ブランデー戦記 BRANDY SENKI 1st Album Release Tour 2025

今年5月に待望の1stアルバム『BRANDY SENKI』をリリースした3人組ロックバンド、ブランデー戦記。そのアルバムを引っさげて行われた全国ツアー〈BRANDY SENKI 1st Album Release Tour 2025〉のファイナル公演を7月20日、東京・Zepp Shinjukuにて行なった。その模様をレポートする。

スリーピースという編成の中でこそPlayer II Jaguarのポテンシャルが存分に発揮

うだるような暑さが続く3連休の2日目、歌舞伎町の喧騒を抜け会場に入るとすでにフロアは満員のオーディエンスでひしめいていた。暗転した会場にピクシーズの「Where Is My Mind?」が大音量で流れ出す。まずはボリ(Dr)がステージに現れ、会場に向かって両手の拳を振り上げ雄叫びを上げると、それに応えるかのように大きな歓声が響き渡った。続いてみのり(Ba,Cho)がステージ中央で深々と一礼、そして最後に蓮月(Gt,Vo)が登場し、各々セッティングを済ませると全員でグータッチ。アルバム『BRANDY SENKI』収録の「春」から、この日のライヴをスタートした。

蓮月は、ピックガードを黒にカスタマイズしたフェンダーのPlayer II Jaguar(Aquatone Blue)を抱え、ミュートカッティングしながら抑制の効いたメロディを淡々と歌う。中低域に芯のあるギターサウンドが、彼女の澄んだハイトーンボイスと鮮やかなコントラストを描き出す。もちろん、セクションごとにドラマティックに変化していくボリのドラムや、その上でドライブするみのりのメロディックなベースが、楽曲の屋台骨を支えている。

「ブランデー戦記です。よろしく」と蓮月が短く挨拶、地を這うようなみのりのベースに導かれ、「ストックホルムの箱」のヘヴィなギターリフが放たれるとフロアの熱量もさらに上がる。ボリのタイトなドラムの上で、蓮月のギターが粒立ちの良いコードストロークから抜けの良いハイトーンのソロまで、表情豊かに弾きわけ楽曲を彩っていく。スリーピースというシンプルな編成の中でこそ、Player II Jaguarのポテンシャルが存分に発揮されていたのが印象的だった。

疾走感あふれる「僕のスウィーティー」を挟み、「The End of the F***ing World」では蓮月がギターをマッチングヘッドの赤いLimited Edition 60th Anniversary Classic Jazzmasterに持ち替える。ディレイをたっぷりとかけた、魅惑のサウンドでリズムを刻んだかと思えば、ギターソロではファズをかました粘り気のある音色でアンサンブルを引っ張っていく。再びPlayer II Jaguarを抱えた蓮月が、ボリのダイナミックなドラミングに続いてベースとともに印象的なイントロを鳴らし始めると、フロアからはひときわ大きな歓声が上がる。この「Coming-of-age Story」は、昨年8月にリリースされた2nd EP『悪夢のような1週間』収録曲であり、アルバム『BRANDY SENKI』にも収められたブランデー戦記の代表曲だ。ファルセットを交えたサビの切なくもノスタルジック、そしてどこか不穏な空気も孕んだメロディは、彼らの真骨頂と言えよう。

ここからは、じっくりとブランデー戦記の音楽性に酔いしれるセクションへ「Twin Ray」を経て「悪夢のような」では、Limited Edition 60th Anniversary Classic Jazzmasterで軽やかなカッティングで宙を刻み、オーディエンスのハンドクラップを促したかと思えば、サビ〜エンディングではディストーションの効いたサウンドで空間を埋め尽くしていく。そして、どこかアイルランド〜スコットランド民謡にも通じる哀愁を含んだ「メメント・ワルツ」、16ビートのグルーヴィなリズムに乗せ、ささくれだったギターをかき鳴らすフォーキーな「黒い帽子」、そしてセクションごとに目まぐるしく変化していくドラムに目が離せなくなる「水鏡」とたたみかけた。

「今日はツアーファイナル、ただでは終わらせません。新曲をやります」

そう蓮月が宣言すると、どよめきのような歓声が湧き上がる。8月1日リリース予定の新曲「赤いワインに涙が・・・」は、薄緑のグレッチギターを弾きながら、狂おしいほど切ないサビを蓮月が切々と歌い上げる、どこか70年代歌謡曲をも彷彿とさせるグルーヴィかつフォーキーな楽曲だ。

「ツアーファイナル東京、まだまだ行けますか?」と蓮月が煽り、ブランデー戦記の代表曲「Musica」ではハードシャッフルのリズムに乗せてPlayer II Jaguarをジャキジャキと刻む。静と動のコントラストが鮮やかな「27:00」、ビリビリと空気を震わせるディストーションギターと、コブシを効かせた蓮月のヴォーカルが心をざわつかせる人気曲「Kids」、昭和歌謡の中にグランジ〜オルタナのエッセンスを散りばめた「土曜日:高慢」とラストスパートをかけ、再びグレッチを抱えた蓮月が「私にとって、すごく大切な曲をやります」と言い、「Fix」を演奏したあと、Limited Edition 60th Anniversary Classic Jazzmasterに持ち替え「ラストライブ」を披露し、この日のライヴに幕を下ろした。

圧倒的な楽曲のクオリティと、3人の醸し出す親密な空気、そしてどこかまだ初々しく荒削りな演奏。そのすべてが絶妙に混じり合い、唯一無二の世界を作り上げているブランデー戦記。1stアルバム『BRANDY SENKI』で大きな一歩を踏み出した彼らが、これからどのように成長をしていくのか。今から楽しみでならない。

Photo by EdoSota

【SET LIST】
1. 春
2. ストックホルムの箱
3. 僕のスウィーティー
4. The End of the F***ing World
5. Coming-of-age Story
6. Twin Ray
7. 悪夢のような
8. メメント・ワルツ
9. 黒い帽子
10. 水鏡
11. 赤いワインに涙が・・・
12. Musica
13. 27:00
14. Kids
15. 土曜日:高慢
16. Fix
17. ラストライブ


ブランデー戦記:https://brandysenki.com/

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