Cover Artist | 清春 -前編-
鬼のように練習しなくてもステージで弾けることを立証したい
94年に黒夢でメジャーデビューして以来、常に第一線で活躍し続ける清春。その圧倒的な歌が魅力だが、ライヴではギターを弾くこともあるし、作曲はギターで行っているという。ギターに関してのインタビューは自身初という貴重なインタビュー。前編ではギターを始めたきっかけ、そしてフェンダーのギターについて聞いた。
― ギターを弾き始めたのはいつですか?
清春 めちゃくちゃ遅くて、30歳を過ぎてからです。一応、高校生の時にギターを買ったことはあるんですよ。雑誌の裏に載っているビギナーセットみたいなものを地元の楽器屋で買ったのですが、Emしか弾けなくて挫折して、埃を被りまくりで置物と化していました。全然弾けずにすぐ諦めて、やっぱり自分はヴォーカルだなと。
― 30歳を過ぎてギターを再開したのはなぜですか?
清春 ちょうどサッズを辞めてソロデビューをしようと思っていたので、楽器隊に頼らないでもいいようにと思っていたんです。サッズの3rdアルバム『THE ROSE GOD GAVE ME』は、UVERworldとかアレンジをしている平出悟くんがアレンジャーで、その平出くんに“サッズでもう1枚アルバムを作ったら、ソロアルバムを作るからギターを教えてよ”と言って制作の合間にギターを教えてもらいました。難しかったけど、次のツアーでギターデビューしちゃいましたね。
― ライヴはどうでしたか?
清春 3コードしか弾けずに、練習も全然せずにステージに立ったんです。しかも弾き語りをしたんです。最初はめちゃくちゃでしたね。今でも覚えているけど、横浜ベイホールだったかな。ファンの人にとってもギターを持っている僕は初めてで、Am、D、Emの繰り返しで歌が展開していく「Everything」という曲を作って、それを初披露したらめちゃ緊張して(笑)。何回か止まりましたね。3コードを弾くのは簡単なんだけど、歌いながら弾くのはこんなにも難しいんだなと思いました。
― 弾き語りデビューがライヴとはすごいですね。
清春 ね(笑)。それからは、自分が弾ける曲を作っていきました。サッズの5枚目のアルバム『13』からソロデビューにかけては、自分が押さえられるコードで作って。今でも10個くらいしかコードは弾けないですけどね。
― それでずっと曲を作っているのですか?
清春 最近はセブンスコードとか小技を覚えてきたんですけどね(笑)。基本的に練習を一切しないので、曲作りの時と本番しかギターを触らないんですよ。だから、鬼のように練習しなくてもステージで弾けるっていうことを立証したいですね(笑)。
― しかも、曲も作れてしまうと?
清春 ええ。サッズの場合はバンドだったので、ラウドな演奏の合間の静かな時にだけアコギを弾ければいいのかなと。だから、曲の最後のあたりから急にコードがシンプルになる。それは、僕が弾けるからという理由です。僕が曲を作っているので。
― それまではどのように作曲をしていたのですか?
清春 鼻歌というか口です。黒夢時代は、マニピュレーターと一緒にすべて口で作っていました。ギターのリフもだいたい口で。サッズの最後のアルバムであまりギターリフがないのは、僕が作ってたからですね(笑)。
― なるほど(笑)。先ほど、そんなに練習をしなくてもステージに立てると証明したいとおっしゃっていましたが、まさにその通りですね。
清春 ソロデビューした時、大阪でデヴィッド・ボウイのオープニングアクトをやらせてもらったんです。1曲だけボウイがギターを弾いているんですけど、全然音が鳴ってこないんですよ。だけどバックステージを見たら、デヴィッド・ボウイのギターがたくさん置いてあって、カッコいいなと(笑)。それだけギターを用意しても1曲しか弾かない。ほとんど弾いていない。でも、弾いている姿はめちゃくちゃカッコ良くて。僕も、ソロデビューする頃にはステージで弾いていたけど、それまではほとんど弾けなかった。弾けるところしか弾いていなかった。でも、最初はそれでいいと思っていたんです。“全編弾けないから持たない”ではなくて、基本は歌っているので、ちゃんと歌えばいい。ギターも2人いたので、アンサンブルのパートでも、自分は弾けるとことしか弾かなかった。それでいいと思うんです。シンガーなので。
― ステージでギターを弾くようになって、パフォーマンスは変化しましたか?
