King Gnu Live at TOKYO DOME

2日にわたって開催されたKing Gnuによる東京ドーム公演〈King Gnu Live at TOKYO DOME〉。常田大希(Gt,Vo)が愛用するAmerican Acoustasonic Telecaster®や、新井和輝(Ba)が主力として用いているDeluxe Jazz Bass® V, Kazuki Arai EditionとAmerican Deluxe Jazz Bass Vは、東京ドームという広大な空間でどのように鳴らされていたのだろうか。2日目の様子をお届けする。

American Acoustasonic Telecaster®︎で壁のようなシューゲイズサウンドを響かせる

「『ヌーの大群の王様』という意味で付けたこのバンド名、今まで名前負けしていると思っていたけど(笑)、こうやって東京ドームに立ってみると『やっとKing Gnuになれたんだな』って思います」

端から端までびっしりと埋め尽くされた、満員のオーディエンスの前でそう語った井口理(Vo,Kb)。2017年に前身のSrv.Vinci(サーバ・ヴィンチ)からバンド名をKing Gnuに改名し、本格的に活動を開始してからおよそ5年。コロナ禍で東京ドーム2日分のチケットを即完するほどの“国民的バンド”に成長した4人にとって、この日ステージから見た景色は生涯忘れられないものとなるだろう。

ステージ上に設置された、朽ち果てた廃墟ビルがいくつもそびえ立つイメージのセットにメンバーが登場すると、フロアから大きな拍手が鳴り響いた。1曲目は映画『劇場版 呪術廻戦 0』の主題歌として書き下ろされた「一途」から。無数のレーザー光線が飛び交う中、90年代のグランジを彷彿とさせるような疾走感たっぷりのバンドサウンドが展開され、その圧倒的な演奏力に早くも会場内はヒートアップする。

「King Gnu、始めるぜ!」

常田大希がそう叫び、ヘヴィなギターリフが繰り出されライヴは2曲目の「飛行艇」へ。そこに、オクターブ下のユニゾンでベースフレーズを重ねていくのは新井和輝。この日の彼は、全編にわたって自身のシグネイチャーモデルDeluxe Jazz Bass V, Kazuki Arai Editionを使用。東京ドームという広大な空間にあっても、地響きのような重低音でサウンドスケープを支えるベースが、フレーズの輪郭をくっきりと浮かび上がらせつつ、芯のあるミドルローをドライブさせている。

井口の妖艶なハイトーンボイスに魅了される「Sorrows」では、切れ味鋭いスラップベースを繰り出す新井。親指が弦を叩く時のメタリックなサウンドが、ワウを駆使した常田の高速カッティングギターとともに宙を切り裂いていく。続くプログレッシヴな展開の「千両役者」では、セクションごとに目まぐるしく転調していくメロディの後ろで、新井がカウンターフレーズをまるで歌い上げるように解き放つ。

「とんでもない人っすね、上のほうまでぎっしり」と、約5万人を収容したドームを隅から隅まで見渡しながら、呆気にとられた表情でオーディエンスに語りかける井口。「ここにいる全員がKing Gnuを好きなんですよね…俺も好き(笑)。今日は5万人も集まったので祭といきましょう。最後まで全力でついてきてください」

常田のメロディメイカーとしての面目躍如たる「カメレオン」を経て、「Hitman」は少ない音数のオーセンティックなバンドアンサンブルだからこそ井口のヴォーカル表現力が映える。新井も時折スラップを織り交ぜながら、シンプルなベースフレーズをまるで点描画を描くように配置していく。腰のある重低音から抜けるような高音まで、ネックとブリッジのブレンドによって多彩なサウンドを奏でることのできるピックアップのポテンシャルを最大限に引き出していた。

まるでオーロラのようなレーザーと、抽象画を思わせるバックスクリーンの映像も相まって、東京ドームをサイケデリックに彩った「NIGHT POOL」。ここでは常田がギターをAmerican Acoustasonic Telecasterに持ち替え、フロントポジション(=ポジション5)を使用し歪みまくった壁のようなシューゲイズサウンドを響かせる。アコースティックサウンドとエレクトリックサウンドを、好みの割合でブレンドできるのがAcoustasonicの特徴だが、ここではアコギのキラッとした粒立ちのよい音色を混ぜることで、どんなに歪ませてもしっかりとコード感を保っていたのが印象的だった。

続く「It’s a small world」でも引き続き常田はアコスタを使用。ビブラートを駆使し、場末のサーカスを思わせるようなファンキーかつストレンジなギターサウンドを奏でていた。

壮大なミドルバラード「雨燦々」でドームを多幸感に包み込み、ライヴ前半は終了。ユーモアたっぷりの幕間映像を挟み、ライヴ後半は常田が拡声器を片手にシャウトする「Slumberland」からスタートした。前半同様、後半でも新井はDeluxe Jazz Bass V, Kazuki Arai Editionを使用。まるで地獄の蓋を開けたようなこの曲のカオティックなサウンドスケープを、下から支えている。

一方、ファンキーかつハードコアな「どろん」のあと、再びアコスタを手にした常田。「破裂」では井口のヴォーカルと息を合わせながら繊細なコードストロークを披露する。センターポジション(=ポジション3)を用い、低音弦のふくよかさと高音弦のきらびやかさをブレンドしたレンジの広いクランチサウンドが、それ1本だけで東京ドームのオーディエンスを感動させていたのが印象的だ。続いて初期の名曲「Prayer X」でも、常田はAcoustasonicを使用し歯切れの良いカッティングでアンサンブルにグルーヴを与えていた。

気づけばライヴもラストスパートへ。新井のランニングベースがアンサンブルに躍動感を与えた「Vinyl」、バキバキのスラップで幕を開ける「Flash!!!」と、タイプのまったく違う楽曲でも柔軟に対応するDeluxe Jazz Bass V, Kazuki Arai Editionのポテンシャルに改めて唸らされる。

本編ラストは新曲「Stardom」を披露し、鳴りやまないアンコールに応えて再び登場した4人。アンコール1曲目にインディーズ時代の名曲たちから「McDonald Romance」をチョイスしたあと、ここで新井はベースをAmerican Deluxe Jazz Bass Vに持ち替え、胃が迫り上がるような重低音を響かせ「Teenager Forever」へとなだれ込む。さらに「Tokyo Rendez-Vous」を披露したあと、5万人のスマホライトが会場を埋め尽くす中「サマーレイン・ダイバー」でこの日のライヴに幕を閉じた。

「ちっちゃいライヴハウスでやっていた曲を、そのままできているのがありがたいよね」と、アンコールでしみじみ語っていた常田。元々の楽曲の持つ力や、鍛え上げられた4人の演奏力がそれを可能にしているのはもちろん、ここで触れた楽器たちの貢献も間違いなく大きいだろう。東京ドームという一つの到達点であり、一方でKing Gnuという“ドームクラス”のロックバンドのこの先をも予感させるモニュメンタルなライヴだった。

Photos by 伊藤滉祐 & 川上智之

【SET LIST】
1. 一途
2. 飛行艇
3. Sorrows
4. 千両役者
5. BOY
6. カメレオン
7. Hitman
8. The hole
9. NIGHT POOL
10. It’s a small world
11. 白日
12. 雨燦々
13. Slumberland
14. どろん
15. 破裂
16. Prayer X
17. Vinyl
18. Flash!!!
19. 逆夢
20. Stardom

ENCORE
1. McDonald Romance
2. Teenager Forever
3. Tokyo Rendez-Vous
4. サマーレイン・ダイバー


King Gnu:https://kinggnu.jp/

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