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Color Your Style | Orono(Superorganism、cheese touch)
Superorganismのフロントパーソンとしてデビューし、最近はソロやバンド・cheese touchでの活動も精力的に行っている、Orono。彼女は、自身でペイントを施したMidnight Satin(現在は販売終了)のMalibu Playerを常々愛用してきた。ミュージシャンとしてのキャリアの新しいチャプターに進んだOronoが次の“相棒”に選んだのは、同モデルのOlympic Whiteだった。このアコースティックギターの魅力と謎に包まれた直近の音楽活動、お正月の過ごし方について詳しく話を聞いた。
自分らしくデコるのは大事
──あけましておめでとうございます。
Orono おめでとうございます。
──今年のお正月は日本にいたんですか? 何してました?
Orono いました。ずっとNintendo Switchで『フォートナイト』してました。楽しいんですけど、最近すぐに殺されちゃうんでムカついてきてます。興奮して心拍数が急激に上がっちゃうので、身体にはあまりよくない趣味ですね。
──今日の取材は、Oronoさんがプライベートで東京・原宿にあるFender Flagship Tokyoに遊びに行ったことがきっかけになったそうですね?
Orono そうそう。去年の秋ぐらいに友達と原宿をフラフラしていたら、偶然、Fender Flagship Tokyoを見つけたんですよ。で、お店になんとなく入ったら一人の店員さんが俺のことを知ってくれてたみたいで話しかけてくれて。その場で意気投合したんです。俺、気が合うと、誰にでも「友達になろうぜ」って言っちゃうので、そのノリで連絡先を交換して……気がついたら今日、取材を受けることになってました。
──去年はSuperorganism以外にも精力的に活動してましたよね。新たにcheese touchというバンドを結成、7月にはソロ名義でテキサス州出身のシンガーソングライターであるBen Kwellerと日本ツアー、最近だとライターの鈴木智彦さんとロックバンド・め組のフロントパーソン・菅原達也さんと3人で同人誌を刊行したりもしてらっしゃいましたが……振り返ってみて、2024年はOronoさんにとってどんな一年でしたか?
Orono カオスでしたね。Superorganismでの活動が少なくなった分、自分のプロジェクトにかけられる時間が増えたので、それを真面目に取り組んだ……いや、そんな真面目にもやってないんですけど、自分のやりたいことを全力で頑張った一年でした。
──このインタビューはOronoさんにギターについて話してもらうという趣旨の記事なんですけど、そもそもギターという楽器に思い入れってありますか? あと、ギターはバンドを始める前から弾けたんですか?
Orono 12歳の頃にギターは弾き始めました。でも、俺はいわゆるギターフリークではないですね。正直、楽器自体にはあんまりこだわりはなくて。子どもの頃に憧れたのは、ジョン・レノンが弾いていたギターとか、ジャック・ブラックが映画『スクール・オブ・ロック』で弾いてたものでした。Fenderじゃなくてすみません(笑)。でも、アーティストになってからFenderのギターが一番好きになりましたね。弾き心地がとにかくいいし、音もいい。
──Superorganismでは、1stアルバム『Superorganism』のツアーの時に、曲と曲の合間の時間にエレクトリックギターでWeezerの曲とかを弾き語りをしていましたよね。2ndアルバム『World Wide Pop』の時は、歌いながらメインでアコースティックギターを弾かれていて。cheese touchでもアコギを奏でながら歌ってますよね。今まで使用してきたギターには、Fenderの製品も含まれてるんですか?
Orono Superorganismで使っていたギターは、俺のアコースティックギターはもちろん、Harryのストラトキャスターも含めて全部、Fenderでした。cheese touchでは、MitchのアコースティックギターはFenderのだったと思います。あのMidnight Satinのギターを本当は使いたいんですけど、アリゾナ州の倉庫にあって取りに行けてないので、今はGuitar Centerで買った一番安くて小さい適当なギターを俺は使っています。今回、あのモデルと同じものをゲットできて、めちゃくちゃテンションが上がってます。今、目の前にあるんですけど、このギターはcheese touchのヴァイブスがありますね。
──CaliforniaシリーズのMalibu Playerというアコースティックギターですね。このシリーズには全部、アメリカ西海岸のビーチの名前がついているんです。元々、1960年代に初めて作られた時のコンセプトが、家で大事に保管して弾くのではなく、海岸とかに気軽に持って行って弾けるようなイメージだったらしくて。
Orono へえ、そうなんですね。自分がギターを選ぶ時の決め手は、完全に見た目なんですよ。このギターはサイズと色がかわいいですよね。Superorganismの時に使っていたギターも、バンドメイトのTucanに「どれにしようかな?」って相談したら、「小さめで弾きやすい上に音もいいから、あれがいいんじゃない」って選んでくれたのが、アレで。しかも、値段もお手頃じゃないですか。このクオリティで、5万円台(税込60,500円)で手に入るってすごい。
──Oronoさんが使っていた、Midnight SatinのMalibu Playeにはオレンジ色の太陽のような絵が描かれていたじゃないですか? あれはご自分で描かれたんですか?
