SESSIONS in TOKYO | ZAZEN BOYS

原宿にあるフェンダー世界初の旗艦店、Fender Flagship TokyoにZAZEN BOYSを招いて、去る2月27日に〈FenderNews Public Recording with ZAZEN BOYS at Fender Flagship Tokyo〉と題した公開取材が開催された。多数の応募の中から抽選で選ばれた幸運なオーディエンスを前に、ZAZEN BOYSはAmerican Ultra IIシリーズを使って8曲におよぶライヴを敢行。さらにインタビューにも応えてくれた。そのインタビューの模様をお届けする。



空間が歪んできますからね。フェンダーギターに気をつけろ!

──実はこの公開取材のオファー前から、向井さんはAmerican Ultra IIが気になっていたという情報を得ております。

向井秀徳(以下:向井) 月刊少年ギターマガジンっていう雑誌でね、このAmerican Ultra IIの広告が載ってたんですよ。それを見て、本当にかっちょええなと思いました。それがきっかけですよね。元からお話すれば、もう25年前ぐらいから、これの元となるフェンダーのモダンスペックのシリーズでAmerican DeluxeのTelecasterを、やっぱり月刊ギタマガの広告で見てね。もしくは、フェンダーの新しいシリーズが出ますよっていう記事を読んだのかな。で、そのAmerican Deluxeをずっと使い続けてるんですね。で、American Deluxeもずっと変遷がありまして、この何代か前だと思うけど、American Eliteっていう名前のシリーズがあって。これもね私、今現在も利用してますわ。そこでまた新たにこのAmerican Ultra IIっていうのが出たっちゅうことで、そろそろ利用させてもらおうかなと思ってですね。ちょうどZAZEN BOYSがライヴをする日に、すぐ近くに楽器店がありまして。こういうギター、ベースがありますよってメンバーと話してさ、ちょっと興味があるから見に行ってみようや、もしかしたらあるかもしれんからって言ったら、まさにこのシリーズが飾ってあったんですよ。そこで実際に手に取ったりして、初めて目の当たりにしたっちゅう具合です。そして今、こういった状況になってるっていうことです。


──実際に弾いてみてAmerican Ultra II Telecasterはいかがでしたか?

向井 American EliteやAmerican Deluxeなどモダンスペックのシリーズをずっと使い続けてはいるので、基本的なサウンドという意味でのこのシリーズが持つ特性は何となくわかっているつもりなんですね。一番はノイズレスピックアップ。このノイズレスピックアップが私は好きでね。ノイズレスっていう名前がいいじゃないですか。ノイズがなさそうで。ま、実際にノイズがないんだけども。やっぱり普段がノイジーですからね、頭の中が。これぐらいはノイズレスにしたいなって思ってるわけだ。で、この特性っつうのは、サウンドがいい意味でギュッとね、まとまりが良くなるわけですよ。バラバラにいろんなとこに行かないって言いましょうかね。低音から高音までしっかりとまとまって、ドーンと出る印象を持っているわけです。この特性、フェンダーのモダンシリーズを25年間ずっと使い続けてきて、印象はずっと同じですね。今回のAmerican Ultra IIもそういう風に思ってます。

──弾きやすさはいかがでしょうか?

向井 弾きやすいですよ。まず新品やしね。私は何でも新品が好きなんですよ。新品はやっぱ弾きやすいよね。新品を自分で弾きよるとですね、自分の手グセになって慣れ親しんでいくかと思いきや、もうどんどん時空が歪んでいくんだね。この時空を歪まして出すところから、自分のサウンドが出てくるような気がしますよね。まあ、歪ませろやっつう感じやね。新品を触ったばかりの時は、もう単純に弾きやすくて、フレッシュで、嬉しいわけだ。でもその時期はすぐに通り過ぎて、だんだん歪んでくるわけ。そこからのせめぎ合いになってくるよね。


──先ほどからおっしゃっているように、モダンシリーズをAmerican Elite、American Deluxe、そして今回のAmerican Ultra IIと使っていますが、その違いはどうですか? そして、このAmerican Ultra IIをどのように使ってみたいですか?

向井 変化したところと言えば、2つあるピックアップを切り替えるセレクターだね。実は私、1回も使ったことないんですけど。全部センターポジションだから。フロントに行って、ロバート・クレイみたいなまろみのあるギターソロを弾くことは一切ありませんので、使わないんだな。だからあんま関係ないんですけど、セレクターが水平だったのが斜めになったよね。この理由は、たぶん切り替えやすいとかそういうことなんだろうけど、私は利用しないんでそんなの関係ないです。あと、Stratocasterもそうだと思うけど、このボディの裏のえぐり(コンター加工)、もしくはネックの根元のえぐりが極まってますよね。こうやったら弾きやすいだろうなって、たぶんフェンダーの社長が言ってくれて、こういうことになっとるんやけど。ハイポジションでピロピロ弾く場合においてえぐっとるもんだから、弾きやすいわけだ。しかしね、こんなハイポジションを利用したことないんで、私にとっては全然関係ないんだ。ただ、胸に当たるこのえぐり(コンター加工)はAmerican Eliteシリーズから入っていましたけど、さらに深くなってますね。本来のTelecasterは、この角ばったところが何本目かの肋骨と肋骨の間に刺さるわけだよ。本当ね、常に肋骨が痛いと感じながらギターを弾いているわけですけども、このえぐり(コンター加工)によってそれがないんだな。これはありがてぇなと思うから、フェンダーの社長にお礼を申し上げます。私からは以上です。


──American Ultra II Stratocaster HSSを弾いていただきました吉兼さんにお話を伺います。向井さんがMCで“吉兼人生初のハムバッカー”とおっしゃっていましたが、ハムバッカーはいかがでしたか?

