Interview | 日野”JINO”賢二 -後編-

JINO

国内外問わず活躍するベーシスト、日野”JINO”賢二によるこだわりのシグネイチャーモデルJino Jazz Bassが発売される。FENDER CUSTOM SHOP のマスタービルダー、ジェイソン・スミスによって製作された、ʼ75 JAZZ BASS RELIC MASTERBUILT BY JASON SMITHをアップデートする形で開発されたこのJino Jazz Bassについて、インタビュー後編ではじっくりと話を聞いた。

おそらく、このベースはフェンダーの中でも もっとも幅広く使ってもらえるんじゃないかな
 

― 今回、シグネイチャーモデルJino Jazz Bassを開発する上で特にこだわった点は何ですか?

日野”JINO”賢二(以下:JINO)  まずはピックアップ。今回、3つのピックアップを搭載しているんだけど、ミドルにはミュージックマンタイプのハムバッカーを搭載しました。これは、フェンダーの60年の歴史で初めてのこと。コントロールノブは、フロントヴォリュームを引っ張るとアクティヴからパッシヴに切り替わります。で、3つ目のノブは、普通はトーンコントロールじゃないですか。それをミドルピックアップ、ハムバッカーのコントロールノブにしました。それを引っ張ると、ハムバッカーのみになって、ミュージックマン的な音になるんです。つまり、ルイス・ジョンソン、ピノ・パラディーノ、ミシェル・ンデゲオチェロ、バーナード・エドワーズのサウンドが、Jazz Bassで出せるんですよ!

― 1本のベースでジャズベの音もミュージックマン的な音も楽しめるわけですね。

JINO  そう。フロントとミドルのコンビネーションなんてフェンダーで一度もないし、ミドルピックアップとリアのコンビネーションも初めて。組み合わせ次第で6パターンの音色が作れる上に、パッシヴとアクティヴにも切り替えられる。ジャコ・パストリアスの音も出るし、マーカス・ミラーからラリー・グラハムのスラップまでできちゃうわけ。

それと、ピックガードを取り外しても穴が空いていないから、ピックガードオフでもカッコいい。できるだけボディに穴を開けないよう配慮してくれたんじゃないかな。やっぱり、G弦(1弦)とD弦(2弦)の近くにいっぱい穴が開くと、ほんのちょっとローが足りなくなるような気がするんですよ。

― マスタービルドモデルとシグネイチャーモデルの一番大きな違いは?

JINO  やっぱり音ですね。実を言うと、シグネイチャーモデルのほうが音はクリアなんですよ(笑)。ジェイソンと一緒に作ったマスタービルドモデルでいろいろと学び、そこから改良を重ねてシグネイチャーモデルを作っているので。こっちのほうが好きな音(笑)。

そうそう、もうひとつポイントがあって。どうして今回、トラスロッドをブレット型ロッドナットにしたかというと、六角レンチでネックの調整ができるからなんですよね。60年代、70年代前半のベースはすべて、ネックの反りを調整しようと思ったらボディから外さないと無理だったんですよ。日本は四季があって、年2回はネックの反りを調整しなければならないのだけど、その手間を考えると初心者にとってはブレット型ロッドナットはすごく便利だと思うんですよね。

― ボディの材質にはこだわりましたか?

JINO  実は完成するまでにプロトタイプをたくさん作ったんですよ。最終的にアッシュになったけど、アルダーでもメイプルでも作ってみて、その中で一番“相性”が良かったのはアッシュだった。もちろん、フェンダーだからアルダーでも60’sのサウンドになったんだけど、ピックアップは70年代っぽいパンチがあるアルニコなので、だったらアッシュのほうが合うかなと。アッシュは他と比べるとローエンドがもうちょっと出る感じ。ファンク、ゴスペル、ヒップホップに向いている。  アッシュのボディにはメイプルの指板が多いんですけど、そこは60’sのリスペクトも込めてノンバインディングのブロックインレイにしたら、やっぱり鳴りが良かったんですよね。ボディは70年代、ネックは60年代なので、今フェンダーがやっているParallel Universeみたいな感じ? そのマインドを俺のほうが先取りしていたというわけだね(笑)。

― このシグネイチャーベースを、どんな人に弾いてもらいたいですか?

JINO  おそらく、このベースはフェンダーの中でももっとも幅広く使ってもらえるんじゃないかな。ロックでもファンクでもヒップホップでもジャズでも、何でもいけると思う。ピックで弾いてもいいし、もちろんスラップもフィンガーピックングにも対応できる。弾きやすいし、初心者が買っても20万円以下で安くて嬉しいし、何十年とずっと使える楽器だと思いますよ。

― 次のマスタービルドモデルの構想もありますか?

JINO  いろいろあります! やっぱり5弦ベースが欲しいじゃないですか。今、フェンダーからさまざまなタイプの5弦ベースが出ているけど、僕のアイディアで5弦ベースを出したらすごくカッコいいのが出来るんじゃないかなと思っています。

あと、スチューデントサイズのジャズべを出したい。プレベとジャズベも昔30インチシリーズで出したと思うけど、ショートスケールはMustangとMusicMasterがフェンダーの中ではキングだからね。なので、ギタリストも気軽に弾けるスチューデントモデルのベースっていうアイディアが、頭の中を駆け巡ってます(笑)。未来のフェンダーと、良いものをたくさん作っていきたいですね。


› 前編はこちら


JINO

JINO Jazz Bass®
ジャンルを超えた数多くのトップ・アーティスト達のサポート及びプロデュースや作曲を手がけ、トータルアーティストとしてひときわ信頼を置かれる日本を代表するベーシストの一人である日野”JINO”賢二のシグネイチャーベース、JINO Jazz Bass®︎

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PROFILE


日野”JINO”賢二
幼少の時、父とともにNYに移住。9歳よりトランペットを始め、16歳でベースに転向。17歳の時、ジャコ・パストリアスに師事する。19歳よりプレイヤーのみならずミュージックディレクターとしてプロ活動を開始。89年にはアポロシアターのハウスバンドの一員として出演。その後、父や叔父のアルバムに参加、NYブルーノートなどのライブハウスを中心にベーシストとして活動。2003年、アルバム『WONDERLAND』でのデビューを機に本拠地を日本に移して活動。Bob Marley, Deborah Harry, Jeff Mills, Keith Richards, Marcus Miller Band, MISIA, 西野カナとの共演など、数々のライヴサポートやレコーディングワークと共に、エレクトロニック・ジャズ・カルテット SPIRAL DELUXEでの活動や、ジャズ、ファンク、R&Bをクロスオーバーさせた自身のプロジェクトJINO JAMなど、国籍・ジャンルを超えた世界の音楽シーンで活躍するスーパーベーシスト。
› Website:https://www.jinobass.com

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