
Cover Artist | SCANDAL -後編-
この作品がなかったら、次に進めなかったと思うくらい大事な一枚になりました
1月26日に10thアルバム『MIRROR』をリリースしたSCANDALが、FenderNews のCover Artistに登場。インタビュー後編では、昨年8月に結成15周年を迎えたSCANDALの“これから”を聞いた。さまざまな挑戦を詰め込んだ『MIRROR』は、大きな成果を残しながらも、さらなる進化の始まりだったようだ。
できるだけ長く音楽を続けていくために、今の自分たちに馴染む音楽を作りたい
― 最新アルバムの『MIRROR』を聴いて、これまで以上に多彩になった曲の数々と新しい音作りに、さらに一皮剥けたという印象がありました。ご自身では、どんな作品になったという手応えがありますか?
HARUNA コロナ禍の中で結成15周年を迎え、制作に臨んだせいか、自分たち自身と向き合うきっかけになったアルバムだと思っています。15年前にヴォーカル&ダンススクールで結成したバンドという面白さや、楽しさがあらためてちゃんと表れていると思うし、ちゃんと今の私たちの年齢も感じてもらえるどっしりとした作品にも仕上がっていると思う。出来上がった時、まずは自分たちが面白いと思いました。
― 昨年12月24日、2年ぶりに開催した〈BEST★Xmas 2021〉でRINAさんは“もっと激しい曲を聴きたいという声もあるかもしれないけど、あらゆる層のリスナーを受け止められる作品を作ろうと思った”とおっしゃっていましたが、『MIRROR』を作るにあたっては、あらゆる層のリスナーを受け止めることが大きなテーマとしてあったのでしょうか?
RINA できるだけ長く音楽を続けていくために、今の自分たちにちゃんと馴染む音楽を作りたいという気持ちがまずはありました。なので、“今の自分たちの年齢に合った曲はどんな曲だろう?”ということを、すごくたくさん考えたアルバムです。その結果、テンポとかサウンドとか、そういう変化はかなりあって。もちろん、ゴリゴリに歪んだギターの音で、激しいパフォーマンスができるような楽曲の需要があることもわかっているんですけど、今回はいったん違う方面の挑戦をさせてほしいというエゴもしっかり入れさせてもらったんです。
― それが、あらゆる層のリスナーを受け止められる多彩な曲の数々につながっていったわけですね。
RINA 聴いてもらったら、新しい楽しさが伝わると思える自信作です。今は自分たちに正直に作って、それをやりきることがすごく大切な時期だと感じたのでトライしたのですが、この作品がなかったら次に進めなかったと思うくらい大事な一枚になりました。だから、自分たちでも納得しているし、ちゃんとこの作品を楽しいと思ってもらえるように伝えていこうと今は思っています。
― それぞれに新たな挑戦があったのではないかと思うのですが、いかがでしたか?
MAMI 作曲においては、テンポはめちゃめちゃ抑えるようにしました。あと、アレンジもこれまでは100%の状態のデモを作ってからみんなに渡して、レコーディングに臨むことが多かったんですけど、今回は弾き語りしたボイスメモをみんなに送って、そこからどうやってアレンジしていこうか話し合いながら、みんなで作っていったんです。そういう作り方をしているバンドは多いと思うんですけど、これまではできなかったので、自分の中ではすごくチャレンジというか、新しいやり方でした。
― RINAさんも初めて挑戦したことがありましたね?
RINA はい。今回はメンバーそれぞれが作詞、作曲、リードヴォーカルを担当した楽曲が入っているんですけど、私は「彼女はWave」という曲で作詞、作曲、リードヴォーカルに加え、初めてDTMでアレンジして曲を仕上げました。
― 80’sっぽいニューウェーヴなファンクという印象の楽曲ですね。
RINA ファンキーなギターのカッティングがめっちゃ好きなんですよ(笑)。それも含め、全部GarageBandの中にある素材から選んで、曲として組み立てたデモをメンバーに送って、それぞれのニュアンスで弾いてもらったんです。
― これから、そんなふうにアレンジまで手掛ける曲は増えていきそうですか?
RINA 思いついたら形にしたいなとは思います。
― TOMOMIさんは新たな挑戦としては、どんなことがありましたか?
