Special Interview | ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)-後編-

Squierブランドより1985年からわずかな期間だけ生産されていたユニークなモデル「Katana」のベースを、カスタマイズしながら多くのステージで愛用してきたOKAMOTO’Sのベーシスト ハマ・オカモト。このたび、その特徴的なカスタマイズを完全再現したシグネイチャーモデル「Hama Okamoto Fender® Katana Bass」が、Fenderブランドより期間限定生産される。インタビュー後編では、Katana Bassの使い心地はもちろん、OKAMOTO’Sの近況などについても聞いた。

伝える手段をたくさん持てたことは、コロナ禍になっていろいろな意味で救いになった

─ 実際に現場でKatana Bassを使ってみていかがですか?

ハマ・オカモト(以下:ハマ) 気づけばもう5年くらいステージでもテレビの撮影などでも使っているんですよね。そうすると、ものすごく面白い現象が起きてきたんです。おそらく中学生とか高校生くらいの子たち、あるいはうんと年配の人たちが、僕のSNSのコメント欄に“Katana、カッコいいです!”みたいなことを書いてくれるんですよ。こんなニッチなモデルが、お茶の間的に認知されているの、すごくないですか(笑)? Precision BassもJazz Bassも知らないのに、Katanaは知っている、みたいな子もおそらくいると思うんですよね。そういう空気をこの5年間で作ることができて、そんな中でシグネイチャーモデルを出せることも嬉しい。自分自身のイメージを更新させる意味でもKatanaは大きかったし、見ている人たちの価値観をひっくり返すこともできたなと。

─ 確かにそうですね。

ハマ 前回作らせてもらった「Hama Okamoto Precision Bass® “#4”」は、僕が中高生の頃から“もしいつかオーダーで作るとしたら、こんなベースがいい”というふうに思い描いていた夢を具現化したもので、もちろん僕なりのこだわりも強くあるんですけど、あくまでもプレベのアップデートではあったと思うんですよ。それに比べると今回のKatanaは、シグネイチャーモデルという意味ではオリジナル色が強いかも知れないですね。おそらく当時の生産本数よりも、今回のシグネイチャーモデルの生産本数のほうが上回るのですが(笑)、できれば当時のKatanaの開発者にもこのニュースが届いてほしいなと思います。年代的にもおそらくご存命だと思うので、懐かしがってくれたら嬉しいですね。

─ このシグネイチャーモデルを、どんな人に弾いてほしいですか?

ハマ 今、「Katana Bass」で検索しても僕しか出てこないんです(笑)。なので、これを人が使っている姿をまだ見たことがなくて。とにかく僕のことなど手本にしなくていいので、みなさんがどんなふうにこのKarana Bassを使うのか見てみたい。華奢な女の子が持ったらどんな感じになるんだろう、屈強な男の人が弾いたらどんな印象なのかな、とか。ストラップを長めにする人もいれば、高い位置で弾く人もいるだろうし、いろんなジャンルの、いろんなベーシストが弾いている姿を見るのが今から本当に楽しみですね。

─ ところで、2021年に入ってからのOKAMOTO’Sの活動はどのようなものでしたか?

ハマ ひたすら制作していました。やっぱり僕らミュージシャンは、ライヴをしたり制作をしたり、何かしら“動き”がないといないのも同然なので、コロナ禍でもコンスタントに活動を見せる必要があると思って、毎月配信でシングル曲をリリースしてきたんです。毎月リリースとなると、とにかく前もって準備をして、録ってミックスしてマスタリングしてジャケットを付けて、何日までに納品…みたいなことを5〜6カ月続けてきたので、ここ10年で考えても一番忙しかったかもしれないです。

─ しかも、2月から3月にかけては、1年半ぶりに有観客でのライヴを行いましたよね。

ハマ はい。でも、やっていてつらくはなかったですね。“OKAMOTO’S、ちゃんと動いているんだ”って思ってもらえていたと思うし、それと並行してメンバーそれぞれの活動もあったので。自分たちの作った音楽を届ける手段が、ライヴだけじゃなくていろいろあってもいいんじゃないか?ということを、僕らは5年くらい前からずっと思っていて、それを続けてきたことが今回はすごく功を奏したと思っています。音楽の現場がすべて止まってしまった時でも、やれることがたくさんあったので。

─ 例えば?

ハマ いま、担当させていただいているラジオ番組があるのですが、OKAMOTO’Sを知らずにその番組を聞いて“この人、面白いな”と思って興味を持ってもらうこともあるだろうし。メンバーによってはDJをやっているとか、誰かのサポートで楽器を演奏しているとか、他のアーティストに楽曲提供をしているとか、NHKの教育番組で歌を歌っているとか(笑)、いろいろありますけど、そうやって個々に活動していたことが4人で集まった時に“帰結”すると気持ちいいんじゃないかと。ある人から見ると、やりたいことがバラけているよう感じたり、“音楽一本でやれよ”と思ったりするのかも知れないですけど、そうやって伝える手段を僕らはたくさん持てたことは、僕らの性格的な部分もありますが、コロナ禍になっていろいろな意味で救いになったと思っています。

─ 気になる新作ですが、どのような内容になりそうですか?

ハマ 昨年、無事に10周年を迎えることができたので、ある意味ではそこでリセットできたところもありまして、今回の新作は、個人的にも“新作”という感じがしています。今までの作品は、いい意味でも悪い意味でもずっと地続きというか延長線上にあったと思うんです。でも、今回は本当にフレッシュな気持ちで制作に臨むことができましたね。けっこう、ボリュームのある作品になりそうなんですよ。今、配信しているシングルがまとまった感じになるのかな?と思っている人も多いと思うんですけど、半分以上は聴いたことがない曲が入る予定です。このところ、アルバムも短いほどいいみたいな風潮ですけど、逆に言えばストリーミングになって、そこの長さは聴く側の熱量次第というか(笑)。最初は、“あまり長すぎるのもどうだろう?”という話もあったのですが、最終的には17曲入りというチャレンジングな内容になりました(笑)。楽しみにしていてほしいですね。

前編はこちら


Hama Okamoto Fender® Katana Bass : Squierブランドより1985年からわずかな期間だけ生産されていた貴重なモデル「KATANA」を大胆なカスタマイズを施しながら多くのステージで使用してきたハマ•オカモト。この度その特徴的なカスタマイズを完全に再現したモデルが、ハマ•オカモトシグネイチャー第2弾としてフェンダー75周年の今年、2021年期間限定生産で復活


ハマ・オカモト(OKAMOTOʼS)

中学校からの同級生で結成された4人組ロックバンドOKAMOTO’Sのベーシスト。2010年、日本人男子として最年少でアメリカの音楽フェス〈SxSW2010〉に出演。アメリカ7都市を廻るツアーや豪州・アジアツアーなど、海外でも活躍。2021年9月29日には9枚目のオリジナルアルバム『KNO WHERE』をリリース。フェンダーミュージカルインスツルメンツコーポレーションの日本人ベーシスト初となるエンドーサーでもある。
http://www.okamotos.net

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