Cover Artist | JQ(Nulbarich)-後編-

頑固なヤツがギターにハマれば、いろいろなことを許せる男になると思う

シンガーソングライターのJQが主体となり、ヒップホップやファンク、アシッドジャズなどブラックミュージックから影響を受けた極上のメロディーとサウンドを奏でるNulbarichが、FenderNewsのCOVER ARTISTに登場。自らを“ギタープレイヤーではない”と話すJQとギターとの関係性とは。インタビュー後編では、そんな彼のユニークなギター論について話を聞いた。

ギターは沼ですね。だからあまり関わらないほうがいい(笑)

― Nulbarichについて聞かせてください。バンドなのかどうかも当初はわからなくて、不思議な存在でした。

JQ Nulbarichが誕生したきっかけは、“おっちゃんになってもみんなで集まってライヴができるバンドがほしいよね”っていう想いだったんです。高校生の“バンドやろうぜ!”っていうテンションの大人版。音だけで純粋に聴いて欲しかったというもあり、アーティスト写真はキャラクターで行こう、くらいの感覚から始めたんですが、嬉しいことにラジオですごく取り上げてもらい、やべぇそれ以外何も準備していなかったみたいな感じで(笑)。いろいろな交通整理ができ始めたのが2〜3年目くらい。最初は、集まれるメンバーでやろうくらいの感じだったんです。

― 当初は正体不明と言われていましたけど、単に整理ができていなかったと。

JQ そうなんですよね。何て説明しよう?という感じでした。自由な活動をしてきたので、大人に上手く説明できないじゃないですか。ギターが3人いてドラムも2人いると言ったところで、どういうこと?ライブごとに入れ替わるの?みたいに聞かれて(笑)。

― まぁそうですよね(笑)。

JQ そもそもバンドを作ろうと思った理由として、あくまでも僕がトラックメイカーなので、自由度の高いサンプリングソースを手に入れたい感覚があったんです。ミュージシャンの方が、自分のテイクがリリースされる時に、ちょっと変わっていたとか直されていて“チクショウ!”と言っている人っているじゃないですか。だけどNulbarichの場合、逆にそれしかないんです。とりあえず一曲弾いてもらって、良いところを僕が摘んでそれをループしちゃう。メンバーはそのサプライズを楽しみにしていて、僕は僕で自分では思いつかないメンバーのフレーズを待っている。つまり音源はメンバーの自己主張ではなく、良いものを追求するという作業。そして、自分たちそれぞれがやりたいようにやるのがライヴなんです。そう分けているので、ライヴアレンジは絶対に音源通りにはならない。メンバーが逆らってくるんです。

― ライブではメンバーが自己主張してくるんですね。お前の好きに摘ませねぇぞ!と。

JQ そうなんです(笑)。ライヴは逆に僕が乗せられる。音源は僕が好きにやる。

― 攻守逆転するわけですね。

JQ そうです。それが他のバンドと最も違うところです。メンバーもギタリストが3人、ベースが2人、ドラムが2人、鍵盤が2人いるんです。あとはマニピュレーターがいるけど、彼はマルチプレイヤーです。なので全く同じフレーズを弾いてもらっても、メンバーによって全然違うんですよ。オケとの馴染みとか、ギターのタッチとかが人それぞれ全然違うので、弾いてみてもらったものの“何か違う、ちょっと別を当たるわ”みたいな(笑)。そういうひどい時もあるんです。逆に、”思ったよりもコイツが来た!”ということもあるけど、それはギターが一番如実ですね。同じ竿で弾いてもらっても、人によって鳴りが違いますから。ギターは、バンド全員が弾けたほうがいいと思うくらい色々なスタイルがあっていいと思っています。そのほうが、音源を作る時のサンプリングのストックにもなるので。

― つまり、テクニックの優劣ではなく、個人差による音色の違いを楽しんでいる感じですか?

JQ そうですね。ギターって不安定な楽器じゃないですか。それがたまらない。指板を押さえた時に、ちゃんとそのピッチが出る時ってほぼないじゃないですか。楽器がきちんとセッティングされていても、プレイヤーの押さえる位置や強さでピッチは繊細に変わるので。僕はライヴでギターをあまり弾きたくないんですけど、どう考えても俺が弾いたほうがカッコいいよね?ってこともあるんですよ。下手くそな僕でもメンバーに勝つタイミングがあるんです(笑)。それがやっぱり魅力的ですよね。アコギもそうですけど、エレキってそこにアンプやケーブルなど電気が関わってくるので、いろんなところに手を出し始めるとギターは沼ですね。だからあまり関わらないほうがいい(笑)。

― (笑)。

JQ “良い音って何?”っていう話になるじゃないですか。そこにヴィンテージの話も入ってくるし。そもそも面白いのが、良い音を目指すゆえに昔の楽器を追ったりもする。その経路が面白いじゃないですか。テクノロジーは発展しているのに、それこそ60〜70年代のサウンドを目指すためにカスタムしているわけで。他の業界ではあまりみない。音が良くなってキレイになるところに正解を置いていないと思うんです。ギターの音色の正解って何なんだろう?って、今でも模索している感じがいいんですよ。作っている側も沼っているなぁと(笑)。ギターってひとつの正解を出せる世界ではないから、そういう意味でも音楽的というか。音楽にも正解はないので。聴いた本人の正解で終わっちゃうんですよね。ギターが一番深いですね、僕的には。

