
Signature Model Interview | 弓木英梨乃 -後編-
私はもう、このギターだけで生きていける
ギタリスト/シンガーソングライター/作曲家/編曲家として幅広く活躍し、2023年には“フェンダーアーティスト”としてパートナーシップ契約を締結した弓木英梨乃が、初のシグネイチャーモデルErino Yumiki Stratocasterを発表。愛機American Ultra Stratocaster HSSを基に、彼女のこだわりをふんだんに詰め込んだ一本だ。インタビュー後編では、実用的な一本を目指したという本機の開発秘話や、同時発売のピックセットErino Yumiki Signature Picksについて語る。さらに、2026年6月に立ち上げた自主レーベル『KAIHO RECORDS』や1stシングル『Kaiho』にも触れ、シグネイチャーモデルと共に弓木がこれからどんな音楽を生み出していくのか、そのビジョンにも迫る。
ギターと一体化してるような感覚がありました
──Erino Yumiki Stratocasterは、メイン機として愛用していたAmerican Ultra Stratocaster HSSを土台にしたそうですが、主にどういった部分を改良したのでしょうか。
弓木英梨乃(以下:弓木) 自分にとってAmerican Ultra Stratocaster HSSはパーフェクトな一本なんですけど、シグネイチャーとしてどこを自分好みにパワーアップさせていくか考えた時に、まず見た目だなと思いましたね。自分が好きな黄色をボディカラーにして、絶対にゴールドパーツを載せたくて。特にカラーは一番こだわったし、時間をかけてもらったところです。
──上品な色で、見飽きないルックスですよね。
弓木 うれしい。落ち着いているけど、でも元気さもあるいい色になりました。見飽きないのは、たぶんラメ(パール)の影響が大きい気がしますね。American Ultraも見れば見るほど好きになれるギターで、その理由の一つがキラキラしていることかなって思ったので、このギターにも絶対ラメを入れたかったんです。ただ、黄色にラメを入れると、白く見えちゃうか、逆に金っぽくなっちゃって(黄色に見せるのが)難しいらしくて。それでもフェンダーの方がめちゃくちゃ試行錯誤してくださって、この色にたどり着きました。
実は、最終的に色の候補を三つまで絞ったんです。家でずっとサンプルを見ていたけど、三つともいい色だから、全然決められなくて。もうどれになっても最高なので、飼っている猫の前にサンプルを置いて、選んでもらったのがこの色なんです(笑)。
──ボディを従来のストラトキャスターより約5ミリ薄くしているそうですが、実際に弾いてみて、その違いをどう感じましたか?
弓木 “5ミリって変わるの?”って思うじゃないですか。でも実際に持つと全然違っていて、ビックリしました。特にライヴで弾いた時に、体にフィットする感じがあるんです。動いても全然ブレないというか、ギターと一体化してるような感覚がありました。実用的なギターにしたいと思った時に、ライヴで長時間弾くことを考えて、“軽くて持ちやすいギターにする”というのは必須だったんですよね。そこでフェンダーの方が、ボディを薄くするという案を出してくださったんです。
──ボディの厚みだけでなく、ネックまわりも含めて、演奏性にはかなりこだわっていますよね。
弓木 ネックの握りやすさやフィニッシュって、一番弾きやすさに直結しているところかなって。特に私は手が小さくてライヴ中に汗をかくので、そのあたりは重要でした。このギターはオイルフィニッシュなので、木そのままを弾いているようですし、弾けば弾くほど自分の手に馴染んでいく感覚があって。たぶん長く弾いていったら、もっと馴染むんだろうなと思いますね。
──ピックアップはいかがですか?
弓木 ボディを5ミリ薄くしたことによって、American Ultraと同じピックアップが収まらなくなってしまったので、同じような性能のものをオリジナルで作っていただきました。音はもちろん妥協していなくて、クリーントーンがめちゃくちゃキレイで! フロント/センター/リアそれぞれにしっかり個性があるし、なおかつ、切り替えた時の音量差も少なくてバランスがいいんです。繊細な音からリアのふくよかな優しい音まで出せて、さらにカッティングではキレのあるサウンドも出せるので、クリーントーンだけでも幅広いですね。リアのハムバッカーを歪ませたらヘヴィな曲にも対応できますし、本当に使いやすいと思います。
──まさに、シグネイチャー発表時のコメントにもあった“この一本でなんでもできる!”と思えるギターなんですね。
弓木 サポートの現場ではいろんな音を求められるんですけど、それを一本のギターで賄えたら最高だよなと思ったんです。このギターはSSH配列で、コイルタップすればシングルコイル3個としても使えるんですよ。だからいろんなジャンルやプレイスタイルに一本で対応できると思いますね。私はもう、このギターだけで生きていけるんじゃないかなって(笑)。
──アームがついている点も、プレイスタイルの幅広さに寄与していると思います。
弓木 そうですね! アーミングが使えるとより“なんでもできるギター”になるので、アームもつけたくて。しかも、アームを使ってもチューニングがズレにくいので実用的です。あと、ロック式のペグも絶対条件でした。このタイプだと弦の交換がめちゃくちゃラクで、私はもうこれじゃないとダメかもしれないです(笑)。
──このギターを手にした時に、まず鳴らしてほしいフレーズや音色はありますか?
