Erino Yumiki 15th Anniversary Special Live

ギタリストの弓木英梨乃が、2024年10月21日(月)神奈川・ビルボードライブ横浜にて〈Erino Yumiki 15th Anniversary Special Live〉を開催。KIRINJIでの活躍や多数アーティストのサポートに加え、昨年にフェンダーアーティスト契約を発表するなど、第一線で活躍する弓木。デビュー日に2ステージ実施したこのライヴは、彼女の15周年を記念した催しとなる。今回は1st stageの模様をレポート。

これからの道を明るく照らすようなStratocasterの華やかで輝くサウンド

バンドメンバーの大樋祐大(Key/SANABAGUN.)、YUNA(Dr/ex.CHAI)とステージに登場した弓木英梨乃は、まずDye O「The Days We Remember」のカヴァーを披露。メインギターであるAmerican Ultra Stratocaster HSS(Cobra Blue)の爽快なサウンドが会場中に広がっていく。続くHeyson「Comin’ Up」では、ファンキーで歯切れのよいカッティングに、大樋による重厚なシンセベースとYUNAのタイトなドラムが加わり、心地の良いノリが生まれる。

“皆さん、こんばんはー! 今日は楽しんでください”と挨拶すると、クラップを煽り「チキップダンス」を歌唱。パワフルなギターの音色がハツラツとした歌声を後押しつつ、楽曲に彩りを添えた。“今日は一夜限りのライヴなので、最高のメンバーとゲストと一緒に楽しいステージにしたいと思います”と意気込むと、ガットギターを手に、弓木が歌唱で参加したパソコン音楽クラブの「Panorama」を披露。透明感のある歌が切なさをかき立てる。

ここでゲストのハマ・オカモト(OKAMOTO’S)を呼び込み、インスト曲「Dream a dream of me」へ。10月に発売されたばかりのAmerican Ultra II Stratocaster(Solar Flare)の甘いトーンにより、会場はメロウな空間に変化していく。温かく抜けの良いギターサウンドは、ハマのJazz Bassのソリッドな音色と融和して、アンサンブルに抑揚をつける。さらに、ギターソロではきらびやかな音色で存在感を発揮していた。

MCでは、自由奔放な弓木の発言に対し、ハマがツッコミを入れながらトークを回す。長年親交があったものの、共演の機会がほとんどなかったという弓木とハマ。ハマが弓木にお祝いの言葉を伝えると、弓木は“15周年のステージでハマくんと演奏できて嬉しいです。ありがとう”と念願が叶ったことを喜んだ。

さらに弓木は、大樋・YUNAとの出会いを振り返る。大樋とは前から交流があったが、初共演は今年1月開催の吉澤嘉代子のツアーだったという。“私たちは嘉代子ちゃんに縁をつないでもらってるね。祐大くんはプレイもめっちゃカッコいいし人柄も最高だし、ツアーの時から「自分のライヴでも演奏してもらいたいな」と思って。今回、バンマスもやってもらいました”と述べた。YUNAとはもともと面識がなかったそうだが“今回「こういうライヴがしたいな」ってイメージした時に、YUNAちゃんがドラムを叩いてる姿がわっと浮かんで”とSNSのDMでオファーしたという。そして“今日は大好きなミュージシャンと大好きなスタッフと一緒にライヴができて、本当に嬉しいです”と感謝の気持ちを伝えた。

ソロプロジェクト・弓木トイ名義で発表した「CCSC」では、キュートな歌声と情熱的なバンドサウンドの対比がグルーヴを創出。ベースサウンドのうねりや、粒立ちが良くキレのあるStratocaster HSSの音色が、楽曲にスパイスを加える。4人の堂に入ったパフォーマンスに観客は熱狂し、歓声が上がった。ハマがはけて再び3人になると、YUNAによるダンサブルなビートに乗せて「Nothing Left for Me to Do」を演奏。ミラーボールが灯り、観客は自然と体を揺らした。

