Cover Artist | 山口隆 & 近藤洋一(サンボマスター)-前編-
バンドで音を出すのはやっぱり幸せでしたよ。3人で音を鳴らすのはありがたいと思っています
今年バンド結成20周年という大きな節目を迎えたサンボマスターから、山口隆(Vo,Gt)と近藤洋一(Ba,Cho)がCover Artistに登場。インタビュー前編では、コロナ禍での過ごし方、9月9日にリリースされるニューアルバム『はじまっていく たかまっていく E.P.』について、そして2021年1月9日に開催される初の横浜アリーナ公演〈ラブ フロム サンボマスター at 横浜アリーナ〉について語ってもらった。
― コロナの自粛期間はどのように過ごしていましたか?
山口隆(以下:山口) 20周年記念ツアーがすべて延期になったのでステイホームでした。とても残念でしたけど、お客さんやスタッフさんをリスクに晒すわけにはいかないですからね。
近藤洋一(以下:近藤) もともと、ライヴがなければ家で楽器を弾いたり機材を調べたりそういう生活ですから、あまり変わらないと言えば変わらない感じでしたね。
― 曲作りは?
山口 曲はね、作りましたけど、何て言うかな…車の部品でいうと1〜2個作ったって感じです。ほとんど忘れましたけど(笑)。自分が楽しめる範囲で“ワー”ってなれるところまでは作るという。いずれそのパーツも世に馳せ参じることになりますから、その時にまた会おうって感じです。
― 緊急事態宣言が明けて、最初に動き出したのは?
山口 TBSさんに呼んでもらったテレビでの生演奏かな。
近藤 そうですね。生放送、生演奏ってよく考えたら、普通にライヴをやっている時でもハードル高いことをやりましたね。
― 久しぶりにメンバーが集まってみていかがでしたか?
山口 “これはいかんぞ”ということで練習しましたよ。1回目の練習は、夢を見ている感じで、“やっぱりロックはこうだぜ!”という満足しかないんですよ。でも、2回目からはいろいろな現実が見えてくる。“あれ?こんなんだっけ?”って。いつも当たり前に、無意識にできていることが、どんどんできなくなっていて。
近藤 特に歌とギター。大声で歌いながらギターを弾くって、まずはやらないですよね?
山口 そうなんですよ。大声でギターを弾くって、日常ではなかなかないので。でもまぁ、2〜3回やっているとまた慣れてくるので。
近藤 自粛期間中も各々は楽器を弾いていたので、木内(泰史)も新しいことを考えながら叩いていたり、バンドとしてまたいい感じになりましたよね。
― 久々にバンドで演奏して、新たなケミストリーが生まれたと。
山口 1回目の練習はそうでしたね。2〜3回目は、やっぱり2019年のキレを戻すことだったなぁ。あと、個人でも練習しているじゃないですか? そうすると、バンドに貢献する練習というよりは、自分が上手くなりたい練習をまずはやっちゃうんですよね。速弾きの“ドコドコドコド”をどれだけ速く弾けるのかとかを練習しちゃうわけですけど、それがドラム、ベース2人のアンサンブルをどう効果的に出すか、みたいなことだからドコドコドコは要らない(笑)。そのフレーズを使う機会はなかなかないんですよね。
近藤 ベースの場合は、練習している時はそんなに大きな音を出さなくていいんですよ。トーンだってバキバキにする必要はないんです。でも、バンドになるとそうはいかないんですよね。まったく別モンですから。デカイ音を出して、バチバチいわせないと音が埋もれちゃうので。
山口 バンドで音を出すのはやっぱり幸せでしたよ。楽しかったし。今はだんだんとバンドで音を鳴らせる機会も増えてきて、3人で音を鳴らすのはありがたいと思っています。
― 9月9日にアルバム『はじまっていく たかまっていく E.P.』が発売となりますが、サンボ節健在でテンション上がりました。
近藤 ありがとうございます!
山口 「はじまっていく たかまっていく」「忘れないで 忘れないで」の2曲の新曲が収録されていますが、「忘れないで 忘れないで」ではフェンダーのJazzmasterを弾いています。
― ありがとうございます! ちなみに、いつ制作を?