Orono そうですね。アクリル絵の具で描きました。やっぱり、自分らしくデコるのは大事ですね。Weezerのリヴァース・クオモが自分のストラトキャスターにシールをめちゃくちゃ貼ってたのとか、超カッコいいなって思ってたし。め組の菅原もギターの裏に美空ひばりのステッカーを貼ってましたね。デコると世界に一つだけの自分だけの楽器って感じがして愛着が湧く。このギターにも、何か絵を描こうと思ってます。
──Oronoさんにとって、アコースティックギターという楽器の魅力ってなんですか?
Orono ルー・リードだったか、多分、色んなソングライターの人たちが言ってることなんですけど……「最終的にお前の声とアコギで弾いてよくなければ、いい曲とは呼べない」みたいな言葉があるんですよ。そういう曲の生々しい核の部分が明らかになる楽器だと思うし、それだけで世界を作れる楽器だと思うんですよね。
一言で言えば、サッド・アンド・セクシー
──最近の活動についてもお話を伺いたいんですけど。今のOronoさんの活動の軸になっている、cheese touchというバンドとSuperorganismの違いはなんですか?
Orono cheese touchはお笑い系金儲けバンドなんです。Superorganismは友達とカッコいいアートが作りたいと思って組んだバンドだったんですけど、いざレーベルに所属して活動を始めてみたら、ただの「歩く広告」みたいな扱いをされて。それがすごく嫌だったし、不満を覚えていました。でもcheese touchではむしろそれを最初から受け入れて、金を稼ぎまくりたいんです。で、それが自分たちのやりたいことに還元されればいいんじゃないかなって。
──でも、曲自体はめちゃくちゃカッコいいですし、メンバーのMitch Marsicoさんとも元々はネットで知り合ってcheese touchを結成したそうですから、バンドの成り立ち的には自然というか、まずアートを作ろうという意思が最初にあるもので。
Orono そうですね。やっぱり金を稼ぐにしても、自分が誇れる何かを常に作り続けないといけないとは思ってます。それは最低限のラインとして常にある。楽しくやって、いいものを作って、お金を稼ぐっていうことが大事です。っていうか、アーティストになって思ったんですけど、この業界、特にアーティストはお金の話をしなさすぎですよね。契約書の読み方とか、税金対策どうやってるのとか、資産運用の話とか、もっと積極的にそういうことを話したほうが若いアーティストのためになるのに。
──たしかに。アーティストは雲とか霞でも食べて生きてるかのような扱いを往々にしてされがちですよね。すみません、お金の話じゃなくて恐縮なんですが、cheese touchの音楽を一言で表すと、どんなものだと自分たちでは思ってますか?
Orono Superorganismの時はレーベルとか事務所に全部やってもらってたから知らなかったんだけど、Spotifyみたいなストリーミングサービスに曲を上げる時って、ジャンルとかフィーリングを入れなきゃいけないんですよね。俺らはいつも自分たちの曲をアップする時には「Sad and Sexy(サッド・アンド・セクシー)」って項目にチェックを入れてて。それが、自分たち的にも結構しっくりき始めています。あと、「カミング・オブ・エイジをテーマにした映画のサウンドトラックみたい」って、YouTubeのコメントとかにはよく書かれる。ぜひ、そういう映画に使ってほしいですね。
──ご自身のラジオ『OK Wow!』でもお話しされてましたけどOronoさん、去年はザ・ドリフターズをよく聴いていたらしいじゃないですか? お笑い、お金儲け、Sad and Sexyってキーワードを聞いてたら、結構、近しいところがあるなって勝手に思っちゃいました。
Orono そうそう、ドリフ大好きなんですよ! たしかにcheese touchはかなりインスピレーション源がドリフと近しいところがあるかもしれない。彼らにはブルースとかファンクとかソウルの要素があるじゃないですか? 俺らも、そういう音楽は好きで、曲にも出ているんで。笑いの要素もかなり重要ですね。ライヴやるとだいたいお客さん、歌いながら笑ってます(笑)。
──ライヴも公園とかアイスクリームショップとか変な場所でやってますもんね。その時点で、めちゃくちゃ面白い。バンドメイトのMitch Marsicoさんは、どんな方なんですか? ニュージャージー州出身のシンガーソングライターで、映像制作・編集のお仕事もされていたとか。
Orono もともと、俺がインスタで「デモとかビートとか送ってきたら、聴くよ」ってポストした時に自分の曲を送ってきたやつなんです。それにコメントを返したりとかして、やりとりしているうちに仲良くなって。あいつは一言で言うと、おもろいやつです。SNSでも変な動画をたくさんアップロードしていて、芸人みたいなマインドの持ち主。作ってくる曲も素晴らしいし、感性がすごく合うんです。
俺はハンター・S・トンプソンっていう作家がすごく好きなんですけど、彼はヘビーで複雑なトピックやテーマについて書いているのに、全然難しい言葉を使わずにシンプルな言葉で思索を深めていくんですよ。それがすごくカッコいいなと思うんですけど、Mitchが書くリリックもThompsonの書き口に近いところがある。シンプルなんだけど、心にブッ刺さるんですよね。
──「Pool」という曲の〈The smell of chlorine gets me horny(塩素の匂いがムラムラさせる)〉というリリックには爆笑しましたし、同時に色んな個人的な記憶を思い出して切なくなったり、共感したりしました。cheese touchの曲にはパンチラインが多いですよね。
Orono 二人でiCloudにドキュメントをシェアしてるんですけど、そこに思いついたパンチラインを常にメモしてるんですよ。もともと、バンド名がcheese touchになる前は「The Incels(インセル)」って名前にしようかなって思ってたので、そのメモは「Incel Bible(インセルの聖書)」ってタイトルで保存してます(笑)。
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あんま、無理すんなよ
──2025年になりましたが、今年はどんな活動を予定していますか?
