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B x B | 日野”JINO”賢二 x あいにゃん(SILENT SIREN)-前編-

神みたいなベーシストがいっぱいいるから、ずっと謙虚でいないといけないよね

日本を代表するベーシスト同士による対談企画「BxB」。ベースを始めたきっかけ、ベースという楽器が自分に与えてくれたもの、ベーシストとして常に心に描いている目標など、アーティストとしての内面に迫りつつ、Precision BassやJazz Bassの魅力、そして現在のフェンダーを代表する最新モデル“American Professional IIシリーズ”のインプレッションについてトークを展開。第1回目は、スーパーベーシストのJINOとSILENT SIRENのあいにゃんが登場。プレイヤーとしての “共通点”とは。

初めて憧れのフェンダーを買った時、嬉しすぎて泣いちゃった(JINO)

― まずは、お二人がベースを始めたきっかけから教えてください。

あいにゃん ベースを始めたのは高校生の頃です。2つ上の兄がバンドでベースを弾いていて、家にベースが置いてありました。それから、学園祭規模ですけど兄のライヴを見るようになったんです。で、初めてライヴハウスに行った時、アンプから鳴るベースの音がすごい振動でドキドキしたんです。それから家にあるベースで練習を始めました。

日野”JINO”賢二(以下:JINO) 親は音楽をやっていたの?

あいにゃん 父がバンドでギターを弾いていたくらいです。あくまでも趣味程度で、音楽家ではなくて。

JINO 小さい頃、パパから“ちょっとギター持ってみろ”とか言われなかった?

あいにゃん それはありました。ギターも家に何本かあったので。

JINO 俺の親もトランペッターで、まずはトランペットをやらされたわけよ。無理矢理。

あいにゃん 何歳の時ですか?

JINO 7歳の時。7歳でニューヨークに渡って住み始めたの。“やった!マクドナルドがいっぱいある!”って喜んだけど、“毎日3時間はトランペットの練習”って言われて地獄だった。1階建の一軒家の地下に行って、ドレミファソファミレドソド。これだけをずっと3年間やってたの。

あいにゃん 最初にトランペットをやってからベースを?

JINO まだそこまで行ってないね。ちょっと聞いて、おっさんの話を(笑)。

あいにゃん 先走りました(笑)。

JINO 学校から帰ってきたら毎日トランペットの練習。兄がドラム。練習は3時間やらないといけない。3時間練習したらアメフト、ホッケー、野球をやっていいという感じで。すごく厳しいルールだったの。3時間練習をやらないと親父が木刀とかを持ってくるから。“怖い、このおっさん”みたいな。

あいにゃん 厳しいですね。

JINO うん。中学生になって、女の子に興味を持つじゃん。モテたいからトランペットでいいところを見せたくて、ハードに練習していたから上手くなったと思っていたんだけど、録音して聴くとスーパーで流れているトランペットみたいでダサいなと思っちゃって。で、俺が13歳の時、岡沢章さんという日本を代表するベーシストがニューヨークに“ザ・プレイヤーズ”というバンドで親父とレコーディングするために来て、ベースに魅せられたんだよね。その時、楽器屋に行ったら66年製のMustang Bassがあって、それを兄貴が手に入れて。“うわー!Mustang Bassってこんなにカッコいいんだ”と思って“ちょっと兄貴貸して”って言ったら、“お前はちゃんとトランペットの練習しろよ”って。親父はツアー中でいなくて、ベースの取り合いをしているうちに俺のほうが上手くなったんだよね。

あいにゃん お父さまはベースに転向するのを許してくれたんですか?

JINO 家にピアノもドラムもあってやったけど、親父には“ダメだね”って言われて。でも、ベースを聴かせたら“ちょっといいんじゃないの?”と言ってくれて、それでベースになったの。それまではずっとトランペットとピアノとドラム。でも、それが作曲とプロデュースの勉強になった。ベースがやっぱりバンドの土台だからさ、俺たちがいなかったらいい歌を歌えないじゃん。でも、ベースは絶対に謙虚にならないと。

あいにゃん そうですね。

JINO いくら俺たちがカッコ良くてもファンがいても、俺たちの上には神みたいなベーシストがいっぱいいるからさ、ずっと謙虚でいないといけないよね。

― あいにゃんさんは、どのような練習をしていましたか?

あいにゃん 独学ですね。兄からちょっと教えてもらったけど、兄も習っていたわけではないので。理論もわからなかったですし、耳コピも難しいし、譜面も読めないところから始めました。

JINO でも、音楽でサクセスになって良かったじゃん!

