Interview | 松隈ケンタ(SCRAMBLES)× HISASHI(GLAY)
#FenderNews / 松隈ケンタ(SCRAMBLES)× HISASHI(GLAY)インタビュー
(撮影/西槇太一)
ポップカルチャーグッズの専門店「ナタリーストア」にてフェンダーとBiSHによるコラボレーションギター「Fender Telecaster Thinline “BiSH”」の受注販売がスタートした。このモデルはBiSHの楽曲を手がける松隈ケンタ(SCRAMBLES)のプロデュースによって制作されたギターで、セミホロウボディのTelecaster Thinlineをもとにボディ、ヘッド、そしてネック裏に至るまで黒で統一したカラーリングを採用。またサウンドの要となるピックアップには松隈のギターブランド「Jimmy Quartett」オリジナルハムバッキングピックアップ「INVADER」を2基搭載している。このページでは、BiSHが所属する事務所WACKの関連アーティストに興味を示すHISASHI(GLAY)をゲストに迎え、ギターをプロデュースした松隈との対談を掲載。「Fender Telecaster Thinline “BiSH”」を試奏した感想に加え、フェンダーとの出会いや印象、ギターの魅力などについて語ってもらった。
※本記事内に登場するギターはプロトタイプとなり、製品版とは仕様が一部異なります。
松隈サウンドに魅了されたHISASHI
― お二人は今回が初対面なんですよね。
松隈 そうなんですよ。以前BiSの「primal.2」のギターソロを弾いていただいたことはあるんですけど。
HISASHI 僕が家で弾いた音源を納品しただけで、BiSのメンバーやスタッフ、誰とも会わずに終わりでしたけどね(笑)。僕はもともとBiSが好きで、松隈さんの作るエモーショナルなメロディ、楽曲がすごく好きなんです。一度BiSが解散したあとに淳之介(渡辺淳之介 / WACK代表)さんがWACKを立ち上げてから、BiS、BiSH、GANG PARADE、EMPiREも動向をチェックしてるんですけど、どれも素晴らしくて、旧BiSの頃からまったく途切れない曲作りのテンションをずっと感じていました。
松隈 もう光栄すぎて……うれしい限りです。
― では「Fender Telecaster Thinline “BiSH”」についていろいろとお話を伺えればと思います。
松隈 今回、「フェンダーさんとBiSHでコラボギターを作りましょう」とナタリーさんから提案がありまして。BiSHは“楽器を持たないパンクバンド”と謳っているグループなので、イメージを固めていく段階で、自分の好きなパンクバンドのイメージ的にもやっぱりテレキャスターだろうと思いつつ、普通っぽくないほうがいいのでテレキャスターシンラインをチョイスしました。ハムバッキングのピックアップを積みたかったので、自分がプロデュースしているJimmy Quartettのピックアップを搭載していただいています。見た目は「BiSHのギターなら黒だろ!」と、“PAiNT it BLACK”をイメージしたカラーリングで、ピックガードは右側の角の端まで伸びたデザインの、つまり普通のテレキャスターに近い形にしています。
HISASHI あ、ホントだ。ボディカラーは普通のブラックじゃないですよね?