Orono cheese touchは、今、EPを準備してます。あと、2曲ぐらい途中の状態の楽曲を完成させたら、リリースできるところまできました。マネージャーに「とりあえず、EPをまず作って、そのあとアルバム」って言われていて、アルバムも今年の半ばぐらいにはリリースできるんじゃないかな。とりあえず、曲はめちゃくちゃあるので、EPの次は早くアルバムを作って、ツアーに出たいですね。
──日本でも、ぜひライヴが観たいです!
Orono それこそ、金が要りますね(笑)。金と知名度! 何卒よろしくお願いします(笑)。cheese touch以外だと、ソロ……ってわけでもないんですけど、自分の親父と二人でレーベルを立ち上げて、作品を出す予定でいます。1月末にアトランタに2週間ぐらい行って、Nose Noiseっていうバンドとしてアルバムを作ります。これは5月か6月ぐらいには出せそう。
──Nose Noise=Oronoさんのソロプロジェクトということですか?
Orono いや、そういうわけじゃなくて、俺と親父の友達2人で組んだバンドって感じですね。Tedeschi Trucks BandのドラムをやってるTyler “Falcon” Greenwellっていう、めっちゃ面白くて俺と気の合うおじさんがいるんですけど、その人とDavid Bowieの最後のアルバムでベースを弾いていた、Tim Lefebvreっていう人とやります。
このメンツだけ聞くとシブくなりそうだと思うかもしれないですけど、FalconはButthole Surfersとかが好きな人なので、最終的にはストーナー・ブルース・ポップみたいな感じになるんじゃないかなって思ってます。俺の中では、親父の好きなものと俺の好きなものを組み合わせて、何か作ってみようみたいなマインド。Gen X(X世代)の心を鷲掴みにするつもりです(笑)。
──最後に、これからアコースティックギターを始める人へのアドバイスをぜひ。Oronoさんみたいにカッコよくギターを弾くためにはどうしたらいいですかね?
Orono うーん、俺は「よし、うまくなりたいから練習しよう」みたいに決めてギターを練習するのは苦手で。それよりは「この曲を弾きたい」みたいなモチベーションでネットでコード譜を調べて、何百曲もブックマークして暇な時に弾き語りしてたんですよ。で、気がついたらもう10年以上ギターを弾いてたって感じで。そういうふうにして、コードとか弾き方を覚えていったんですよね。
──なるほど。
Orono 要は意思の問題だと思うんですよね。「上手くなりたい!」って心の底から思えば、そんなに深く考えなくても自然に上手くなると思うし。「カッコよく弾きたい」って思うんだったら、それを念頭に置いて弾けばいい。あんまり、何をすればうまくなるかとか、カッコよく見えるのかみたいなことは考えすぎないほうがいいと思う。自分がやりたいと思った時に、やればいいと思うんですよね。
──自分と向き合うのが大切ということですかね。本当に自分のやりたいことは何なのか考えるのは大事ですよね。
Orono そうですね。あんま無理すんなよ、と、伝えたいですね(笑)。
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California Series Malibu Player(Olympic White)
Orono
2017年に結成した多国籍インディーポップバンド「Superorganism」のヴォーカル、アートワークを担当。2018年に1stアルバム『スーパーオーガニズム』をリリースし、2022年には2ndアルバム『ワールド・ワイド・ポップ』をリリース。2024年からは、新しいバンド「cheese touch」としての活動もスタートした。
https://www.instagram.com/oronooooo/