MIYAVI | Fender Experience 2025

ジャンルや世代を超えた注目アーティストによるライヴ、名器たちとの出会い、音楽と触れ合うワークショップ。音楽、クリエイティビティ、そして人とのつながりが交錯する体験型イベント〈FENDER EXPERIENCE 2025〉が、10月11日(土)〜13日(月・祝)の3日間にわたり原宿・表参道エリアの3会場にて開催された。ここでは11日、表参道ヒルズ スペースオーにて行われた、世界を舞台に活躍する“サムライギタリスト”MIYAVIによるスペシャルライヴステージの模様をお届けする。

フェンダーのような王道が僕みたいなオルタナティヴな挑戦を受け止めてくれた──MIYAVIが示す“ギターの新境地”

冒頭、MCの横溝ジョーに「近況は?」と尋ねられると、「ぼちぼちやってますね」と笑顔で返したMIYAVI。「今は東京、ソウル、北京、上海を行ったり来たりしてる」と語る。その多拠点的な生活の中で、彼が最近強く意識しているのは“アジア人としての自覚”だという。

「ギタリストとしていろんな国で演奏してきたけど、最近はアジアの文化をすごく意識するようになりました。中国語を勉強しているんですけど、地名や看板にも漢字文化の影響があって、韓国にももともと漢字があった。思想や政治の違いはあっても、根っこの部分では繋がっていると感じます」

中国の琵琶、韓国の伝統弦楽器、日本の三味線──どの国にも独自の弦楽器文化がある。「ギターは西洋の楽器だけど、どの国も“弦が震える”という同じ原理で音を生み出す。その震え=波動こそ、人間がずっと感じてきた普遍的なものなんですよ」とMIYAVIは続ける。弦の共鳴を“魂の振動”と捉える彼の言葉には、アジアの根源的な精神性を感じさせる説得力があった。

制作面でも、その意識の変化は大きいという。「アメリカで聴こえてくるメロディと、日本や中国、韓国のメロディはまったく違う。K-POPも世界で人気ですが、それぞれの国には独自の抑揚やスケールがある。結局、自分がどの土地で生きているかが音楽に滲み出るんです」そう語る彼の音楽観は、グローバルに活動する中で、確実に多層的な広がりを見せている。

トーク終盤では、フェンダーとの関係にも話が及んだ。「フェンダーって王道じゃないですか。でも、その王道が僕みたいなオルタナティヴな挑戦を受け止めてくれた。それが本当に嬉しかった」。3基のピックアップ、アーム、サスティナー──改造を重ねた彼のTelecasterは、もはや“テレキャス警察に即逮捕されるレベル”と本人も笑う。だが、どんな改造にも「一本のギターで世界中を飛び回り、どこでも戦うため」という明確な理由がある。

「頭の中で鳴っている音を形にしてくれたのがフェンダーなんです。彼らがいなかったら、今の僕の音は存在しなかった」

彼にとってギターとは何か。その問いに対する答えは、シンプルかつ力強い。「ギターは“刀”です。最初は自分を守るための武器だった。でも今は、誰かを包み込み、つなぐためのものになってきた。ギターは、僕の人生そのものです」

トークが進むにつれ、会場の空気は次第に熱を帯びていった。「今日は“Fender Experience”だから、思いっきりギターの話をしていいんですよね? 演奏もするし、けっこうガチで来ましたよ」と笑うと、観客から拍手と歓声が起こる。ジョー横溝が「これから楽器を始めたい人へアドバイスを」と水を向けると、彼は即答。

「とにかく楽しんで、自由にやってほしい。僕も昔、1日8時間弾けって言われたけど、“いや、言われなくても弾いてるわ”って思った(笑)。自分で弾きたい、出したい、その気持ちが一番大事。教則本に載っていない、自分だけの音を見つけてほしい」

さらにトーク終盤では、フェンダーミュージック株式会社 代表取締役社長 アジアパシフィック統括のエドワード・コール氏がステージに呼び込まれる一幕も。MIYAVIは英語と日本語を交えながら、フェンダーとの長年の関係を熱く語る。

「彼が僕のギターにサスティナーをつけてくれたんですよ。最初は“そんなのテレキャスじゃない”って言われたけど、形なんて関係ない。彼が“やってみよう”と言ってくれたから、今の僕がある。フェンダーはただのブランドじゃなくて、仲間なんです」

そして、ステージはいよいよライヴパートへ。女性コーラス2人、ドラム、キーボードを加えた5人編成でスタート。MIYAVIはヘッドセットを装着し、ギターを抱えたままステージを縦横無尽に駆け巡る。指先から放たれるスラップ音が会場を貫き、観客の熱気が一気に沸点へと達する。

代表曲「WHAT’S MY NAME?」に続く「In Crowd」ではお祭りのようなビートに合わせて、MIYAVIがその場で回転しながらリズムを刻む。壮大なサウンドの「Fire Bird」では、観客が一斉にハンズアップ。弓形に身体をしならせながらギターソロを叩き出す姿は、まるで弦を通じて会場の空気を操っているかのようだった。

中盤、「I LOVE YOU, I LOVE YOU, I LOVE YOU, AND I HATE YOU.」を「ちょっと懐かしい曲をやるね」と紹介して披露。ウィスパーボイスが胸を締めつける「Fragile」では、照明が淡く落ち、彼の繊細な表現力が際立つ。「Broken Fantasy」では観客のシンガロングが響き、一体感がステージを包んだ。さらに「Running In My Head」ではタオルが宙を舞い、「Sweet Disaster」のサビではシンガロングが巻き起こる。アンコールは、フェンダーのギターを高く掲げ、「DAY 1」を全力でプレイ。客席全体がジャンプし、会場は歓喜と熱狂の渦に包まれた。

MIYAVIのギター愛と音楽性、そしてその唯一無二のパフォーマンスを存分に堪能する贅沢なひと時となった。

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