不安定さがギターの魅力なんだと思う

― そういう意味では音源を作るのも残酷じゃないですか? 一度正解を出さなきゃいけないわけで。

JQ そうですね。僕も、音源をリリースする時はそれが正解だとは思っていないんですよ。“こんなのどう?”という感じなんです。おそらく、フェンダーさんも同じだと思うんです。僕らはいいと思うけど、どうですか?みたいな。これが長年培ってきた最終形態です!とは言わないじゃないですか。僕らの音源も、あなたの耳に届いた瞬間にパッケージが完成される、そんな感覚なんです。

― なるほど。

JQ ギターも、ユーザーが触るまでは正解を出せていないはずだと思います。だから、いろいろなシリーズが存在するわけで。進化じゃなくて模索しているんですよね。結局はその不安定さが、ギターの魅力なんだと思います。

― ユニークなギター論であると同時に核心をついているなと。本当にギターって余白の塊みたいな楽器ですよね。

JQ そうだと思います。一丁前な佇まいをしているけど超不安定(笑)。ギタリストたちとしゃべっていると、全員がその人の正解を持っているんです。すごく自信満々に言うけれど、正解がないから何とも言えないし、核心的ではないことを本気で言う人もいるわけで、割とオカルトの世界だなって。

― 正解がないからゴールがない。それも含めて、ギターを始める人にアドバイスはありますか?

JQ 頑固な人は辞めたほうがいいかな。ギターほど正解がないものってないので。たぶん、こうだ!と決めつけている人はギターのことが大嫌いになるだろうし、逆に頑固な人がギターにハマれば、いろいろなことを許せる男になると思うんです。考えるよりも感じろ、みんな違うよねって。そういう意味でもギターって魅力的なものだし。やっぱり、いい加減な人がギターを始めるじゃないですか。モテたいとか。

― 確かに(笑)。

JQ あとは形がセクシーじゃないですか?くびれもあるし。

― 女性の身体を想起させますからね。

JQ そうですね。ギターをやって損はしないので。ギターを弾けるとモテると思います。

― そこは意外と大事ですよね。

JQ 大事です。ピアノを弾いてモテるようになるまでは結構なスキルが必要ですが、ギターは大音量でジャラーン!って弾けばいけちゃったりしますから、時短でモテたい人はギターを始めたほうがいいかもです。モテる近道ですね。僕ももっと早くやっておけば良かったですね。だから、モテたい人は一旦ギターを買え!と言いたいですね。ギターを弾いて待て! そうすれば集まってくるから!と言いたいですね。

前編はこちら

JQ所有ギター:
American Acoustasonic Telecaster(左)
60’s Stratocaster Relic w/Matching Headstock Black over Pink Paisley(右)


Nulbarich

シンガーソングライターのJQ(Vo)がトータルプロデュースするNulbarich。2016年10月、1stアルバム『Guess Who?』をリリース。その後、わずか2年で日本武道館でのライヴを開催し即ソールドアウト。中国、韓国、台湾など国内外のフェスへも積極的に参加。生演奏、またそれらをサンプリングし組み上げるという、ビートメーカー出身のJQらしいスタイルから生まれるグルーヴィな音は、バイリンガルなボーカルと溶け合い、エモーショナルでポップなオリジナルサウンドへと昇華。「Null(何もない)」けど「Rich(満たされている)」。バンド名にも、そんなアンビバレントなスタイルへのJQの想いが込められている。2021年10月より全国ツアー〈The Fifth Dimension TOUR 2021〉を開催。
https://nulbarich.com


■ツアー情報
Nulbarich The Fifth Dimension TOUR 2021

チケット金額:Zepp公演・仙台PIT 全席指定 ¥7,800 (税込/1D別)
備考 *未就学児入場無料。ただし、座席が必要な場合はチケット必要

10月27日(水)
北海道・Zepp Sapporo
OPEN18:00/START19:00 (info:WESS 011-614-9999)

11月2日(火)
大阪・Zepp Osaka Bayside
OPEN18:00/START19:00 (info:キョードーグループ 0570-200-888)

11月4日(木)
神奈川・KT Zepp Yokohama
OPEN18:00/START19:00(info:クリエイティブマンプロダクション 03-3499-6669)

11月7日(日)
宮城・仙台PIT
OPEN17:00/START18:00(info:ジー・アイ・ピー 0570-01-9999)

11月9日(火)
愛知・Zepp Nagoya
OPEN18:00/START19:00(info:SUNDAY FOLK PROMOTION 052-320-9100)

11月11日(木)
福岡・Zepp Fukuoka
OPEN18:00/START19:00(info:キョードー西日本 0570-09-2424)

11月15日(月)
東京・Zepp Tokyo
OPEN18:00/START19:00(info:クリエイティブマンプロダクション 03-3499-6669)
※SOLD OUT

詳しくはツアー特設サイト:https://nulbarich.com/feature/tour_2021

Related posts