東京スカパラダイスオーケストラ TOUR 2022「BEST OF LUCK」

“スカパラファンにサチアレ”をテーマに掲げ、4月21日から計28公演を開催した東京スカパラダイスオーケストラの全国ツアー〈東京スカパラダイスオーケストラ TOUR 2022「BEST OF LUCK」〉が7月27日、中野サンプラザでツアーファイナルを迎えた。この日、加藤隆志(Gt)はほぼ全曲でフェンダーの新たなStratocaster®️をプレイ。このレポートでは、加藤のプレイと深い青色のボディがモダンに映える、新Stratocasterの音色を中心にライヴの熱気をお届けする。

新たなStratocasterで鳴らす太い音色が、ホール中に鳴り響く

ミッドローを強調した迫力のあるトーンで、加藤隆志がサーフギターを奏でた「SKA! BON-DANCE~We Welcome The Spirits」でライヴはスタート。歪みの中でもちゃんと聴こえる弦の鳴りが実に生々しい。

「We’re Tokyo Ska Paradise Orchestra! Are you ready!?」

加藤が声を上げ、雪崩れ込んだのはダンスナンバーの「TONGUES OF FIRE」。ステージの真ん中でトレモログリッサンド奏法を交え、サーフ風のリフを奏でた加藤はお立ち台の上からジャンプ! 観客が一斉にモンキーダンスを始め、中野サンプラザは2階席まで揺れだした。一度走り出したら、もう止まらないとばかりにつなげた「Glorious」は、谷中敦(Baritone Sax)が歌うスカパンクナンバーだ。ホーンも鳴る厚い演奏の中で、加藤が刻む裏打ちのカッティングのソリッドな音色が立つ。音色を歪ませながら、カッティングの歯切れの良さが心地いいのは、トレブルコントロールが絶妙だからか。

「最終日! 嬉しいです。みんな、いい顔してるよ。こんなに集まって、大騒ぎできるなんて幸せじゃないか。“BEST OF LUCK”ってツアータイトルにして良かった。今夜は一人残らず、幸せになってもらうよ!」(谷中)

一息つくように、茂木欣一(Dr)が歌うポップなスカナンバー「会いたいね。゚(゚´ω`゚)゚。」を挟んだのも束の間、ファンキーな「ハプニング」から「HURRY UP!!」「Blue Mountain」「SOUL GROWL」とアップテンポのインストナンバーを、メンバーたちが観客を煽りながら一気に披露。2ステップを踏んで、ステージをエネルギッシュに動き回る加藤のプレイは歪ませたカッティングを軸にしながら、「HURRY UP!!」ではスタッカートを効かせてアタック感を加えたり、「Blue Mountain」と「SOUL GROWL」ではリバービーに鳴らしたりと音色の違いも楽しませる。お立ち台の上でファズを思わせる轟音とともにキメた「HURRY UP!!」のソロも聴きどころだった。

そこから単音フレーズの粒立ちの良さを印象づけると同時に、リズムを刻みながら茂木の歌の裏で絶妙に跳ねる川上つよし(Ba)のベースプレイも聴き逃せなかったピアノバラード「チャンス」、川上がそれまで弾いていた65年製のフェンダーJazz Bass®️を63年製のJazz Bassに持ち替え、ソリッドな音色でプレイした茂木ヴォーカルの甘いポップソング「世界地図」、そしてインストのスカナンバー「暗夜行路」と曲をつなげ、迎えた今回のツアーの名物コーナー“Paradise Radio”。

茂木がDJを務めるラジオ番組風のトークコーナーは、ゲストに谷中が主演を務めたドラマ『渋谷先生がだいたい教えてくれる』のキャラクター、渋谷先生に扮した谷中と、スカパラが担当した同ドラマの主題歌「サボタージュ」で共演したバンド、ALIのLEO(Vo)、César(Gt)、Luthfi(Ba)を迎え、ファンからの悩み相談に答えつつ、その「サボタージュ」も披露した。ファイナルならではのサプライズに観客が大喜びする中、クリーントーンでカッティングをファンキーに鳴らしたCésarの木目が美しい67年製のCoronado II Wildwood II、曲の終盤にブーストした低音を炸裂させ、観客を驚かせたLuthfiの66年製のPrecision Bass®️ともに、アメリカンでクラシックなルックスに2人の楽器選びのこだわりがうかがえた。

「このまま突っ走っていきますか!?」(茂木)