松隈 シースルー塗装で杢目、木の色が透けて見えるようにしてます。あと、フェンダーさんのギターだとなかなかない仕様らしいんですが、ネックの裏側も黒に塗りまして、ネックプレートにはBiSHのロゴが刻印されます。
― BiSHのロゴなどがフロント面に一切ないので、一見するとスタンダードなモデルにも見えるという仕様ですね。
HISASHI ほう、そうきましたか。
松隈 そうなんですよ。ピックアップ以外はビスなど細かいパーツを含めてすべて黒で統一しました。
HISASHI このfホールがアクセントになっていておしゃれですね。こういうボディの色、すごく好きなんですよね。若干紫がかったようにも見える。
松隈 光の当たり方によって灰色とか茶色っぽくもなりますね。
HISASHI 何か秘めた感じがあって、BiSHらしくていいと思います
― 過去にはアニメ作品とのコラボモデルはあったそうですが、楽器を弾かないアーティストのモデルを発表するのも初めてだそうです。
松隈 まあ前代未聞ですからね、フェンダーとコラボモデルを出せる楽器を弾かないグループなんて。
HISASHI ホントに珍しいと言うか、ありそうでなかった感じ。
「Fender Telecaster Thinline “BiSH”」を試奏
HISASHI (ギターを手に取り試奏したあと)ああ、軽い。ネックも握りやすいし、女性にオススメできそうです。音はフェンダーっぽさがありつつも、ミッドローがけっこう出ていて……これはひとクセありますね(笑)。
松隈 レコーディングにおいて最近はデジタル環境が多いので、パソコンにつないで処理をしていく間に音がだんだん細くなるのが嫌なんです。だから「サウンドの根元はなるべく太めに」というのが僕の求める楽器のテーマでもあって。ちょっと古臭い音かもしれないですけど、太めの出音をデジタル環境でジャキジャキに鳴らす感じもけっこう好きです。
HISASHI やっぱりレコーディングエンジニアの発想なんですね。僕はGLAYだとメンバーが多い分、ギターを弾いたときに鳴ってほしくない音があるので、そこは気にしてます。
松隈 なるほど。
HISASHI レコーディングだとテレキャスターを使うことが多いんですよ。しかもシンライン。
松隈 おお。偶然ですね(笑)。
HISASHI ストラトも好きなんですけど、バッキングを弾くときはテレキャスが多いです。
松隈 なるほど。せっかくなのでレコーディングブースでもギターを弾いてみてください。
レコーディングブースから
― BiSHの楽曲レコーディングをしているブースで試奏していただきましたが、HISASHIさんはBiSHの楽曲「HiDE the BLUE」を演奏されていました。フェンダーとBiSHのコラボギターの弾き心地はどうでしたか?
HISASHI BiSHと共演した気分。すごくうれしいです(笑)。ギターに関してはサスティンがあって、非常にピッチも安定しているし、素直にピックアップが反応してくれて弾きやすかったですね。歪ませた音で弾きましたけど、もっともっといろんな音でも試してみたくなりました。今日弾いた音源をどこかで使ってほしいくらい(笑)。なかなかパンクなルックスだし、カッコいいです。
松隈 僕が普段弾いてるセッティングのままで試奏していただいたんですけど、HISASHIさんが弾くとGLAYの音になっていたんで驚きました(笑)。ちなみにHISASHIさんはバッキングとリードでギターを使い分けるんですか?
HISASHI 使い分けちゃいますね。以前、1973年製のテレキャスターカスタムを買っちゃって、シングルとハムをミックスした音がすごく気に入っているのでバッキングはそのギターを使うことが多くて、ソロはピックアップがハムバッカーのギターを使うケースがほとんどです。
年月を経て変化したフェンダーへの印象
― HISASHIさんがフェンダーを使い始めたきっかけはなんだったんですか?
HISASHI このBiSHのギターと同じ、シンラインタイプのギターを佐久間(正英)さんが作ってくれて。それがきっかけでGLAYの楽曲でも使うようになりました。
― フェンダーの第一印象は覚えてますか?
HISASHI ずっとハムバッキングのピックアップを使っていたから、自分にはなじみのないブランドだろうなあと思ってました。シングルコイルのピックアップのギターらしいノイズとか、ピッキングのニュアンスが弾いていて気持ちいいなと感じたのは2000年くらいからです。
― プレイスタイルの変化からでしょうか?
HISASHI GLAYを取り巻く環境が2000年をきっかけにいろいろと変わってきたんですよ。1990年代後半は楽器を弾くよりも、テレビやラジオに出たり、雑誌の取材を受けたりすることが多かったので、とにかくバンドをやりたくて仕方なかった。2000年代に入ったタイミングでわりと自由に音楽ができるようになって。海外でレコーディングをしたり現地で楽器を買ったりするようにもなって、そこで最初に買ったフェンダーは54年製のストラトだったと思うんですよね。そのギターは「ONE LOVE」(2001年発表のアルバム)でけっこう使ってます。
松隈 ビンテージっぽいギターが好きなんですか?
