
Cover Artist | 音羽-otoha- -前編-
今、こうやってフェンダーに辿り着いているのは必然かもしれない
FenderNewsが毎月一組のアーティストにフォーカスする「Cover Artist」。今回登場する音羽-otoha-は、ジャンルにとらわれない多彩な楽曲を紡ぎ出すクリエイターだ。前編となる今回は、幼少期からさまざまな楽器に触れてきたヒストリーを辿り、今回試奏したPlayer II Modifiedシリーズの感想を通じて、フェンダーに対する熱い想いに迫った。
周りに音楽をやっている友達がいなくてMTRが友達でした
──まず、音楽との出会いについてお聞きします。“聴く”のが先だったのか“弾く”のが先だったのか、どちらですか?
音羽-otoha-(以下:音羽) 4歳の頃にピアノを習ってました。親戚のおっちゃんが教えてくれて、それが最初に音楽に触れた体験だったかな。最初はやらされてたって感じだったんですけど、だんだん楽しくなってきて。ポピュラーピアノが中心で、当時は久石譲さんが好きだったので、そればっかり弾いていました。バイエル(教則本)とかは一切やらず、好きな曲だけ。おっちゃんも“好きなものを弾けばいい”って感じだったんです。たまにおっちゃんが弾いている横で歌うこともありました。それが最初の記憶です。
──そのおっちゃんは何者なんですか(笑)。
音羽 音楽の先生をしていた人で声楽もやっていたんです。親戚にはバイオリニストもいて、家族全体が音楽漬けでした。
──音羽さんのお母さんもガールズバンドのギタリストだったんですよね?
音羽 そうです。父は母のバンドを手伝うエンジニアみたいなことをしていました。兄も楽器屋の店長でバンドもやっていました。普段はあまりしゃべらない家族なんですけど、音楽の話になると全員急に饒舌になるんですよ(笑)。
──全員オタク気質というか。
音羽 そうですね。で、小6の頃に兄がアコギを始めたのを見て、私もやりたいって駄々をこねて、そこからエレキにも興味を持ち始めました。MTRで曲も作っていて50%くらいアレンジを進めると、次の日の朝に父が勝手に微妙なシンセを入れてたり(笑)。
──え、それっていくつの頃の話ですか?
音羽 中1ぐらいです。周りに音楽をやっている友達がいなくて、MTRが友達みたいな感じでした。
──それはすごい。しかも、フルートもやっていたんですよね?
音羽 フルートは小4からやっていました。ピアノとフルートをやっていたのでクラシック方面に行くかと思いきや、分岐点はマイケル・ジャクソンの映画『This Is It』で。オリアンティがブロンドの髪を揺らしながらギターを弾き倒す姿にやられて、“エレキギターやりたい!”ってなったんです。お年玉1万円を握りしめて楽器屋に行って、“これで買えるギターください!”って。その時に買ったギターでずっと練習して、時々兄貴のギターを借りて“弾いてみた”動画を上げたりしてました。
──ドラムもやっていたそうですが、こんなにもさまざまな楽器に触れていたのはなぜでしょう。
音羽 たぶん、楽器そのものが好きなんだと思います。やったことないものを何でもやりたがる性分で。ドラムも習いに行ったし津軽三味線も習ってました。
──いろんな楽器に触れてきた中で、ギターに特に惹かれた理由は?
音羽 オリアンティのルーツを辿っていくうちに、彼女の師匠であるスティーブ・ヴァイに辿り着いたり、ジミ・ヘンドリックスからさらに分岐してアンディ・ティモンズ、リッチー・コッツェン…と掘っていくうちにギタリストの沼にハマっていった感じですね。
──当時はどうやってギターの練習をしていたんですか?
音羽 ひたすら好きな曲をコピーして、カバー動画をネットにアップしていました。MTRで録音してて、あれってあんまり録り直しが細かく効かないじゃないですか。しかも、ボタンを押した瞬間から録音がスタートするからパンチインもできない。そうやってなるべく間違えずに弾こうって練習してたら上達が早くなって。『地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ』みたいな教則本も買ったけど、好きな曲しかやらないですし、曲としてカッコいいものしか弾きたくなくて。本当は全部やったほうがいいんでしょうけど。なので、基礎練は大嫌いでした(笑)。
──ネットにプレイ動画をアップしていたことは上達する上で意味はありましたか?
音羽 めちゃくちゃありましたね。1人で弾いてるだけだと達成感もないし、人に見られるからこその緊張感がありました。
──知らない人に音だけで評価される緊張感ってすごそうですね。嫌なコメントを書かれたり。
音羽 全然ありました。“中学生を売りにするな”とか(笑)。でも、その頃から評価されること自体に慣れていった気がします。
──そういうコメントを見て落ち込むよりも“何クソ!”みたいな?