清春 昔はライヴでめちゃくちゃ動いていたんです。でも、ギターを弾くとマイクスタンドになるので定位置でいい。だから、ラクにはなりましたよね。僕がライヴでよくやっているのは、前半はギターを持って定位置で歌い、体が温まってきた後半は動く。ギターソロはギターが2人いるし、僕が弾くと3人になっちゃうので、本当に印象的なところしか弾かないです。あまりユニゾンもしないですね。ユニゾンしちゃうとガチャガチャしちゃうので。ただ空ピックを弾いている時はあります(笑)。
― 正直ですね(笑)。
清春 僕の憧れはTHE STREET SLIDERSなんです。もちろんハリーさんは相当ギターも上手いしちゃんと弾いていますけど、僕の場合は歌いながらたまに弾く感じです。やっぱり、ギタリストというよりも歌ありきなので。歌から入ったギターです。だからとってもお恥ずかしいですね、今日の取材も。しかも、世界トップブランドのフェンダーの取材。参ったなぁ(笑)。
― いやいや。フェンダーのギターをライヴで弾いている写真をいくつか拝見しました。
清春 Cycloneとフー・ファイターズのクリス・シフレットのシグネイチャーモデルのTelecasterですね。クリス・シフレットモデルは、たぶんギターテックの人が持ってきたんだと思います。でも、Telecasterは自分でも買おうとしたことがあります。やっぱり、SLIDERSに憧れていたので。
― Cycloneは?
清春 形で選んで買いました。でも、コートニー・ラブも使ってた印象ありますね。
― フェンダーギターに対する印象は?
清春 ギタリストの人には申し訳ないけど、まずはフェンダーのロゴが好きです。フェンダーって、いろいろなアパレルブランドとコラボしてる。僕もTシャツ持ってますね。まぁ、フェンダーは完全に憧れです。バンドマンって売れるとシグネイチャーモデルが出るじゃないですか? で、楽器屋さんに行くと、ポスターとかが貼ってあってメンバーを羨ましいなと思っていたんです。だけど、僕はいきなりトップメーカーのフェンダーですからね(笑)。正直、めちゃくちゃ嬉しいです。
› 後編に続く
清春使用機材
AMERICAN ACOUSTASONIC® TELECASTER®
常に進化を続けるフェンダーの精神を体現したAMERICAN ACOUSTASONIC® TELECASTER®。Fishman®と共同開発した強力なサウンドプロセッサーを内蔵し、スタジオワーク/ライブパフォーマンスの両方において、幅広いアコースティックギターのトーンとエレクトリックギターのトーンを融合した、全く新しいユニークな表現を実現します。
PROFILE
清春
94年、黒夢のヴォーカリストとしてメジャーデビュー。そのカリスマ性とメッセージ色の強い楽曲で人気絶頂の最中、99年に突然無期限の活動休止を発表。
同年にSADSを結成し、2000年、TBS系ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』の主題歌「忘却の空」が大ヒット。同曲を収録したアルバム『BABYLON』は50万枚以上のセールスでオリコン1位を記録する。年間130本もの精力的なライヴツアーを行う中、アルバムごとに音楽性を急激に変化させ、黒夢時代のファンのみならず新たな層にもその存在を強烈にアピールした。
2003年、DVDシングル「オーロラ」でソロデビュー。同時期に立ち上げたアパレルブランド『moon age devilment』は、現在も東京/大阪のショップ『GLAM ADDICTION』で展開。2004年、David Bowie JAPAN TOUR大阪公演にオープニングアクトとして出演。清春として現在までに10枚のアルバムリリースとツアーを精力的に行っている。
そして近年は〈MONTHLY PLUGLESS KIYOHARU LIVIN’ IN Mt.RAINIER HALL〉という驚異的な公演数を誇るシリーズライヴを継続。
2013年、初の歌詩集『mardigras』を発売。2017年に〈エレジー〉と銘打った66公演はアコースティック編成という概念を大胆に覆す、ダークかつシアトリカルなパフォーマンスで観客を魅了。同年、アルバム2作連続リリースとして、12月に1作目となるリズムレス・アルバム『エレジー』、 2018年3月には2作目となるニューアルバム『夜、カルメンの詩集』を発表。清春としてのメイン活動と並行してサッズが再始動7周年を迎えたが、2018年をもって活動休止。2019年1月、ポニーキャニオンへ移籍。デビュー25周年を迎えるアニヴァーサリーイヤーを記念して、カヴァーアルバムと10枚目オリジナルアルバム「JAPANESE MENU/DISTIRTION10」をリリース。2020年10月には自伝本を出版。
› Website:https://kiyoharu.tokyo/