続いて、いつか(Charisma.com)が登場しCharisma.comの代表曲「イイナヅケブルー」をデュエット。パーカッシブなバッキングがリリックの勢いを加速させ、さらにギターソロでは鋭いサウンドにより、ヒリヒリとした緊張感のあるアンサンブルを作り上げる。一方、MCでは独特なテンポで繰り広げられる4人のトークに観客は大笑い。弓木といつかは2017年にKIRINJIとCharisma.comがコラボしてからの縁で、弓木は“あの時初めてラップのレコーディングを見て、カッコいい!と思って。KIRINJIのライヴにも出ていただいたんですけど、時を経て去年「ローガイズ」に私が歌とギターで参加させていただきました”と振り返る。いつかも“この曲は弓木ちゃんのカッコいいギターと歌声のギャップが必要!と思って連絡しました”と回顧した。そして「ローガイズ」をライヴ初コラボ。Stratocaster HSSは激しく歪ませても音の粒立ちが良く、弓木の浮遊感のある歌声や、いつかの流れるようなフロウを引き立てていた。

ステージをあとにするいつかを見送ると、弓木は“2009年10月21日にメジャーデビューしたのがキャリアの始まりで。シンガーソングライターとしてデビューしたことを知っている人って、もはやあまりいなくて…”と語り始める。すると、最前列の観客がデビューシングルのCDを手渡し、弓木はそれを感慨深げに眺める。“今日来てくださった方は、いろんなタイミングで私のことを知ってくださったと思うんですよね。いろんなサポートもやらせてもらったし、KIRINJIもやっていたし、近年はYouTubeで知ってくださる方も多くて。いろいろやってきたけど、無駄なことは何ひとつなかったなと思います。15年やってきたから最高の仲間に会えたし、出会いに恵まれ続けて。今日、自分にとってご褒美みたいな日を過ごせて嬉しいです”と語る。さらに“中学生でギターを始めた時、ギターって歌詞がないのにこんなに人をいろんな気持ちにできるんだな、ギターってすごくいいなと思って。そういうギターを弾けるギタリストになれるように、これからも死ぬまで精進します”と決意を述べた。

15年の中で自信を失ったこともあったが、諦めずにギターを弾き続け、キャリアを築いた弓木。堅実かつリスナーの心を揺さぶるプレイには、絶えず研鑽を続けた彼女の努力が詰まっている。また、一時は聴けなくなっていたデビュー曲を最近聴き返したそうで“15年いろんなことをやって、変わりながら来たけど、やっぱり自分のミュージシャンとしての原点がここにあるなと思ったんです。だから今日くらいはデビュー曲をやってもいいんじゃないかなって”と「LφST」を力強く歌い上げる。情感溢れるギターには、15年の重みが感じられた。

さらにRYUTistに提供した「きっと、はじまりの季節」のセルフカヴァーで会場を幸福感で包み込むと、“とても幸せな時間でした! またどこかでお会いしましょう”と「HIBIYA」を披露。高速カッティングや速弾きなどを駆使し、熱のこもったギターを奏でる弓木。その中でStratocaster HSSの素早いレスポンスが、細やかなプレイをサポートしていた。

アンコールでは、ゲストを含む5人で登場。本編でトークが盛り上がりすぎたため終演時間が迫っており、“曲名を決めたいけど時間がない! 曲名は…「YOKOHAMA」! 聴いてください”と駆け足でセッションに突入。指板を軽やかに駆け巡り、歌心のある演奏を行う弓木。幸せそうな表情を浮かべる彼女につられ、会場中の観客が笑顔になっていた。弓木のミュージシャンとしての15年の歩みを詰め込み、さらに彼女の柔和な人柄も滲んでいたこのステージ。Stratocasterの華やかで輝くようなサウンドは、弓木のこれからの道を明るく照らしているようだった。

All photo by SHUN ITABA

【SET LIST】
1. The Days We Remember
2. Comin’ Up
3. チキップダンス
4. Panorama
5. Dream a dream of me
6. CCSC
7. Nothing Left for Me to Do
8. イイナヅケブルー
9. ローガイズ
10. LφST
11. きっと、はじまりの季節
12. HIBIYA
13. (セッション曲)


弓木英梨乃:https://www.instagram.com/erino_yumiki/

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