弓木 私が最初に弾かせてもらった時、アンプでクリーントーンを弾いて“気持ちいい!とろける!”と思って。なので、アンプ直で鳴らしたり、フロント/センター/リアを切り替えてみたり、まずはクリーントーンでこのギター本来の音を聴いてほしいです。

“ブレブレだな”と思っていたコンプレックスが、今は自分のスタイル
──また、同時発売のピックErino Yumiki Signature Picksについてですが…。
弓木 この画力で発売して大丈夫ですか(笑)?
──味のあるイラストだと思います! どんなイメージで描いていきましたか?
弓木 元気が出るピックにしたいなと思っていて、猫やヒマワリとか、旅が好きなので飛行機とか、自分にとってポジティブなモチーフを描かせてもらいました。私は本番前に緊張するタイプなので、そういう時にこのピックを見て“私だったらできる”って思えるものにしたいなって。
──ここからは話題を広げて、直近の活動について伺います。2026年6月に設立した自主レーベルの『KAIHO RECORDS』という名前には、どんな想いを込めたのでしょうか?
弓木 キャリアも長くなりましたし、好きなものを好きなように作れる場が欲しいなと思ったんです。それで“もっと素の自分で、ありのままに音楽を作れたらいいな”という話をいろんな人としていたら、その中で“解放”というワードが何回も出てきて。それが今の自分のテーマなのかもなと思って、すごく自然に決まりました。
──そして1stシングルとして、レーベル名を冠した楽曲『Kaiho』をリリース。ギターリフやソロはもちろん、歌の後ろで鳴っているコードもすごく気持ちのいい音ですね。
弓木 このシグネイチャーモデルで弾いた音です! この曲ではファズっぽい音でリフやソロを弾いたりと、今までしてこなかったようなプレイにもチャレンジしていて。このギターがあったからこそ、挑戦したいと思えた部分が大きいと思います。私は構築してソロを弾くタイプなんですけど、この曲は自然に出てくるフレーズやプレイがソロになっていて、それもこのギターが引き出してくれたような気がしますね。
──先ほど“アンプで鳴らした時の音が気持ちいい”というお話もありましたが、この曲もアンプで録ったんでしょうか?
弓木 アンプとラインの両方を録音しました。ラインで録った音は自宅に持ち帰ってポストプロダクションをして、最終的にメインリフでは、スタジオで録ったアンプの音と自宅で作り込んだラインの音を重ねました。近年は仕事でも自分の作品でも自宅でライン録音をすることが多くなったので、ラインで録った時の音も大事にしていて。このシグネイチャーモデルはラインの音もすごく良かったので、そこも気に入っていますね。
──早速このギターは現場で活躍していて、かつ弓木さんにとっての新しい扉を開いているんですね。その扉の先には、どんな景色を思い描いていますか?
弓木 前編でもお話させてもらったように、私はアーティストとしてもギタリストとしても、これまでいろんなことをやってきました。20代の頃は、そんな自分を“ブレブレだな”と思っていて、コンプレックスがあったんです。でも、長く続けてきた今はそれが自分のスタイルだなって思うし、自分だからできたキャリアの重ね方だと思えるようになりました。やってきたことすべてに、意味があると思うんですよね。だからこれからも変わっていくことを恐れずに、いろんなことに挑戦したいです。あと、昔から誰かと一緒に音楽をすることに幸せを感じていて、“弓木さんと一緒に演奏したい”と思ってもらえるような、いい演奏をしたいという気持ちが根本にあるんです。だから、もっとたくさんの人と音楽を作りながら、“面白いことやってるよね”と思ってもらえるような活動をマイペースに続けていけたらなって。その経験が、きっと自分の音になると思うので。
──ギタリストとしての展望はいかがですか?
弓木 とにかくずっとうまくなり続けたいので、死ぬ時がピークになるように練習し続けたいですね。
──その向上心には頭が下がります。
弓木 いや、全然できないことだらけで、毎日打ちのめされてますよ。でも、だから飽き性の私がずっと続けていられるんだろうなと思うんです。やってもやっても完全に満足できることがなくて、“もっとこうなりたい”がずっとある。ギターという一生続けていけるものに出会えて、すごく幸せだなと思います。
──最後に、このErino Yumiki Stratocasterを手に取ってくれた方に向けて、メッセージをお願いします。
弓木 弾けば弾くほどその人にフィットしていくギターだと思うので、たくさん弾いてほしいですね。私がAmerican Ultraと出会って“もっと成長したい”と思えたように、このギターも、手に取ってくれた方にとって“新しいことにチャレンジしたい”と思える存在になったらいいなって思います。




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弓木英梨乃
ギタリスト/シンガーソングライター/作曲家/編曲家。2013年から2020年までKIRINJIのメンバーとして活動し、ソロ活動のほかさまざまなアーティストのサポートを務めるなど、キャリアは多岐にわたる。2023年にフェンダーアーティストとしてパートナーシップ契約を締結し、3年をかけて開発した初のシグネイチャーモデルErino Yumiki Stratocasterを2026年に発表。同年6月には自主レーベル『KAIHO RECORDS』を設立し、1stシングル『Kaiho』、9月には2ndシングル『sayonara』を配信リリース。11月24日には〈KAIHO RECORDS Opening Showcase〉として下北沢シェルターでのワンマンライヴを開催する。
https://twitter.com/yumikierino
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