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The Rock Freaks Vol.18 | 河村隆一

アーティストとフェンダーによるケミストリーを写真で切り取るエキシビジョンシリーズ「THE ROCK FREAKS」。第18回目は、LUNA SEAの河村隆一が登場。

答え合わせをしていった結果、世界基準の音としてフェンダーに辿り着いた

LUNA SEAのヴォーカリストであり、ソロとしても活躍する河村隆一。その歌声を聴いたことがない人はいないと思う。圧倒的な声量を武器に、2011年には日本武道館にて、6時間半で104曲を歌いきるコンサートでギネスワールドレコーズに認定されたり、〈ノーマイク・ノースピーカーズコンサート〉を行うなど、ヴォーカリストとしての実力はアジアの中でも群を抜いている。

そんな河村だが、LUNA SEAのライヴでも時折ギターを弾きながら歌うこともあるし、そもそもソロ活動においては作曲も担当しているが、その作曲はギターかピアノで行っている。LUNA SEAのライヴでギターを弾く理由を尋ねると「SUGIZOが弾いてって言うので」と笑いながら教えてくれたが、インタビューが進むにつれて実はかなりの楽器マニアということが判明していく。マニアックな話の前に、河村がギターを始めたきっかけから。

「もともと家に親戚のアコースティックギターがあったのと、母親がザ・ビートルズのファンで、エレキギターの音は耳にしていて憧れていたんです。小学校5年生の時に、初めて白いエレキギターを買ったのがギターデビューですね」

近所のレコード屋さんで15,000円で買ったそのエレキギターは、ブリッジが錆びていたり、そもそも子供だった河村はギターのことがわかっておらず、ステレオのヘッドフォン端子にシールドを差し、音が出なかったりでギターを放置。少しあとにアンプの存在を知りエレキに魅了されるも、当時はヘヴィメタルブームだったため速弾きに挫折を覚えてしまう。歌も歌っていたが、ヘヴィメタルの高音が裏声とは知らず、地声で歌えないことから歌でも挫折を覚えることになる。

「何かをコピーするのではなく、自分でルールを作ればいいんだと思って、中学校2年生の時にバンドを組んでオリジナル曲を作るようになりました」

その流れが、のちにLUNA SEAへの道を切り開いていくことになる。インタビューで機材や楽器の話になると、河村は一段と饒舌になる。実は彼のプライベートスタジオには、ヴィンテージの機材と楽器が揃っている。ただし、コレクターではない。あくまでもレコーディングで使うものだけを置いておくそうだ。スタジオに置いてある、河村の音楽の世界観を支えるギターとベースはフェンダーがメインだという。

「世界基準の音を追求したら、そこに辿り着きました」とその理由を教えてくれた。

もう少し詳しく書くと、きっかけはエンジニアの「これ太い音してるわ」の一言だったという。感覚的に“太い音”は理解できても、“太い音”にも実はいろいろとある。音ほど言葉にするのが難しいものはない。それから彼は、世界基準となっているロック、ポップスを聴き、その音を支える楽器をくまなく調べ、“基準となる音”を探し求めた。

「その答え合わせをしていった結果、世界基準の音として(ギターとベースは)フェンダーに辿り着いたんです」

とは言え、河村はヴィンテージ原理主義ではない。

ROCK FREAKS VOL.18

Photograph by Yuuki Igarashi

「僕の音楽を作る上で必要なルーツは、もう押さえたと思っています。そういう礎ができたので、今はマスタービルダーやチームビルダーが作る新しい楽器に興味があります。新しい楽器にはヴィンテージの楽器では枯れてなくなってしまったものがちゃんと残っているし、価格も比べものにならないくらい手頃で買えますから」と新しい楽器への好奇心も旺盛だ。

そんな河村の目に留まったのが、エレキギターとアコースティックギターが1本に収まったAmerican Acoustasonic Telecaster。さっそく試奏をし、開口一番に「これ凄いね!」と感嘆。さらにスタッフから機能を聞き出し、いろいろと試している。