音羽 そう、あの頃が一番メンタル強かったです(笑)。周りにライバルもいなかったし、“絶対いいねって言わせてやる!”みたいな気持ちでやっていました。今でもあの頃に戻りたいぐらいですよ。年を重ねるごとに、どうしても謙虚になっていくじゃないですか。周りには自分よりすごい人が増えていくし、そういう人たちと自分を比較して自信をなくすこともある。それも成長にはつながっているんですけど、時々あの頃の強気な自分に立ち返りたくなる時はあります。
──それだけ大切な時間だったということですね。ギターを買う時って、大人だと“いいものを買おう”となる人も多いと思いますが、初めて買う時はどういう選び方をするのがいいと思いますか?
音羽 憧れのギタリストはいたけど、その人と同じギターを持とうとは思わなくて。憧れのモデルではなくて、“自分だけのギター”が欲しかったんですよね。だから、楽器屋で見た時に“これだ!”ってビビッとくるものを買うのがいいと思います。やっぱり長く付き合っていきたいから、自分だけが知っている良さがあるギターがいいなと。
──音羽さんの好きな音は当時から変わっていないですか?
音羽 当時は言語化できなくて、完全にフィーリングで決めていました。今思えば、ギターが自分のタッチを素直に表現してくれる感じが好きだったのかな。アンプを通してもメイクアップされず、そのまま音が立ち上がる感じがフェンダーにはあって。だから今、こうやってフェンダーに辿り着いているのは必然かもしれないですね。
Player II Modified Stratocasterは新しいアイディアを引き出してくれそうな野性味がある
──フェンダーに対してどんなイメージがありましたか?
音羽 関西風に言うと“シュッとしてる”感じ(笑)。テクニカルな人より、感情的なプレイスタイルの人が持っている印象があります。自分はそういうタイプのギタリストが好きだったので、自然と惹かれました。
──今回試奏していただいたのはPlayer II Modifiedシリーズですが、最後まで迷われていましたね。
音羽 そうなんです。色やキャラクターの違いで迷って。テレキャスはワイルドな印象、ストラトはよりレンジ感のある音。最終的にはストラト(Player II Modified Stratocaster)にしましたけど、どっちも好きでした。
──見た目もギターを選ぶ際のポイントになりますか?
音羽 惹かれることはありますね。でも、自分は最終的には音で選んでしまうタイプです。特にボリュームを絞った時の高音域の残り方がストラトは良くて。歪ませた状態でボリュームを絞ってクリーンやクランチにするのが好きなので、すごく向いていると感じました。最終的なポイントは素直さが大きかったかな。自分はいろんな面で嘘がつけないタイプなので、これも嘘をつかなくていいギターだと感じたんですよね。
──弾いてみてどうでした?
音羽 作る曲が増えそうな気がします。今持っているギターもすごく素直でいい子なんですけど、それよりも新しいアイディアを引き出してくれそうな、そんな野性味がありますね。
──どんなシチュエーションで使えそうですか?
音羽 レコーディングとライヴの両方いけると思いますけど、やっぱりライヴかな。ライヴではいろんなジャンルの曲をやるので、毎回ギターを持ち替えたいぐらいなんですよ。これは、今持っているストラトとはキャラが全然違うし、ちょうど今作りかけの曲があって、その制作のタイミングでこのギターに出会ったのはすごく楽しみな要素だなって思います。いい意味で、余白があるんですよね。
──余白、ですか。その意味をもう少し説明してもらえますか。
音羽 なんだろう…“誰が弾いても同じ音にならない”というのが余白だと思います。声で例えるなら“生まれ持った声”みたいな感じで、その人のタッチがそのまま音に反映される。このギターはそれを増幅してくれるんですよ。制作でも音作りでも、いろんな可能性をくれる自由度の高さが魅力です。

Player II Modified Stratocaster(Harvest Green Metallic)
>> 後編に続く(近日公開)
ジャケット ¥59,400(税込)、Tシャツ ¥16,500(税込)/F IS FOR FENDER(エフ イズ フォー フェンダー)
音羽-otoha-
詞・作曲は勿論、ギタリストとしてのスキルも併せ持ち、アニメーション制作や映像編集など多岐に渡り表現しているマルチクリエイター。TikTokフォロワーは140万人を突破。アニメ・ドラマなどに数多く楽曲を提供し、ストーリーに寄り添う制作スタイルで、各原作ファンからも高く支持されている。「自分自身に向き合い続けること」を主なテーマとして楽曲を作り歌い続ける。ギターヴォーカルとしてのバンド活動をしたのち、「音羽-otoha-」名義のソロアーティストとして今に至る。2025年8月27日には、TVアニメ「Dr.STONE SCIENCE FUTURE」第2クールエンディングテーマで先行配信中の楽曲「no man’s world」を収録した「platinum anthem」をリリースする。8月11日(月・祝)Zepp DiverCity(TOKYO)にてワンマンライヴ〈HELL0w0RLD!〉を開催予定。チケットはソールドアウトしている。
https://otohaofficial.com/