TOMOMI (プロデューサーの)シライシ紗トリさんと一緒に作った「eternal」と「愛の正体」は、紗トリさんの自宅スタジオに1人ずつ行って、レコーディングするというスタイルでやってみたんですよ。それは新しかったです。1人ずつだから、時間を掛けたければ掛ければいいし、すぐ録れちゃうならそれでいいし、わりと自由にできたので、それぞれに好き勝手できて楽しかったです(笑)。
― TOMOMIさんが作詞、作曲、リードヴォーカルを担当した「愛の正体」は、途中から加わるゴスペルのクワイヤにちょっとびっくりしながらも、すごく良いなぁと思いました。
TOMOMI ゴスペルはスクールの時に全員が習っていて、自分たちのルーツの中にあったんです。もともと私はそういう音楽も好きなので、この曲を作った時、“ここにクワイヤが入ったらいいなと思ってるんですよね”って話を紗トリさんにしたら、“知り合いにいるよ”。“ここにホーンが欲しいんですよね”って言ったら“紹介するよ”って。そんなふうに、紗トリさんのご縁の中で一緒に作っていった曲ですね。
― 紗トリさんはそういうサウンドが好きだから、すごくはまっているなと思いました。
TOMOMI 紗トリさんも楽しんでくれました。クワイヤの人たちがアメリカの方たちだったので、アメリカで録ってもらって、それをデータで送ってもらったのですが、時差があるから紗トリさんは夜中にリモートでディレクションしていました。
― HARUNAさんはヴォーカリストとして、これまでになかった曲調を歌うという意味で挑戦があったのではないかと思うのですが。
HARUNA 今までは、1曲ごとに曲に合わせて自分じゃない人格になりきって歌うところに楽しみを見出していたのですが、今回は自分たちと向き合った作品ということもあって、最初から意図していたわけではないんですけど、あえて声色を変えてみることをせずに、ずっと自分でいようと心がけて歌を録りました。今の自分がすごく良いなと思うので、ちゃんとそういう自分のまま全曲を録り終えたかったんです。
― それでも曲ごとに表情が違うのは、ヴォーカリストとして表現力が増したからこそですね。
HARUNA そうなのかな。そうだとしたら無意識的にですね。
“みんなで音を合わせるだけでも楽しい”という感覚が、楽器を続けるモチベーションにつながったと思う
― 3月から6月まで日本各地のホールを廻ったあと、7月に北米、9月にヨーロッパも廻る〈SCANDAL WORLD TOUR 2022 “MIRROR”〉が待っているわけですが、ツアーの意気込みを聞かせてください。
TOMOMI 『MIRROR』はホールに似合うアルバムだと思うんですよ。その世界観を、ホールの空間を使って作れたらなと思っています。とにかく楽しみです。
― 昨年、コロナ禍の影響でできなかったワールドツアーのリベンジという気持ちもあるのでは?
TOMOMI 前回のアルバム『Kiss from the darkness』のツアー〈SCANDAL WORLD TOUR 2020 “Kiss from the darkness”〉がなくなっちゃって、1本だけ配信でライヴをしたのですが、そのアルバムからも何曲かできたらと思っています。ただ、また感染が拡大してきているから、海外は特に心配ですけど、廻れたらいいですね
HARUNA 早く海外のファンに会いたいと思っています。すごく待ってくれているんですよ。SNSやYouTubeのコメントもそうなんですけど、今は海外ファンの熱がものすごいんです。やっぱり、その熱がピークに達している時に会いたいじゃないですか。
― 海外のファンって日本のファンとはまた違いますか?
RINA もちろん、いろいろなライフスタイルやその国の文化があるから、違いはいろいろあるんですけど、マインドは似ている。みんな、いい人たちなんですよ(笑)。たぶん、私たちの音楽から伝わる何かがあって、共通した心を持った人たちが集まってくれているんだろうなと感じています。すごくいいお客さんですね。
TOMOMI 否定することがないんですよ。15年やってきて、別のバンドって言えるくらい全然違う音楽をやっているから、たぶん知ってもらうきっかけになった曲も違うのに、それでもずっと好きでい続けてくれるのは普通のことじゃない。ありがたいですね。
― それはやっぱり音楽性が変わっても、4人それぞれの個性が楽曲やライヴに表れているからだと思いますよ。ところで最近、フェンダーの新しいモデルを使っていると小耳に挟んだのですが。
TOMOMI 「one more time」のMVでそのプロトタイプを使っています。Jazz Bassなんです。自分が最初に持ったのがJazz Bassだったので、Jazz Bassという印象を持ってくれている人も多いのかなと思ったところもあるし、シグネイチャーモデル(TOMOMI PRECISION BASS)を作らせてもらった時は、その時の気分や楽曲にも合うということでPrecision Bassになったんですけど、やっぱりJazz Bassも好きなんですよね。
― MAMIさんはStratocasterですか?