吉兼 すごくパワーがあってキレイに音が出たなと。最高でした。オクターバーとかと一緒に弾きましたけれども、ぶっとい音が出たかなと思いました。あと弾きやすいですね。さっき言ってたネックジョイントのえぐりと、斜め(テーパードネックヒール)になっているから指が痛くない。ネックの丸みもあまりないから、チョーキングしても音が詰まらない感じがするんですよね。音の伸びがいいというか。あとは、ボタン(S-1スイッチ)がついてて7種類ぐらいの音が出るんです。ハムバッカーをシングルにすることもできるし、センターとのハーフトーンもめちゃくちゃ合って。で、ハーフトーンがすごい。今日はハーフトーンを使ってないけど、レベルが全然落ちなくてバランスがいいなって思いましたね。あと、弦が張りやすくてラクですね。フレットも太くてスムーズです。

──5曲目の「ブッカツ帰りのハイスクールボーイ」ではトレモロアームも使っていただきました。アームの効きなどはいかがでしたか?

吉兼 普通はくるくる回してアームを取ったり付けたりするんですけど、これどういう仕組みになってるのかわからないですけど、抜き差しするだけでいいのでラクですね。くるくる回すとシールドとかと絡まったりするんですけど、それがない。ストレスがない。

向井 スティーヴ・ルカサーみたいだね。

吉兼 あはは。色が(笑)。色もカッコいい。

──どんなシーン、どんな曲で使ってみたいですか?

吉兼 機能性があるから幅広く使えそうではありますね。今までほとんどフロントしか使わなかったんですけど、ハーフトーンも、ハムバッカーじゃないリアもすごくいい。


──続いてはベースのMIYAさんへお伺いしたいのですが、MIYAさんが弾いたのがAmerican Ultra II Meteora Bass。向井さんのMCでの言葉を借りますと“のっぴきならないルックス”ということになりますが、見た目の印象から教えてください。

MIYA ブーツィー・コリンズみたいな色だなって話をしていました。

──Solar Flareという色になります。

MIYA 派手なほうが演奏も楽しいかなと思います。

──弾きやすさはいかがでしたか?

MIYA 私はAmerican Deluxeのベースをずっと使っているんですけど、ちょうどリーチが一緒で。通常のプレベだと短いんですね。2回しか触ってないですけど、非常に楽しかったです。

──音の立ち上がりはいかがですか?

MIYA 立ち上がりもピッチも弾きやすさも全部良かったです。はい。

──どんなシーンで使ってみたいですか?

MIYA そうですね…ピック弾きとか、すごくピッチも良くて安定して聴こえるので、いろんなところで使えるのかなって。今日ライヴをやってみて、改めてリハスタでやっている時と感覚が違うというか。それも含めてとってもいいなと思いました。いろんなところで使えると思います。

──次はZAZEN BOYSの活動について。昨年行われた日本武道館での公演の映像と音源を完全収録した、『MATSURI SESSION AT BUDOKAN』が3月12日にリリースされましたが、改めてどんなライヴだったのか教えてください。

向井 私にとってもZAZEN BOYSにとっても、初めて日本武道館という場所でワンマン公演をやらせてもらいまして、とってもスペシャルなコンサートになりましたよ。普段とそんなに変わらずにやれたんですね。むしろ普段のワンマン公演より、一層リラックスしてやれたかもしれない。これね、来ていただいたお客さんのおかげだよ。本当にそう思いました。これが本当に音源に刻まれておりますわ。いろいろ間違ってますけどね。それはライヴですからね。常日頃、自分に言い聞かせてますよ。これライヴですよっつって。ライヴって日本語に翻訳すると何て言うか知ってますか? “生き様”だよ。つまり、我々ZAZEN BOYSの生き様が記録された作品になっております。本当に皆さん、それを見て聴いていただきたい。

──最後の質問になります。バンドを始めようと思っている人、あるいは始めたばかりの人にアドバイスやメッセージがあればお願いします。

向井 本当にバンドっつうのは、人間と人間が打ち鳴らし合う結晶体ですからね。何て言いましょうかね…今カッコいいこと言おうと思っていろいろ言ってるんですけど、そんなこと思ってないんで一回全部なしにして。一言で言いたいのは、もう楽しんでやるべきだと思うんですね。ただし、やればやるほどマジになりますから、気をつけろって言っときたいね。特にフェンダーのギターを使って鳴らそうもんなら、空間が歪んできますからね。気をつけろ! わかったか? フェンダーギターに気をつけろ!


ZAZEN BOYS
向井秀徳 (Vocal,Guitar,Key)、松下敦 (Drums)、吉兼聡 (Guitar)、ミヤ (Bass)

元NUMBER GIRLの向井秀徳が中心となり、2003年結成。
MATSURI STUDIOを拠点に、国内外でのライブ活動、作品制作を行っている。2024年ZAZEN BOYS 12年ぶりの6thアルバム『らんど』をリリース。今作品はミュージック・マガジン「ベストアルバム2024 ロック(日本)部門」にて1位に選出された。
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