「これを僕のソロライヴで使ったら、ライヴでのCD音源の再現性が上がりますね。というのは、レコーディングではアコギやエレキの音をいくつか重ねているけど、ライヴだとギタリストが1人か2人なので、音源通りに再現できないことも多くて。でも、American Acoustasonic Telecasterだとそれも可能になりますね!」と興奮気味に話してくれた。

河村は2021年1月にニューアルバム『BEAUTIFUL LIE』をリリース予定。今作はINORANなどのコンポーザーから提供された曲を、河村が歌うという試みで新しいケミストリーを楽しんでいる。河村の表現者としてのポリシーは、本物を追求しながら、常に変化も求めていることだと思う。それがこのアルバムにもしっかりと現れている。

「『BEAUTIFUL LIE』でも、ギターとベースはほぼフェンダーを使っています。そして今日、新たに素敵なギターと出会ったので、ライヴでこのAmerican Acoustasonic Telecasterを使ってみようかな。やっぱり、いつまでも音楽でドキドキしていたいので」。そう言って微笑んだ。

インタビューが終わったあと、河村はフェンダーのショールームにあるたくさんのギターを愛おしそうに眺めてこう言った。

「このギターたちは200年後、どんな音を出すのでしょうね。200年後と言うと随分と先だけど、僕はいい音を出しているほうに賭けますね」と優しく微笑んだ。

河村隆一というアーティストは常に未来を見つめ、そして好奇心に溢れているが、その源流はギターにあるのかもしれない。


LUNA SEA
89年、RYUICHI(Vo)、SUGIZO(Gt/Violin)、INORAN(Gt)、J(Ba)、真矢(Dr)のメンバーにて、町田プレイハウスを拠点にライヴ活動を開始(当時の表記はLUNACY)。90年にバンドの表記をLUNA SEAに変更し、翌91年、エクスタシー・レコードより1stアルバム『LUNA SEA』をリリース。92年、アルバム『IMAGE』でメジャーデビューを果たす。 2000年11月、突然の“終幕”を発表。12月26・27日の東京ドーム公演を最後にその活動に終止符を打つ。終幕から7年の歳月を経た、2007年12月24日満月のクリスマスイヴ。東京ドームにて一夜限りの復活公演「GOD BLESS YOU~One Night Déjàvu~」を開催。そして2010年、ついに“REBOOT”を宣言。東京ドーム3daysを含むワールドツアーを開催し、本格的な活動再開を果たした。 2013年12月、13年5ヶ月振りとなる8枚目のオリジナルアルバム『A WILL』をリリース。2014年にはバンド結成25周年を迎え、終幕の年以来となる全国ツアーを敢行。翌2015年には、25周年の集大成として自身初の主宰フェスとなる「LUNATIC FEST.」を開催し、歴史にまた新たな1ページを刻み付けた。 2017年12月、9枚目のオリジナルアルバム『LUV』をリリース。そのアルバムを携え、2018年1月から全国ツアーを巡り、バンド結成日である5月29日、日本武道館にてツアーファイナルを飾った。 2018年6月には、2度目の開催となる史上最狂のロックフェス「LUNATIC FEST. 2018」を敢行。同年末、12月22日、23日に行われた「LUNATIC X’MAS さいたまスーパーアリーナ2days」公演では、翌年に待つ結成30周年へのイントロダクションとして、活動初期のツアータイトル「IMAGE or REAL / SEARCH FOR MY EDEN」と銘打ったコンセプトライヴを披露。 2019年、結成30周年記念日である5月29日には、待望のニューシングルリリースと共にSLAVE限定“無料”LIVE「The 30th Anniversary FREE LIVE -DEAR SLAVES-」を決行。直後の5月31日・6月1日には、30年間の軌跡を凝縮したライヴ「LUNA SEA 30th anniversary LIVE -Story of the ten thousand days-」日本武道館2daysを開催。
› Website: https://www.lunasea.jp

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