HISASHI そんなにたくさん持っているわけではないんですけど、さっき言った73年製のテレキャスとかは自分の生まれた年と近いこともありますし、思い入れのあるものを持っていたいなって。
松隈 僕も79年製のギター持ってます。自分の生まれた年なんで。
HISASHI いいですよね、ワインみたいで(笑)。このフェンダーとBiSHのコラボモデルは生まれたてですけど、ビギナーの方にも、いろんなミュージシャンの方にもオススメできるクオリティのものだと思いますし、末永く愛用できる1本になってくれるんじゃないでしょうか。とにかくこの軽さがいいです。重いギターは疲れますから(笑)。僕はみんなに「ギターって可能性のある魅力的な楽器だな」と感じてほしいと思いながら、“弾いてみた”動画を上げてるんです。ギターは自由な楽器で、弾き方にルールもないし、どんな音を使っても、チューニングを変えたっていい。僕自身も家でギターを弾いているときは半分趣味でやっているようなものですから(笑)。
松隈 今回、この「Fender Telecaster Thinline “BiSH”」が作れたので、「BiSHを聴いてバンドを始めました」っていつか言ってくれる人が出てきたらいいなと思ってます。このモデルをきっかけにギターを始めた子がいたら、いつか教えてほしいですよね、「このギターでバンド始めました!」って。
● モデル:セミホロウボディ/Telecaster Thinline
● 価格:182,000 円(税別)
● 受注販売期間:2018年5月22日(火)〜 6日3日(日)
● お届け予定:2018 年11月お届け予定
※ 一般の楽器店及び、フェンダーオンラインストアでの販売はございません。予めご了承ください。
Profile
松隈ケンタ
福岡県出身の音楽プロデューサー、音楽制作プロダクションSCRAMBLES代表。ロックバンドBuzz72+を率いて上京し、2005年にavex traxよりメジャーデビューした。バンド休止後に作詞家、作曲家としてアーティストへの楽曲提供をスタートさせ、BiS、BiSH、GANG PARADE、EMPiREらの楽曲を手がけている。現在はプロデュース業に加え、ロックバンドGHOST ORACLE DRIVEでボーカルを担当しているほか、ギターブランド「Jimmy Quartett」、楽器店「LITTLE BY TECH.」、音楽スクール「SCRAMBLES MUSIC COLLEGE」、レコーディング&リハーサルスタジオ「SCRAMBLE STUDIO」を運営している。
› http://scrambles.jp/
› https://twitter.com/kenta_matsukuma
HISASHI
GLAYのギタリスト。1989年に同バンドに加入し、1994年にシングル「RAIN」でメジャーデビュー。数多くのヒット曲、ヒットアルバムを生み出し続け、2017年7月に発表したアルバム「SUMMERDELICS」では全14中4曲の作詞作曲を手がけた。これらの楽曲や、SNSを通じて多趣味かつフレンドリーな人柄に注目が集まり、近年では声優やアニソンシンガー、アイドルへの楽曲提供やプロデュース業、ACE OF SPADESのリーダーを務めるなど幅広い活動を行っている。
› http://www.glay.co.jp/
› https://twitter.com/hisashi_
› https://www.instagram.com/hisashix/
BiSH
アイナ・ジ・エンド、モモコグミカンパニー、セントチヒロ・チッチ、ハシヤスメ・アツコ、リンリン、アユニ・Dの6人からなるアイドルグループ。BiSを作り上げた渡辺淳之介(WACK)と松隈ケンタ(SCRAMBLES)がタッグを組み、彼女たちのプロデュースを担当している。2015年5月に1stアルバム「Brand-new idol SHiT」をリリース。同年5月に東京・中野heavy sick ZEROにて初のワンマンライブ「THiS IS FOR BiS」を開催し、以降のライブは各所でソールドアウトを記録する。2016年5月にはメジャー1stシングル「DEADMAN」をリリースしavexよりメジャーデビュー。6月から10月にかけて全国ツアー「BiSH Less than SEX TOUR」を開催し、ツアーファイナル「帝王切開」では東京・日比谷野外大音楽堂で単独公演を成功させた。同年10月にメジャー1stアルバム「KiLLER BiSH」、2017年6月にミニアルバム「GiANT KiLLERS」を発表。7月22日には千葉・イベントホールにてグループ史上最大規模のワンマンライブを行った。同年11月にフルアルバム「THE GUERRiLLA BiSH」、2018年3月にシングル「PAiNT it BLACK」を発表。5月22日に神奈川・横浜アリーナにてワンマンライブ「BiSH “TO THE END”」を行い、6月27日には両A面シングル「Life is beautiful / HiDE the BLUE」のリリースを控えている。
› http://www.bish.tokyo/
› https://twitter.com/BiSHidol