MAMI 白のStratocasterで、今使っている赤いStratocaster(MAMI STRATOCASTER)がシングルコイルのスタンダードなものなので、今のSCANDALの楽曲にも合うような、もうちょっとパワーのあるものですね。
HARUNA 私の新しいTelecasterは、昨年8月21日に大阪城ホールで行った15周年記念ライヴでこっそり使っています(笑)。今のTelecaster (HARUNA TELECASTER)の良いところは残しつつ、もう少しパワフルな、初期の楽曲にも対応できるギターです。
― 今回、昨年の秋に発売されたフェンダーの新シリーズ、Player Plusを見ていただきましたが、ルックスの印象を聞かせていただけますか?
MAMI 見たことがないグラデーションの色味だったので、とても新しいと思いました。今後、いろいろな色のグラデーションを出していったらかわいいでしょうね。飾ってもかわいいし、ユニセックスというか、男女どちらが持ってもキマりそうですね。
TOMOMI パッと見て西海岸ぽいと思いました。アメリカンミッドセンチュリーみたいなインテリアに合いそう。横のグラデーションは見たことがないから新鮮でした。
HARUNA 使っていたらめっちゃ目立ちますよね。個性を出しやすいと思います。これは最初に使った者勝ちですよ(笑)。
RINA これだけ新しいモデルを考えつくってすごい。また新たに個性的なギターが出てきて、プレイヤーたちはみんなワクワクするでしょうね。
― ありがとうございます。では、最後に楽器ビギナーにアドバイスをお願いします!
MAMI 楽しく弾いてほしいです。音楽が好きだから、楽器が好きだからという理由で始めるって、めちゃめちゃ良い始め方だと思うんですよ。でも、練習がきつくて挫折したらもったいない。だから、好きという気持ちが折れないように、まずは楽しむことを一番に考えて続けていったらいいんじゃないかと思います。
TOMOMI 自分のことを考えると、1人で始めていたら、途中で何をやったらいいかわからなくなっていたかもしれないなって。でも、一緒に始めた仲間がいて、みんなで音を合わせるだけでも楽しいという感覚が、楽器を続けるモチベーションにつながったと思うんです。だから、仲間を見つけてバンドを組む。組まなくてもいいんだけど、一緒にやれる仲間がいるっていうのは、続ける上ですごく大きいと思います。
RINA 私の中学3年生の妹が今、ギターの弾き語りでいろいろな曲を練習しているのですが、わかりやすいコード譜を見られるサイトがいろいろとあるんです。そんなふうにスタートもカジュアルになってきたし、シンガーソングライターが流行っているから、弾き語りして楽しい曲もたくさんとあると思います。ワクワクしながら好きな楽器と好きな音楽を見つけて、楽しんでほしいです。
― 最後にHARUNAさん、お願いします。
HARUNA そうですね。ぜひフェンダーさんのYouTubeで『Start Your Journey!』を見ていただけたらと思います(笑)。
― SCANDALのみなさんが初心者に向けて、ギターやベースの魅力や弾き方を解説する動画ですね。
HARUNA 自分で言うのも何ですけど、初心者でもわかりやすい解説をたくさんしているんですよ(笑)。あれを見ながら、いろいろなコードを習得してもらえたらと思います。すごく良い動画です(笑)。
RINA あれを見て、SCANDALのファンになりました!というお手紙をラジオにいただいたんですよ。
HARUNA いろいろな出会いがあるんだなって思いました。
› 前編はこちら

Player Plus Telecaster® | Player Plus Stratocaster® HSS | Player Plus Nashville Telecaster® | Player Plus Jazz Bass®
(Left to Right)
SCANDAL
2006年、大阪にて結成。メンバーはHARUNA(Vo, Gt)、MAMI(Gt, Vo)、TOMOMI(Ba, Vo)、RINA(Dr, Vo)。2008年、シングル「DOLL」でデビュー。翌年にリリースされた「少女S」でレコード大賞新人賞を受賞。2012年、異例の早さで日本武道館公演を達成。2013年には夢であった大阪城ホール公演を5分で即完させる。2015年、世界9カ国41公演を廻る単独ワールドツアーを大盛況に収め、初の東名阪アリーナツアーでは4万人を動員。2016年8月に結成10周年を迎え、結成地である大阪にて1万人を動員した野外コンサートを開催。2017年、ベストアルバム『SCANDAL』をリリース。2022年1月26日に10枚目のアルバム『MIRROR』をリリースし、3月よりワールドツアー〈SCANDAL WORLD TOUR 2022 “MIRROR”〉を開催。
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