Cover Artist | 斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN、XIIX) -前編-

フェンダーはロック史の中で、“これ!”という正解の音をいくつも持っている

スリーピースロックバンドUNISON SQUARE GARDENのフロントマンとして、さらに須藤優とのバンドXIIXのメンバーとして多忙な日々を送るヴォーカル&ギターの斎藤宏介がCover Artistに登場。インタビュー前編では、ギタリストとしてのルーツからフェンダーとの出会い、そしてAmerican Vintage IIシリーズのインプレッションについて語ってもらった。

フェンダーは避けては通れない“でっかい海”のような存在

──斎藤さんは、どのようなきっかけで楽器を始めたのですか?

斎藤宏介(以下:斎藤) 親が趣味でピアノを弾いていたのもあって、物心つく頃から自宅にあるピアノをポロポロ弾いていたのが最初のきっかけです。親の教え方も良かったと思うのですが、ずっとピアノを嫌いにならずに練習することができたんです。そもそも“練習”という意識もなく、時間があれば楽器を触る習慣がいつの間にかついていました。

──最初はピアノだったのですね。

斎藤 はい。その後、確か小6の頃に3つ上の兄がガットギターを持って帰ってきたんです。それにすごくときめいて、兄が見てない時に自分の部屋に持ち込んで演奏したのがギターとの出会いでした。あっという間にのめり込んで今に至ります。

──当時はどんな音楽を聴いていたのですか?

斎藤 もともと僕は海外に住んでいて、今のようにインターネットもまだ充分に普及していない頃だったから、日本のカルチャーを知る方法がほとんどなかったんです。一時帰国した父親が、日本で録画してきてくれたテレビ番組を見るくらい。なので、日本や日本のカルチャーへの憧れがどんどん強くなっていきました。例えば『HEY!HEY!HEY!』や『うたばん』『ミュージックステーション』など、日本の音楽番組を見るのがとにかく楽しくて。いつか自分もミュージシャンになって、こういう番組に出られるようになれたらいいな、という気持ちになっていきましたね。今思えば初めてガットギターを見た時にピンときたのは、そういう音楽体験があったからだと思います。

──フェンダーに出会ったのは?

斎藤 UNISON SQUARE GARDENを結成してしばらくは、他のメーカーのモデルを使っていたんです。でも2ndシングル『マスターボリューム』(2009年)をレコーディングするタイミングで、確かCandy Apple RedのTelecaster®︎を購入したのがフェンダーとの出会いでした。以降、レコーディングではほぼフェンダーのギターを使用していますね。

──斎藤さんにとって、フェンダーはどんなイメージですか?

斎藤 例えばエンジニアさんに、“この曲のギターはジェフ・ベックみたいなサウンドにしたいんですよね”みたいなリクエストをすると、大抵返ってくるのは“じゃあフェンダーのギターだね”という言葉なんですよ。ロック史の中で、“これ!”という正解の音をいくつも持っているブランドというか。歴代のギターレジェンドたちが作り上げてきたサウンドのほとんどに、フェンダーのギターが使われていたと言っても過言ではないですから。

──レジェンドが生み出したサウンドを継承しつつ、新たなサウンドにアップデートさせるためにフェンダーは必要不可欠だと。

斎藤 そうなんです。何か新しいサウンドを作ろうと思った時に、フェンダーって避けては通れない“でっかい海”のような存在ですね(笑)。

今持っているギターはすべてが“運命の1本”だと思っている

──現在、齋藤さんが所有しているフェンダーのヴィンテージギターと言うと?

斎藤 58年製のStratocaster®︎を数年前に購入しました。“良いサウンドが欲しい”という気持ちはずっとあって、そのためのギターを探して何度か楽器屋に通っている時にピンときた感じです。僕にとって、今持っているギターはすべてが“運命の1本”だと思っているんですよ。いいギターってすぐに売れちゃうし、こちらが血眼になって探していようが、ほんの気まぐれで楽器屋に立ち寄っただけだろうが、タイミングが合わなければ出会えないわけじゃないですか。そう思うと導かれているというか。

──“出会うべくして出会った”という感覚でしょうか。

斎藤 なので、実は試奏する時間も短いんです。何なら持った瞬間に“あ、これだ”と決まる場合もありますよ。ギタリストとして年々持っている本数も増えてくるし、アコギもエレキギターも、一通りの種類はおさえているので、必要に駆られて買うケースもほとんどなくなってくるんですよね。なので楽器を買う頻度は減っているんですけど、そのぶん“これ!”と思った楽器に出会った時は逃さないようにしています。

──ちなみに、ヴィンテージギターのメリットとデメリットは?

斎藤 メリットはやっぱり“音が豊潤”ということに尽きると思います。デメリットはチューニングが難しいこと。UNISON SQUARE GARDENのレコーディングでは、ギターのダビングが10本以上とか普通にあるので、かなりチューニングがシビアなんですよ。そうなってくると、なかなかヴィンテージの出番がなくて。そのぶん“ここぞ”というギターソロや、フックになってほしいメインリフなどで用いています。

──今回、斎藤さんが試奏したAmerican Vintage II 1972 Telecaster®︎ Thinline(Aged Natural)の印象をお聞かせください。

斎藤 さっきの話じゃないですけど、持った瞬間に“あ、これだ”と(笑)。ネックの形がしっくりきましたね。自分の中で、弾きやすさってすごく重要なんです。しかも、見た目もかわいい。実はメイプルネックをほとんど持っていないから、この華やかさも気に入りました。サウンドも、ハムバッカーなのに繊細なところがあって。立ち上がりも速いし、高域から低域までバランス良くしっかり鳴ってくれます。

──さっきおっしゃっていた“チューニングの甘さ”というヴィンテージのデメリットも、現行モデルということで解消されるのではないかと。

斎藤 そうですね。現場で弾くのが今から楽しみです。

──他にヴィンテージギターをリイシューする意義について、ギタリストとしてどう思われますか?

斎藤 よく思うのが、“なぜ技術は日々進歩しているはずなのに、相変わらず昔のギターはいい音がするんだろう?”ということ(笑)。“故きを温めて新しきを知る”じゃないですけど、やはり昔からある良さはしっかり継承しつつ、それを新しい技術でアップデートしていくことに意味があるんじゃないかなと思います。

──なるほど。

斎藤 それと、入手困難で非常に高価なヴィンテージギターのサウンドを、もう少し手を伸ばしやすい価格で手に入れることができるというところにもリイシューの意義を感じます。本物の音を知る、とてもいいきっかけになると思いますね。

American Vintage II 1972 Telecaster Thinline

>> 後編に続く(近日公開)


斎藤宏介
スリーピースロックバンドUNISON SQUARE GARDENのヴォーカル&ギター。2020年からは日本を代表する様々なアーティストのサポートベーシストでもある須藤優とのバンドXIIXとしても活躍。2023年4月12日に9枚目となるUNISON SQUARE GARDENのオリジナルフルアルバム『Ninth Peel』をリリース。同作品に収録する新曲「Numbness like a ginger」が、TVアニメ『ブルーロック』2クール目エンディング主題歌に決定。本作を引っさげた全国ツアー〈UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2023 ”Ninth Peel”〉を4月より開催。
http://unison-s-g.com
https://xiix-web.com/

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