好きということでもないし、分からない。でも、そういう二人がロックをやることで新たなロックが生まれるんだと思います。それを私たちは”セソニョンらしい”と言っているんですけど、それが二人の人気の理由なのでは、という話をほかからもたくさん聞きます。

──個人的には次のアルバムをすごく楽しみにしています。

ソユン アルバム、出ます。制作中です。制作の過程が面白いですよ。高度の理性で音楽をつくるというよりは、その過程がすごく楽しい。人にどう聞こえるかはあまり気にしていないし、やりたいことを全部やろうとしています。私たちはそうやって少しずつ成長しながら、広く、深くなっている最中で、その結果として生まれた音楽を新しいアルバムに溶け込ませられるのではと思っています。

──すでに新曲をいくつか出してますけど、それらを聴いた限り、前回のアルバムとはまた違った雰囲気のものになるのかなと想像しています。

ソユン セソニョンは常にセソニョンだし、サウンド的に実験をしたり、使う楽器が多様になるかもしれませんが、今回のアルバムでも私たちのストーリーを上手く溶け込ませようとしています。11月にはアジアツアーが予定されていて、日本にもまた来ます。(日本語で)期待してます、楽しみです。

※楽園商店街:1969年、仁寺洞(インサドン)にオープンした住商複合ビルで、楽器店が入店している2~3階は「楽器商店街」の通称で知られている。1970年代に韓国で海外ロックバンドが爆発的に人気を呼び、国内でも楽器の需要が高まったため、この1か所に楽器専門のショップが集まった。

ヒョンジン:Player Plus Active Meteora Bass | ソユン:American Acoustasonic Jazzmaster

>> 前編はこちら


SE SO NEON(セソニョン)
ファン・ソユン(Vo,Gt)、パク・ヒョンジン(Ba)からなる韓国のバンド。 2016年に韓国ソウルで結成、2017年6月にシングル『長い夢』でデビュー。同年10月EP『夏の羽』で、韓国インディーズを代表する1組となる。 韓国大衆音楽賞「今年の新人」「最優秀ロック歌」を受賞し、日本をはじめ、米国、カナダ、ドイツ、台湾など10カ国余りでライブを行っている。 2020年には〈Fender NEXT〉への選出をはじめ、米国の音楽メディア「ピッチフォーク」や「ペースト」のベスト・ロック・アルバムの1枚に選ばれ、2021年にはYouTube Musicの「2021Foundry」で唯一の韓国チームとして選ばれるなど、継続的に海外から高い評価を受けている。
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