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Cover Artist | Kj(Dragon Ash)-前編-

練習をあまり苦にしないというか遊びとしか思わない感覚があった

今回は、6月30日にニューシングル「NEW ERA」をリリースするDragon Ashから、圧倒的な存在感でシーンを牽引するKjがFenderNewsのCOVER ARTISTに登場。インタビュー前編では、初めて楽器に触れた時のエピソードや、フェンダーに対する思いなどを語ってもらった。

フェンダーの赤いStratocasterを買ってもう化け物みたいに音が良かった

― 最初にギターを始めたきっかけを聞こうと思っていたら、実は楽器のスタートはベースだったと小耳に挟みました。

Kj そうなんですよ。中学2年性の時、3年生の学園祭のステージを観たんです。先輩たちはハロウィン(ドイツのメタルバンド)とかをコピーしていて、それにカルチャーショックを受けて。俺らもやるしかない!と思って、ラグビー部4人でバンドを組んだんです。俺は誘われた身で、“えーやるやる”とバンドに入って。ヴォーカルが決まって、ギターが決まって、ドラムが決まって、“じゃあ建志はベースね”って言われたから“OK、ベースね”って。ただ、ベースが何かわかっていなかった(笑)。

― (笑)。

Kj 当時『ダウンタウンのごっつええ感じ』というテレビ番組がやっていて、そのオープニングテーマが“すかんち”さんだったんです。すかんちさんのベースのshima-changさんが、某ギターの形をしたベースを弾いていたんです。俺はその形がベースだと思って、楽器屋に行ってそれと同じ形の楽器を買ったわけです。で、リハスタに“ベース買ってきたよ”と持って行ったら、“それギターだよ。弦が6本あるから”って。だから、しばらくはギターの低いほうの4本の弦でベースのフレーズを弾いていました(笑)。

― ベースからギターに移行したのはいつですか?

Kj そのバンドではずっとベースでしたが、当時、今のDragon Ashのドラムのサク(櫻井誠)が同じ学校で別のバンドをやっていたんです。向こうはBUCK-TICKとか色気のある音楽で、俺らはTHE BLUE HEARTSとかオリジナルとかパンキッシュな曲をやっていて。高校に上がる時って、進路でバンドを辞めたり他のことに興味が出てきて、音楽を続ける奴って限られてくるじゃないですか。それで、高1の時にサクと俺で“じゃあ一緒にバンドやろうか”と。ただ、ヴォーカルが見当たらないから、“ヴォーカルが決まるまで歌うね”と言ってとりあえずギター&ヴォーカルになって。ベースと間違えて買ったギターもあったし(笑)。で、ベースとギターが加入して、Dragon Ashの原型が高1の時にできて。原宿RUIDOでライヴをしていたりしてましたね。当時スキッド・ロウが好きだったので、鼻ピアスと耳ピアスを金のチェーンでつなげてて、サウンドチェックで感電するみたいな(笑)。もうめちゃくちゃでしたね。当時、メキシコ製の赤いフェンダーのStratocasterを買って。もう化け物みたいに音が良くてね。

― なぜストラトを?

Kj 何でかなぁ。

― スキッド・ロウ好きの流れでいくと、ストラトに辿り着きそうにないですけどね(笑)。

Kj 確かに。16歳の時にシアトルに行っていたんだけど、みんなグリーン・デイのアルバム『ドゥーキー』(94年作品)を聴いていて。

― ビリー・ジョー・アームストロングがストラトですね!

Kj そう! 水色のね。あと、レニー・クラヴィッツがたまにストラトを使っていたのもあったかな。強いて言えばで、別にそこに影響を受けたわけじゃないけど。THE MAD CAPSULE MARKETSのTAKESHIさん(上田剛士)が、フェンダーの白いプレベをめちゃくちゃイジって使っていたのが影響していると思う。それがカッコいいと思っていたし、実際に俺も持っていたのはベースだったから(笑)。

― 赤のストラトはどのくらい使っていたんですか?

Kj 今でもたまに使いますよ。当時ピックアップをセイモアダンカンに替えたんです。さして違いもわからないのに、車を改造する男のロマンみたいなもので。その赤いストラトをデビュー前からもデビューしてからもずっと使っていたら、楽器屋さんがその仕様のStratocasterを発売したんです。当然、ザグリもキレイだったので、“何それ超いいじゃん!”って俺もそれを買ってサブギターにしました。

― (笑)。思えばかなり偶発的にギターに行き着いたわけですが、練習方法は?

Kj そこが唯一、音楽的に人より秀でた俺の素養だと思っているのですが、練習というものをあまり苦にしないというか、遊びとしか思わない感覚があったので弾きまくってましたよ。

― タブ譜を買って?