近藤 昨年の秋から今年の3月、コロナの騒動が始まるギリギリ前に録り終わりました。
― リモートで打ち合わせして、リモートでレコーディングではなく?
山口 コロナ禍前だったので、普通にスタジオで録りましたね。ただ、特典DVDに入っているブラジルでのライヴについている副音声は、ステイホーム期間中に3人でリモートで録ったなぁ。
近藤 映像作品に副音声をつけるのがサンボマスターの習わしになっているのですが、“今回は無理だね”となったんですけど、こんな時だからこそリモートでやって残しておこうと、みんなで真面目にやろうと思ったんですけど…普通に雑談していました(笑)。
― (笑)。特典映像は〈ビクターロック祭り2019〉のライヴ映像も収録されていますが、観ていたらサンボマスターのライヴに行きたくなって体がうずきました。
山口 ありがとうございます。
近藤 〈ビクターロック祭り〉は、残念ながら今年は中止になってしまいました。3〜4月の頃は、6〜7月になったらライヴも再開できると思っていたので…こんな事態になるとは正直予想もしていなかったですよね。ブラジルでのライヴ映像も、今回のシングル曲と関係があって収録しています。
― というと?
近藤 新曲「はじまっていく たかまっていく」はアニメ『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』のタイアップ曲なんですけど、今から15年くらい前に『NARUTO -ナルト-』の主題歌をやらせてもらって、それがブラジルをはじめ海外でサンボマスターを知っていただくきっかけになったんです。なので、ブラジルでのライヴ映像も期間限定ではなく、完全版として、ずっと残るものとして残したいなと思って入れた映像だったんです。
― すべてがつながっているんですんでね。さて、今後のライヴの展開ですが…。
山口 1月9日に横浜アリーナでワンマンライヴをやらせていただくことになりました。ここから真の20周年を始めようと〈サンボマスター 真 感謝祭〉を始めようと思っているんです。
近藤 コロナの感染対策をしっかりやって、その時のガイドラインに従った観客数で、配信でも来場でも選んでもらって参加できるようなハイブリッドのライヴにしたいと考えています。
― 配信もやるんですね! 配信だとプレイや音も変わってきますか?
近藤 今までは、レコーディングとライヴという2種類のアウトプットを前提に音作りを研究して生きてきたけど、配信という第3のチャンネルができたわけです。音の出し方、混じり具合とか、配信に乗った時に音がどう伝わるか研究を始めていて、それはすごく楽しいです。
― なるほど!
近藤 目線も変わってくるので、楽器に対しても発見があるんです。よく考えたら現在進行形で、自分たちがやったことが歴史になるわけですよ。今の環境で、今音楽を聴く人と、面白いことを探していくのが2020年代なのかもしれないです。何十年後かに“2020年代はそんな時代だった”と言われることになると思うんです。なので、今できることを楽しんでやっていくしかないかなと思っています。
― 逆に言えば“サンボの伝説の配信ライヴはああやって作られていた!”とか、評論家が将来研究しているかもしれないですね。
近藤 本当ですね。“実はあれはトラブルがあってね、偶然なんだよ”とか(笑)。
山口 僕ら20年やってますけど、“あのフェスの伝説の名演”が“あの名盤”くらいの頻度で言われるようになったのを体験してきたわけですよ。15年前まではいまほどではなかったと思います。ただ、名演は常に人が生で楽器を鳴らしているから起こることで。それを大切にしていけば、新しくていいものができるんじゃないかなと思っています。
› 後編に続く
サンボマスター 使用機材
近藤洋一(左):Fender Custom Shop TIME MACHINE SERIES ’64 Jazz Bass Closet Classic 3 Tone Sunburst(2005年製)
山口隆(右):Fender Custom Shop ’62 Jazzmaster Relic, Lake Placid Blue(2016年製)
PROFILE
サンボマスター
山口隆(Vo,Gt)、近藤洋一(Ba,Cho)、木内泰史(Dr,Cho)からなる3ピースロックバンド。2000年結成。2003年、オナニーマシーンとのスプリットアルバム『放課後の性春』でメジャーデビューを果たす。2021年1月9日(土)に初の横浜アリーナ公演〈ラブ フロム サンボマスター at 横浜アリーナ〉を開催。
› Website:https://www.sambomaster.com