あいにゃん 良かったです。仕事になるとはその頃は思っていなかったですし、どうやったらプロになれるのかも全然わからなかったです。

JINO 俺もベースを弾くようになって女の子から相手にされるようになって、何とかニューヨークでサバイブできて。演奏する機会も少しずつ増えてきたんだけど、ニューヨークだと10代からプロのミュージシャンがいっぱいいるし、黒人でジャズをやっている人とかすごく厳しかったね。“お前、イエローなのにジャズができるわけないじゃん”ってずっと言われて。だけど、”成功していつかアイツらに一杯奢ってやる。それまでは頑張ろう”って思ってたの。俺は17歳で家を出たけど、親からは一銭ももらわなくて、バンドを10個くらいやってプロになった男だから。で、やっと20歳になって上手くなったら、親父が“俺のアルバム一緒にやる?50万円やるよ”って言ってきて。それまでは一銭もくれなかった。貧乏だったから、一番安い9ドルの弦を買って、古くなると煮てリユース(再利用)してたから。でも、全然苦じゃなかったよね。

あいにゃんは 私もバンドを始めたのに、アイドルとして見られて悔しい思いをしました。読者モデルを経てのバンドだったので、偏見が多くて。“本当は弾いていない”とか“事務所に集められたバンド”とか、そういう悔しい出来事があって。でも、それを苦ではなくてバネにしてやってきた部分は、ちょっとJINOさんと似ているなって。レベルは全然違いますけど、“何くそ精神”でやってきたことを思い出しました。

JIONO そうだったんだね。

あいにゃん はい。でも、もちろんJINOさんほどではないです。しかもJINOさんって音楽一家で、順調に登ってきたイメージだったので、そういう下積みがあったのを初めて聞きました。でも、それを苦労と思っていないのがすごいなと思いましたね。

JINO 自然だった。親父も金を持っているのに、“誕生日は何が欲しい?”って言うから“新しいアンプとベース”って言ったら“そんなのダメだよ”って言うわけ。反抗したんだけど、ベースは職業だから、自分でお金を貯めて買って大事にするものだと。このくそケチな親父なんなの?って。でも、初めて憧れのフェンダーを買った時、嬉しすぎて泣いちゃった。ずっとそれを弾いていたし、今もそのベースは持っているよ。あのフェンダーのベースだけは絶対に手放さない。


なぜか惹かれるのはPrecision Bassなんです(あいにゃん)

― あいにゃんさんが最初に買ったフェンダーは?

あいにゃん 大学入学くらいに買ったPrecision Bassが最初です。地元・町田の中古屋さんで買いました。ただ、買った当時はそれがプレベということもわからなかったですし、ネックが太いとかもわからず、ずっとそれを弾いていました。でも、サンバーストの感じがすごくレトロで好きで、とにかくこれでライヴをしたいなと思っていました。

JINO 俺もサンバーストになりたい!

あいにゃん あはははは!

― 最初はプレベだったんですね。今はライヴではJazz Bassですよね?

あいにゃん ライヴではジャズベがほぼメインです。というのも、サイサイの曲がスラップっていう印象なのと、エフェクターとの相性でジャズベなんです。あと、「フジヤマディスコ」という定番曲があるのですが、もうスラップバキバキで。となると、ジャズベの使い勝手がいいということで、ライヴでのメインはジャズベですね。プレベって初心者向けではないと一般的には言われていますけど、なぜか惹かれるのはプレベなんです。やっぱりスラップの音も、プレベのほうが太くて気持ちいいし、ヴォーカルの邪魔をしない“良いスラップの音がするな”と思うようになってきて。

― 歌という視点で言うと、今のシティポップやR&Bはプレベのほうが多く使われている印象です。

JINO ソウルとかは全部プレベだよ。フラットワウンドを張って、ナイロンかラベラつけて、トーンを全部切っちゃって。あの音だよね!

― さて、あいにゃんさんには先ほどAmerican Professional IIを試奏していただきましたが、いかがでしたか?

あいにゃん プレベとジャズベの両方を少しだけ弾かせてもらったのですが、プレベは気持ちいいですね。

JINO 俺にも弾かせて!

あいにゃん ぜひ!

JINO 軽い! これは疲れないよね。やっぱりネックが大事だけどネックがいいね。ロゴも好き。それとアンプに入れなくても倍音が出る。ちゃんとボディが鳴ってる!!

あいにゃん 確かに鳴っている感じがしますね。

― あいにゃんさんが“気持ちいい”と言っていたのは、“鳴っている”という感覚ですか?