「調子はどうだ!? 行くぞ!」(谷中)

谷中が歌うアンセミックなロックナンバー「快哉を叫ぶとき」からの後半戦は、新たなアレンジで披露した90年発表のデビューアルバム『スカパラ登場』収録の「君と僕」を挟んでから、「スキャラバン」と「DOWN BEAT STOMP」の2曲で観客は再びモンキーダンスを。そして、加藤が歪みをたっぷり効かせた音色でコードをかき鳴らしながら、“君の瞳に恋してる!”(加藤)と雪崩れ込んだフランキー・ヴァリのポップクラシック「Can’t Take My Eyes Off You -君の瞳に恋してる-」で観客の盛り上がりはさらにヒートアップ。“Oi!Oi!Oi!”と声を上げながらブラッシングを織り交ぜ、コードストロークにアクセントをつけた加藤は轟音をリバービーに鳴らして観客を圧倒。そして、ジャンプをキメる。

加藤の見せ場は以前よりも増えてきたようだ。そんな思いをより確かなものにしたのが、次の「S.O.S. [Share One Sorrow]」だった。音源では、ゲストヴォーカルにMAN WITH A MISSIONからTokyo Tanaka(Vo)とJean-ken Johnny(Gt, Vo, Raps)を迎えたエモーショナルなロックナンバーを、この日は加藤と大森はじめ(Percussion)が歌ったのだが、加藤はそれまで使っていた新しいStratocasterを、“流木”の異名を持つ愛機、65年製の青いStratocasterに持ち替えると、シューゲイザーなんて言葉も思い浮かぶリバーブ効果満点の歪みを鳴らして、曲が持つ奥行きを演出した。

沖祐市(Key)のピアノソロをフィーチャーした「The Last」を壮大な前奏に、本編最後を飾ったのは、歌詞に今回のツアータイトルである“BEST OF LUCK”というワードを持つハートウォーミングなポップソング「君にサチアレ」。スカパラ初のウェディングソングとして世に出した楽曲だが、観客全員にエールを送るという意味で、この日、この曲ほど本編最後に相応しい曲はなかっただろう。

再び新しいStratocasterを持った加藤は、カッティングに軽めの歪みをかけたオブリを交え、演奏に華やかさをプラス。そして、曲の途中から61年製のTelecaster ®️に持ち替えると、Stratocasterよりも太い歪みのコードを鳴らしながら演奏にロックンロールのニュアンスを加え、本編最後に相応しい熱気を作り出した。

そして、アンコールでは“1曲じゃ物足りない”(谷中)と再びALIの3人を呼び込み、スカパラでバンドサウンドに目覚めたというLEOがどうしても歌いたかったという「めくれたオレンジ」を共演。ダメ押しでファイナルならではと言えるハイライトを作り上げると、その熱気をさらに熱いものにしたのが、代表曲中の代表曲「Paradise Has No Border」だった。

「マスクありでこの盛り上がりなんだから、マスク外したらもっとヤバいことになる。その日を目指していこう!」(谷中)

ツアーが終わることを惜しむようにたっぷりと時間をかけ、客席を煽るバンドに対して観客が渾身の手拍子で応える中、加藤がこの日メインで使っていた新しいStratocasterで鳴らす太い音色のトゥワンギーなリードラインが、ホール中に鳴り響いたのだった。

All photo by 勝永裕介

東京スカパラダイスオーケストラ TOUR 2022 「BEST OF LUCK」
2022年7月27日 中野サンプラザホール


【SET LIST】
1. SKA! BON-DANCE~We Welcome The Spirits
2. TONGUES OF FIRE
3. Glorious
4. 会いたいね。゚(゚´ω`゚)゚。
5. ハプニング
6. HURRY UP!!
7. Blue Mountain
8. SOUL GROWL
9. チャンス
10. 世界地図
11. 暗夜行路
12. サボタージュ(VS. ALI)
13. 快哉を叫ぶとき
14. 君と僕
15. スキャラバン
16. DOWN BEAT STOMP
17. Can’t Take My Eyes Off You -君の瞳に恋してる-
18. S.O.S. [Share One Sorrow]
19. The Last
20. 君にサチアレ
ENCORE
21. めくれたオレンジ(with ALI)
22. Paradise Has No Border
※5曲目~9曲目「Tokyo Ska Medley~BEST OF LUCK SPECIAL」


東京スカパラダイスオーケストラ:https://www.tokyoska.net/

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