Kj はい。親父が若い時にザ・ビートルズのカバーバンドをやっていたんです。“俳優座”という養成所時代にバンドが流行ったらしくて、俳優座の先輩の原田芳雄さんからもらったギターがあったんですよね。それを弾きまくっていて、もうひたすら練習。ビートルズの全曲が載ったコード譜があって、ポール・マッカートニーが多くの作品数をピアノで作っているから、ギターで再現するのはかなり困難なんです。それで練習していたのでコードも覚えました。

― バレーコードが大変だったとか、挫折はなかったですか?

Kj なかったかな。持った瞬間に弾ける奴って一人もいないですから。プロレベルになれるかは別として、ギターは頑張れば最低限のリズム感があれば弾けると思うので。

ロックバンドにおいて“アコギを弾くデメリット”をすべて解消している

― ギターを弾いてて楽しくなったのはいつでしたか?

Kj 最初からです。ギターを背負っただけでもう楽しいですからね。ガンズ・アンド・ローゼズ「ノーベンバー・レイン」のビデオで、スラッシュが小さい教会でギターソロを弾くシーン。それをテレビで流しながら弾いていました。“ユーズ・ユア・イリュージョン世代”(ガンズが91年に発表したアルバム)なので。

― わかりやすいなぁ(笑)。フェンダーで言うと、今はMustangも弾いていますよね?

Kj  Mustangはプロになったあとに購入しました。ギターの仕様がわかるにつれて、ストラトでは鳴らないような音を欲しくなって。

― アコースティックギターも、フェンダーのCaliforniaシリーズを弾いていますね。

Kj ソロの時に弾かせてもらいました。YouTubeで配信している『NAMM Show』(世界最大級の楽器の展示会)のレポートで見たんですよね。俺たちはがっつりライヴをするバンドなので、正直、俺らのボリューム感で弾くと絶対にハウる(ハウリング)んです。だから、サウンドホールも埋めなきゃいけないけど、結果的にはいろいろな作業をして使えるようにしました。クセがなくて良かったですね。

― 『NAMM Show』のレポートをチェックされるんですね?

Kj 見ます。そういう時にだけ(山岸)竜之介にLINEします(笑)。一昨年のNAMM Showのフェンダーブースレポートを彼が担当していて、その動画でアコスタ(Acoustasonic Telecaster)を見たんです。竜之介がアコスタを弾いているのを見て“くれない?”って。“りゅうちゃん、ちょうだい、アコスタ”って。

粘ったんですがくれませんでした。(笑)

― 面倒な先輩(笑)。

Kj アハハハハハ!

― 実際に弾いてみたAcoustasonic Telecasterはどうですか?

Kj さっきも話した、ロックバンドにおいて“アコギをフロントマンが弾くデメリット”をすべて解消しているんじゃないですか?ドラゴン(アッシュ)の現場で初めて音出して、アコースティックも歪みも確認しました。

― どうでしたか?

Kj リハスタに持ってきてもらったんですよ。大きい音じゃないと確証が持てないので。俺のドラゴンのアンプのセッティングって、結構えげつないラウドセッティングなんです。普段持っているのは5音下げなので、7弦ギターの一番高い弦を捨てて、低い6本をレギュラーのギターに張ってるんです。俺とツヨポン(T$UYO$HI)がローBで、hirokiくんはレギュラーチューニングなんです。そのセッティングで弾いてもハウらなかったので、たぶん誰が弾いてもハウらないと思うな。

― 正直、その設定まで開発チームも考えていないかもしれないです。

Kj そこまでやってもハウらなかった。完全にアコースティックの音も鳴るし。めっちゃクオリティが高いと思います。

― ありがとうございます。極端な部分で試してくれたのは初めてかもしれません。

Kj アコスタって家で気軽に弾く人ももちろんですが、プロミュージシャンがありがたがるんじゃないですかね。本当に面白いギターだと思いますよ。

後編に続く


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American Acoustasonic® Telecaster®


Dragon Ash

97年、Kj(Vo,Gt)、IKUZONE(Ba)、櫻井誠(Dr)の3人でデビュー。 BOTS(Dj)、hiroki(Gt)、ATSUSHI(Dance)、DRI-V(Dance)が加入し7人編成になる。 2012年、オリジナルメンバーのIKUZONEが急逝。 2020年、DRAGONASH LIVE “DEPARTURE”をもってATSUSHIとDRI-Vが脱退し、5人編成に。デビュー時よりあらゆるジャンルを驚異的なスピードで横断し、これからもDragon Ashとしか表現しようのない音を鳴らし続ける。常にオルタナティヴな道を自ら選びながらも、圧倒的なファンの支持を得続ける日本の音楽シーンを代表する怪物バンド。
› Website : https://www.dragonash.co.jp

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