あいにゃん そうですね。あと、ジャズベのほうがハイ(高音域)がパーン!って抜けるんですけど、プレベのほうがバランスが良くて、ちゃんとしたベースらしい音が聴こえるんです。

― ネックはジャズベよりプレベのほうが太いですが、それは気にならない?

あいにゃん 気にならないですね。ヴィンテージのプレベも持っていて、太いネックに慣れたのかもしれないけど、このプレベはネックの太さが気にならないです。

JINO それにしても、アルダーボディなのにこの軽さ! しかも鳴ってるし! 最高だね。

― American Professional IIのプレベをどのように使いたいですか?

あいにゃん スラップの曲もだんだんプレベを使うようになってきたので、そういう意味ではサイサイのメインの曲「チェリボム」も、スラップもありつつ存在感のあるベースラインなのですごく合いそうだなと思いました。あと、JINOさんが言ったように、アンプにつながなくても鳴っている感じがすごく気持ち良いので、家で弾きたい時にもいいなと思います。

― JINOさんはどうですか?

JINO 正直、昔は“プレベはあんまり”と思っていたけど、今はプレベも大好きだよ。いつもプレベを買おうとしている。ジャズベも買うけど、やっぱりプレベが大好きだから、絶対にこれも買っちゃうよね。

― 実戦でも使えそうですか?

JINO まだアンプにつないでいないから、細かいことまではわからないけど、弾きやすいし生音でこれだけ良かったら絶対に間違いないから。

あいにゃん JINOさんが良いって言うと…もうこの1本が欲しくなります(笑)。

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American Professional II Jazz Bass®

American Professional II Jazz Bass® 人気のSlim Cシェイプネックは、丁寧にエッジがロールオフされ、至高の演奏体験を約束する”Super-Natural”サテン仕上げが施されています。また新たに設計されたネックヒールを採用し、快適なフィーリングとハイポジションへの容易なアクセスを実現しました。新しいV-Mod II Jazz Bass Single-Coilピックアップは、これまで以上に繊細なトーンを奏で、Jazz Bassならではのパンチとクラリティを提供します。

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American Professional II Precision Bass® 定番の’63 P Bassシェイプネックは、丁寧にエッジがロールオフされ、至高の演奏体験を約束する”Super-Natural”サテン仕上げが施されています。また新たに設計されたネックヒールを採用し、快適なフィーリングとハイポジションへの容易なアクセスを実現しました。新しいV-Mod II Precision Bass Split-Coilピックアップは、これまで以上に繊細なトーンを奏で、Precision Bassならではの圧巻のローエンドを提供します。

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日野”JINO”賢二
幼少の時、父とともにNYに移住。9歳よりトランペットを始め、16歳でベースに転向。17歳の時、ジャコ・パストリアスに師事する。19歳よりプレイヤーのみならずミュージックディレクターとしてプロ活動を開始。89年にはアポロシアターのハウスバンドの一員として出演。その後、父や叔父のアルバムに参加、NYブルーノートなどのライブハウスを中心にベーシストとして活動。2003年、アルバム『WONDERLAND』でのデビューを機に本拠地を日本に移して活動。Bob Marley, Deborah Harry, Jeff Mills, Keith Richards, Marcus Miller Band, MISIA, 西野カナとの共演など、数々のライヴサポートやレコーディングワークと共に、エレクトロニック・ジャズ・カルテット SPIRAL DELUXEでの活動や、ジャズ、ファンク、R&Bをクロスオーバーさせた自身のプロジェクトJINO JAMなど、国籍・ジャンルを超えた世界の音楽シーンで活躍するスーパーベーシスト。
› https://www.jinobass.com


SILENT SIREN
すぅ(Vo,Gt)、ひなんちゅ(Dr)、あいにゃん(Ba)、ゆかるん(Kb)からなるガールズバンド。 2012年11月、シングル「Sweet Pop!」でメジャーデビュー。 2015年、ガールズバンド史上最短で日本武道館単独公演を行い、翌年には横浜アリーナ公演、2016年からはアジア・アメリカを廻るワールドツアーも開催。 2016年年末、ユニバーサルミュージック / EMI Recordsへの移籍を発表。 同時にロゴ、バンド名表記を全大文字へと一新。 2017年には、デビュー5周年記念日にツアーファイナルとしてバンド初となる日本武道館2days公演を成功させ、2018年、自身最多公演となる全国ツアーも開催。2018年からは全国ラーメンチェーン『天下一品』のイメージキャラクターも務め、テーマソングも提供し同CMに出演中。2020年、バンド結成10周年を迎えた。
› https://silent-siren.com

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